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#4983 身体拘束と胃管チューブ治療:切ない現実 May 29, 2023 [37. 老人介護・医療]

 高齢者終末期医療で食事が摂れなくなると、経鼻胃管チューブ経口胃管チューブの二種類がありますが、どちらも患者にとっては苦しいものです。患者は外したがります。だから、身体拘束をして手にはミトンという手袋を装着します。夏は蒸れるのでケアがたいへんです。本来は術後に食べ物断食べられないときに一時的な処置をして行われるものです。だから、それを寝たきりの高齢者に恒常的にやるのは無理があります。
*経鼻胃管チューブイラスト

 縁があって1999年から300ベッドほどの療養型病床の病院で仕事したことがありますが、夜間は病棟看護師の数が少ないので、身体拘束をゼロにはなかなかできません。かといって身体拘束を認めると、しなくてもいい患者にまで広がります。夜間は手が足りないので、看護師さんは手間のかかる患者の身体拘束をしたがるのです。人材は玉石混交ですから、なかには規定時間を超えて仮眠の時間を長くとりたい、楽をしたいと思う人がいます。
 「縛らない看護」を口酸っぱく言い続けて、総婦長はそれとなく各病棟を時々見回っていました。それぞれの病棟には一人ずつ婦長がいますが、ああ、いまは「師長」と言います、手っ取り早く身体拘束をしたがる看護師さんがたまにいましたから。深夜勤務の看護師さんの中には、身体拘束をしないと朝まで忙しい思いをするので、薬で抑制や物理的な身体拘束をしたがる人がいました。深夜は人数が少ないので、仕事がたいへんなことは事実です。300ベッド弱だと看護師さんの数も多いので、ピンからキリまでいるんです。だから、注意していないと危ない。病院として管理責任が問われます。

 わたしは病棟を巡回するわけにはいかないので、総婦長や各病棟の婦長や看護師さんたちとは機会を作ってコミュニケーションするようにしていました。いろんなルートで情報をインプットしておかないと適正な判断ができません。理事長のターミナルケアに対する方針ははっきりしてました。「苦しくない、痛くない、怖くない」、これら三つ、このガイドラインに反する延命治療はなるべく避けるというのが、理事長の運営方針でした。
 胃婁や経鼻胃管栄養補給や経口胃管栄養補給は患者には苦痛を与えます。終末期に、死ぬまでこれを続けることは患者を苦しめるだけです。点滴も腎機能が弱ると体がパンパンに脹れてきます。そうするともう数日しか持ちません。そういう事態に至ったら、点滴を外してあげたほうがいい。でも、「尊厳死宣言書」のようなものがないと、そうもいかないのです。身体にはもう水分が入って行かないほど水分過剰で腫れあがっているのに、点滴指示が担当医からだされます。腎機能が停止すればおしっこが出なくなります。

 点滴では間に合わなくなって、経管栄養処置をするかどうかは、患者や家族の意思が大事です。だから、「尊厳死宣言書」を元気なうちに書いておいて、家族に預けておくことが大切なのです。在宅介護の場合は無用な司法解剖を避けるためにも必要です。もちろん、主治医に相談しておくことも。主治医の死亡診断書が必要になりますから。

 ターミナルケアをしている看護師さんたちには、せつない思いを抱えながら仕事している人たちがいます。慣れて感覚がマヒしてしまって、効率が最優先の人ももちろんいます。身体拘束すれば事故は防げますが、患者にとっては苦痛以外の何物でもありません。介護師さん、看護師さん、患者、その家族、そして担当医、これらの人が患者の意思に沿ったターミナルケアをするためには、関係者間での、コミュニケーションも大切ですね。どうすれば一番いいのかはわかりません。皆さん悩みながら仕事をし、患者はケアを受けています。
 今朝5/29アップされたばかりのホットな記事、ターミナルケアを担当している看護師さんお二人の対話記事を紹介します。

「現場看護師が悩む延命治療の選択」

*「#4976 尊厳死宣言書の具体例」

<余談:選択肢>
 私自身は自分で食事をとれなくなったときには、そのまま枯れるように死にたいと思っていますので、経鼻胃管チューブや経口胃管チューブ、胃婁での延命治療は願い下げです。
 しかし、そうしてもらうというのも選択肢ですから、ご自分でよくお考えになってください。
 家族の気持ちもありますから、元気なうちに、どういう終末期医療を望むのか、つまりはどういう死に方が望みなのか、具体的によくよく話し合っておきましょう。


 療養型病床への病棟建て替えを頼まれて仕事していた時、この本使っていました。総婦長おススメの本です。病院の運営管理も仕事の範囲でしたので。話を聞くには、こちらもちゃんと本は読まなければ、話の内容がよく理解できないですからね。K理事長、「俺の入る病室造っておいてくれ」そう言ってました。ご要望通りに特別室、造りました。初期の認知症が始まっていることを自覚なさっていました。長年、老人医療にかかわって来てましたから、次の自分がどうなるのかはっきりわかるので、記憶も思考も、そして人格が崩壊していくのが怖かったのだろうと思います。でも、自然の流れですから、それもおおらかに受け入れたらいいだけです。何人も避けられぬ「モノの道理」なのです。

縛らない看護

縛らない看護

  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 1999/09/17
  • メディア: 単行本


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