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#4775 経理担当者が採用できない!:地元企業の悩み June 30, 2022 [89.根室の過去・現在・未来]

 根室の地元企業は高齢化が進み、世代交代しつつあるが、経理担当者が補充できなくて困っている企業が増えているそうだ。
 団塊世代のわたしは73歳だが、地元造り酒屋の「北の勝」碓氷商店で長年仕事していたYさん(根室高校同級生)が3月末で退職した。商店主である碓氷美奈子さんの下でマネジメントしていた。そういう呼称はないが「北の勝」の番頭さんと言っていいだろう。実直で辛口、「店主ならこう考える」とその経営哲学をしっかりつけ継いで仕事していた。そのうちに仕事で遭遇したさまざまなことをブログでアップするかもしれない。Yは関係者が存命で差支えがあることはなかなか書けないなとつぶやいていた。いくつか聞いたが、どの話も35年間根室を留守にしていたわたしには驚き桃の木山椒の木だった。
 その碓氷商店は十年ほど前に経理担当者が世代交代している、2007年に入社したK君はあれから15年もたったので30代半ばだ。前任者のSさんが病気で入院し、退院した後、毎日数時間仕事に来ていたが、しばらくして亡くなった。そのSさんは中学時代の親友の一人「ヨシアキ」のお兄さん。碓氷商店当主の美奈子さんは人を大事にする。Sさんが治療を終えて退院した(2007年頃のこと)後、「自分の身体の様子に合わせて数時間でいいから仕事したら?時間と来る曜日は任せるから、その方が健康の維持によいでしょ」と言ったそうだ。同期のYが2012年頃メラノーマを発症し、浮かぬ声で「トシと(癌)仲間になっちゃった」と電話してきたときにはメラノーマは悪性の進行性癌のこと多いので、急逝することを心配した。彼は盗難の嫁さんが看護師さんで、患部を見て悪いものかもしれないからと釧路の病院を勧めてくれたという。北大の医者が来ていて、すぐに札幌北大病院での再診察が決まり、手術の後インターフェロン治療が始まった。退院後に3か月に一度札幌の北大病院まで入院治療に行っていたが、リンパ節を経由して肺に転移した。ついていることにオプジーボの保険収載が決まり、その治療を受けられることになり、肺癌もかろうじて制圧できた。碓氷商店当主は彼にも、「仕事できる間は数時間でいいから仕事したら?」と言ったそうだ。術後十年くらい毎日数時間仕事していた。その間に次の世代のK君に、店主の仕事に対する考え方や自分の経験を伝えたようだ。引継ぎとしては十分な期間だった。こうしてバトンを次の世代に渡す役割をわたしたちの世代は次々に現役を終えていく。
 根室で73歳まで雇用を保障してくれる企業は、オーナーと血縁関係がない限りほとんどないだろう。「北の勝」碓氷勝三郎商店は創業150年くらいになるかもしれない、根室の老舗で優良企業の筆頭と言ってよい。戦時中まで国後島に蟹罐詰製造のレンガ造りの立派な工場をもっていた。いまもロシアがその工場を使っているそうだ。戦後も昭和30年代の終わりまでは根室は蟹罐詰の全盛期で景気がよかった。40年代は蟹の資源が枯渇し、罐詰は徐々につくれなくなっていった。ロシア領での密猟の蟹が100億円前後で回っていただろう。それが根室の景気を支えていた。関節一本の長さが30㎝もあるような大きいタラバガニがたくさん獲れた。船外機を3機もつけた「特攻船」でロシア海域で漁していた。虚飾が混ざっているのだろうが当時は「一網3000万円」なんて噂もあったようだ。蟹の密漁は海に落ちている宝を拾い集めてくるようなものだった。そんな根室には長期的な視野で何かを成し遂げるという発想が生まれにくかった。水産資源が豊富だったので、目先の利益に追われるのが習慣となり、根室の経済の性格を形作ってしまった。それが今になって大きな瑕(きず)になっている。根室市政は藤原市長が145億円まで予算規模を小さくしたのに、ふるさと納税制度の後押しを受けて、放漫財政になっている。いまでは200億円を超える予算を組むのがあたりまえ。藤原市長のときには人口は33000人、いまは石垣市長だた人口は25000人を切った。人口が5万人に近い時にできた市庁舎の建て替えが始まったが、建坪は1.5倍。耐用年数が半分の25年を経過するころには人口は1.5万人を割る。以下にバカげた建て替えで、智慧がないか数字を並べてみただけでわかろうというもの。根室市政は市長が交替しても、合理的な思考をすることがなくなった。幹部職員も問題があるのだろう。大きな視野や長期的なスパンで物事を考えられる人材が稀だということ。若い人たちが頑張ってもらいたい。明日は君らが根室を担うのだから、先輩諸氏の悪いところは引き継がないでもらいたい。

 根室の地元企業が首都圏の優良会社と肩を並べるのはそんなに難しいことではない。当たり前のことを当たり前にやるだけでいい。株式の上場審査はそうした普通のことをちゃんとやれる体制になっているかどうかを審査するだけのこと。特別なものは何もいらない、企業として筆四最低限のことばかりが上場準備リストに並んでいる。
 退職金規程をつくり、社員に退職金がいくらになるのか通知している会社も根室にはないだろう。わたしが16年間勤務した臨床検査会社SRLは毎年4月になると退職金の額がいくらになるのか文書で通知していた。転職の際にももちろん同じ金額が支払われる。こういうことが安心につながり、優秀な社員の定着率も上げる。処遇が悪ければ、優秀な社員から転職していく。(東京証券取引所Ⅰ部上場してからは20人の募集に1万人を超える応募があったことがあった。)
 友人のYは高校を卒業してすぐに勤めた会社を3年間で見切りをつけて転職した。ボーナスをためて半年間失業しても大丈夫なように準備してから辞職している。たまたま、同じクラスのS田が「碓氷さんで人募集している」と緑町の商店街を散歩していた時に教えてくれた。それで飛び込んだ。絶妙のタイミングだった。前の会社をあの時に辞めなかったら、碓氷さんへの就職はなかったと語った。ピンポイントでゲットした、転職にはそういうケースがままある。

 予算制度があり、売上が予算額を超えた場合にはボーナスも予算よりも増額される。そういう仕組みがあり、予算と決算が社員に公表されていれば、オープンで透明性の高い経営となり、若い人たちが集まる。
 根室の企業はそういう制度改革を怠ってきたから、人材確保に困るのは当然だろう。いまからでも制度改革と経営改革をして、若い人たちが東京や札幌並みの給料や退職金が保障され、安心して働ける会社にしたらいい。

 生産年齢人口がどれくらい急激に減少しつつあるのか#4156で言及したので、その一部を貼り付けておく。
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<生産年齢人口縮小>
  生産年齢人口が毎年1.358%減少しているので、人手不足の時代が来てしまっている、全国平均値で見ても2040年には2015年をベースにすると29%(8174万人-5807万人=2367万人)も生産年齢人口が減少する。根室は人口減少の度合いが全国平均よりも大きいから、もっときつい状況になる。経営改革をしない地元企業は優秀な地元人材を雇えなくて、次々に消滅していくだろう

 データは次のサイトから拾って計算した。毎年の人口減少率は1-(2015/8174)^(1/45)=1.358%
*https://www.mlit.go.jp/common/001123470.pdf

 全国平均値ではなくて、根室の推計値をみたいでしょう。
 社会保障・人口問題研究所の地域別推計値を使うと、2015年度の根室市の生産年齢人口は15573人、わずか25年後2040年のそれは7447です。地元の会社の半数が生き残れるでしょうか?

 根室市は全国平均値のおよそ2倍の速度で生産年齢人口が減少し、2040年の生産年齢人口(15-64歳)は半分以下になります。人口減少を前提に根室市のあらゆる計画を見直すべきです
*http://www.ipss.go.jp/pp-shicyoson/j/shicyoson18/3kekka/suikei_kekka.xls
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<余談:団塊世代の根室高校入試>
 1964年(昭和39年)の根室高校入試は普通科が4クラス定員200人、商業科が3クラス定員150人だった。普通科は1.0倍、商業科は2倍を超えていた。だから、地元に残った同級生には優秀な者が多い。いま、根室高校商業科と事務情報科は毎年のように定員割れをしている。特に事務情報科の定員割れがひどいから、その学力レベルは55年の歳月を経て大幅に低下してしまっている。あの当時の根室高校生の大学進学率は15%以下だっただろう。根室から東京の大学へ進学させるには経済的にとても大変だった。
 同じクラス(3G)から、大手都市銀行(富士銀行)にA部さん、北海道銀行にM保さん、拓銀にK賀谷。Y崎は地元の大手の水産会社の経理担当役員をしばらくやっていたが、数年前に退職している。50人のクラスで成績上位10%は地元企業には就職しなかった。金融機関が最上位の就職先だった。根室信金へ就職した者はわたしのクラスにはいなかった。給料がはっきり違った。30代半ばにはその差は2:3くらいに拡大した。
 同級生ではないが同期のN本は地元信金の専務理事になって退職している。退職後、根室市の監査役を委嘱され、はっきりモノを言う報告書を書いている。なかなかしっかりしたやつだ。地元企業に勤務しながらちゃんと研鑽を積んだのだろう。こういう奴も同期にいる。
 クラスの他のメンバーは東京低温にH木さん、根室漁業協同組合はE藤や歯舞漁業協同組合はN山など成績が上の方の同級生が数名就職していた。歯舞漁協を断られて、散布漁協へ就職したN田は専務理事になって、職員のリストラをした、辛かっただろう。地元へ戻って羅臼漁業協同組合に就職したのはDだ。その後広尾漁協へ移って総務部長をやり、サケマス人工孵化場関係の企業へ転出してトップで定年退職。羅臼へ戻ってアルバイトしていた。ああ、道東塩業の社長をしていたHもいた。あいつは新入社員の頃、NTT前の公衆電話で会社のお金50万円を置き忘れるという大チョンボ。それが勉強になったのかな?入社当時の給料(昭和42年)は2万円なかったはず。(笑) いま札幌で入院治療中のKは水産会社の取締役だ。根室高校最後の総番長で人気の高かった奴だ、早く元気になってほしい。退院したら酒を飲む約束をしているが、体調がなかなか戻らないだろうから無理はさせられない。電話の声は55年前と一緒だ。東京へはあいつに誘われて一緒に行った。3月下旬になって「俺東京へ行く、ebisu一緒にいくべ」、あの一言で東京へ行く決心がついた、吹っ切れた、懐かしい声が耳に残っている。ヒロシとだけしかできない昔話がある。ヒロシの朋友のT木は高校1年の時に根室高校を退学したが、その後20歳代で銀座にお店を二つもった。高級店の方はサラリーマンが行けるプライスのお店ではなかったので行ったことがなかった。SRLの社長になったら使えただろう。そういうクラスのお店だった。度胸のいい奴だから銀座で早く芽を出した。
 美術部長だったカツエはアングラ劇団に関係して「イレブンPM」へ何度か出演している。アングラ関係で有名な誰かと結婚し、渋谷駅近くにビルを所有している。高校時代から一風変わったツワモノだった。
 ああ、大事な奴を忘れるところだった。劇画家の神田猛は高3の夏休みにアルバイトして旅費をため、9月にサイトウタカオのところへ弟子入りしたくて、高校を中退して飛び込んだ。サイトウタカオは高校中退して飛び込んできた猛が可愛かっただろう。人生をかけての弟子入り志願だった。一昨年、五十周年の個展を根室市文化会館で開催している。3Gクラスは、ユニークな奴が多かった。そういう奴、学校側は規格外の問題児を3Gに集めたのである。根室商業以来続いていた「総番制度廃止」や「丸刈り坊主頭の校則改正」はこのクラスの発案とマネジメントでなされている。根室高校の「近代化」を担ったと言えよう。時代がたまたまそうだったこともある。(笑)

 一回りほど年上の元釧路教育長のK田さんが「(わたしが江南高校生だったころ)根室商業は釧路湖陵(元釧路旧制中学)の上だった」と教えてくれたことがあった。そんな時代があったなんて、知っている根室人はもうみんな鬼籍に入っている。わたしが知っているのは、歯科医で短歌集を残した田塚源太郎先生(ビルヤード店の常連客で、二女が小中高と同級生)、その根室商業同期で考古学者で根室印刷創業者の北構保男先生、だいぶ後輩になるが歯科医の福井先生は根室新聞に時代小説と現代小説を十数年にわたって連載していた。1960年頃に根室新聞からその功績に「自家用車」がプレゼントされている。当時は家一軒がたつほど高かった。

 根室高校の学力レベルが低下してしまったことも、地元企業が優秀な人材を確保できない理由の一つだ。
 それでも、首都圏や札幌圏の優良企業と同じような経営システムで給与と安心が保障されるなら、根室以外の地域から優秀な人材を集められる。それには経営改革が必要だ。東京や札幌の優良企業がどのような制度をもっているのか、そしてどのような運用をしているのか、地元企業で知っている人が何人いるだろう。地元企業のほとんどが「日本の経営のスタンダード」を知らないだけだ。
 産業用エレクトロニクス輸入専門商社の経営改革と株式公開準備、SRLの東証2部上場準備作業、ある外食産業の上場準備作業に携わってことがあるから、教えてあげられる。証券会社に頼んだら数千万かかるが、わたしに聞くならタダ。何度も弊ブログで書いたが、聞きに訪れた地元企業は一つもない。上場なんて、当たり前のことをやるだけ。予算制度の整備、決算の公表、経理規程や人事諸制度(業務規程や退職金制度を含む)の整備、品質管理制度の導入など当たり前のことだらけだ。要するにオープンな経営をすること。その企業がいくら利益をあげたか、それだけでなく社長の報酬すら社員にはわからない企業がほとんどだろう。閉鎖的な企業は長期的に人材難に見舞われ、人材の劣化が進んでしだいに衰退していく。
 そのような閉鎖的な経営が人材確保で行き詰まるのはあたりまえ。十年くらいかけて徐々に経営改革すればいいだけ。やらない企業の大半は20年後には人材難から消滅しているでしょう。2040年には生産年齢人口は2015年の半分になる、そこへ向かって7年が過ぎたから、いまそういう瀬戸際の企業が増えています。

<余談-2:掛かりつけ医の大切さ>
 Yさんは3か月に一度北大病院で検査と治療をしていたが、生活習慣病もあるので根室の主治医は岡田医院の優二先生だった。消化器内科医だが、自分の専門外だと病院の紹介状をすぐに書いてくれる。掛かりつけ医がいるのは病気を抱えている人にとっては大きな安心だ。

<余談-3:中高の大切な友人:H勝治>
 高2の時から会っていない。2年生になっるときにクラス替えがあって、わたしはFからGへ、気がついたら学校を去って数か月たっていた。どうしているかな、中学時代の親友の一人である。腹の座った度胸の好い奴だった。高校入試の発表はあいつと一緒に見に行った。友人たちの誰もあいつの消息を知らない。 


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tsuguo-kodera

 なるほど。色々考えさせられた記事でした。根室の苦境、北海道の苦境は起こるべくして起きたと思いました。ますます首都圏と地方の格差は広がると思います。
 もし、新しい考え方でモミュニズムを志向したら、中国やロシアの体制になると思いました。私は個性尊重、求むる所第一義、随時随所楽しまざる無し。
 松戸は都心に近い貧民街としてそれなりの歴史があります。今の時代に合っていたのだと思い、変な街を見直しました。
 成城では大変です。財産は全て国に没収されます。ebisu先生のように経済の専門家でないために。仕方ない。
by tsuguo-kodera (2022-07-04 19:40) 

ebisu

koderaさん
お久しぶりの投稿ありがとうございます。
コミュニズムは意外なことに経済の土台がありません。サンシモンを空想的社会主義と批判したマルクス自身が空想的コミュニズムでした。
労働価値説に基づいていたからです。労働価値説に基づいた経済学体系は破綻します。現実と齟齬だらけですからね。搾取理論も不払い労働ですから労働価値説に基づいています。だから、労働価値説が破綻したら、マルクスの搾取に関する理屈も破綻します。ドミノ倒しに倒れていきます。
そんな簡単なことがいままで誰にもわからなかった。
近々、労働価値説の破綻を明らかにします。
そして別な公理と商道徳での経済モデルを明らかにしたいと思います。コミュニズムには未来がありません。幻想を追っているだけ。だからそれをごまかす装置が必要になります。徹底した情報統制と思想管理です。

by ebisu (2022-07-05 14:13) 

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