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#4816 テスト範囲と学力低下の関係:根室高校 Aug. 31, 2022 [71.データに基づく教育論議]

<最終更新情報>9/1夜11:45 定期試験の難易度アップ、落第と定員枠の調整のススメ追記

 古里根室へ戻ってきて、小さな塾を開いてちょうど20年目ですから、ニムオロ塾もそろそろ終わりに近づいています。国立旭川医大(偏差値65、北大医学部や京都大学理系と同等)へ、一昨年根室高校から現役合格してくれた生徒は7年間のお付き合いでした。根室高校から難関大学への現役合格へのチャレンジはもちろん冒険でしたよ。でも、それなりの戦略を立てて7年間学習しました。貴重な記録ですからそのやり方は弊ブログに残してあります。いつまでに何をどのようにやったのか、後に続く者たちの参考になることを期待して記録し続けました。
 去年、今年と札幌の進学校へ進学した生徒がいました。二人ともガッツのある生徒でしたね。どちらの生徒もどういうわけか中高とブラスバンド部に所属していますが、今年の生徒は現役で京都大学理系は狙えそうです。昨年の生徒も北大なら問題ないでしょう。
 今年札幌の進学校へ行った生徒は、旭川医大へ根室高校から現役合格した生徒と、同じくらいの素質を認めました。
 一昨年、札幌の進学校へ行った生徒はそれ以上かもしれませんね。この生徒はニムオロ塾の生徒ではありません。通塾しないで柏陵中学校から札幌の進学校へ合格して順調に学力を伸ばしています。楽しみです。(笑)
 こういう学力の生徒たちが根室高校からでも、北大以上の大学へあたりまえに進学できる日が来ることをわたしは切に願っています。

 ところで、根室高校では前期期末試験が昨日(8/30)から始まっています。今週末9/2まで4日間がテスト期間です。今回は普通科の数学と英語のテスト範囲がどこまでだったのかと、学力低下がなぜ起きているのかを、データに基づいて具体的にとりあげたいと思います。
 どのような仕組みで何が起きているのかがわかれば、それを克服する工夫も必ず見えてくるものです。

 数学のテスト範囲は数Ⅰが「命題」の「条件の否定とド・モルガンの法則」p.61までです。全部で184頁あります。数Aは「確率の章」がテスト範囲に入っていませんでしたからp.32まで、全部で161頁あります。両方合わせると93/345ですから27.0%の消化率です。
 夏休みと冬休みと春休みを除くと、授業月数はおおよそ年間10か月ですから、8月末まで夏休みの25日間を引くと4か月で 4か月/10か月 、つまり教科書を40%終わっていなければなりません。現在のペースで授業すると3月半ばまで67.5%しか消化できません。後期は難易度が高い章が並んでいますから、基礎問題だけの内容の超薄い授業にならざるを得ません。2004年頃は、1/20までに数ⅠAを終了して、1/21から数Ⅱを授業でやっていました。この時代は大学受験しやすかったでしょう。
 今回のテストでは絶対値の問題は「むずかしいので」出題されないことになったようです。特設コース以外のクラスでは扱っていないという理由のようです。これらは生徒から聞いている情報なので、あとで実際のテスト問題で確認します。
(9/2確認。試験範囲は対偶の証明、63頁まででした。2ページ増えてもほとんど一緒なのでそのままにします。)

 なぜこんなことになるのかはいくつか理由があります。2校あった高校を統合したことで「全入状態」となり、普通科の7割前後の生徒が20年前なら根室高校には合格できない学力レベルの生徒だからです。
(団塊世代の頃は1学年約1000人、根室高校の定員は商業科3クラス、普通科4クラス、合計7クラスで350人でした。光洋中学校だけで1学年10クラス550人いました。元々が商業高校でしたから、商業科は2倍の競争率でした。だから、「根室高校卒」というだけである程度の学力保障になっていました。)
 高校統合後は、勉強しなくても根室高校に合格できるので、中3の学力下位層が勉強しなくなりました。そして学力の低い方に授業もテスト問題の難易度も合わせてしまいました。赤点で追試をする科目がどんどんなくなっていきました。どうせ進級させるので、追試をやる意味がないのでしょう。定期試験の難易度を上げて、30点未満は追試、それをパスできなければ落第させるというのも、学力アップの選択肢の一つでしょう。落第者の数だけ、翌年の募集定員枠を減らしたらいい

 元々、同じ教科書で教えることは無理なのです甚大な被害を受けているのは十数人いる高学力の生徒達です。統合前の根室高校に比べて、授業の進捗は著しく遅くなり、その内容も劣化していますから、独力で補う必要があります。統合前の根室高校の生徒たちに比べて、圧倒的に大学受験に不利になりました。後で採り上げますが、1年生が初めて受けた全国模試の平均点にそのことが如実に現れています。

 コミュニケーション英語は「FLEX①」を使っていますが、テスト範囲は第2章、p.44までです。教科書は10章186頁までありますから、消化率は23.7%です。現在のペースで授業をすると年度末までに59.1%、教科書の4割をやり残すことになります。これも、後半は速度を3倍にアップして、つじつま合わせをすることになるでしょうね。生徒の9割が急激な速度アップについていけないでしょう。つまり、ここでもさらなる学力低下が起きます。これはモノの道理ですよ。平均値でいうと、2.5倍速でやらないと教科書全部を追われませんが、そんな速度で授業したら、ついていけるのは上位1割の生徒だけです。9割の生徒にこの教科書は難易度が高すぎて合わないのです。どうしていいかわかんないまま、真ん中くらいの成績の生徒にピントを合わせた授業をした結果がこの授業速度なのでしょう。学力差が大きいので生徒にも教える先生にもずいぶんきついことになっているように見えます。

 就職試験だって例えば根室市役所は英語も数学も試験があります。上場企業ならSPIテストがあるのが普通です。就職だって進学だって、根室高校普通科卒業の生徒は他校の生徒たちに比べて大きな差がついてしまいます。

 現状、全国平均と根室高校の校内平均値がどれくらいの差がついているのか、6月下旬に行われたベネッセ模試の結果を表示しますので、ご覧ください。
 a:根室高校・校内平均
 b:全国平均
 c:a/b 校内平均の全国平均に対する割合
      a     b     c
 数学  16.3点  32.8点  49.6
 英語  19.3点  33.9点  56.9

 根室高校普通科の生徒は全国平均と比較すると数学は半分の点数、英語は57%の得点しかとれていないのです。統合前はどちらも平均点は20点を超えていましたが、統合後はひどい。今年のベネッセ模試の結果が一番悪いのではないかと思います。根室高校普通科の生徒で20年前の生徒たちの平均的な学力を有しているのは、「特設コース」40人中の25~30人くらいでしょう。
 それでも学力差が大きいことから、上位5-8人くらいは北大現役合格可能な潜在的な学力があります。高校生対象の塾で数英の両方教えているのはニムオロ塾だけで、それも来年春にはなくなっています。ウェイクフィールドが数学のみ教えています。
 いい時代です、高学力の生徒はユーチューブを利用して、独力で学習したらいい
 他方、根室高校は高学力の生徒10名の学力アップを保障するような放課後補習体制をとってあげられたら4いいですね高学力の生徒たちは、釧路湖陵をすっ飛ばして、札幌の進学校へ行ってます。根室高校へ進学したら、それほどレベルの高くない北大にすら現役合格できないと思っているからです

 この全国模試で根室高校の学年トップは全国偏差値60付近です。「みんなの大学情報」偏差値換算だと50以下でしょうね。得点だと150点(国数英の合計点)です。旭川医大へ現役合格した生徒は、高1の同じテストで偏差値76.7でした。
 「みんなの大学情報」偏差値65レベルの難関大学へ合格するためには、高1の最初のベネッセ模試で偏差値75クリアは最低要件です。全国の私立の進学校や道立の進学校(札幌南や北)が参加していないので、偏差値が10くらいは高めに出ます。

 学力全国模試の結果を見ると、学力差が大きすぎて、同じ教科書、同じテスト問題を課すのは無理なことがわかります。根室高校の先生たちだってきっと困りぬいていますよ

 地元企業経営者のみなさん、根室市議会文教厚生常任委員会のみなさん、根室市教委のみなさん、そろそろ本気で学力問題に向き合わないと、根室の地元経済の20年後は惨憺たることになりませんか?採用する人材の劣化で地元企業の半数が消えているなんてことに...。自然淘汰、それでいいのかもしれませんね。


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