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#4922 日銀の国債買い入れ最高額を記録:1月23.6兆円 Feb. 1, 2023 [95.増え続ける国債残高]

 日銀の1月の国債買い入れ額が23.6兆円に達した。史上最高額である。金利を低く抑えて円安誘導するためにこんなことを何年も続けている。おかげでモノの値上がりが続いている。北海道ではオール電化住宅の電気料金が10万円/月を超える家庭が増えている。テレビの報道では13万円なんて家もある。来年はもう払いきれないと悲鳴が上がっている。6月に北電はさらに3割アップする予定になっているから、13万円/月支払っている家は、来年の冬は17万円/月になる。

 日銀が保有している国債残高は、日銀公表データをEXCELで集計したら、1/20時点で560.7兆円である。政府発行国債残高の50%を超えてしまっている。
 日銀が買い入れないと、長期金利が暴騰する。暴騰すれば、ヘッジファンドは円先物売りを浴びせて、巨額の利益を手にすることになるだろう。日銀に国債の実質評価損が数十兆円単位で発生する。以前にシミュレーションしたことがあった。

 1月のようなペースで、国債買い入れを続けたら、年額で230兆円になり、日銀の保有額は760兆円にもなる。政府発行国債残高の7割以上を日銀が保有するような事態になる。3月末に国債発行残高は1026兆円になる予定だ。
 ちなみに昨年、日銀が買い入れた国債は111兆円である。2倍のペースになっているのは、追い込まれている証拠である。
 #4905で、10年物金利が5%、国債の平均残年数を12年、保有額を564兆円としたときに、日銀の実質評価損がどれほど生ずるのか計算した。249兆円である。計算式は#4905をみてもらいたい。

 いずれ買い支えられなくなるから、金利は暴騰する。日銀保有国債はいずれ市場で売却しなければならないから、それも金利急騰の原因になる。
 金利が上がれば、円高になるのが普通の状態のときだが、円への不信任となれば円は暴落することになる。どっちへころぶはわけがわからないところが異常気象によく似ている。誰も確かなことなんて予測できないのである。高金利で政府が国債発行ができなくなれば、財政破綻となる。
 何が起きるかわたしにもまったく予測がつかない。

<余談:円安の影響>
 ベトナム人の技能実習生が日本に見切りをつけだしている。円安で、ドルベースでの収入が激減したからだ。介護や農業などで人手不足になりつつあるその一方で、介護や看護、職人(例えば寿司)仕事などの分野で、日本人が海外へ稼ぎに出ていく人が増えている。例えば看護師では、フルに働くと月収80万円になり、毎月50万円貯金できると今日の7時半からのNHK 番組「クローズアップ現代:安い日本 若者が海外へ出稼ぎへ」で看護師の女性が語っていた。ITの先端技術者が法外な高給で海外へ引き抜かれると富士通の人事担当者。年収3000万円での引き抜きに、上司は部下を慰留できないとぼやいているようだ。日本の人事制度が国際基準に合わなくなって、先端の技術者が日本企業から抜けていく。もちろん、技術水準の維持に影響が出る。

 わたしは1984年に転職する際にリクルート社を利用。したが、SPIテストで最高ランクの判定で、高収入のファイルがオープンになった。職務経歴もSPI偏差値と併せて評価されていた。
 斡旋された会社の中に外資が1社あり、経理課長職で年収800万円の提示だった。半導体製造企業のフェアチャイルドジャパンだった。他にプレジデント社が同じファイルに入っていた。
 1984年の大卒初任給は13.5万円である。2022年は21.6万円だから、1.6倍すると、フェアチャイルド・ジャパン社は現在価値に換算すると年収1280万円の提示だった。そちらにはいかずに、成長率の高い高収益企業である一番提示額の低い臨床検査最大手のSRLを選んだ。東証2部への上場を目指しており、仕事が面白そうだったからだ。転職早々、予算編成と予算管理、そして経営統合システム開発を担当している。期待通りの面白い仕事だった。

 優秀な者は実力が年収と釣り合わぬ日本企業で働く必要はない、そう判断する若者が増えているのだろう。寂しくもあるが、それがグローバル時代の常識的な選択なのだろう。

 日本企業が変われるとすれば、難関大学出身者の優遇をやめることだ。問題を見つけそれを解決する、そういう人材が企業には必要だが、受験勉強は正解のある問題を早く解くスキルを身に着けるだけで、日本企業が必要な人材像から最も遠い。受験エリートになればなるほど、民間企業が必要としている人材像から乖離していくのである。思考の鋳型が、9年間の受験勉強で出来上がってしまう。それは、正解のある問題を速く解けるというだけのこと。民間企業が必要としているのは、自ら問題を見つけ、分析し、解決するための長期戦略を立てて、それを実行できる者である

2/5追記
 債券トレーダーの仕事をしている専門家が投稿してくれてます。本欄より面白い。長い対話になっていますが、とっても楽しいので、皆様におすそ分けを...。
 金融関係、通貨、貨幣、企業経営、外国為替、経済学などに興味のある人は、「投稿欄」をご覧ください。債券トレーディングの分野に疎いわたしは、とっても勉強になっています。必要な用語は解説サイトのアドレスを貼り付けますので、一緒に勉強しましょう、いろんな角度から問題を眺めるのは無条件にいいことです。


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tsuguo-kodera

 相変わらず意気軒高の御様子、感心します。
 さて私は何も期待せず仏様のお呼びを待っています。ついでに友人の本作りに助力しています。私の出版、非常勤、会社経験の集大成の筋書きに似ているからです。同じような経験をした人なので似ているのは当然かも。
 この本が出来たら、不登校児の多い学校でICT教育の教科書に売り込みます。めくらへびに怖じずでめったやたらと売り込みます。多分来年度からです。
 過去の私の本より優れた本ですが、売り先が不明なのが玉にキズ。でもボケ防止になり、友人の支援にもなります。こうご期待。できた暁には有効活用をお願いします。(笑)
by tsuguo-kodera (2023-02-02 11:58) 

ebisu

koderaさん
本づくりをサポートしているのですか。
できあがったらお知らせください。楽しみにしています。

ところでわたしは午前中は体を温めながらじっと横になっています。胃と胆嚢がないと午前中は絶不調なのです。(笑)
昼を過ぎると体調がよくなります。
引っ越してきて2か月半ほどになるので、最近ようやくペースがつかめるようになってきました。

あと2年ほど、英作文のメール配信だけ継続します。
中高生を応援するのは愉しい。

ときどき孫と一緒に本を読んで大きな声で笑っています。
早口言葉が愉しい。
3年もしたら、枕草子や万葉集を一緒に読めたらいい。付き合わされる孫はいい迷惑かもしれません。

寿命は天任せ。準備はスキルス胃癌を患ったときに済ませたので。

ああ、消化器内科の主治医が決まってホッとしています。
歯の方はトラブルが多くて、毎週治療に通っている感じです。ガタが来ていて壊れることが多いので。仮歯でとりあえず間に合わせてくれるので、食事ができます。ありがたい。

歳をとるということは身体がポンコツになることなのですね。だましだまし、暮らしてます。
by ebisu (2023-02-02 23:02) 

Cassandra

>日銀保有国債はいずれ市場で売却しなければならないから、それも金利急騰の原因になる。

市場売却ではなく満期償還ではないのですか?満期まで持てばローリングイールド効果でデュレーションが短くなればなるほど金利は低下すると思いますが。。。
by Cassandra (2023-02-03 21:30) 

ebisu

既購入分だけの国債なら、仰る通り、期間がどんどん短くなりますから金利が低下するという効果があるでしょうが、日銀は先月23.6兆円も購入してます。史上最高額を買い入れています。購入はストップしていません、それどころか、購入量が増えています。
だから、議論の土台がちがっているようにわたしには感じられます。
もうひとつ、日銀が国債を買い続けて、満期まで保有し続けるというのは、国債市場をゆがんだものにしています。
いつまでも財政ファイナンスを続けられないと思いますよ。
いずれかの時点で買い入れを中止するか、いままで買い入れたものを売却せざるを得なくなる可能性があります。そのときには金利を上げなければ売却できません。
金利が上昇してきたら、国債は実質的な評価損が出ます。
売らずに保有し続けたら、巨額評価損が出て日銀が実質経営破綻になりかねないと危惧しています。

「ロールダウン(ローリング)効果入門 ―日本国債におけるキャリー・ロールダウンについて―」
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202105/202105h.html
by ebisu (2023-02-03 22:52) 

Cassandra(しがない債券トレーダー)

レスポンスありがとうございます。

国債市場の歪みは仰るとおり同感です。YCCは持続不可能なモデルだと思います。円金利スワップレートが市場実態を現すとすると、YCC撤廃で長期金利は円OIS10年物の現行水準で0.75〜0.8%くらいまでは上昇するでしょうね。それ以上はオーバーシュートであり得るかもしれませんが、日本の潜在成長率、自然利子率を考えると1%、2%まで上昇し続けるというのはデフレからの完全脱却とともに期待インフレ率が恒常的に前年対比で上昇し続けるサイクルが必要でしょう。

一方、日銀の債務超過は金利上昇の材料にはならないと思います。まず日銀のバランスシートの構造として、金利のない短期負債(国内銀行が保有する準備預金)で長期国債を保有しているので、短期金利が上昇しない限りは問題にはならないからです。短期金利は政策金利(無担保コールレート)でコントロールできるため、イールドカーブの短期ゾーンを持ち上げるか否かは日銀の意志次第です。

日銀が現実に赤字に陥り、債務超過となるシナリオとしては、政策変更で短期金利が上昇して、準備預金を銀行が引き出そうとするケースでしょうか。

準備預金を引き出されまいと日銀が当座預金の付利を引き上げて、長期国債との逆ザヤが発生すると恒常的な赤字構造になるため、債務超過になる可能性が高まります。ただし、日銀の自己資本から算出すると、マイナス金利政策を解除した上で、日銀当座預金の付利を2.6%までに引き上げてようやく債務超過になるレベルなので、それは現実的ではないでしょう。

最悪、債務超過に陥ったとしても預金準備率の引き上げによる当座預金の流出阻止や日銀が増資すれば債務超過そのものは解消できます(政府が国債を発行して増資の引き受け手となる)。

現実的には日銀の評価損は時価評価されないので、それを前提に市場参加者(債券トレーダー)はJGBの売買をしています。ようは、市場参加者の材料となり得るのかという視点が最重要で、国内金融機関を主体とする市場参加者はもちろん、海外勢、スペキュレーター含めて日銀の評価損は全く材料にしていませんし、これからも問題にはしないでしょう。

材料とするなら、政府の借金が官民合わせた国富約4000兆円を超えてきたときに最大の危機が訪れると私は考えています。
by Cassandra(しがない債券トレーダー) (2023-02-04 00:35) 

Cassandra(しがない債券トレーダー)

それから、既発債のロール効果については、日本のようなほぼ順イールド状態であれば購入した当日からデュレーションの短期が進み始めますので、購入量の多寡は関係ないと思います。

むしろ問題なのは、市場流動性の枯渇でしょうか。

例えば、先月の20年債入札では、共担オペの拡充効果もあり、かなりの強めの入札結果だったことをきっかけに、先物でショートポジションを作っていたスペキュレーターが、現物の手当ができずに強烈なショートカバーに転じてベリーゾーンから長期ゾーンにかけて急激な金利低下が起きました。これも市場流動性の問題のひとつの現象でしょうね。

いずれにせよ、市場参加者は禿鷹のように市場のウィークポイントには徹底的に食いつきますから、逆に金利を動かす主体、マーケットメイカー(市場の強者)は誰かをイメージすると面白いと思います。論理、理論で市場は動かないというところがマーケットのリアルですね。

by Cassandra(しがない債券トレーダー) (2023-02-04 00:59) 

Cassandra(しがない債券トレーダー)

立て続けで申し訳ありません。

日銀保有国債の中途売却についてですが、日銀は原則満期保有目的で保有しているので、市場で売却することはありません。簿価会計なので、そもそも時価で見たら云々という空論自体が市場参加者の材料にならないのです。

ちなみに釈迦に説法かもしれませんが、上場企業や金融機関も満期保有目的区分で購入すると、満期まで原則持ち続け、時価評価の必要はなくなります(償却原価法での会計処理)。

どうしても満期保有目的区分債券を償還期限前に市場で売却したい場合は、売却年度から2事業年度は満期保有目的区分での保有は不可能になりますし、売却しなかった満期保有目的区分債券も売買目的区分またはその他目的区分に振り替え、時価にサラサれることになります。加えて2事業年度経過したとしても、会計監査人から意思と能力の有無について相当な折衝が必要になります。

よって、満期保有目的区分債券を償還期限前に売却することはペナルティを超える相当なメリットがなければ通常は行いませんし、ましてや日銀が償還期限前に売却する合理的理由はないと思うのです。

by Cassandra(しがない債券トレーダー) (2023-02-04 01:35) 

ebisu

債券トレーダーでしたか、専門家ですね、わたしよりずっと詳しい。(笑)
勉強になります。
財務省のサイトでも、金利上昇期待局面ではイールドカーブはないと書いてありましたね。あたりまえのことです。

債券トレーダーさんは最後のところで面白いことを書いています。
「ましてや日銀が償還期限前に売却する合理的理由はないと思うのです」

日銀が購入を停止せざるを得ないような事態の発生というのはありませんか?合理的であるか不合理であるかを問いません。

1月のペースで1年間回続けたら、270兆円日銀保有の国債残高が今年度末に増えます。そんなペースで買えますか?
債券トレーダさんは不可能だと思いませんか?

日銀が国債購入を縮小したり、停止したら、長期金利は暴騰しませんか?市場が正常に機能し始めたら金利は米国のそれに近づいていくでしょう。

昨日の日本の10年物国債の金利は0.480%、米国財務省証券は3.538%です。

会計上時価評価はする必要がないので、満期まで保有していれば、評価損の発生はないというのは、仰る通りですが、そこにも落とし穴があります。

実質的には発生しています。海外の投資機関や金融機関は、実質評価損を計算して動きます。
日本で会計制度上、時価評価による評価損を計上しなくていいとしていても、海外の金融機関がどのように評価するのかは関係がないのです。
金利上昇が避けられないとなれば、先物取引で一気に売り浴びせますよ。日銀は買い支えられません。

by ebisu (2023-02-04 08:59) 

ebisu

日銀の貸借対照表(令和3年度末)を紹介して、データを整理しておきます。

総資産額736.2兆円
純資産額47.0兆円
自己資本比率9.29%です。

データは日銀の次のサイトから拾っています。
https://www.boj.or.jp/about/account/zai2205a.htm

日銀の3月末の国債保有高が600兆円、平均残存期間を7年、金利を1.5%を仮定すると、評価損は次の式で計算できる。

600兆円×(1-1.015^7)=65.9兆円

金利が1.5%になったら、実質評価損が自己資本額を上回ってしまう。

実際にどうなるかは誰にもわからぬ、しかし、円先物に投げ売りが殺到する事態が起きかねない。そのときは円が国際通貨から脱落する。
by ebisu (2023-02-04 12:36) 

ebisu

わたしが、一部上場企業の財務担当役員や代表取締役だったら、預金の大半を外貨に切り換えるように指示します。
さすがに、円先物を売れとは言わない。
一部上場企業の3割でも、預金を外貨に切り換えたら、為替市場はどうなるでしょう?
先物取引でぼろ儲けするのは浮利を追うことに他なりませんから、それは日本の商道徳に合わない、上場企業のほとんどはそんなことはしないでしょう。でも、円預金をドル預金へ切り換える企業は現れます。仕事の責任上、最低限のリスクヘッジをしておかないと、財務担当取締役は責任を問われるからです。「善管注意義務違反」で株主代表訴訟の対象になりかねません。

海外のヘッジファンドは判断が違います。弱ったと見たら、円先物取引で百兆円を超える利益を稼ぐチャンスですから、やりますよ。チャンスを見逃すはずがありません。

日銀は国債を買い入れ続け、保有し続ければ、巨額の評価損をいずれ出してしまいます。
保有国債を市場で売りに出せば、金利が暴騰します。
もうにっちもさっちもいかない。退くに退けず、進に進めず、立ち往生したまま、破綻を迎えそうです。
by ebisu (2023-02-04 12:48) 

Cassandra(しがない債券トレーダー)

>日銀が購入を停止せざるを得ないような事態の発生というのはありませんか?合理的であるか不合理であるかを問いません。

ebisu様は具体的にどのようなケースを想定されますか?

>1月のペースで1年間回続けたら、270兆円日銀保有の国債残高が今年度末に増えます。そんなペースで買えますか?

はい、需給が成立する限り日銀は買えます。

>わたしが、一部上場企業の財務担当役員や代表取締役だったら、預金の大半を外貨に切り換えるように指示します。

これは事業の性質によって異なるでしょう。貿易主体であれば当然為替予約等のヘッジは必須ですし、上場企業でなくとも商社の皆さんは当たり前にしています。しかし、円預金の大半を外貨に切り替えるというのは過大なリスクテイクです。現在は地政学リスクに関するボラティリティが高い時代ですし、足元ではドル、ユーロもインフレ抑止政策によるターミナルレートが見えてきた状況で今後は日本との金利差も縮小していきます(=円高基調へ)。

ちなみにebisu様でしたら為替変動リスクは具体的にどのようにヘッジしますか?日米金利差とベーシススワップで算出されるヘッジコストは足元で(1〜3ヶ月)年率5%と相当な高水準ですが、ヘッジコストはどう考えますか?また、為替リスクを取るときには通常リスク許容額を資本配賦し、経営計画に織り込むかと思いますが、リスクアペタイトはどのように設定しますか?

>日銀が国債購入を縮小したり、停止したら、長期金利は暴騰しませんか?

現在でも日銀の買いが薄い年限(とくに30年、40年といったロングエンド)の債券は金利上昇(ツイストスティープニング)しているのでこれは同意いたします。ただし「暴騰」という意味は曖昧で、どの程度の期間、どのくらいの変動(上限値)を見るのかの見積もりが重要です(でなければ、上記のヘッジ論も曖昧になります)。

>市場が正常に機能し始めたら金利は米国のそれに近づいていくでしょう。

ここは論旨が良くわかりません。米国はPCEコアデフレーターを最重要指標としてFEDがFFレートの水準を判断しています。米国の中立金利は2.5%程度ですが、現在はPCEコアが4.4%。先日のFOMCでの利上げでFFは4.5%を超えて、ようやくディスインフレとなりましたが、日米の経済構造を無視して米国に近づくというのは少し乱暴な論だと思います。

>実質的には発生しています。海外の投資機関や金融機関は、実質評価損を計算して動きます。
日本で会計制度上、時価評価による評価損を計上しなくていいとしていても、海外の金融機関がどのように評価するのかは関係がないのです。
>海外のヘッジファンドは判断が違います。弱ったと見たら、円先物取引で百兆円を超える利益を稼ぐチャンスですから、やりますよ。チャンスを見逃すはずがありません。

海外金融機関(私もその筋ですが)、ヘッジファンド、CTAや年金ファンドなどとは仕事柄日常対話していますが、日銀の実質評価損を計算して投資判断をするというプレイヤーは聞いたことがありませんし、最近日経新聞の記事でもこの手のセンセーショナルな見出しが踊っていますが、市場関係者のほとんどは日銀の簿価主義を無視した意味のない内容と判断しています。実質であろうがなかろうが、実際にマーケットを動かしているプレイヤーが材料視しなければ空論に終わります。

一方で、弱いもの(というよりも金の臭いのするところ)にスペキュレーターが徹底的に群がるのは同感です。では、日銀は弱者か?というと、明らかに強者です。現在日銀は債券先物市場に介入していないだけで、スペキュレーターの多くは資本が少なくても少額で大きなレバレッジでハイリターンが狙える市場に関心を寄せているだけです。実際に、先月の日銀金融政策決定会合でスワップ版YCCと呼ばれる共担オペの拡充が決まると、売り建てていた海外ヘッジファンドの多くは完全に狼狽して大きな損失を抱えて市場から退場しました。ショートにかけている債先プレイヤーは日銀が債先市場に介入するという情報を得ただけでポジションを即座にアンワインドするでしょう。世界最大の機関投資家はGPIFですが、そのGPIFでも運用資金は200兆円程度です。中銀はマネーの規模が違いすぎます。

>日銀は国債を買い入れ続け、保有し続ければ、巨額の評価損をいずれ出してしまいます。
保有国債を市場で売りに出せば、金利が暴騰します。

ここがebisu様と意見の大きな不一致のあるところでしょうか。評価損の有無は市場参加者は全く気にしていないというのが現実です。なぜなら簿価主義だから。この一言に尽きるのです。そして、満期まで持つ保有国債を日銀が市場で売却するということ自体があり得ない論です。時価に晒されない中、満期まで保有していれば額面で戻ってきますし、利息配当金も入ります。バランスする当座預金付利がほぼゼロコストの中で、売却する理由がありません。

ちなみに私は日銀政策の擁護論者ではありません。現行金融政策、とくにYCCは豪州では出口戦略に失敗しましたし、マイナス金利政策の質的効果も完全に無くなっています。そもそも、マネタリーベースは異次元で増えても、マネーストックが一向に増えない時点で金融政策の限界に政府と中銀は気づき、政策修正を図るべきでした。経済政策、産業政策の無策がこの国を衰退に向かわせています。

by Cassandra(しがない債券トレーダー) (2023-02-04 22:42) 

ebisu

日銀が国債をこんな規模で買い入れ続けているのは日銀総裁が黒田氏だからでしょう。前日銀総裁の白川氏だったら、こんな規模での国債購入続行はしないでしょう。
つまり日銀総裁が替われば、そうした政策も変わる可能性があります。

日銀が国債購入規模を縮小したり、停止したら、国債の金利を上げざるを得ません。政府は赤字財政を続けざるを得ませんから、金利を上げて売るしかないのです。

FB上で専門家の方と議論したことがあるのですが、実質評価損を計算して判断するとおしゃってました。取得原価主義は日本の会計制度でして、国際会計基準では実質で見るとも仰ってました。
お名前を忘れましたが、昨年本も出されてましたね。米国大手証券に勤務経験のある方で、国会議員もなさっていた。たぶん、お名前ご存じでしょう。

債券トレーダーさんは、政府が赤字国債を発行すれば全部日銀が買い取るという前提のようです。そういう前提自体が、わたしには異常に見えます。異常なことを続けるとどこかで破綻が来ます。
日銀の独立性がまったく失われているように見えます。
政府が赤字国債を大量に発行し続け、それを日銀が引き受け続ける、まるで戦時経済です。

このままでは、1946年2月のような預金封鎖が起きると思っています。

立ち位置の違いも、意見の相違に影響しているようです。
わたしは予算の管理も仕事でしてましたので、収入の1.7倍もの予算を継続できるとは思えないのです。国債償還や、新規国債発行に40億円も予算を組むこと自体がとても異常なことに感じます。いずれ、予算が組めなくなります。
財務省で予算をつかさどっている人たちは、破綻前提で、そのときの手順を具体的に検討していて当然です。

日銀が財政ファイナンスをやめない、出口戦略がいつまでたっても明らかにならないのはもう手段がないから。事態は破綻に向かっているということ。

假定の話です、日銀が国債の購入をやめたら、金利がどれくらいの水準なら市場で売れるのでしょう?
45年ほど前は日米の金利差は2%ほどありました。米国の方が常に高かった。
日銀が国債の購入を停止したら、金利は米国のそれを追い抜くかもしれません。実際にそうした事態が起きないとわかりません。

日銀の国債購入はモノがある限り日銀は買い続けるというのが債権トレーダさんのご意見。
わたしはそれは異常で、いずれ縮小あるいは停止される事態が起きる可能性があると見ています。

円預金を外貨預金に切り換える際のリスクヘッジは、この際関係のない話です。そういうリスクのある時に外貨預金に切り換えるわけではありませんから。
平時に切り換えるのではなくて、円預金のリスクヘッジが必要になったときに外貨預金へ切り替えを行う。預金のどれくらいを外貨預金にするかは財務担当取締役の判断です。

貿易会社では、輸入代金の決済がドル決済が多いので、先物予約してヘッジするのが普通ですね。
1979年頃に、仕入レートと販売定価算出レートをリンクさせて、為替予約を組み合わせて、差損のでないコンピュータシステムを設計したことがあります。
円相場に異常が起きたら、海外展開していない製造業も、ドル買いして外貨預金をもつことがあり得ると思っています。

日本経済が、過去30年間成長戦略が描けないのは、団塊世代が引退して、パワーが足りなくなっているからかもしれません。これから30年間も衰退が続くと考えたら、長期的には円安傾向がとめどなく続くことになりそうです。
使わない預金の半分くらいは外貨で持っていり、金で保有したりした方がいい。日本の企業は内部留保が多いですから。

他にも論点がいくつかありましたので、それはまた後でコメントしたいと思います。
やってきた仕事の違いが、意見に出て、愉しい気がしています。
債券トレーダーさんとお話したことはないので、貴重な機会です。ありがとうございます。

あ、これは初耳でした。ネットでまったく反対のご意見の人の情報をうのみしていました。

「実際に、先月の日銀金融政策決定会合でスワップ版YCCと呼ばれる共担オペの拡充が決まると、売り建てていた海外ヘッジファンドの多くは完全に狼狽して大きな損失を抱えて市場から退場しました。」

まったく逆で、ヘッジファンドが大もうけしたとありました。尻尾巻いて退場したのですか。
面白そうだったので、コピペして保管してますので、あとでアップします。債券トレーダーさんの反論が聴きたくなりました。
by ebisu (2023-02-05 01:19) 

Cassandra(しがない債券トレーダー)

おはようございます。意見が対立する方との議論は良い思考トレーニングになって有り難いです。


>つまり日銀総裁が替われば、そうした政策も変わる可能性があります。

これは半分同意、半分反対です。日銀は独立性ありますが、白川総裁のときに政府とアコードを結びました。以降、金融政策は政府の意向が強く反映されるようになっています。金融緩和の出口は、物価の安定的上昇と賃金上昇の好循環と言っているわけです。オーバーシュートコミットメントと日銀は掲げていますが、要するに景気が相当な期間継続して浮揚するまでは政府も日銀も金融緩和は続ける=イールドカーブを低位で抑え続けるという訳です。オーバーシュートコミットメントが達成できない限り、特に景気に直接打撃の出る短期金利は誰が総裁になろうと上げられないと私は考えます(住宅ローンへの影響が大きすぎるので、国民の多くは賃金上昇ない中での利上げは許さないでしょう)。

>FB上で専門家の方と議論したことがあるのですが、実質評価損を計算して判断するとおしゃってました。取得原価主義は日本の会計制度でして、国際会計基準では実質で見るとも仰ってました。

恐らくF先生のことかと思います。彼は20年間同じ主張をされていますが、私は彼の主張には与しません。データとファクトに基づかない主張が多く、世論の不安を煽り、円ショートポジションで儲けようとしているのではないかと邪推してしまうような主張(というよりもポジショントークか)をずっとされている印象です。冷静にデータとファクトを用いて彼の主張に反論しているブログをリンクしておきます。

https://hagitaka.work/2022/03/10/
https://hagitaka.work/2022/12/25/

>収入の1.7倍もの予算を継続できるとは思えないのです。

一つの論として、統合政府論がありますが、私は政府債務貨幣論というJGBアナリストの森田長太郎さんの主張を支持します。森田さんが著された「政府債務」という良書がありますので、機会があればご一読をお薦めします。

>長期的には円安傾向がとめどなく続くことになりそうです。

前述のF先生はドル円レート500円を予想されていますが、私は円安がとめどなく続くということは非現実的だと思います。為替は通貨ペアで見なければならないので、円安が加速すればその反対にいる(ここでは米国とします)米国では過去のプラザ合意然り、ドル高是正に動くでしょう。実際、昨年10月にドル円が152円まで上昇した際には、日本の単独介入に理解を示しました。また、貿易と為替変動の関係ではJカーブ効果もあります。

>まったく逆で、ヘッジファンドが大もうけしたとありました。

12月のYCCレンジワイド化の時のショート勢の話しでしょうね。10年債のYCC上限0.25%近傍で債先を売り建てていた筋は12月決定会合で0.45%近傍まで一気に上昇しましたから、そこで買い戻した連中は当然利益を上げました。一方、それとは真逆の現象が1月決定会合で起きました。決定会合で現状維持が決まったあと、20年債入札の強い結果も相まって、長期金利の急低下が起こりました。YCCのさらなるレンジ拡大を期待して債先でショートしていた筋は買い戻しを加速させ、逃げ遅れた連中は相当な痛手を被っています。

当日の詳細はこちらに詳しいです。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N3431EJ
by Cassandra(しがない債券トレーダー) (2023-02-05 09:08) 

ebisu

F先生、お名前思い出しました。
嘘を築地の御門跡でしたか。(笑)

気になるところをピックアップさせてください。
政府債務貨幣論とは、政府の借金は返済の必要がないということのようですね。次の引用文はamazonの『政府債務』に載っている解説です。
----------------------------
政府債務とは「過去と未来の結節点」であるということである。政府債務が個人の借金と本質的に何も変わらないという立場をとるにせよ、政府債務は貨幣の一種である(つまり返済の必要性はない)という立場をとるにせよ、政府債務が時間と世代をまたぐ問題をはらんでいるということ自体は否定しようがないところであろう。
----------------------------

この認識は賛成です。どちらの論をとるにせよ、世代をアンタグ問題があることは、どちらに立っても認められることです。
どうやら貨幣の性格が変わったという認識のようです。公共貨幣論という新しい貨幣理論があるのですね。
1946年に財政破綻、預金封鎖が起きたのは事実でも、これからは起きない、そういう主張にも聞こえます。

政府債務と日銀の国債と相殺すれば問題ないじゃないかと主張している人たちがいます。だから、政府はいくら国債を発行してもかまわないし、日銀が財政ファイナンスをし続けても何の問題も起きないと。森田長太郎さんはそういう議論に与する人ですか?
ああ、いま検索したら、それが統合政府論というのですね。
https://diamond.jp/articles/-/119006

わたしはこの種の議論は、簿記の基礎知識のない人の議論に聞こえます。仕訳を想定すれば簡単にわかることです。

銀行から借金をしている人が、銀行と個人の家計を統合すれば、借金が消えると主張しているようなものです。親会社と子会社の関係と混同した議論です。連結決算の基本がわかっていない。議論の前提条件自体に重要な過誤があります。

日本経済の行く末も、成長路線なんてありえません。生産年齢人口が激減しているので、一人当たりGDPを維持できても、国全体では下がらざるを得ません。物価の安定的な上昇を支える賃金上昇なんて、日本経済にはとっくにないのでしょう。貿易赤字が長期的には増えていきます。だから、日銀には現実的で具体的な脱出戦略が描けない。
2011、12年頃に対ドルレートが79円、それ以降、100円を切ったことはありません。グラフを見ると長期的に上昇傾向にあるのは、経済成長が止まっただけでなく、生産年齢人口が激減しつつあるからでしょう。
https://ecodb.net/exec/trans_exchange.php?b=JPY&c1=USD&ym=Y&s=&e

極論が事態を明らかにしてくれます。政府の国債発行残高が1500兆円、日銀の国債保有額が1500兆円になっても問題ないなら、税収は要りません。
新規国債を発行して、社会福祉や防衛予算に上限なしでばらまきゃいいということになります。

そのような国の通貨を誰が信用しますか?
通貨は信用で成り立っています。その根っこが失われます。

団塊世代のわたしが小学生の高学年のころ、お袋が裏庭で何かを燃やしていました。訊いたら、軍票でした。戦地で危険を顧みず戦う兵隊さんのために買ったと言ってました。戦後しばらくは捨てきれなかったのでしょう。

政府貨幣論なんて大丈夫かなあ、というのが言葉を聞いた私の率直な感想です。

by ebisu (2023-02-05 11:38) 

ebisu

為替相場について一言。

Fさんの500円/ドルはわきに置いておいて、2011年の79円/ドルが現在130円/ドルになっています。

700万円の年収の人は2011年だと8.8万ドルになりますが、現在の為替レートでは5.3万ドル、12年間で約40%も下がっていることになります。

だからベトナム人の技能実習生たちは日本から出て他の国で働くことを考え始めているし、IT技術者は国外流出が続いて、企業の成長戦略が描けなくなっています。年収3500万円で引き抜きがあると、部下をとめられないと部長さん、これは富士通でした。
オーストラリアで働き始めた看護師さんは月収80万円、毎月50万円貯金ができるとは先週のNHKの番組で知ったことです。

賃金上昇に支えられた物価上昇なんて、ありえない幻想に見えます。ええ、日銀の出口戦略の話です。社員の給料はアップしても、追いつきません。12年間で40%も下がっていますから。
為替レートが500円/ドルでなくても、160円とか200円になっただけでも、日本経済には大ダメージというのが現実です。

日本人は最悪のケースを具体的に想定して、備えるのがとっても不得手です。言霊の国ですから、政府財政破綻、日銀破綻を想定して具体的に手が打てません。出口戦略も描けません。統合政府論なんて、簿記の基本すら無視した荒唐無稽の論が流行る。
現実を自分の目で見ないと目が覚めません。
財務省だけは破綻処理をする当事者ですから、隠密裏に準備を進めなければなりません。
by ebisu (2023-02-05 12:06) 

ebisu

リスクアペタイトという初耳の語彙が出てきたので、ネットで検索してみました。債券トレーダーさんと対話しなけりゃ知らない用語でした。(笑)

金融機関で導入されている、リスク管理ですね。一般企業は関係ないようですが、外貨預金が為替変動で被るリスクを管理する必要はあるのでしょう。同じことは円預金でもいえますがね。
1980年ころには、5ディメンション25の指標群で総合偏差値評価で長期計画、予算編成、予算管理、資金管理、経営改革のための統合システム開発などを担当してました。

輸入決済用に為替予約し、余って残る外貨預金はわずかなものでかつ一時的保有でしたから、管理不要でした。
経営に重大な影響があれば何らかの方策は考案します。高成長で利益を上げることが最大のリスクヘッジでしたね。
企業の経営管理サイドの人間の考えることはそんなことです。外貨預金のリスクは問題にならない。低成長&低収益企業はおやめになった方がいい。取れる経営政策ではありません。円預金で金を購入するのもいいかもしれません。金保管事業が有望かもしれませんね。手数料を取って、金を預かる。上場企業に営業をかけて、内部留保で、過剰な預金を金購入へ切り換えてもらう。田中金属店が保管事業と抱き合わせでやればいい。百兆円くらいすぐに売れそうです。金市場が騰貴しそう。

ところで、次のように書いてましたね。
---------------------------
(1〜3ヶ月)年率5%と相当な高水準ですが、ヘッジコストはどう考えますか?また、為替リスクを取るときには通常リスク許容額を資本配賦し、経営計画に織り込むかと思いますが、リスクアペタイトはどのように設定しますか?
----------------------------

これまでの説明で、答えになっていると思います。ヘッジはしません、リスクアペタイトは考慮しません。一般企業は金融機関ではないから義務もありません。

債券トレーダーさんは金融技術の面に焦点が絞られてしまうようですね。
今までやってきた仕事が、スタンスの違い、思考の違いを生んでいます。お陰で、わたしは金融関係の用語や技術の勉強になります。不勉強なので、いろいろ教えていただくことで、ストックが増えて愉しい。

政府統合論の荒唐無稽さは次の仕訳で明らかです。
政府と日銀の間で債権債務を相殺したら次の仕訳が日銀側で起きます。

(借方)国債放棄損失600兆円/(貸方)国債600兆円

600兆円の特別損失を計上して、日銀は540兆円の債務超過に陥ります。

政府の方は複式簿記ではありませんから、仕訳は起きませんが、民間会計基準なら、次の仕訳が起こされるでしょう。
(借方)国債債務600兆円/(貸方)受贈益600兆円

受贈益は特別利益です。

元財務省の高橋さんという方だったかな、頭はシャープなのでしょうが、複式簿記をご存じないようで、滅茶苦茶なことをおっしゃってました。「債権債務を相殺したら問題がなくなる」って。やった途端に、債務超過になるのに、複式簿記も実務も知らないであきれました。
財務省は複式簿記ではありませんから、知らなかったのでしょう。簿記2級の高校生や専門学校生に笑われる議論です。それほど、経済学者や財政学者や経済アナリストは複式簿記の基本を知らないということ、驚き桃の木山椒の木です。
by ebisu (2023-02-05 13:12) 

Cassandra(しがない債券トレーダー)

言葉足らずでした。私も統合政府論自体には懐疑的です。最近の中銀ファイナンス論の一例として挙げました(森田氏が述べている政府負債は貨幣的性質を帯びるという論は支持という立場です。)また、森田氏も統合政府について言及していますが、長期固定ファイナンスから短期変動ファイナンスへの転換の視点から、政府としての実質的なファイナンス構造について正確な議論をすべきという立場をとりつつ、MMT論についてもその功罪について冷静に述べられています(MMTや統合政府を積極支持されているという立場ではないと認識しています)。

>日本経済の行く末も、成長路線なんてありえません。生産年齢人口が激減しているので、一人当たりGDPを維持できても、国全体では下がらざるを得ません。物価の安定的な上昇を支える賃金上昇なんて、日本経済にはとっくにないのでしょう。貿易赤字が長期的には増えていきます。だから、日銀には現実的で具体的な脱出戦略が描けない

はい、国内企業の99%超を占める中小零細企業が恒常的な賃上げができるのかが大きなテーマになると思いますが、非常に困難だと思います。なんていっても、国内421万社のうち、利益欠損企業は約169万社が占める状況ですから。

仰るとおり、人口減で総体のGDPが減少していくのは自明ですので、一人あたりGDPをいかに増やしていくかが国の経済政策として重要かと思います。しかし、ある意味背伸びせず、成熟した国としてGDPランキングには執着せず、強みある分野、特徴的な領域に資源を集中させて世界になくてはならない国という地位を築いていくことが大切なのかもしれませんね。

>これまでの説明で、答えになっていると思います。ヘッジはしません、リスクアペタイトは考慮しません。一般企業は金融機関ではないから義務もありません。

リスクアペタイトについては、仰るとおり金融機関がリスクをどれだけ積極的に許容していくかという視点で取り組みが進んでいます。一方で、昨今は上場企業でもサステナビリティ等の観点から採用されている企業が増えてきたのでお聞きしました。現在はESGやSDGsの視点から義務がなくても積極的な取り組みと開示をしなければ、投資家に相手にされない、また、優秀な学生も採用できない時代に来ていますね。

例)
アサヒグループ
https://www.asahigroup-holdings.com/ir/management/risk.html
中外製薬
https://www.chugai-pharm.co.jp/sustainability/strategy/riskappetite.html


>債券トレーダーさんは金融技術の面に焦点が絞られてしまうようですね。
今までやってきた仕事が、スタンスの違い、思考の違いを生んでいます。お陰で、わたしは金融関係の用語や技術の勉強になります。不勉強なので、いろいろ教えていただくことで、ストックが増えて愉しい。

はい、金融の世界にどっぷり浸かりすぎて、思考のスタートが金融視点になってしまうのは短所かもしれません(笑)

ちなみに金投資は一理ありますね。ロシアウクライナ戦争はもとより、今後米中対立が先鋭化すると、有事の金買いが進みそうです。ただし、金は持っていても利息を生まないので、配当の出るETFや各国中銀の外貨準備として金を納めている(金価格と株価の相関係数の高い)企業への投資が良いかもしれませんね。

ebisu様は多様なご経験をされてこられたようでこちらもとても勉強になりました。明日からまたハードワークが始まりますので、また機会がありましたらお相手お願いいたします(来週は2/10に日銀総裁候補がわかりますので、マーケットも様々な思惑で動きそうです(笑))。本欄でもご紹介くださいまして有難うございました。

追記ですが、日銀だけではなく、米国FRBも時価では既に債務超過に陥っていると見られています。こちらのサイトも面白いので、お時間あれば研究材料として見てみてください。
https://freetonsha.com/2022/06/02/insolvency/
by Cassandra(しがない債券トレーダー) (2023-02-05 18:06) 

ebisu

丁寧なご挨拶、恐れ入ります。
また暇を見つけて投稿してください。

ところで一番最後にお示しのサイトをざっと見ました。三菱でFXを担当していた方のブログですね。
FRBが債務超過しているのではないかと、それでもドルの信認は崩れていないというのは、日銀の場合とケースが異なります。ドルが圧倒的に強い国際通貨だからです。変わりうるものがないから、FRBがどれほど債務超過になろうとも、ドルへの信認は揺らがないでしょう。変わりがないからだけの話です。
チリの中央銀行の話しも出てきます。チリの通貨は主要国際決済通貨ではないので、これも参考にはならないでしょう。
円は主要国際決済通貨の一つですが、変わりうる、ドルで代替できますので事情が違うと思います。

国債の償却原価法というのはそういうネーミングはなかったと思いますが、社債の発行や買い入れ処理で、60年も前からそういう処理法があたりまえでした。簿記2級の試験で頻出問題でした。
ちょっと違うのは、金利が動いたときに時価評価して、取得原価から減額表示するところ。このサイトの説明ではそうなっています。

「なお、この数値は、注釈2で「Face value of the securities.」と記載されていることから、時価ではなく簿価です。」

帳簿上の金額はすべて「簿価」ですから、評価法の相違があっても、全部「簿価」です。このかたも複式簿記の基本的な知識があやしい。「債券の表面価額」とは上乗せ処理をした後の価格という意味でしょうね。当たり前のことですが、簿記2級程度の知識がないので、こういう勘違いが起きているように見えます。

わたしには債券トレーディングに関する専門知識も経験もないので、あなたとの対話は勉強になりました。
その一方で、経験智の違い、専門分野の違いから、あなたにはない視点から問題提起はすることができたようです。
give&take、わたしは愉しんでいましたが、読んでいる読者のみなさんも愉しかったら、幸甚です。

この次の登場するときは「様」は不要に願います。「さん」でいい。お互い分野の違う者同士、利害関係も絡まぬ対等な議論ですから。
どうもありがとう。
by ebisu (2023-02-05 19:32) 

モクロー君

ご無沙汰しております。
血圧が、正常?値に戻ったようで、お元気そうで何よりです。

本コメント欄、興味深く拝読しました。

それぞれ高度な知識をお持ちの方のやりとりは、ここならではのもので勉強になります。またの意見交換が楽しみです。

私の感想ですが、
ebisuさんが、個々の行為主体に意識の重点があるのに対し、コメンターの方は行為主体のぶつかり方に重点があるような。

お二人の議論には、お互いの立脚点のズレをすり合わせていくようなものも感じられました。

専門外ですが、ついていく位はできますのでコメンターの方のまたの投稿が楽しみです。


お孫さんはどんな具合ですか?
ニヤニヤしながら読みたいので、ぜひupしてください。

by モクロー君 (2023-02-10 18:31) 

ebisu

モクロ―さんへ

今日、Yからベネッセ模試の結果票がメールで送られてきました。国語がナンバーワン。なかなか頑張っています。英語を20点も上げたら、ベストスリーです。

ところで、債券トレーダの方との対話は、専門家の視点、使う用語を吸収させてもらっています。とっても勉強になっています。
相手の意見や専門用語を吸収しながら、すり合わせていくのは愉しいものです。だからと言って、お互いに妥協はナシ、自分の視点で論を展開する。

日銀総裁は黒田さんの兄弟みたいな意見の人。出口戦略は書けないでしょう。
ブレーキかけても破滅、アクセル踏み続けても破滅、面倒くさいので思考停止しているように感じます。財務省がOK出しているのでしょうね。

孫とは本を読んで遊んでいます。よく笑ってくれます。
「読み・書き・計算」の基本三技能は面倒をみるつもりです。
記録はつけています。貴重なものになるでしょう。もう20ページを超えました。
ブログで取り上げるのは、「保護者」から止められているので、アップしません。悪しからず。
by ebisu (2023-02-10 23:30) 

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