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#2199 中3の授業進捗管理について Feb. 3, 2013 [64. 教育問題]

 Hirosukeさんがある教科書会社の年間授業時間数を示した表を紹介してくれた。中3数学は年間140時間、そのうちに38時間の予備時数が含まれている。

*http://www.nichibun-g.co.jp/download/c-sugaku/h24/nenkei/h24nenkei_sugaku2.pdf

 もうひとつ、東京書籍のものを例示する。こちらはブログ「情熱空間」から。
*http://ten.tokyo-shoseki.co.jp/downloadfr1/pdf/jmc89964.pdf

 どちらもほぼ同じだから、これが標準スケジュールなのだろう。#2189で問題にした中学校はこの標準スケジュールで12月初旬のところをこれから(2月4日以降に)はじめることになる。時間が足りなければ土曜日に数時間やればいい。やれないわけはないから、そうした努力をする学校や先生たちを地域社会は温かく見守ってやればいい。
 学校は各科目の授業の進捗状況を点検して、2月中に教科書すべてを終了するように動き始めた。来年度はまったく違った進捗管理体制になるのだろうとわたしは期待している。
 すぎてしまったことは仕方がないし、これから強引にリカバリするのだろうが、仕事だから当然だ。当たり前のことを当たり前にできる学校、そうなってほしい。
 わたしは来年度計画で進捗管理がどのようになされるかに注目したい。この問題をきっかけにして市内各校の授業の進捗管理がすこし改善されればいい。諸々問題があるからゆっくりじっくり確実に。
 学校内部の授業進捗管理体制は外部から見るとまことに分かりづらい。外部から誰かが発言しないとなかなか改善できないのも事実なのだろう。組合との関係もあるから、学校管理職が授業についてあまりとやかく言えるような環境ではないのかも知れぬ。でも任せっぱなしにするとこういうことが起きる。
 民間会社ではこのような仕事の進捗管理はまったく考えられない。外部となら契約関係、内部なら業務規程があるからだ。学校は一般常識とはかけ離れた世界である。甘すぎるから、民間企業の常識に近づいたほうがいい。

 なぜこんなにきつい指摘をするのか、なぜこんなにシビアな問題をブログで取り上げるのか誤解があるようだから一言書いておく。
 わたしたち団塊世代の役割は若い人たちを育てることにあると考えている。そういう年齢なのである。育てるためにはときに褒め、ときにきついことを言わねばならぬ。発奮して来年度の進捗管理に目覚しい成果を見せてくれればいいのである。そういうことを期待してブログを書いている。人材を潰すために書いているのではない。

 わたしも学校の進捗管理がどうなっているのか知らなかったのでもう少し問題点を考えてみたい。
 この標準スケジュールでは1月末までに教科書全部を終わるようになっているが、当然のことで、そのあと複合問題の演習をやる時間をとらなければならない。単元ごとの知識で解けるのは60点満点で35点前後だ。入試で40点以上とるためには2分野以上の複合問題演習が必要なのである。

 3校の生徒に質問してみたら、主要5科目で1月末までに教科書全部を終わったのはB中学校の国語である。英語は最後の"Program 10"をやっている学校があるから、「誤差範囲」と考えていいところもあるのだろう。
 道立高校は2校で全入状態だからついつい授業の進捗管理がルーズになるのかもしれない。ほとんどが1月末に終わっていないことは事実なのだ。授業の進捗管理は我が母校だけの問題ではなく、市街化地域3中学校に共通した問題であるようだ。問題の小さい学校や科目もあるし、比較的大きな問題を抱えている学校や科目がある、濃淡の差があるということ。

 もし、複合問題をやらずに終了するとどうなるか?高得点層で塾に通っている生徒は複合問題をたくさん解いているから問題ないが、大半の生徒は複合問題が解けず、得点が35点以下となる。
 根室高校普通科は進研模試をやっているが、毎年1年生の数学の平均点が20点台(百点満点)である。びっくりするほど低いがそれが全国レベルでの根室高校普通科のレベルを表している。本名に低レベルになるのはこれは中3のときに複合問題に慣れていないことも影響しているのではないだろうか?高校入試問題と比べると複合問題の割合が多い。

 中2や中1の生徒たちの授業が3月までかかってしまったら、やはり複合問題がやれない。翌年の学力テストで1月から3月まで大急ぎで処理した分野の複合問題ができるのは上位層だけになる。

 学校の授業では前半の計算問題を丁寧に教えるから、後半部の図形や証明、確率分野などは授業速度が大きくなりがちである。これらの問題を解けない生徒の割合が増えれば、学力テストの平均点は下がるに決まっている。

 中3の授業の進捗がこれだけ遅れてしまうのはなぜだろう?
 一つ疑われるのは学校行事である。年間何時間の授業がつぶされているのか私たちには情報がない。学校関係者以外はだれもこうした情報を知らないだろう。
 もうひとつは「丁寧に」教えることで遅れがでること。生徒を落ちこぼしたくないのは誰しも同じだろう。しかし、そうすると1月中には教科書全部は終わらない。入試ギリギリまでかかってしまい、複合問題演習時間がとれなくなるのである。

 これでは成績上位層が減少して当然だ。成績上位層を増やすためには授業の進捗管理をもっとしっかりやらなけらばならない。生徒の理解を低下させずに標準スケジュールどおりに終わらせるのは結構たいへんだろうと思う。

 市街化地域のうち2校は習熟度別クラス編成をして対応している。理解力に大きな差がある生徒達を一つのクラスで教えるのはたいへんだ。だから、能力差でクラス分けをする、そこまではいい。だが、授業速度を同じにしないと共通の問題で定期テストができない。理解力の高いクラスも低いクラスも同じ速度というのはやはり無理がある。共通問題でのテストをやめると今度は成績の上がった生徒を上のクラスへ入れるときにやっていない分野があることになる。こうして考えるとなかなかむずかしい問題を孕んでいる。
 実際の授業を複数見たが、成績下位層の授業はやはり問題があった。そのままにしておいたらまずいケースもあったが、改善されていない。このあたりは地域社会と学校とのコミュニケーションに課題を残している。
 成績上位層に比べて下位層は教え方が格段にむずかしい。成績下位層に若い先生を充てている学校もある。スキルの一番高い先生が担当すべきで、ベテランでも成績下位層の指導に自信のある先生はいないだろう。
 何を根拠にそんなことをいうのかと思われるだろう。事例があるからだ。学力テストで零点の生徒がその1ヵ月後に定期テストで88点をとったことがあるが、学校の先生の反応は「いったいどうなっている」だった。「ニムオロ塾で毎日4時から2時間勉強しました」、個別補習で対応しただけでなにも変わったことはしていない。一桁だった生徒が2ヶ月ほどでやはり80点を超えることはたまにある。同じ先生がC中学校からA中学校に転勤になって同じようなケースが複数でたので、また生徒に確認した。「いったいどうなっている?」、どれも特別変わってことはしていない。個別補習を2ヶ月ほど毎日やっただけ。集団指導では100%救えないケースだった。低学力の生徒は一定期間個別対応が必要なのである。点数が取れたら、後は自力でやれるようになる。自信が生まれるからだ。スポーツだって実力が同じなら自信のある者が勝つ。

 成績下位層には放課後補習をしなければ、同じ授業速度の授業は無理とわたしは考える。それにはブカツを週に2回ほど制限しなければならない。
 ここをなんとかしないと、中3の数学授業を1月末までの終わらせ、複合問題演習をする時間をとれないのではないだろうか?

 わたしはある中学校の先生が、自分の担当のブカツの生徒の日本語能力に問題を感じてもう1年以上も毎日200字の作文添削を続けていることを知っている。短文が読めて書けなければわずか2行しかない数学の文章問題ですら意味を読みきることができない。その生徒にとってトレーニングは必要なのである。分厚くなったその原稿用紙のファイルをみるたびに「ありがたい」と頭が下がる思いがする。

 授業の進捗管理はさまざまな問題を孕(はら)んでいる。しかし、そこにメスを入れなければ根室の子ども達の学力向上はないのだろう。 

【提言】
 科目ごとの授業時数と行事でつぶれた時数を学校のホームページで毎月公開したらいい。計画対比で授業がどこまで終わったか、毎週データを更新できればなお素晴らしい。
 生徒も保護者も先生も、現実の姿を数値で確認すれば、緊張関係が生まれて自主的に状況を改善できるのではないか。

【プロということ】
 プロフェッショナル(本職)とはレベル(品質)を落とさずに指定された期限内にたんたんと仕事を終えることのできる人間を言う。
 民間会社では契約の納期を守れなければ損害賠償が発生する。
 私の担当ではなかったが、あるSEが顧客に提示した開発見積もりが甘くて、責任上残業に次ぐ残業(ただ)でカバーしようとして、おかしくなり、自殺した事例を聞いたことがある。仕事が未熟な者同士が組むと悲劇を生むことがある。現実の社会ではそこそこ仕事のできる者が30前後から責任ある立場に立たされたときが危ないのである。実力が本物かどうかが試される。わたしは精神的に弱そうな生徒にはコストと納期管理の厳しいSEの道を薦めない。
 プロフェッショナルは責任も重い。

 生徒達の大半は、将来、公務員ではなく民間会社で働くことになる。学校の先生たち、仕事の厳しさを背中で教えるいいチャンスだ。

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*#2199 中3の授業進捗管理について Feb. 3, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-03-1

 #2200 ある中学生の意見 授業の進捗度について(釧路・転載記事) : Feb. 6, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-06-1

 #2201 ハネムーン期間(ブログ「情熱空間より転載」) Feb. 6, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-06-2

 #2202 中3の授業進捗管理(2):騒ぎはなぜ起きたか? Feb. 7, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-07

 #2021 母校(中学校)の校長・教頭先生との対話(3):授業速度と学力  July 20, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-07-20

  #2216 所得税申告と期限遵守の重要性:学校の授業進捗管理を考える Feb. 18, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-18



【2月17日追記】
 関係者が反省すべき点を箇条書きにします。
①生徒へのアンケートで引用した文章は#2189の意図を捻じ曲げるものであったが、作成した当のご本人は「文章をまとめる」という教育技術上の基本に立ち返ってその技術を磨きなおすことを希望します。教育者として素直に努力する姿を生徒に見せてやればいい。

②この「アンケート」は上司である校長や市教委の了解の元になされたはずだから、それらの人たちは同罪であると心得ること。オリジナルと比べてみたら、中3の国語の問題で文章を要約しろとの問題だったとしたら、零点の答案だった。教育者(校長)や教育に関わる行政機関としてはまことにみっともない。

③学校が実施した「アンケート」に煽られて愚かな書き込みをした生徒諸君への忠告。
 かならずオリジナルを読み、自分の目で事実を確認してから書き込むこと。そして個人が特定されるようなハンドルネームの使用は避けること。

④アンケート作成者へ
 文章をまとめるという基本的な技倆を磨くこと。そして教育者に大事なことはまっすぐな心根をもつことです。母校の第一期の卒業生が7月13日のフリー参観ではじめてお会いして、ブログに授業参観の感想を書きますとはっきりご挨拶しておいたのに、そこで指摘した数学の授業進度への懸念に何も対策をとらなかったことが今回の「騒動」で明らかになりました。これは管理職として職務怠慢ですから、反省してください。ebisuは怒ってはいません。あなたが今回の「騒動」を通して優秀な管理者へと成長されることを心の底から祈っています。だから、たいへんなチョンボのあった市教委にもオフィシャルなクレームは一言も申し上げていません。

⑤私がブログで個々の教育問題をとりあげるのは、ふるさとの子供たちの学力が全国最低レベルのままであることにガマンがならぬからです。そのためにはきついこともブログで書きます。意図をとりちがえないように。
  


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