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コンピュータ技術者志望のK君へのエール [57. 塾長の教育論]

ebisu-blog#015 
 ⇒12月14日加筆

 昨日数学の体験授業をして、今日入塾申込書を持ってきた中3のK君も部活で野球をやっていたのですね。厳しい練習に耐えたことで我慢力(辛抱力)は相当鍛えられたでしょう。昨日将来の希望を聞きましたが、コンピュータ技術者になりたいということでした。
 他にもシステムエンジニア(SE)志望の人がいるでしょうから、SEどのような仕事であるのか、私が仕事で関係した限りでお話しておきます。
 企業相手のシステム仕事は経理システムが中心にあります。ここがまずはじめにシステム化されます。その次に各種の業務がシステム化され、ついでそれらの諸システムが統合されます。ゲームソフトの開発や特殊な分野のシステム開発の話しはここでの話題の埒外とします。問題がややこしくなりますから。
 システムエンジニアは多数のプログラマの中から適性のあるものが選ばれます。数%でしょう
 プログラミング言語
C++が主流となりつつあります。easy-trieveのような簡易言語もありますが、中身はC++です。プログラミング言語はアメリカで開発されたものがほとんどです。だから英語の単語(#include <owl\owlpch.h>とかif...then...else,とか )が使われます。
 今日見せた"Accounting Information System, Theory and Practice" Frederick H. Wu, McGRAW-HILL INTERNATIONAL BOOK COMPANY, 1984 のような専門書も先端分野のものはなかなか翻訳されませんので、スキルが上がってくれば原書で読まなければ間に合わなくなります要するに英語ができないといろいろなところで困ることになります。
 もちろん数学も必要です。アッセンブラには16進記数法がでてきますし、離散数学を勉強したり、組み合わせ理論を使ったりと、コンピュータ技術には数学がベースになっているものが多い。フローチャートで表現されるアルゴリズムは、高校数学では「論理と命題」・数B「統計とコンピュータ」で扱いますが集合論・記号論理学・確率論・統計学の知識があったほうが実際の仕事(システム設計やプログラミング)に役に立ちます。とくに経理関係の仕事をする人は決算数値や人員データ、生産量データなどを使って経営分析をやる場合に統計学は必須です。このあたりの知識があると会社の利益を売上高経常利益率で15%もアップさせることもできる場合があります業務の仕組みをコンピュータシステムを媒介にして利益指向のシステムへと改革できます。コンピュータ・システムをどのように設計するかで、仕事のやり方がまるで違ったものに変えられます。どのような経営者も及ばないような利益増大効果をシステム開発を通じて実現できるのです。わたしには2度にわたってこのような仕事の経験が在ります。(三度目はある事情から利益管理システムに係る仕様を封印しました。影響が大きすぎたからです。強すぎる競争力をNo.1企業が持つと暴走の危険がありました。それを食い止める倫理水準のアップが期待できませんでした。周囲の状況や会社の成長段階によってはやってはいけない仕事もあるということです) 開発スケジュール管理技術のPERTも数学がベースです。ハードウエアとの関係でトランジスタや回路についても一般的な知識が必要でしょう。電気的なハードウエアの動きが見えていないと困ることがあります。OSやソフトとの係りでハードを選択するときやトラブル対応時にハードの動きが推測できないと故障箇所が判断できません。

 使っていたパソコンが壊れたとき(昨年)に、"How Computers Work" Ron White, Illustrated by Thmothy Edward Downd and Stephen Adams, A Division of Macmillian Computer Publishing, 1999 (400ページほどの原書で、イラストが美しく、これほど詳しいイラスト入りのパソコンのハードとソフトについて具体的な動作を記述した本は見たことがありません。残念ながら翻訳はされていません。ハードとソフトの両方の分野に詳しい翻訳者が不足しています。片方ならたくさんいるのですが・・・)という本で、パソコン内部の動作を確認して、故障箇所に見当をつけて症状と修理に必要な情報を書いた文書を添付して修理に出しました。
 CPU本体か、メモリーカードか、その間をつなぐ電気回路か、HDDの故障なのか、内部構造と起動時のパソコンの動作についての知識があればどの部分の故障かスィッチを入れてから停止してしまうまでの音を聞くだけでわかる場合もあります。ハードディスクの故障でないことは、自分の診断で見当がつきました。でも、一番高いパーツであるCPUに係る故障だとわかりました。金額は張りますが、データは無事です。一番貴重なのはデータです。ストアしてある教材を作り直したら数十時間の作業時間を要します。バックアップを数ヶ月とらずにいたのでちょっと慌てました。いまでは外付けのハードディスクへ毎月バックアップしています。

 SEの資質や知っているべきアプリケーションに関する知識へと話しを戻します。たとえば受注したシステムが経理システムとインターフェイスするものであれば、経理知識がないとお客様の要求仕様が理解できません。つまり簿記を知っている必要があります。会社の簿記ですから、個人商店対象の3級では話しになりません。最低、日商2級が必要です輸入商社なら、外国為替に関する知識や、輸出入に係る業務知識も要求されます。製造業では簿記だけでなく原価計算に関する知識が要求されます
 統合システムのメンテナンス・グループで10年仕事を担当したNCD社の宇田君は、芋づる式に統合システムに係る業務を理解していきました。柔軟な思考の持ち主です。数年でこのグループのマネジャーにのし上がっていました。有能なSEです。このようにシステム開発に携わらなくても、質の良い統合システムのメンテナンスに携わっても、SEとしてのスキルを磨くことができます。仕事を担当する人の「心構え次第」です。

 まとめてみます。SEには英語と数学が必須です。それも半端な知識は役に立ちません。数百人のプログラマのなかから十数人のシステムエンジニアが選ばれます。それほど厳しい。そしてお客様のアプリケーションに関する知識が必要です。簿記なら日商2級以上ですし、企業の種類によって要求される業務知識はさまざまです。上場会社は外部監査が必要ですので、監査についての理論も承知していないとシステム設計に支障が出ます。 つまり、一流のSE には仕事に係るどのような専門分野も理解できる頭脳の柔軟性が要求されます
 担当するシステムのアプリケーションに関する知識を柔軟に吸収し、システム開発が終わる頃には、その分野の専門家並みの知識を身につけることのできる最上級のSEKE(Kowledge Engineer)と称されます。相手の話を理解するために、レベルの高い一般教養も要求されます。
 高校3年間でどれだけ勉強できるか、そしてその後にどれだけ知識や教養を豊かにして、質の良い仕事を積み重ねるかで将来が決まる、といっても過言ではありません


 具体例で説明すればわかりやすいと思います。輸入商社の納期管理システム開発を一緒にやったSさんというSEは80年代前半に一緒に仕事をして以来、ずっと同じ大手ソフト会社にいますが、今年6月の株主総会で取締役に就任しました。業界最大手の検査会社の統合システム開発を一緒にやった中堅ソフト会社のSEのMさんはもう10年ほど前からNCD社の取締役です。
 わたしはどちらの仕事もシステム発注側の企業でシステム仕様をを書いて彼らと仕事をしてきました。情報処理1級を受験した根高事務情報科のOさんとS君には、統合システムの「外部設計」を私が、「内部設計」を三人のSEが担当したと言い換えたら、仕事の輪郭がわかるでしょう。
 前者の統合システムは財務会計システムと納期管理管理システム、それに為替管理システムと円定価システムで構成されています。為替差損の出ない仕組みを持っていました。過去30年間の日米金利差をみると、この30年間有効なシステムです。これから10年たっても大丈夫でしょう。国内最大手の臨床検査会社である後者の統合システムをもうすこしブレイクダウンすると、財務会計・支払い管理システム、購買管理システムの帳票類の半分、各システム(財務会計及び支払い管理システム、購買在庫管理システム、原価計算システム、予算システム、販売会計システム)間インターフェイスのすべての外部設計を私が担当しました。財務会計及び支払い管理システムとシステム間インターフェイスの開発期間は8ヶ月でした。立ち上げ後、システムトラブルは一切なし、実務設計がよくできていた完璧な仕事でした。
 一度だけ三人のベテランSEが支払いシステムに係る処理でギブアップしたときに、処理フロー図をもってきてもらいファイル処理フローを確認し、内部設計に口を出したことがあります。三日間検討して、これ以上どうにもならないということでしたが、ファイル・フローを確認しながら、「このタイミングでこのファイルを使いこういう処理をしてください、できませんか?}と言ったら、驚いた顔をして、「できます」との返事でした。腕が好いと自負している三人のSEが内部設計不可能との結論を持ってきたのに、百本以上もあるプログラムのファイル処理フローを見ただけで、たった15分でどうして解決案を見つけ出せるの?そう言いたげな顔でした。
 仕事は楽しいものです。腕に自信のあるもの同士が謙虚に協力し合って時代の先端を走る仕事を成し遂げていく。
 外部に支払ったコストだけで5億円の統合システムでした。5つのプロジェクトが動いていました。1984年のことです。この時代に統合システムを開発できた企業は稀です。使ったコンピュータは当時国内最大の処理能力をもつ富士通製の汎用大型コンピュータでした。いまは数十台のNTサーバーで動いています。
 彼らのような一流のSEになりたければ、いまから自分を必死に磨くことです。本気でやるつもりなら、学校とニムオロ塾で三年間、一心不乱に勉強してください。システムエンジニア希望者にとっては好い塾かもしれません。いいえ、あなたがたにとってはきっと素晴らしい塾との出会いとなるでしょう。

 システム関係の仕事はやり方によっては面白いぞ (~o~)  ebisu
 しかし、自殺者が多い職種でもあります。性格的に向かない人や、SEとして必要とされる広範なスキルがないままにSEの仕事を任されてしまった場合にも、こうした悲劇は起きます。その辺りの事情と予防策をそのうちにブログへ書くことになるでしょう。システム志望の根室で学ぶ生徒たちは、世の中にある、色々な意見の一つとして読んで下さい。具体的な話が聞きたければ、実在のニムオロ塾までどうぞ。

  


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