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#2121 田中文科大臣3大学不認可を撤回 Nov. 9, 2012 [A.6 仕事]

 ジャパンタイムズに関連記事が載っているので紹介方々、この問題に"仕事"という観点からコメントしたい。
 http://www.japantimes.co.jp/text/nn20121107a1.html
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Wednesday, Nov. 7, 2012

Tanaka backpedals on new universities snub

Kyodo

Education minister Makiko Tanaka indicated Tuesday that she may allow the establishment of three universities if they meet new criteria, backpedaling from her earlier rejection of their planned construction.

 

Tanaka, known for her often forthright manner, told a news conference that the government will set up a council on the founding of universities and create new guidelines in the near future.

"The three universities will be examined in light of the guidelines," Tanaka said.

She decided last week not to approve the institutions in Akita, Hokkaido and Aichi prefectures, which were planning to open next spring.

"I want to improve the quality of education by preventing the number of universities from becoming excessive. That was my real intention," Tanaka said in explaining her blocking of the establishment of the three new schools.

・・・・・(以下省略)

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 20年前と比べると大学の数はおおよそ520から780に50%も増えている。子供の数は減っているからこんなに大学が必要かという疑問は、あたりまえのことだ。団塊世代の頃に比べると大学の数は2倍、子どもの数は半分である。
 高校が実質全入になってから高校のレベルは落ち、学校間格差は拡大したから、大学も同じことだろう。

 たとえば、標準的な普通科の教科書や問題集を使ってやる高校の授業に全員がついてこれるわけがない。北海道公立高校レベルで言えば、その最低点は150点だろう。
 10月11日実施の学力テスト総合Bでは市街化地域の3中学校の中3年生212名中49.5人、23.4%が150点超の階層に属する。学力水準という観点からは、根室市内には郡部を含めても70人の高校普通科定員があれば間に合うという計算になる。
 この試算から見ると、根室高校普通科120人、根室西高校普通科80人の合計200人の普通科定員は必要数の3倍もあることになる。

 200-70=130人のうち半数は中学校や小学校の学習からやり直さなければ高校の授業についてこれない。数ヶ月間の学びなおしと、授業レベルの低下が必要になる。高校生一人当たり年間60万円から80万円の公費がかかっているのだが、かける必要がほんとうにあるのだろうか?
 公立高校の過剰な定員が高校の学力低下に拍車をかけていることは否めない事実である。

 同じことは大学にも言える。レベル低下にあわせるように、高校課程の学び直しが大学で行われるのがだんだん普通になってきている。
 この20年間に250を超える大学を学校設置審議会が認め、歴代大臣はメクラ判を押してきた。設置審議会が大学総定員枠について何のビジョンももたぬままに、官僚がお膳立てした資料に基いて書類が揃っていることだけチェックして認可したきたのが実態だろう。そして大学の過剰と大学生の学力低下が著しく進んでしまった。
 田中大臣はこう言っている。
"I want to improve the quality of education by preventing the number of universities from becoming excessive. That was my real intention,"

 数を減らすことで過剰な状態を解消し、教育の質を向上させたいというのは正論だろう。問題は何を基準にどのようなスケジュールでやるのかということ。既得権益がからむから容易な仕事ではない。いったん認可してしまうと後始末がたいへんになるから、設置はよくよくナカミや必要性を検討すべきだ。一つ例を挙げておくと、2004年に認可した創造学園大学(堀越学園が設置)は来年3月に解散命令が出される予定になっている。

 大学定員は18歳の人口に対して、適正規模はどれくらいの%だろうか?三分の一くらいに考えて、あとは専門学校や職業訓練校という考え方もある。いろんな物資を国産で賄うために鎖国に近い管理貿易も考えていい。国内に雇用を増やし、仕事を分かち合うというビジョンのもとに経済社会のあり方を見直すときに来ている。私たちは時代の大きな転換点を通過しようとしている。

 田中大臣は事前に官邸サイドに了解を求めたという。弁護士出身者が何人もいるだろうに、行政訴訟で勝てないことぐらい誰かが言えばいいだけだ。ほうっておいたのだろうか?だとしたら、官邸サイドが無責任ということになるし、気がつかなかったなら、無能ということになるだろう。

 田中大臣自身がガードが甘かったことは事実だ。しかし、撤回する必要はなかった。大学定員は過剰だし、大学入試制度のあり方も問題が山積みなのである。制度を一度見直す必要はあるのだから、行政訴訟を覚悟で踏み込むべきだった。
 このケースに限って行政訴訟は負けていい、問題はその負け方である。正々堂々と正論を吐いて、大学設置についての従来のあり方を見直せばいい。

 この人は街頭演説の名手である、それで充分ではないか、大臣はいささか似合わぬ。
 彼女には法律に関する知識と覚悟がなかっただけで、言っていることは至極当然のことだった。だが、知識のないことと覚悟のないことが致命傷だ。仕事はこの二つとさらに志の高さがあるとなんとかなるもの。それで何とかならなければ、潔く敗れてみせるだけ。

 戦国時代の武将は負けることを恐れていない、勝ち負けよりも優先する価値をしっかりもっていた。勝ち負けを度外視して、己の主義・主張を貫くことこそ彼女がやるべきことであった。
 正々堂々と戦い、潔く敗れるシーンには美学がある。目先のことばかり考えて、覚悟のある政治家がいないのが残念である。

 周章狼狽の68歳、オヤジ(田中角栄)の名前を汚すことになるから、もう大臣なんて引き受けるのはよしたほうがいい。


*#2127 大学新設に関する森永卓郎氏の意見 Nov. 12, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-11-1

  #2123 Ms. Tanaka's irraional decision Nov.10, 2012  
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-09-1

 #2121 田中文科大臣3大学不認可を撤回 Nov. 9, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-08


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もやしさんま

大臣にならねば本当の政治はできない。この人にはもっと重要閣僚になって欲しい。しかし支えるはずの同志があれではどうしようもない。
国の助成をもらう私大には国はもっとモノを言って良い。特に給与とか。



by もやしさんま (2012-11-09 13:04) 

ebisu

田中真紀子大臣には有能なブレーンがいないのでしょう。わがままだから、有能なブレーンはよりつかない、いたとしてもほうりだしている。おそらく性格が災いしています。
そして善良で有能な仲間もいない、誰かに相談すれば問題点はすぐに判明しただろうに、相談する仲間がいない。
権限をもっても(大臣になっても)、わがままで、有能なブレーンがいなければ、難易も仕事はできないことを、二度も示さずともいいものを・・・

ところで、私大の助成金については政府が直接分配しているわけではありません。
私学振興財団というのがあって、そこが補助金の分配をしています。
いまも現職ではないでしょうが、その財団の融資部長は大学のゼミの先輩Tさんでした。世の中は案外狭い。その昔、ちょっと面白いタイトルの修士論文を書いていました。それなりの人物です。
by ebisu (2012-11-09 13:42) 

もやしさんま

ブレーンはいなくてもいい、ブレーンがあれば。
by もやしさんま (2012-11-09 20:52) 

もやしさんま

これは失言でした。ブレーンはいたほうがいいが、ある方がもっといい
by もやしさんま (2012-11-09 20:53) 

Hirosuke

脳あるブレーンは、No.と言う。

No.なきブレーンは、能がない。

能ある鷹なら、爪を研ぐ。

研がぬ鷹なら、用はない。

by Hirosuke (2012-11-09 23:17) 

ebisu

語呂合わせですか、日本語は面白い。
やってみたけどうまくいかない。
だれかHirosukeさんのあとに続けてくれませんか?
by ebisu (2012-11-10 00:15) 

Hirosuke

爪ある鷹はマシであり、
鳴かぬ鳩はムシである。

「無私」なら存在する価値があり、
「虫」さえ世に貢献するが、
「無視」の如き存在なり。

by Hirosuke (2012-11-10 11:04) 

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