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根室市の財政と教育の現状 [26. 地域医療・経済・財政]

2007/12/8   #016

 「ニイタカヤマノボレ」、北方領土の択捉の単冠湾に集結した日本海軍がはるかハワイまで航行し、真珠湾を攻撃した日ですね。択捉に住んでいた人の中には海軍の艦船が集まっているのを目撃した人もいるのではないでしょうか。暗号が解読され、アメリカ側は攻撃を事前に察知していながら、自国民を戦争に引きずり込むために、当時の大統領は情報を秘匿した。攻撃が始まったことを確認して、国民を煽る演説をしました。今日は情報戦で日本が決定的に負けた日です。
 (情報戦略に関する面白い本が出版されているので紹介します。『最強情報戦略国家の誕生』(落合信彦著 小学館 2,007年))

【ニムオロ塾とは?】 
 さて、ニムオロ塾という名前は、単に「根室にある塾」という普通名詞に過ぎません一私塾としてではなく、もうすこし広い「わがふる里ニムオロ」という視野で教育に係る情報発信をしたい、そうした願いをこめてつけた名前です
 実在名は新聞の転載記事を読めばわかるようになっていますが、「プロフィール」欄にあるebisu_12のメールアドレスをクリックすればメール画面が開けますので、問い合わせがあればお答えします。
 小さな町で実在の小さな私塾をベースにブログ上のバーチャルな「ニムオロ塾」を拠点として、少しずつ情報発信を重ねたいと思います。

 停滞しているあるいは衰微しつつある町ですが、でも好いところです。高校を卒業してから35年たってふる里へ戻り、当初は、夜、人がほとんど歩いていないので戸惑いました。何なのだこの変化は?ゴーストタウンになってしまったのか?
 でも、町の衰退を嘆いていないで、楽しみましょう人がたくさんいた喧騒の昭和30年代後半から40年代とは違ったよさも生まれています
 一度根室高校の授業を見せてもらいましたが生徒の少ないのに驚きました。小中学校では30人学級などとうの昔に実現している学年が多い。体育祭(運動会?)をみても、生徒の少なさに驚かされます。まるで分校のような光景です。生徒の数よりも、見ている父兄やおじいちゃん、おばあちゃんの数のほうがずっと多い。わたしが通っていた頃の光洋中学校は1学年10クラスで550人の生徒がいました。1クラス55人です。(花咲小学校は一学年60人×6=360人、360人×6学年=2000人超)でした。光洋中学校には1600人も生徒がいたのです。団塊の世代の根室市内の一学年の総人数はほぼ1000人です。先生たちも大変だったでしょうが、父兄も生徒もおおらかでした。このように根室では全国に先駆けて30人学級が実現しているクラスが多い。サイズが縮まるのは悪いことばかりではありません。物事には必ず両面があります。25人しかいないクラスで生徒の成績が上がったか?いいえ、クラスの規模と成績はまったく関係ないようにみえます。


【人口縮小の教育への影響】
 ところで、2003年に根室市内で生まれた子供は190人です。いま、1学年だいたい300人前後です。団塊世代の1000人と比べてください。まもなく20%以下になってしまうのです。2010年度の新入生は、花咲小学校、北斗小学校、成央小学校ともに50人前後となる見込みです。2016年には光洋中学校、柏陵中学校、啓雲中学校の新入生が50人規模となります郡部は全部あわせて50人弱になるでしょう。ドミノ倒しのように、2018年には高校を受験する生徒数が根室高校の現在の定員200人を割ることになります。
 実在のニムオロ塾を開いた5数年前は1学年330~350人でした。それがもう300人を割ろうとしています。1校当たりの生徒数が少ないので、クラブ活動にも無理が出ています。たとえばHa中学ではバレー部があっても、人数が少ないので2チーム作れない。つまり2つのコートに分かれて実践的な練習ができない、しょうがないからKo中学へ練習試合に行こう・・・すでにあちこちで生徒数減少による「実害」が出ています。学校は生徒のために在るのではないでしょうか。その生徒たちのクラブ活動が生徒数減少によってママならないものになっています
 マイクロバスで送迎すれば、小中学校の統合は簡単です10年がかりで経費を大幅に減らすことができます。根室市に企画部門はありますが、市民の意見を集めるのではなく、長期的なグランドデザインを自ら責任を持って創り、具体案を公表して、しかる後に市民の意見を聞いて欲しいと思います。小中学校の統合によって新たに生徒の送迎業務が生まれますが、バス会社に外注すれば、地域の交通機関を担う企業を支援することができます。夕張市のように小学校が1校になってしまうまえに、先手を打ちませんか?
 

【病院の赤字について】
 赤字再建団体転落まであと2年しかないとわたしは判断しています
 昨日の道新夕刊に関連記事が載っていましたのでかいつまんで紹介します。新総務省基準の「自治体財政健全化法に基づく指標の数値基準」は「実質赤字比率」「連結実質赤字比率」「実質公債費比率」「将来負担比率」の4つの指標がありますが、そのどれかに引っかかれば、「財政再生団体」に指定されます道新がベースにしたデータは2006年度の自治体の決算データです。根室市の昨年の病院赤字は5億円だったのではないかと記憶します。一般会計から病院会計への繰入で赤字を補填しました。2007年度は病院会計は実質17億円前後の赤字の見込みです。この数字をベースに試算したらどうなるのでしょうそして2008年度もこのままの状態が続けば、財政再生団体指定は避けられないのではないでしょうか
 そうなると夕張の例を見るまでもなく、極端な学校統廃合を余儀なくさせられ、子供たちの教育に影響が出ることが予想されます
 市立根室病院の赤字はいくつか前提条件を決めるだけで誰でも簡単に試算*できます。2年間この状態が続くと赤字額は34億円になります。市は市債の一部を大地みらい信金からの証書借入れに切り替えることによって、見かけ上の市債比率を下げたようですが、借金の名目を変更しただけで、借金の絶対額にはなんの変化もありません。少し規模の大きな企業で経営に携わってきた私にはとても危険な操作にみえます。民間企業で何らかの基準適用を避けるためにこのような操作をしたら、会社は粉飾決算に問われます。担当取締役はもちろん、それを知っていた取締役全員が善管注意義務違反となるでしょう。株主代表訴訟の対象になります。取締役は連帯して損害賠償に応じざるを得ません。
 新聞の取材が市側の言い分をそのままスルーしているだけの記事が多いようにみえます。批判的な分析がすくないのはどうしたことでしょうか。昔の北海道新聞は健全な批判精神に溢れていましたね。沖縄返還に毅然として反対社説を掲げたのは、琉球新報、中部日報、北海道新聞の三紙だけだったと記憶しています。道新は誇りとしうるわが郷土の新聞です。小学校4年から高校を卒業するまで、ずっと道新の社説を読み続けてきましたが、35年ぶりに戻ってきて道新をまた読みはじめましたが、健全な批判精神が少しばかり薄くなってきたような感じがしています。マスコミの力は大きい根室新聞さんと道新さん、自分でシミュレーションしたデータをもって、しっかり取材をお願いしたい。今後の市財政関連の記事に期待しています
 140億円の予算規模ですから、年間17億円の市立根室病院特別会計赤字は各方面に影響が甚大です。そしてこの140億円の予算規模も架空の数字と言えるのではないでしょうか。理由はこうです。病院会計の売上が35億円で計上されていますが、実際は半分です。だから根室市の予算規模の実態は130億円を割っていると言えませんか。
 市の将来に甚大な影響のあることなのですから、総務省の新基準で、もっと現実的で精度の高い数字をベースに試算し、「市のお知らせ」誌上で公表して欲しいと思います
 病院収入について予算上の問題がある一方で、経費削減策が何も発表されていません。医師の確保に奔走しているというアナウンスはされますが、経費削減策については具体策のアナウンスがありません。「僻地」の常勤医師確保は難しい。全国的な問題の色がさらに濃くなって現れているのが北海道の地方都市の現状です。
 千葉県の医療行政のトップ、医局長のK氏によれば、「千葉大学医学部がある千葉県ですら7箇所の千葉県立病院で医師不足は深刻であり、医師数が足りているのは東京都内と横浜だけ」だそうです。
 だから、根室の常勤医増員がとれほど困難であるかがわかります。K氏は慶応大医学部出身のドクターです。元厚生省のキャリア官僚であり、一部上場会社の代表取締役社長の経験もあります。ある時期、私の上司でもありました。そのK氏が千葉県の7県立病院を束ねる医局長の肩書きで千葉大学医学部へ医師派遣の要請をお願いしに行ったところ、にべもなく断られたと聞いています。ない袖は振れないというのがそのときの千葉大学医学部の言い分です。臨床研修を東京でやりたがる医師が多く、首都圏にある千葉大学医学部ですら必要な臨床医の確保に苦労しています。北大医学部、旭川医大、札幌医大はもっと厳しい状況にあることは推測に難くありません。釧路医師会病院に勤務する私の主治医も、来年3月に横浜の病院へ転職します。外科医として腕を磨くためです。全国のあらゆる地方に共通な現象でしょう。例外は東京都と横浜市だけです。
 このような現状がわかると、病院関係者や市側の医師確保の担当者の苦労がみえるようです。いくら根室市が医師確保に努力しているといっても、常勤医16人体制を回復することは無理でしょう。現状維持が精一杯です。努力が無駄だとは言いません。努力はすべきです。しかし、増員は困難であると言わざるをえないのです。だから、予算上は現状維持の医師数で売上推計をすべきです2008年度は現在数の常勤医の確保すら絶望的ではないでしょうか。国の協力は2007年度だけで、その後は自分で何とかしなさいということではなかったですか?
 人員配置については一度大きなチャンスを見逃しています。釧路市立病院の増床のときが看護士配置について釧路市と交渉するチャンスでした。増床に伴い看護士の増員需要があった筈です。
 経費の半分以下の売上しかなければ、民間企業は1年で倒産です市立病院だけが例外であるわけがない根室市全体を巻き込んで「倒産」しかねない状況であることが、とっくに誰の目にも明らかであると思います。夕張市は、もう他人事ではありませんし対岸の火事でもありません。
 そうした切羽詰った危機的状況下にあるのに、市議会にも市役所にも労働組合にも当事者としての「危機感」が私には感じられません。なせかというと、現実的な具体策が関係者や関係諸機関から何も出て来ていないようにみえるからです。生まれ育った町であると同時に不思議な町、不可解なところのある町でもあります。
 夕張という町に生まれ、町を愛しながらも生活の糧を求めて町を出て行かざるを得ない人の引越しの姿がテレビで放送されていました。夕張市の実例では市立病院がなくなり、職員は半減、もちろん市会議員の定数にも厳しい目が向けられています。わが町を夕張にしたくはない。根室に生まれ育った人びとが、その意に反してこの町を出て行かざるをえない状況はごめんです根室人は情に厚い、誰一人として親戚・旧知の知人がそのような目にはあってほしくないに違いありません。当事者である関係諸機関やそこで働く職員が具体的に動き出せば、町の人びとは皆応援するのではないでしょうか? 
 ・・・一市民としての感想です。
 わが町にも健全な批判精神、オンブズマン制度の導入が必要なようです。どなたか旗を振りいませんか。非力ではありますが、お手伝いくらいならできます。ふるさとのためなら少々汗をかくことは厭いません。

 

*注:
 たとえば、常勤医師数と非常勤医師数を假定して、2006年度の実績データを元に売上を比例配分するだけでも簡単な損益シミュレーションはできます人件費や経費は下方硬直性があります。変動比率が低いので全額固定費として扱っても推計値の誤差はそれほど多くはならないでしょう。入院患者減少に比例して薬剤購入費を減らすだけで充分な精度の計算が可能です
 通常は厳しい条件で赤字最大値と努力目標による最尤赤字推計値の両方を計算して、状況の進展をみて事前に用意してある対策を次々に実施します。
 市側の計画には厳しい条件でのシミュレーションがないようにみえます。一度も「最悪このぐらいの赤字が出て、平成00年に赤字再建団体になる」というデータの公表がありません。あれば公表すべきです。事前の対策のない行き当たりばったりの経営をしたら、その付けは大きくつきます。民間企業なら今年度で倒産です。
 市にお金を貸していた地元金融機関が夕張市にはありましたが、債権の一部放棄をして痛手を受けたと聞いています。一方の当事者である北村理事長殿、「オール根室」の履き違えはないでしょうか。判断に間違いは無かったのでしょうか?
 私は仕事柄、その時々の肩書きによっては何度か銀行さんとは突っ込んだお付き合いをしたことがあります。ある企業への出向でメインバンクであった東邦銀行との緊張感の張り詰めた交渉や、皇居のお堀端、大手町1丁目1番地にある旧三和銀行本店営業部には大変厚い信頼を戴き、格別の好条件(金額に制限なし・無担保・保証なし・金利1%)で借入れをさせて戴いたことも思い出深い仕事です。皇居のお堀沿いの林が借景になり窓からの眺めの素晴らしかったことと、平将門の首塚が隣の空き地にあり、神主さんが来てお祓いをしてたことが印象深く記憶に残りました。
 根室の地元金融機関として地元企業からの信頼の厚い大地みらい道内でも有数の伝統のある信用金庫です。その名誉ある伝統と、諸先輩たちの努力の積み上げに敬意を表しつつ考えます。同じ民間の企業人としての生活の長かった私は市債の借り換えはイエローカードだと思いますが、間違いでしょうか?
 根室の町はなんども似たようなパターンの失敗を繰り返してきたようにみえます。そろそろ卒業しましょう。町はピンチです。
 

 

 


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