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#4178 Sapiens: p.22-24 Feb. 8, 2020 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

  今回は、三つ採り上げる。授業は次第に対話形式に変わりつつあり、生徒の読解力アップを実感できた授業だった。

 22頁、第3段落から…
<22.3> This poor record of achievement has led scholars to speculete that internal structure fo brains of these Sapiens was prbably different from us.  They looked like us, but their cognitive abilities -- learning, remembering, communicating -- were far more limited.

 farの部分、その役割がわからないということだったが、文意全体が読み取れていない様子。farは副詞で、比較級の'more limited'を強めているだけ。文意は「(当時のSapiensの)認知諸能力は著しく制限されていた」ということ。farはmuchでも構わぬ、意味を強めているだけ。
 シンプルセンテンスに書き直すと、次のようになる。
① their cognitive abilities  were far more limited.
 認知諸能力とは「学習、記憶、意思疎通という三つ」を具体的に例示している。

 ニムオロ塾には『形容詞・副詞辞典』が置いてあるから、それを引いてみたらいい。
学者たちはこのような乏しい実績に照らして、これらのサピエンスの脳の内部構造は、おそらく私たちのものとは違っていたのだろうと推測するようになった。太鼓のサピエンスは見かけはわたしたちと同じだが、認知能力(学習・記憶・意思疎通の能力)は格段に劣っていた。」柴田訳



<23.1> The first objects that can reliably be called art date from this era (see the Stadel lion-man on page 25), as does the first clear evidence for religion, commerce, and social stratification.


  論点は二つ、従属節の主語は何かという問題と、代動詞のdoesは単数主語を受けているはずだが、それは何かという問題。主節の主語はobjectsと複数形だから、論外。生徒は倒置だと見抜いた。主語は'the first clear evidence for religion, commerce, and social stratification'なのだ。長いので倒置された。doesは主節の本動詞のdateである。「さかのぼる、~始まる」という意味が自動詞の項に載っている。
 わかりやすいように書きなおそう。

 the first clear evidence for religion, commerce, and social stratification date from this era.


 主語が倒置され、述部の前置詞句が省略されているのだ、補って読まなければ意味をつかめないから、ここはむずかしい。東大2次試験レベルを超えてるかな?数分間対話を重ねて生徒自身が気がついた。
 asはいろんな意味で出てくるので、厄介ごとの一つだろう。でも、文脈を読むことに慣れたらわかる。節を率いているので、役割は接続詞、「~と同様に」。

「(シュターデルの半身ライオン像のような芸術作品群と)どうように、宗教、交易、社会階層化の明白な証拠はこのころを始原とする」

 commerceは商業とか貿易という意味が載っているが、商業はもっと後のことだし、貿易は近代国家が成立しなければ出てこない概念である。翻訳者の柴田さんは「交易」と訳出している。さすがプロ、的を射た語彙選択である。


芸術と呼んで差し支えない所の品々も、この時期にさかのぼるし、(図4のシュターデルのライオン人間を参照こと)、宗教や交易、社会階層化の最初の明白な証拠にしても同じだ。」柴田訳


<23.3>The appearance of new ways of thinking and communicating, between 70,000 and 30,000 years ago, constitues the Cognitive Revolution. What caused it? We're not sure. The most commonly believed theory argues that accidental genetic mutations changed the inner wiring of the brains of Sapiens, enabling them to thing in unprecedeneted ways and to communicate using an altogether new type of language.  We might call it the Tree of knowledge mutation.  Why did it occur in Sapiens DNA rather tha in that of Neandelthals? It was a matter of pure chance, as far as we can tell.


 太字部分は第2章のタイトルになっている。わたしはそれをアダムとイブが果実をとって食べた木のことだと思い込んで読んでいた。その果実を食べることで、善悪の判断ができるようになった、あの木だろうと。ここにきて、別の意味があることを知る。ハラリは「We might call it the Tree of knowledge mutation」と明快に述べている。
 「知識の木の突然変異」とはニューロンが伸びて行ったことを言っているのでは、生物の教科書で見たニューロンの樹状突起がイメージとして浮かんだとは生徒の意見である。
 なるほど、そういうことかと納得。ハラリがこの章のタイトルを考えたときに、彼の脳内に浮かんでいたのは、neuronなのだ。神経細胞体をつなぐ軸索と神経細胞体と樹状突起、これらが言語の発達の影響なのか、ニューロンが延伸したから高度な言語が操れるようになったのか、どちらが先かはわからないが、ニューロンのネットワークが伸びていく様をハラリ自身の脳内にイメージして語彙選択をした、それでthe Tree of Knowledgeと書いたのだ。アダムとイブがあの実を食べたとたんに、脳内にミューテーションが起きたと考えてもいい。
 若い生徒の解釈にひたすら感心。対話形式のライブ授業の楽しさはこういうところにもある。


このように七万年前から三万年前にかけてみられた、新しい思考と意思疎通の方法の登場のことを認知革命という。その原因は何だったのか?それは定かではない。もっとも広く信じられている説によれば、たまたま遺伝子の突然変異が起こり、サピエンスの脳内の配線が変わり、それまでにない形で考えたり、まったく新しい種類の言語を使って意思疎通したりすることが可能になったのだという。その変異のことを「知恵の木の変異」と呼んでいいかもしれない。なぜその変異がネアンデルタール人ではなくてサピエンスのDNAの起こったのか?わたしたちの知る限りでは、まったくの偶然だった。」柴田訳


 本棚に"Molecular Biology of THE CELL second edition" がある。1989年の出版、1990年にSRL学術開発本部スタッフとして仕事していた時に、購入したものだ。学術情報部の海外の製薬メーカからのラボ見学案内対応と英文のラボ見学案内書作成、開発部の仕事である製薬メーカとの検査試薬の共同開発担当(2メーカ、2検査試薬)と担当者ごとにばらばらだった共同開発手順のPERTチャート方式での標準化、精度保証部のCAPライセンス(臨床検査に関しては世界一厳しい品質管理基準)更新のための資料整備のお手伝いなどがわたしの担当だった。やる能力があれば、どの部門でも仕事を担当させてもらえるユニークな会社だった。
(元々は経営管理と会計、そしてシステム開発が専門分野だった。この部門の後、1991年に新しくできる関係会社管理部で、子会社・関係会社の経営分析システム開発と、それを使った実際の経営分析を担当している。25ゲージのレーダチャートによる総合偏差値評価のできる経営分析システムだった。1979年に開発してあったものを、EXCELに載せ替えただけ。2年間ほど担当し、2件の臨床検査会社の買収と資本参加交渉を担当し、福島県の臨床検査会社へ1億円資本参加し役員出向している。)
 学術開発本部のときは、検査試薬の共同開発案件(Ⅳ型コラーゲンと膵癌マーカー)を担当するために、尖端の医学雑誌論文に目を通しておく必要があった。それで海外の医学専門誌十数冊に目を通していると、先端情報だから、医学事典のSTEDMANを引いても載っていないことが多くて、この本を字引代わりに使っていた。当時は翻訳書がなかった。
 1059頁から「The Nervos System」(第19章神経組織)が載っている。1061頁にcell body(細胞体)とdenderites(樹状突起)とaxon(軸索)の模式図「Figure 19-2」が載っている。「Figure 19-3(c)」がtreeそのものだ。

<英作文トレーニングと読解速度アップトレーニングについて>
 メール配信の英作文トレーニングの方は、15回目を終了。正解率が6-8割ほどにアップしており、成長著しい。週4日、基本は最低5題/日、よって80問題を超えた。統語論や修辞法にこだわった読み方をしているから、そういう大人のレベルの英文が書けるようになってくれたらうれしい。

 ところで、そろそろ読解速度アップトレーニングの下地ができたように感じる。いままで、ノートに和訳を書きながら精読したところを、スラッシュ・リーディングしてみたらいい。文構造はしっかり理解できてるから、頭から読み下していける。10回もやれば、1ページ/5分の速度で読めるだろう。
「大和言葉落とし」をしつつ、スラッシュ・リーディングも試みたらいい。意味の塊ごとに音読し、その意味を声に出して「大和言葉落とし」してみる。
 30ページ精読したら、100回そうした「大和言葉落としスラッシュ・リーディング方式」でトレーニングを積めば、受験には十分すぎるほどの読解速度を手にできる。スキル上昇がはっきり感じられるから、きっと楽しいだろう。(笑)

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*以下の2枚の図は「神経細胞の特徴」からの参照

http://web2.chubu-gu.ac.jp/web_labo/mikami/brain/10-1/index-10-1.html





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