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#4844 スクールカウンセラーという職業:聖学院大学伊藤亜矢子教授 Oct. 11, 2022 [60. 進路(進学・就職)]

 ラジオでNHKの朝の番組をまどろみながら聞いている。7時半から10分間程度、東京都の学校カウンセラー1512名へのアンケート結果を聖学院大学伊藤亜矢子教授(臨床心理士)が解説していた。
 学校カウンセラーの労働実態に関するアンケートを、学校カウンセラー全員に出し、回収率は46%で約半数。
 東京都だけで1500人も臨床心理士が学校カウンセラーとして働いていることに驚く、しかも、非正規雇用だというのですから、もっとびっくりした。
 東京都の公立学校の生徒数は
 小学校 58.7万人
 中学校 23.9万人
 高校  12.6万人
 合計  95.2万人

 この生徒数をスクールカウンセラー1512名で割ってみると、スクールカウンセラーが一人当たり627名の生徒を抱えていることになる。
 業務は、イジメや不登校や悩みの相談。1校に週1日訪れ、7.25時間分の報酬が支払われる。生徒の悩みはほとんどが放課後、部活をやっている場合はそのあとだから、6時過ぎになるケースが少なくない。内容によっては保護者と会って面談するケースもあるが、保護者が仕事が終わってからだから、やはり時間外の仕事になる。
 業務を終わると業務報告書を書いてその学校に置いていかねばならないので、時間外勤務が常態となっている。
 時間外勤務は支払われない。
 年度末近くになると、生徒や保護者から、「来年も先生にカウンセリングをお願いしたい」と言われても、担当できるかどうかはわからないので返事に困る。非正規雇用は身分が不安定なのである。生徒達から相談を受けるスクールカウンセラーが経済的に不安定では、心理的に安定した状態でいることはなかなか難しいだろう。自分が将来に深刻な経済的不安定を抱えながら、生徒の悩みを聞くのである。とっても無理がある。

 臨床心理士の資格を取得するには、診療心理学科のある大学へ進学し、さらに大学院へも行かなくてはいけない。国家試験の受験資格は臨床心理学専攻で博士前期課程修了でなければいけないからだ。臨床心理士は国家資格であり、国家試験への合格が資格取得の要件となっている。さらに条件は厳しい、5年毎の資格更新制度がある。
 一般の教員よりも資格要件が厳しいにもかかわらず、身分は非正規雇用ではかわいそうではないか。
 一人前の臨床心理士になるには10年ほどの実務が必須だ。非正規雇用のままでは、大半が辞めてしまう。

 正規雇用に切り換えるべきだと私は思う。勤務時間も実態に合わせて、午後1時から8時までとすることはできないのだろうか?このままでは生徒たちに臨床心理士になることを勧められない。非正規雇用は一般的には正規雇用の半分程度の年収にしかならない。身分が不安定で、学校カウンセラー自体がカウンセリングが必要な人がたくさん出そうだ。経済的な不安定から自殺者だって出ているだろうことは推察に難くない。もう一度書くが、一生懸命に勉強して、資格取得に必要な大学院進学までして、国家資格を取得して、このブラック勤務ではかわいそうすぎる。

 ニムオロ塾でも過去に2名が臨床心理学科へ進学したが、どちらも大学院への進学を一時期考えたが、あきらめている。訊くと三人に一人が大学院へ進学できるらしいから、ずいぶん間口は広い。高校3年生の時にイオンでアルバイトしていて元気な声で「先生!大学院へ行って、臨床心理士になるからね!」笑顔でそういってくれた生徒はもう30歳を過ぎた。そういえば、塾を開いたときにすぐ飛び込んできた生徒、懐かしい。未染色の皮のブーツをはいて教室に入ってきた大人びた中学生だった。気合が入っていたな。(笑)

(団塊世代のころの私大文系大学院は、学部生1000人に大学院進学者は2-3名だった。それぞれの学部でトップクラスの学力でなければ合格できない難関。市倉ゼミでは一つ上の先輩が2名、わたしの同期が1名、合計4名が大学院進学している、まったく異例だった。二人は哲学研究科、もう二人が経済学研究科であった。学部時代は商学部が3人、文学部哲学科が一人。商学部から経済学研究科への進学も過去に例がなかった。「市倉ゼミは一体何をやっているのか?」と驚かれた。大学院へ進学した二人の先輩は、学部のゼミに出席して一緒に議論してくれた。
 伊吹克己のみ母校に残り、専修大学哲学科の教授。戸塚茂雄先輩は青森大学元経営学部長、塚田先輩は私学振興財団の融資部長をしていた。そうか、民間企業で仕事したのはわたしだけだったか。好い同期と先輩に恵まれた。)



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tsuguo-kodera

 15年ほど前になりますが、ロスの小学校を見学しました。カウンセラーは副学長でした。仕事は生徒のカウンセリングだけ。毎日予約を受け付け相談していました。立派な個室でした。
 夕方から従弟の奥さまが週1で保護者のボランティア。大学の研究員でした。薬物や収入の相談もしていました。相談料は無料でした。
 日本の学校も生徒の悩みの相談室があります。常駐ではないでしょう。週2程度かも。しかも昼休みまでか昼休みからか。相談員が1桁少ないだけでなく、権限はなく、校長や担任と相談するだけでしょう。
 日本の学校は担任の責任です。心が折れた生徒さんがいると大変です。直接親と面談することになり、手に負えないと教頭の出番になるのでは。日本の教員は大変です。残業代は定額の微々たるもの。教頭や校長には残業代はありません。
 日本の学校の先生になるより、力のある人は塾の先生をすると思います。今の学童も受験生も塾が負っている仕事が増えたと思います。ですから東京の塾は少人数化し、生徒さんは2名または個別が人気になっています。
 個別指導の良い先生と巡り合えるかが人生に影響します。もっとも私は塾も遊びで行くところだと思います。塾も学校もゲームの延長でしょうね。
by tsuguo-kodera (2022-10-12 13:15) 

ebisu

koderaさん

米国の事情の紹介ありがとうございます。
個室もあるし、専門職として仕事の内容に応じた扱いを受けている様子がよくわかります。
日本はスクールカウンセリング機能が必要だから、巡回方式で設置したというだけ。
小さな学校には校長室なんていらないから、カウンセリング室にして、300人以上の学校には常駐のカウンセラーを配置するようになってもらいたい。
もちろん正規職員として。

ところで、わたしが渋谷駅前の進学教室で教えていた塾は、東京では初めての「個人指導」の学習塾でした。
学卒は早稲田・慶応・東京教育大卒のみ、後は院生でした。先生1人に生徒が二人が基本でした。
授業料は高かった。1975年頃、30000円でした。
1:1だと50000円。
大卒初任給が89300円の時代ですから、1:2だと初任給の1/3ですから、いまなら70000円ですね。
理事長が大学経営をしたくて、土地購入をして10年後くらいにこけました。名前は青木さんと言いましたね。あのままやってたら、個人指導ではナンバーワンの塾だったでしょう。もちろん上場企業にもなれた。
生徒の指導はできても、長期戦略目標を立てて、戦略を練って実行できる、マネジメントできる人材がいませんでした。
目の付け所はよかったと思います。渋谷警察署の裏側のビルが本部でした。

英語音読特訓授業は今日と土曜日で終了となります。
by ebisu (2022-10-12 14:57) 

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