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#3484 学校別学力テストデータ比較分析 Dec. 19, 2016  [71.データに基づく教育論議]

<更新情報>
12/19 午後4時 国語力に関する追記、表のミス1箇所訂正


 データ分析の3回目です、全部で4回予定しています。これが一番面白いはずですから、じっくり眺めて楽しんでください。
 最後のところに市街化地域の3校が協同してやりうることについて提案を書いておきます。日本の教育改革を最東端の地からはじめる最後のチャンスかもしれません、その栄誉を根室で仕事をする先生たちが担えるか否かは、先生たち自身の覚悟と決断にかかっています。党派や主張の違いを超えて、仕事を通じて教えている子どもたちのためにチャレンジしてみませんか?
 では、本論をはじめます。

 学校別・教科別に平均値データを比較すると何がわかるでしょう?
 やってみたらわかりますから、表にまとめたデータをご覧ください。

<学力テスト総合C 平均点比較>
科目A中B中C中SD-2av
国語31.735.9293.48   32.2
英語35.522.3286.62   28.6
社会21.422.3191.71   20.9
数学17.617.7160.95   17.1
理科22.717.8173.09 19.2
合計128.911610910.09 118.0
最高 最低  

 3校で最高点をピンクで、最低点をスカイブルーで塗りつぶしました。C中がひとつもピンクがなく、スカイブルーが4つあります。C中が学力が低く、生徒か指導のどちらかあるいは両方に問題を抱えていることは一目瞭然ですね。
 SD(標準偏差)の小さい順に並べてみます。

   数学<社会<理科<国語<英語

 データのばらつきの程度の小さい順に並んでいます。標準偏差が一番小さいのが数学です。これが平均点が高いところにあって標準偏差が小さいなら問題なしですが、どの学校も五科目で数学の平均点が一番低いのですから、3校に共通する問題の存在を示している可能性があります。文章題に焦点を絞って分析したらよさそうです。計算問題でどれくらい点数が取れたのかは、採点した先生たちが知っていますから、原因分析は簡単に済みそうです。問題は対策ですね。B校とC校は数学の平均点が上がってきません。A校は学力テスト総合Aと総合Bの度数分布データがないのでコメントできません。
  「読み・書き・計算」の基礎技能の内、二つを含んでいて、各教科の基礎をなす国語は小4程度の語彙力でも、30点前後の点数が取れるほど、超簡単な問題です。東京都の入試問題と同じものが数年後の道立高校入試に出題されたことがありますが、問がとっても簡単に改作されていました。国語の平均点が一番高いのは、問題が超簡単であるからです。東京都入試並みの難易度の問題を出題したら、平均点は7-12点ほど落ちるでしょう。
 国語のテスト問題の語彙が貧弱であり、小4程度の語彙力でも平均点近い点数が取れることは、#3483で。詳細に論じました。こういう問題に慣らされると、生徒たちは自分の国語力に勘違いを起こします。平均点でも実際には小4程度の語彙力なのですから、まともな本は読めません。だから、読んでいるのは語彙数の少ない最近の小説やアニメのノベライズものが多いでしょう。これでは日本的情緒とか伝統的な価値観、日本の思想を受け継ぐことができません。それらは言葉で伝わっている部分が大きいのです。常用漢字に制限するから、日本的情緒や価値観や思想をあらわす語彙群が理解できないものになるのです。週に1時間でいいから、日本思想や哲学の科目を新設して、名にどの高い語彙に慣れさせる必要があると思います。思いついた本を#3483で9冊リストアップしました。二つ追加して再掲します。

 幸田露伴『五重塔』、九鬼周蔵『「いき」の構造』、和辻哲郎『古寺巡礼』『風土』、福沢諭吉『福翁自伝』、柳宗悦『手仕事の日本』、柳田國男『海上の道』、石田梅岩『都鄙問答』、西田幾多郎『善の研究』、『古事記』、『万葉集』


< A校の分析 >
 A校のデータの特徴は英語の平均点が高いことです。指導の仕方がよいのか、塾通いしている生徒が多いのか、生徒が英語の勉強に熱心なのかはわかりませんが、とにかく英語の平均点が高い。階級値45点のところに20人います。これがA中の得点全体を引き上げた核です。
 45理科の平均点も顕著に高いので、指導の側に理由があるのか生徒の側に理由があるのか、興味がわきます。国語の平均点が真ん中です。教科書を独力で読むのが困難な程度に語彙力に問題のある生徒が、20-25%存在しているように見えます。
 A校の科目別得点分布表をご覧ください。

階級国語英語社会数学理科
51-6009010
41-501120446
31-40301714717
21-303019191516
11-20510272524
0-1001122413
合計7676767676
AV31.735.521.417.622.7
メジアン 最頻値  


 A校は数学の得点20点にかが49人(64.5%)もいます高校は30点で赤点ですから、高校基準で言うと、おおよそ60人が赤点ということになりますC校も60%台に載っています平均点から推しておそらくB校も60%前後、20点以下の生徒がいます数学は3校ともアウトです。
 三人に二人は根室高校普通科へ進学することになりますが、定員160人の内、中学校で数学の学力テスト20点以下が100人前後含まれることになります低学力層に焦点を当てた、もはや高校数学とはいえないような授業になるでしょう


< B校の分析 >
 B校は国語の平均点が一番高い。国語はすべての強化の基礎をなしていますから、国語力が大きいということは、学力全般に影響しているはずです。ところが、国語に関連のある英語が3校中一番低いのはどうしたことでしょう。これも指導側か生徒の側に何らかの理由があるはずですから、B中学校の管理職は原因を分析してはいかがでしょう。英語の平均点をA中並に引き上げられたら、合計点は130点になります。
  国語は国語担当の新任教員が退職して、急遽教頭先生が担当しています。2学期末定期試験問題では抜かりがありましたが、どうやら着実に生徒の学力を伸ばすのに成功しつつあるのかもしれません。短期間で学力を挙げたとしたら、なかなかの腕です、今後が楽しみ。


< C校の分析 >
 さて、問題はC校です。国語の平均点が一番低い。国語は5教科の基礎をなしているので、ここを底上げする必要があります。一朝一夕にはいかないのが国語という科目の特徴です。朝読書をやめて、一斉音読トレーニングをやったらどうでしょう?受験には間に合いませんが、1ヶ月間やるだけでも、音読の習慣づけは可能です。国語力が3校で一番劣っていることが低学力の真因の可能性があります。社会や理科の教科書を独りで読んでも理解できない生徒が25%くらいいると推定しています。国立情報研究所の最近のリーディング・スキルに関する調査でも、教科書を読んで理解できない中学生の割合が20%であるとの結果が出ています。
 数学の文章題も大問の「問1」は簡単な問題なので、小4程度の語彙力でも読みきることができます。18点以下の33人(63.5%)の半数は「問1」狙いで6-9点アップできます。33人中の半分の生徒が6点アップできれば平均点は17.8にアップします。ぎりぎり、3校中でナンバーワンに躍り出ることができます。
 学力アップはどの点数階層にどのような対策を打ち、何点アップするのか、具体的な狙いをもってやれば可能です。数学の階層別度数分布は#3483の表をご覧ください。


< 「問題アリ」はどの学校のどの科目か? >
 平均点20点以下を黄色で塗りつぶしてみると、どこが弱いかはっきりします。でも表面的な数字にだまされて、真の姿を見失います。

<学力テスト総合C 平均点比較>
科目A中B中C中SD-2
国語3236293.48
英語3622286.62
社会2122191.71
数学1818160.95
理科2318173.09
合計128.911610910.09
問題あり    


  偏差値表示で見ると別の姿が現れます。偏差値40以下を赤で塗りつぶしてありまあす。こちらのほうがより真実の姿に近いのです。なお、SD-2(標準偏差)は(n-1)で計算した値を表示してあります。
(標本分散を計算する際に、変数間で計算される平均値を利用しているので、自由度はn-1となります。EXCELの統計関数'STDEVP'を使うと分散の計算の際に、n-1ではなくてnで割り算するので、同じ結果にはなりません。'(STDEVP(引数1:引数2)^2*3/2)^0.5'とすれば計算できます。わたしがやったのは途中結果が確認できるもっと確実で簡単なやりかたです。あとで、チェック用に統計関数を使った計算をしました。いろいろ試行錯誤してみるのが楽しいのです。笑)

<偏差値表示>
科目A中B中C中SD-2
国語48.6 60.6 40.8 3.5
英語60.4 40.5 49.1 6.6
社会52.9 58.2 38.9 1.7
数学55.2 56.3 38.5 1.0
理科61.4 45.6 43.0 3.1
合計60.8 48.1 41.1 10.1
* SDは(n-1)で計算した。
問題あり    



 現在の3年生では五科目平均点が最低であるC校に問題ありの科目が二つあることがわかります。B校の英語が40.5でぎりぎりです、国語の平均点が最高点なので、データは英語に何か問題のあることを示唆しているように見えます。

 偏差値表示も万能ではありません、数学に関しては3校ともに「問題アリ」と見るのが正しいのです。偏差値は相対的な数量関係を見ているに過ぎませんから、その計算原理上、絶対値の高低は評価できないものなのです

 こういう具合に、理論はその限界を知って使わないと、誤った結論へと誘(いざな)うので、取り扱いには注意を要します。統計理論はむずかしくはありませんが、「生兵法は怪我の元」ですからご用心。

 
< C校とA校の五科目合計度数分布表 >
 最後に、C校とA校の五科目合計点の度数分布表を貼り付けるので、じっくりご覧ください。

    A校
C校階級総合C
階級総合C模試1276-3000
271-30000251-2750
241-27000226-2501
211-24003201-2257
181-21075176-2008
151-18044151-1759
121-15084126-15010
91-1201114101-12516
61-90151376-10018
31-6081051-755
0-300126-501
合計(人数)53540-251
AV109108合計(人数)76
AV129
メジアン 
平均 モード 


   
 こんなにくっきり特徴が出るものなのですね。
 100点以下を比べて見ます。C校は100点で区切れないので、91-120点の階層のうち比例計算で4人が100点以下だと仮定して計算すると、27/53=50.9%を占めています。他方、A校は25人/76人=32.9%です。
 C校は100点以下が2人に1人、A校は3人に1人です。成績下位層が膨らんでいるのがC校の特徴だと言えます


< 3校協同でデータ分析し、学力向上へ舵を切る道がある >
 2年生と1年生も学力テストの平均点が低いので、C校の先生たちはこれから2年間は苦労が多いと思います。同じ学区の小学校にも問題があるはずです。やれるところから手を打つのでしょう。
 何をどのようなスケジュールで進めるのか、放課後補習や成績不振の生徒たちの部活制限など保護者の協力が必要な部分があるので、オープンに学力向上を進めたらいいのではないでしょうか。
 3校でデータを持ち寄り、ファイルを結合すれば、生徒一人一人の偏差値も計算できます。それぞれの学校の平均偏差値も計算可能です。
 3校の先生たちがデータを持ち寄って協議すれば、A校の分析で見たように、なぜA校の英語が階級値45点に20人も居るのかも、簡単に判明するでしょう。平均点の高い学校は、指導の仕方か生徒の特性に得点を上げる要因が見つかるのではないでしょうか。
 
 データに基づき、学力向上へ向けて学校のマネジメントをする時代が来ています

 <予告>
 数学は各校で学力別クラス編成をして、授業していますが、なぜ効果が上がらないのか、理由をデータを示して解説します。どうすればいいのかについても、思うところを述べます。

*#3483 学力テスト教科別分析 Dec. 18, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-12-17-1

 #3482 問題消化スピードの差の現実 Dec. 17, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-12-17

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コメント 3

ZAPPER

こちらに、受験生約5000名による総合ABCのSS換算表が出ています。こちらと並べて比較しても面白そうですね!
http://www.do-con.com/data/index.html#mainContents
by ZAPPER (2016-12-19 22:31) 

ZAPPER

全道との比較において。
A中の英語はSS50を超えていて、B中の英語はSS40を切っているんですね!ということはA中の英語は、なかなかの指導が行われていることが予見されます。がしかし、数学はどこも悲惨ですね…。
http://www.do-con.com/data/pdf/2016Css.pdf
by ZAPPER (2016-12-19 23:52) 

ebisu

ZAPPERさん

A校の平均点129点だとSS43.5、C校の109点だとSS39.8ですね。
C校の平均値だと道コンだと100人中84番の成績です。
でも、道内全体の中学生が参加しているわけではないので、偏差値が低く出ています。
根室は26人、平均点が196.1点になっています。
A校とC校の両方を足しても、そのゾーンに該当する生徒は24人しかいません。根室市内全体でおおよそ45名ほどでしょうね。

偏差値50は164点になっています。
全道の平均点は120-130のラインにありそうですから、道コン参加者は高得点層だといえそうです。


by ebisu (2016-12-20 00:06) 

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