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#4652 釧路の教育政策の紹介:釧路教育長岡部義孝氏 Nov. 14, 2021 [55. さまざまな視点から教育を考える]

 釧路には岡部さんという面白いことを大胆にやっている教育長がいる。2期目で4年教育長の職にある。人づてに聞いた話を書いて、その教育政策を具体的に紹介してみたい。

 もう議論している段階ではなく、なすべきことを決めてやるべきステージに来ていると岡部教育長は認識しているようです。
 秋田県大館市を参考にしたその教育政策は大きく分けて三つ。
1.授業マイスター制度の導入
2. 学力向上推進委員会
3. 授業スタンダード

 授業マイスターを認定して、それをお手本に授業をしてもらう。教える先生によって生徒の学力に大きな差がつかぬようにとの配慮か。すべての先生が「授業マイスター」になることが理想。すでに秋田県大館市で実施済みの制度である。人事面でのインセンティブも考えておられるようだ。
マイスター制度は中世ドイツでつくられた制度です。)
 教育行政の方も教育支援課と学校教育課を統合して授業改善に特化する組織に一本化したという。
 大館市では、授業の様子を校長がオンラインで随時モニタリングできるようになっているそうです。わたしには驚きですが、そうしたオープンなやり方があたりまえになっています。授業技量の低い教員の指導がしやすくなっているので、教員の授業力のレベルは高くなります。教える先生の授業力がアップするので生徒の学力も上がります。両者は相互に関係しています。
 それも全国学力調査でナンバーワンという結果を出し続けている原動力の一つに違いない。制度が定着するには数年かかるかもしれない、それくらいの大仕事です。岡部さん本気のようです。

 学力向上推進委員会PDCAを回します。英語についてはテコ入れの必要を感じているので、学力向上のためにのアドバイザリーボードとしてすでにお一人招聘しているという。市内全校39校を順次回って、授業改善を行っているようです。生徒を教えていて気がつくことは9割の生徒が教科書をスラスラ読めません。すらすら音読できずに英語力の改善は不可能と思っています。学校での音読トレーニング量が決定的に不足しています。これは根室高校の英語授業も同じです。なぜそんなことになっているのかわかりません。授業の組み立てに中高で同じ問題が潜んでいるように感じます。岡部さん、アドバイザリーボードがどこまで効果があるのか、これは結果で勝負だろうね。ダメなら、方向転換してもらいたい。中学校の英語の教科書は各ページにQRコードがついており、それを読み込むとそのページの文章の音声が流れてきます。スマホで音読トレーニングできます。高校英語教科書にはQRコードがありません。文科省さん、来年の高校教科書はQRコードを検定の条件にしてくれませんか?

 授業スタンダード
 ①A4判裏表にびっしり書かれた「授業スタンダードチェックリスト」に自己採点をしてもらい、自分でスタンダードに近づけてもらう。PTAの授業参観の際にこのチェックリストで評価してもらうことも考えているようですが、自己評価と他人の評価のズレを認識するのに役に立つのでしょう。
 ②放課後学習や長期休暇時の学習による学校間学力格差の縮小。これは普通のことです。
 ③Giga School構想(文科省)によって配布されたタブレット端末を利用した授業スキルを全員の先生に養ってもらう。タブレット導入は活版印刷術が発明されてその技術が教育を大きく推し進めたことに比肩しうるような影響があるとの認識。たとえば、生徒が問題演習したノートをタブレット端末で撮影して、先生に送信すると、先生の方では「理解できた、グレーゾーン、理解できない」に3分類して管理、個別に指導します。「ICTの文具化」が狙いです。
 こんなにきめの細かい対応がタブレット端末経由でできたらすごいですね。タブレットは使いませんが25人のクラスで個別指導はわたしでもやったことがありません。わたしの技量では「理解できない」生徒が4人いたら10人が限度です。下位40%が「理解できない」になるであろう根室の市街化地域の中学校では実務上無理がありそうです。釧路は根室よりもふだんの数学の学力テストの平均点が2-3割ぐらい高いので、あるいは可能かもしれませんね。
 低学力層の多い学校は数学のできる生徒たちを利用して教えさせたらなんとかなりそうです。やってみたら無理がわかり、その無理を解消する工夫がでてくるでしょう。岡部さんは市役所職員でした。総務部長⇒生涯学習部長から教育長ですから、学校の先生をしていた経験があるわけではありませんが、学校内の「ムラ」の常識にとらわれない臨機応変な工夫をしそうな感じがします。

 生徒たちの学力向上のために、先生たちは絶えず「授業内容ややり方の」改善に自ら努力すべしということでしょう。教育長に細かいところまで指示されずとも、工夫しろということ。これは、わたしも授業でよく使う手です。生徒の学力の状態を見極めて、説明する程度を加減しています。生徒の側に工夫の余地を残すのが「教育的配慮」になっています。民間会社の管理職も日常、そういう指導を部下にしています。

 秋田県大館市があたりまえにやっていること、たとえば、校長や教頭による授業のオンラインでのモニタリング、これをあたりまえのこととして定着させるの一つだけだって大仕事だと思います。釧路も根室も、先生たちの授業内容に学校管理職はアンタッチャブルがほとんどでしょう。「授業スタンダードチェックリスト」の導入もなかなかしんどい作業になることが予想されます。大館市は長い年月をかけてここまで来たのだと思うからです。それにしても釧路教育長の岡部さんは大胆な人ですね。学校の先生を教育長にした場合には、こういう発想は出てきそうもなさそうに見えます。
 子どもたちへの基礎学力保障は、子供たちの将来の選択肢を狭くしないために必要なこと。だから、どの学校でどの先生に受け持ってもらっても、一定の水準の授業を受けられるようにしたいというのが、釧路教育長である岡部さんの願い。

<根室の教育行政の現状>
 ところで、道立教育研究所から波岸克康氏が11月から根室教育長として赴任しています。なにをどのように進めるのか、具体的な教育政策がそのうちに公表されるでしょう。岡部さんは釧路市内の小中学校39校を全部訪れています。根室は小学校8校、中学校7校の合計15校だけですから、簡単に訪問できるでしょう。授業参観して校長と面談して、課題を感じ取るのは釧路に比べたら4割ほどですから、それほど大きな作業ではありません。
 釧路根室管内の市街化地域の17校では根室の市街化地域の中学校が最低レベルです。ふだんの学力テストの平均点は釧路の中学校よりもずっと低いのです。ふだんの学力テストのデータをモニタリングすることも、データに基づいた教育政策を立案し、チェックするために大切なことです。
 市議会文教厚生常任委員会も教育政策についてしっかり議論することでその職責を果たしてもらいたい。
 根室に生まれ、根室の学校で教育を受けることで、大きな地域学力格差を背負いこませるようなことがあってはならない。生徒の未来の選択肢が狭くなります。この地域に住む大人の責任でこのような状態はなんとしても解消すべきでしょう。

<余談:根室の新教育長と釧路の教育を考える会・会長の角田さん>
 飲み会での話です。
 新しい教育長が来ただろうと「釧路の教育を考える会」会長の角田さん。「ええ来ましたよ、波岸さんという人が」と答えたら、「で、どうだ」と角田さん。11月に来たばかりですが、相変わらず道庁の教育局関係の人材ですから、前任者同様に思い入れも何にもないでしょうと返事したら、釧路教育長の時代にお父さんの方とは知り合いだという。「旭川の自宅に訪問したこともある、そのときに小学生(根室市の教育長)だった」と角田さん。じゃあ、これまでとは別の目で見てみようかということになった次第。(笑)
 今まで何人もの道庁教育局関係者が根室の教育長で赴任してきたが、効果のある教育政策を立案し実施できた人は一人もいない。波岸さん、あなたには人事権もある、思う存分やってもらいたい。



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