SSブログ

#4657 米国金利上げで円安が進むと日本経済はどうなるのか? Nov. 23, 2021 [91.経済]

 パウエルFRB議長が再任されるというニュースが飛び込んできた。これで米国の長期金利が上がっていくことが確定したようだ。
-------------------------------------

円安進み、一時1ドル=115円台に パウエルFRB議長の再任影響


23日のアジアの外国為替市場で対ドル円相場が一時、1ドル=115円台前半と2017年3月以来、約4年8カ月ぶりの円安水準をつけた。米国の金利が上昇し、ドルを買い円を売る動きが強まった。
 前日にバイデン米大統領が米国の中央銀行、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長を再任する方針を表明した。次期議長の候補者として名前が挙がっていた金融緩和に積極的なブレイナード理事よりも利上げ時期が早まるとの見方から、米国の金利が上昇。金利の高いドルを買い、円を売る動きが加速して円安ドル高が進んだ。(ニューヨーク=真海喬生)
-------------------------------------


 ゼロ金利に別れを告げ、米国の利上げが進むことになる。日米の金利差は金利裁定取引によって円安を生むが、日本は米国に追随して利上げできない。今後2年間にわたり米国長期金利が3%にまで上がると何が起きるのだろう。
 仮定の話である。米国の金利が少しずつ3年間で5%にまでアップしたとしよう。その結果、為替が130円/ドルまで円安になったとすると、日本の貿易収支は大きな赤字を抱えることになる。

 GDP輸出・輸入の額を並べてみよう。単位は兆円である。
 2018年 556 81.4(14.6%) 82.7
 2019年 559 76.9(13.8%) 78.6 
 2020年 538 68.4(12.7%) 68.0

 円安になって輸出額が増えてもGDPに占めるその割合が年々小さくなっており、2020年には13%を切っているので、日本経済への影響は微々たるものだが、円安によって生ずる物価騰貴が国民生活へのダメージとなることは避けられない。日本人の一人当たり個人所得は過去20年間横ばいである。GDPが対前年比で3.8%落ちているのも気になるところ。日本経済はあちこちに赤信号がともり始めた。

 実質所得が横ばいの中で物価が騰貴しだしたら国民生活が圧迫されるのは論を俟(ま)たぬ。
 しかし日銀に金利を上げて円高誘導する選択肢はない。金利を上げたら、政府財政の国債金利負担が大きくなるからだ。日本の長期金利上昇は政府財政破綻を引き起こすことになりかねないので、日銀は長期金利を上げられない。

 たとえば、10年物国債の金利が5%になったら、毎年50兆円の赤字国債を発行するとしたら、年々2.5兆円ずつ利払いが増えていく。10年後には25兆円と計算上はなるが、国債の残高は1300兆円あるので、それの借換債分が上積みされる。平均で償還期限が15年とすると借り換え分は年間86兆円にもなるから、その金利は年々4.3兆円ずつ増えることになる。新規発行分と合わせると10年後には年間68兆円の利払いになるから、政府財政は破綻する。だから日銀は金利を上げられない。経済はじわじわと進む円安により深刻なダメージを受ける。

 長期金利を上げて調節できなければ円安は止まらない。金利を上げても日銀の抱えている540兆円の国債は評価替えをしないので表面上は評価損は出ないが、国際金融機関は評価損を計算して日銀が実質的な巨額債務超過であると評価することになる。それは日本円が国際主要通貨から滑り落ちることを意味しないだろうか?
 日本経済の困難を打開するためには、金利を上げて日銀が実質債務超過になり、政府財政が破綻するしか選択の余地がなくなる。国民にとっては地獄である。預金や株式の封鎖と財産税課税によって根こそぎ巻き上げられることになる。

 自民党と公明党の政治は経済の悪化とともにいずれつぶれることになる可能性が出てきたのだが、それまでに経済運営ができる健全な野党が育っていなければ、政治と経済の両面で深い混迷だけが生ずることになりはしないか。
 現在行われている立憲民主党の党首選挙を見ると4人の候補者に政策的な相違はほとんど見当たらず、なんとも凡庸な小粒の人材が並んでいるだけ。

 さて、どうしたものかな。一度は地獄を潜り抜けるしかなさそうだ。期間は20年くらいかな。
 日本人はあんがい困難な中をしっかり生き延びてきた、といっても慰めにはならぬ。多くの国民がこれまでに蓄えてきた財産の半分くらいが毀損してしまうのだから。



にほんブログ村

nice!(0)  コメント(2)