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#4435 ふるさと納税制度の消滅 Dec. 20,2020 [8. 時事評論]

 根室の魚屋さんは師走というのに四日間も店を占めているところがある。もちろん稼ぎ時だからフル回転だ。根室のお客さんを相手にできないほどふるさと納税の商品の仕入と発送が忙しい。商売繁盛、仕入れて送るだけだから新型コロナも関係なしだ。しかし、販路はネット業者に握られている。
 根室の主産物の一つに昆布がある。昆布は全漁連が買い上げて全国に販売している。販路は全漁連が握っているから、安く買いたたかれるが、何十年たっても自前で販路を開拓しようとしない。沖縄が昆布の消費量が大きい、沖縄へ行って昆布の小売価格を見てきたらいい。
 根室市の水産業者は補助金頼りだ、自前でリスクをとってやろうとしない。ホタテの養殖事業も全額補助金で始めたばかりだ。サロマ漁協は50年も前にちゃんと事業化して独立独歩でやっている。東京の人形町の魚屋さんを見てきたらいい。眼玉が飛び出るような値段で、冷蔵ショーケースにケーキを並べるがごとく魚の切り身の粕漬や味噌漬けがきれいに並べられて売られている。加工を自前でやり、ネットで販売する網元はいないのかね。東京には居酒屋も水産業者が経営しているお店がいくつもあるよ、安くて新鮮だからとっても繁盛してる。共同でやったっていいんだ。そういうことをやるには、優良な人材が必要になる。そういう人材が夢を抱いて働きたくなるような地場企業が育ってこないといけない。経営改善の仕方がわからない人はわたしのところへ聞きに来たらいい、教えてあげられます。企業の上場はあたりまえのことを当たり前にやるだけですから、中小企業も学べるところが盛りだくさん。3社4回そういう仕事にタッチしてます。たぶん北海道でそんな経験のあるのはわたしだけ、きっと貴重品です。(笑)
 建設業者はどうか?最大手の会社を見ると、国の補助金と根室市の予算に依存している。何かに過度に依存しているとどんな企業でも脆(もろ)くなる。

 唯一の例外がある。根室の外に展開して成功した企業は回転ずしの「花まる」だけである。根室の地生えの企業で戦後の75年間で1社のみ。花まる創業者の清水さんは京セラの稲森和夫に教えを請いに行ったと聞いている。気質に違和感を感じているのか、根室の経済団体には属したことがないようだ。

 こういう根室の偏狭な気質はどこからきているのか?

 前置きはこれくらいにしよう。ふるさと納税制度は2006年3月16日の日経新聞のコラムが取り上げたのが端緒である。半年後の10月に西川一誠福井県知事が古里寄付金控除の提言を主張し、2007年5月に管総務大臣が導入を表明した。2014年に総務省自治税務局長の平嶋章英氏が問題点を挙げ反対していたが、翌年7月に自治大学へ転出となった。異論を唱える官僚を官房長官の菅氏が排除したのである、異論を唱える官僚は排除するというのが菅総理大臣の基本的な政治姿勢だ。異論を唱えるものを排除する総理大臣は、同じだけの力が反作用として自分に働くから、そう長くない時期に排除される。それがモノの道理だ。
 ふるさと納税は脱税の合法化であり、マイナスになっている自治体は非常に困っている。そこに住民がいるのに住んでいる自治体に住民材を支払っていない。しかし、市民として行政サービスは受けている。こんな狂った制度は菅氏が権力の座から追われたら、再検討がなされるだろう。次の政権がまともなら消滅する可能性がある。

 そうなったときに、自前の販路をもたない企業は弱い。四百年に一度の地震よりももっと確度が高いから、そろそろ準備したほうがよさそうだ。

 ところで地生え企業の盛んな諏訪と比べてみたら根室の特色が浮かび上がる。

 根室の地生えの企業を育てる方向へ、市政が舵を切る必要がある。補助金依存体質を強化を主導しているのは根室市政である。市長が何度変わっても根室市政は変わらぬ。長期的に根室の町を衰退へ導く愚かな政策を続けている。市政ばかりが原因ではない、そこにもたれかかるだけで、経営能力のない地元企業にも問題がある。問題があったり、土台が悪けりゃ造り変えればいいだけのこと。時間をかけたら変われる。変わる意志がないと変われないのは、やる気がまったくない生徒の学力を伸ばすことが困難なのとよく似ている。
 根室の企業経営者は中高生の時代に勉強しなかった者が多いのではないか?中高生のときに学ぶ姿勢を身に着けた者は、大人になっても学ぶことをやめない。
 根室は町づくりの土台である教育、なかんずく子どもたちの学力を軽視し続けている。そろそろ気がつかないといけないのではないかね。

<余談:地生えの企業の盛んな町>
 諏訪市と言っても道産子にはなじみがない。諏訪大社や諏訪湖、諏訪湖の御神渡り行事は知っているだろう。諏訪には地生え企業が圧倒的に多い。この地域では100人に一人が経営者である。
「諏訪市の総人口. 49,829人.」「諏訪地域の域内人口は194,439人2019年時点)」

 『諏訪式』という本があるが、その紹介文の載っているサイトを見つけた。そこから引用する。
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 驚くことに、この諏訪地域には2000社を超える「ものづくり企業」が集まっているという。「東洋のスイス」と呼ばれるように、その多くは精密機械の会社だ。地域の人口は約20万人なので、100人にひとりが経営者ということになる。
 時計の諏訪精工舎(現セイコーエプソン)、オルゴールの三協精機(現日本電産サンキョー)、カメラや光学機器のヤシカ(1983年、京セラに吸収合併)、チノン、日東光学(現nittoh)、小型ポンプの荻原製作所、バルブの東洋バルブ、キッツといった大企業が、この地に生まれた。
 精密機器だけではない。ハリウッド化粧品、ヨドバシカメラ、すかいらーく、ポテトチップスの湖池屋なども諏訪にルーツがあるし、岩波書店を創業した岩波茂雄、歌人の島木赤彦、作家の新田次郎、童画家の武井武雄といった著名な出版人も輩出している。

多くの仕事や人材がここから生まれている。どうやら諏訪は、ただならぬ場所らしい。その秘密に迫ったのがこの『諏訪式。』である。

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諏訪式。

諏訪式。

  • 作者: 小倉 美惠子
  • 出版社/メーカー: 亜紀書房
  • 発売日: 2020/09/26
  • メディア: 単行本



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コメント 10

もち

古いもの、弱いものは消える。強くて新しものだけが生き残る。力だけを信じ、弱者を踏みにじってきた人間たちのルールだ。だから、やつらも滅び去る。より強いものが現れたことで、自らのルールで裁かれて消える
by もち (2020-12-22 08:34) 

もやしサンマ

ふるさと納税で税収が減っている困り果ててている自治体って本当にあるのですか。寄付していい限度額は収入に応じて決まっているし、その分そのまま納める住民税が減るわけでもなさそうだし。ことし初めてふるさと納税でお買い物してみました。ふるナビのシュミレーションで限度額を計算したらもう一回は難しそうでした。住民税の税額が寄付したほど減らなくて返礼品目当てならお金を直接払った方が得なら来年はやりません。


by もやしサンマ (2020-12-22 15:35) 

もやしサンマ

住民税の明細を見てみたら寄付金控除後の課税所得の10%が市民税と道民税の合計だから2万円寄付すれば住民税は2千円へる。つまりは18000円であれを買ったわけだ。
得した気分なくなる。やっぱり応援したい自治体に寄付すると思わないとよくよく考えないといけないですね
by もやしサンマ (2020-12-22 15:54) 

お名前(必須)

大部分のサラリーマンは自分で確定申告しないから「あんなにふるさと納税したのに住民税減らないな」と思うかもしれない。地元に納めるべき住民税を別な自治体に納めているわけではないことに気づかない人がいるような気がする。印象操作という安倍前総理の大好きな言葉を思い出す。エビスさんとは別な意味でこの制度の先行きを不安に思います。
by お名前(必須) (2020-12-22 16:10) 

ebisu

もちさん

名セリフですね。
by ebisu (2020-12-22 21:42) 

ebisu

もやしサンマさんへ
損している自治体の2017年度のデータがありました昨年度はもっともっと拡大しています。
金額単位は億円です。

横浜市(神奈川県) −55.5
名古屋市(愛知県) −31.9
世田谷区(東京都) −30.8
大阪市(大阪府) −24.1
港区(東京都) −23.5
川崎市(神奈川県) −23.5
神戸市(兵庫県) −16.8
さいたま市(埼玉県) −15.9
京都市(京都府) −14.7
福岡市(福岡県) −14.6
杉並区(東京都) −13.7
大田区(東京都) −13.4
江東区(東京都) −13.3
渋谷区(東京都) −13.0
目黒区(東京都) −11.9
品川区(東京都) −11.8
新宿区(東京都) −11.4
札幌市(北海道) −10.3
文京区(東京都) −9.4
中央区(東京都) −9.0
西宮市(兵庫県) −8.9
練馬区(東京都) −8.6
堺市(大阪府) −8.1
豊中市(大阪府) −7.1
豊島区(東京都) −7.0
仙台市(宮城県) −7.0
江戸川区(東京都) −6.9
板橋区(東京都) −6.8
吹田市(大阪府) −6.2
中野区(東京都) −6.1
足立区(東京都) −6.0
千代田区(東京都) −6.0
千葉市(千葉県) −6.0
市川市(千葉県) −5.7
船橋市(千葉県) −5.3
藤沢市(神奈川県) −5.3
北九州市(福岡県) −5.1
川口市(埼玉県) −5.1
北区(東京都) −4.9
八王子市(東京都) −4.8
町田市(東京都) −4.7
浦安市(千葉県) −4.7
相模原市(神奈川県) −4.6
松戸市(千葉県) −4.5
葛飾区(東京都) −4.2
岡山市(岡山県) −4.2
武蔵野市(東京都) −4.1
姫路市(兵庫県) −4.1
柏市(千葉県) −3.9
台東区(東京都) −3.7
https://dot.asahi.com/wa/2017091900071.html?page=3
by ebisu (2020-12-22 21:50) 

ebisu

もやしサンマさん

ふるさと納税の仕組みに誤解があるようですね。
こちらをご覧ください。
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html

by ebisu (2020-12-22 23:20) 

もやしサンマ

確かに誤解していました。ありがとうございます。総務省の説明はわかりやすいですね。正直言って寄付が認められる上限までどこかの自治体にふるさと納税しないと損ですが、上限は所得の多い人ほど高額、当然ですね。損している自治体って都会ばかりですね。都会は生活費も高いけど給与も高いし大企業の本社も多いし税収は地方に比べて良いんじゃないかと思います。地方の活性化と格差是正という意味では良いように思います。
by もやしサンマ (2020-12-22 23:54) 

ebisu

もやしサンマさん

地域格差是正に役立つという意見は頷けますが、手段としてはアウトです。自分の住んでいる地域に住民税を支払わずに、住民サービスの利便は享受するというのは窃盗にも等しい。
寄付がしたいなら、自分の住んでいる地域への住民税は応分の負担をして、寄付をしたい市町村へ寄付をすればいい。そのさいに寄付金の所得控除ができるようになっていたらOKです。こんな税制改正は簡単にできますが、寄付をする人はほとんどいませんよ。
税金で返礼品がもらえるから故郷でもないところへ「ふるさと納税」おかしいと思います。
でも、わたしの意見が絶対に正しいとも思いません。対立する意見があると、お互いの特質がよく見えてきます。

そういうわけで弊ブログは異論投稿歓迎です。(笑)
by ebisu (2020-12-23 10:31) 

もやしサンマ

自分の住んでいる地域に住民税を払わないわけではありません。一度ご自分の納めている住民税と前年度の所得で上限額を計算してみては。私の場合は納めるべき住民税の2~3割しかふるさと納税できません。総務省でもふるナビでもふるさとチョイスでも上限額計算できます。所得の高い人の中にはたくさん住民税を納めているのに同じ住民サービスなんて不公平と思っている人もいると思うから良いと思います。
by もやしサンマ (2020-12-23 14:07) 

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