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#5041 社会科の勉強が苦手な生徒へ:好奇心が強ければダイジョブ! Aug. 23, 2023 [55. さまざまな視点から教育を考える]

<最終更新情報>8/24午前9時35分「余談-1」追記
       8/25午前中「余談-2」追記
      

 「盲蛇におじず」と言いますが、子供のうちは無鉄砲でいいのです。
 本好きの近所の小学生が、本棚からハラリ著『サピエンス全史(下)』を取り出してきて読み始めたので、周辺知識がないと理解できないと思うよと伝えたら、2頁読んで少し間を置いてから、「サマルカンドって何?」とさっそく「質問その1」が飛んできました。(笑)

 「シルクロード沿いの都市の名前ですよ、地名、たとえば札幌市というのと一緒です。外国の都市の名前ということ。”サマルカンド”、音の響きがいいですね。」
 本棚の上に鎮座している地球儀で場所を探すというので、取ってあげた。書いてあるかな、地球儀のどこを見たらいいのかわからずウロウロ...
 「探すのたいへんですね、そういう時はまずインターネットを使ってみます」
 そういいながら、画面を開いて「サマルカンド」と入れてエンターキーを叩いてみせると、解説記事がいくつか並んで表示されました。ウズベキスタンの都市ですね。
(ウズベキスタンは綿花栽培の強制労働と児童労働という人権問題のある国です。国連から改善要求がウズベキスタン政府にだされています。)

 今度はグーグルアースを開いて、「サマルカンド」と入れると、地図上に「サマルカンド」が表示され、イスラム寺院の写真が左側に並んだので、
 「イスラム教の国だね、こんな寺院テレビで見たことあるでしょ。神道は神社、仏教はお寺、キリスト教は教会、イスラム教ではモスク、ユダヤ教ではシナゴーグというんです。」
 位置を確かめてから、地球儀で探し始めた。30秒ほどで、
 「あった!」
 サマルカンドと表示があった。子どもは見つけるのが速い。
 その近く、東側の方に”モンゴル”という国があるね。その国は昔、世界最大の帝国だったことがあるんだ。
 (地球儀で指さしながら)ユーラシア大陸の東の端からヨーロッパの一部までモンゴル帝国の領土だったことがある。ウクライナは昔キエフ公国と言ったんだが、そのキエフ公国もモンゴルの領土となったことがあります。
 モンゴル帝国は、それぞれの地域の宗教はそのまま認めたんだ、その点がユニーク。だから世界最大になったとも言えそうですよ。
 東の端っこまで征服して、次はどこだと思う。
 「日本がある!」
 そうなんだ、朝鮮半島には高麗という国があって、モンゴルの支配地域なので、船をつくれと命令されて、たくさんの船を作ったんだ。その船に高麗の兵士とモンゴルの騎馬兵を載せて、九州へ攻めてきた。2回もだよ。いまから800年も前のことだ。夏に来たので浜は暑いし、やぶ蚊が多いので、騎馬兵は夜になると船に乗って沖合で休憩していた。そこへ暴風雨や台風が来て、ほとんどの船が沈んで、モンゴルは日本をあきらめた。15万人もの兵士が来たんだ。世界史上最大の動員数だった。
 モンゴル帝国とたたかって勝った国は珍しいんだ。日本の数十倍もあるような巨大な帝国だったからね。中学2年生になったら、社会科の科目で勉強することになるよ。1274年の文永の役と1281年の弘安の役というんだ。両方合わせて「元寇」。

 「ウズベキスタンの近くに、カスピ海という表示があると思うんだが...<カスピ海ヨーグルト>って聞いたことある?」
 「あ~る。あ、あったよ!」
 「日本と比べて見な、大きいだろう?その湖は水位が上がったり下がったりして大きくなったり小さくなったりしている。130もの河川が流入しているが、出ていく川はないんだ。現在の水位は海抜-29mだから、海よりも30mほど下になる。カスピ海はキャビアの産地だよ、チョウザメが獲れるんだ。イクラの醤油漬けは好きだったね、キャビアは食べたことないだろうけど、やはり魚の卵だ。」
 「食べてみたい!」
 「イクラの醤油漬けの方が美味しいよ、そのうちキャビアも食べてみるか。」

 「もっと左側(西)の方へいくと、イスラエルという国に「死海」というのがある。湖なんだが、海抜-900mというとっても低いところにあるんだ。水分が蒸発して塩分濃度が濃いので楽ちんに浮かぶんだ。この湖はどんどん小さくなっているよ。」
 「どうして?」
 「この川に流れ込むのは国際河川で、途中の数か国が農業や工業や都市の水道のために取水するから、死海へ着く前にほとんど水がなくなってしまうんだ。それで水位が下がり、湖面が小さくなっていっている。いずれなくなると思うよ。グーグルアースで調べたら、何という川がどの国を流れてくるのかわかるよ。」
 「見てみる」

 地理と歴史と政治経済は一つなんだ。歴史的背景をもたぬ地名や場所はないし、いろんな出来事が起きていまがあります。だから地理と歴史と政治経済は一つなんです。
 社会科が苦手だという子どもに理由を聞いてみると、「社会科は勉強の仕方がわからない」というケースが案外多いのです。英語の単語のように地名を暗記するとか、歴史上の出来事を年代と人物と出来事の3点セットで暗記するというような勉強の仕方をしていることが多いようですね。
 これだけではつまらないから、成績もなかなか上がらない。楽しくないことは長続きしません。
 それとはちがって、好奇心から自分でどんどん調べるという勉強スタイルがあります。パソコンやスマホそしてインターネットがあれば、図書館一つ分くらいの情報が引き出せるから、やってみたらいい。「サマルカンド」というキーワードたった一つですらいろんなことがわかります。地理上の位置、シルクロードとの関係、宗教や風俗、教育、文化、日本とのかかわりはどんなことがあるのか、いま現在どうなっているのか、隣の国はどうなっているのか、大きな川は何があるのか、どこの海に接しているのか、...なんてね。
 好奇心に任せて自分で調べているうちにいろんなことのつながりが見えてくる、それは愉しい遊びだ。たのしい遊びと勉強の間には遮(さえぎ)るものなんてなんにもない、遊びと勉強は本来一緒のものだからね。

 わたしは小4の時から北海道新聞のコラム「卓上四季」と「社説」欄を辞書を引きながら読み始めて、3か月もしたら政治経済欄も読みふけっていた。当時の新聞には「ルビ」が振ってあったので、出てくる漢字は小学生でも読めたんだ。だから、中学生になってからは社会科が面白くてしようがなかった。柏原栄先生の歴史の授業はとっても愉しかった。高校生になってから始めた公認会計士2次試験科目の「経済学」の勉強も愉しかった。アホですから、面白いだけで、高校生の時にケインズとマルクス『資本論』の勉強してました。

 学校で配布しているパソコンには出てくる漢字にルビを振ってくれる機能が右上のところにあります。それを利用して、ニュースを見たらいい。わからない言葉はすぐに検索したらいい。いい時代になったね。

 社会科が大好きという子供が何人か増えたらうれしい。

<余談-1:異分野コミュニケーション>
 民間企業が必要としている人材像について、異分野の4人が対話しています。とっても面白いので興味があったらお読みください。
「#4021 異分野四人の対話」

<余談-2:読書速度>8/25朝追記
 ご近所の本好きの小学生の読書速度を計測してみました。読んでいたのは探偵ものでルビが振られた本ですから、「児童書」の分類です。空白部分が多い。50秒/2ページでしたから、200ページの本なら約83分で一冊読み終わります。夢中で読んでいるので、読んでいるときに話しかけても返事がありません、聞こえていないのです。先読み技術が身に着いたら、もっと速くなります。
 新書版の本をこれくらいの速度で読めたら、大学生でもトップレベルの学力層の読書速度です。読み方、視点、相対化の仕方を大人が指導してあげられたら、読解力も飛躍的に伸びるでしょう。学力にとって重要なのは「読み・書き・ソロバン(計算)」の三技能です。優先順位の大きい順に並んでいます。慣れてくれば、頭の中で暗算しながら以前のデータと比較して読めるようになります。「読み」には「ソロバン(計算)」力も必要なのです。


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