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#2222 『梅の蕾』(2) : 地域医療を考える   Feb.23, 2013 [26. 地域医療・経済・財政]

  NHKラジオで毎週土曜日朝にラジオ文芸館という番組を放送している。アナウンサーが短編小説を朗読するのだが、その朗読の技もなかなかみごとだが、選ばれた作品のセンスのよさが光る。
 昨年の今頃放送されたものが、今朝再放送された。わたしはストーリーをわかっていながら涙を抑え切れなかった。朗読がうますぎる。

 この話しは岩手県田野畑村の実話がベースになっている。宮古と久慈の間に位置する田野畑村は三陸のリアス式海岸にあるわずか5000人の村。なんどか医師が赴任するも長続きせず無医村だった。村長のハヤセは困り果てていた。そこへどういうわけか千葉の病院に勤務する堂前という医師から問い合わせが入る。会ってみると背が高く品がよくて、ハヤセは気おくれする。・・・
 夫人が白血病で亡くなると、湘南の夫人の実家で葬儀が営まれる、全国町村会の会合で東京に出てきていた村長はそこで訃報の電話を受け取った。急遽、喪服を取り寄せ弔辞を書き上げて葬儀場へ着いてしばらくすると、婦人の実家の前にバスが6台とまる。ナンバープレートには「岩手」とある。夫人と野草摘みで交流していた人たちや堂前医師にお世話になった村人達200人が別れを惜しんで夜を徹して田野畑村から駆けつけたのである。村長はうれしくて涙が溢れて弔辞の字が見えない・・・

  事情を理解した村長はあきらめていた。堂前医師が子ども達の養育を夫人の実家に依頼し、単身で村にもどってきたときに、村長の庭には夫人が千葉から取り寄せて配ってくれた梅がはじめて満開の花をつけていた。
「あれ(葬儀の日に村人200人がバスを手配し夜を継いで弔問に駆けつけてくれたこと)では、来ないわけにはいきません・・・」

 #1849で紹介済みなので、それを再掲するとともに、コメント欄もぜひ紹介したい。人生と地域医療についてゆっくりお考え戴きたい。

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夜になって9時半にはマイナス8.9度、さすがに2月は寒い日が多い。
 土曜日の朝は8時5分からNHKラジオ文芸館を聴くことにしている。今日は吉村昭の『梅の蕾』。岩手県三陸沿岸の村営診療所に赴任してきた医師とその奥さんと村人の魂の交流が描かれているが、これは人為的につくれるものではないだろう、相互の感謝の心から自然に生まれたものだ。
 最後のシーンがとってもいい。

 無医村ではないが、根室も常時医師不足を呈している市。医者が不足しているという状況に共通点はある。
 医師と住民の心の交流が芽生えるには信頼関係の醸成が肝要。市立病院は医師や病院スタッフと住民だけで成り立っているのではない。医師のあり方も、スタッフのあり方も、住民のあり方もに加えて行政のありかたも大事な要素である。
 根室に欠けているものはなんだろう?
 本書を読んで、じみじみとした余韻に浸りながらお考え戴きたい。

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*NHKラジオ文芸館
http://www.nhk.or.jp/bungei/

「岩手県三陸海岸のある過疎の村。村長の悩みは、医師不在の村営診療所の運営だ。その村へ、千葉県の癌センターに勤務する堂前医師が家族でやって来た。夫人は野草を摘むのが趣味で、村人と親しみ、よく一緒に山に入った。
しかし、その夫人は白血病に侵されていた。余命の長くないことを知る堂前は、妻が命を燃やす最良の環境としてこの村を選び、一家でやって来たのだ。夫人は村での暮らしを楽しみ、十分に生きた。彼女は村人に梅の苗木を贈り、村人は喜んでその苗木を庭に植えた。
その夫人が亡くなり、実家のある湘南の町で葬儀が行われた・・・。 」

「遠い幻影」(文春文庫)所収

遠い幻影 (文春文庫)

遠い幻影 (文春文庫)

  • 作者: 吉村 昭
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2000/12
  • メディア: 文庫

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 #1849のコメント欄から転載
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人は何の為に真の命を燃やせるか。

考え続ける日々。

【中3時代】に突入しました。

by Hirosuke (2012-02-19 09:14) 

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クラス替えの最初の朝、3年5組のドアを通り抜けましたね。
人生は思いがけぬ出会いに満ちています。
出遭った瞬間に強い印象を感じた異性は・・・

たいがい大事な人の一人となります。
今後の展開が楽しみです。
by ebisu (2012-02-19 11:29) 

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根室市の現実。
『高齢化率27%』
http://www.news-kushiro.jp/news/20120215/201202155.html

約10年後には高齢率35%なるでしょう。

医師が今以上に必要になる。
しかし現実は反して医師減が進む。

この根室に今何が必要なのだろうか?
新病院というハードなのだろうか?
行政の支援というソフトなのだろうか?

それ以上に必要なのは根室市民の意識改革ではないだろうか?
医師が居る事に対する感謝や謙虚さを持つことが最低限必要なのではないだろうか?
ただ医師側にも言えることである。

最終的にはその人の人間性がすべてだとうことになる。

今の根室は、ここ最近の根室市内気温のように極寒が続いている。根室に春はくるのだろうか?
by おもし蟹 (2012-02-19 11:39)

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おもし蟹さんへ

いまは27%ですが3年後は人口は28000人を切り、老人は9000人を超えるでしょうから三人に一人の高齢化率になるのでしょう。
十年後は人口は2.5万人、高齢化率は50%に近づくのでしょうね。
あっというまです。
根室は療養型病床がゼロの町です。
市立病院はニーズに合わぬ設計をしてしまいました。
老人医療が大問題となるでしょう。
ばかな市政のツケがまもなく回ってきます。
お金のあるお年寄りたちは医療の充実している都会へ脱出していきますから、根室の人口減少は加速します。
こんなことは中学生でもわかる理屈です。

市長と市役所が旗を振る「再興」ってなんなんでしょう。

by ebisu (2012-02-19 19:16) 



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*#1849 吉村昭『梅の蕾』: NHKラジオ文芸館より Feb. 18, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-18
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股旅の紋次郎

最近、根室市政に辛口だったH市議のブログから根室を憂える書き込みが姿を消しつつあるようです。地元の小学校改築、歯舞診療所改築、新病院仮オープンと無批判な提灯持ち的な書き込みが続き、そしてこれからは「北方四島返還」の記事が中心に成って行くような予感がします。確かにそれらのissueは根室市にとっては大きな出来事でしょう。しかし、それも根室市が存続することが前提での話では。

大所帯の家が有ります。ただでさえ食費が嵩むのに、一人出来の悪い子が輪を掛けた大食いで一家のエンゲル係数を引き上げる一方。しかし父親はその子を叱るどころか一緒に成って食べ歩き・・・これでは家計は改善しないどころか早晩破綻して夜逃げは自明の理。しかし誰もその父親を諫めません。勿論大食いの腕白坊主も野放しです。

新病院オープンに対して「新病院 冥土の旅の一里塚」と一休禅師に成り替わり苦言を呈すべきH議員も皆と一緒に飲めや歌えのお祭り騒ぎ。まさか「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らん」と大石内蔵助を演じているのではありますまい。

どうもEbisuさんだけが悪役を引き受けて根室の未来を慮っている様な・・・。差し詰め(本当は地元では名君の呼び声が高い)”吉良上野介”と言ったところでしょうか(笑)。

誓い将来、案外何年か先。水晶島を見渡す納沙布岬の崖の突端に墓標が立ち、「根室市、ここに消滅す」と書き込まれた碑文を見ながら涙に立ち尽くすEbisuさんの姿が有るかも知れません・・・。

              合掌
by 股旅の紋次郎 (2013-02-23 14:18) 

股旅の紋次郎

そう言えば、先日道新の道東版に載っていた根室市の新年度予算の話。確か病院への繰入金の話は載っていまかったような・・・。
by 股旅の紋次郎 (2013-02-23 14:26) 

ebisu

股旅の紋次郎さん、こんばんわ

>根室市政に辛口だったH市議のブログから根室を憂える書き込みが姿を消しつつあるようです。

志を貫き通すというのはつらいもののようです。いろいろ差しさわりがありますから、だんだん物を言えなくなるのは、普通の市民の普通の生き方です。ケセラセラでいいではありませんか。

>そう言えば、先日道新の道東版に載っていた根室市の新年度予算の話。確か病院への繰入金の話は載っていまかったような・・・。

ここに21日付の北海道新聞根室版がありますが、たしかに新病院への繰入金が載っていませんね。
166億円の予算のうち、18~21億円になるはずですが、ありません。
北海道新聞の取材は甘いですね。病院の赤字補填金が院案会計から病院事業への繰出金ですが、載っていません。載っていなければいくらなのか訊くべきです。

北海道新聞根室支局はこのごろ文芸新聞になってしまったようです。
「歯舞 コンブの浜 冬」がいいですね。大好きです牧歌的な北海道新聞も。(笑)

by ebisu (2013-02-24 01:57) 

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