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#1736 鎖国のススメ Nov. 18, 2011 [A4. 経済学ノート]

 以下は、先週依頼されて書いた原稿の下書き2本のうちの一つである。字数の関係で4割程度削ったが、まだ削り足りない。さて、どこを削ろう?

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【グローバリズムの負の側面】

トヨタ自動車会社は海外に生産拠点を増やし、世界ナンバーワン企業になったが国内雇用が増えるわけではなく、トヨタの米国工場で米国民の作った車を米国民が購入している。ユニクロの製品は安くて良いが、生産はほとんどが海外である。国内の衣料メーカーはその分売上を失い、働いていた人々は職を失った。グローバリズムやその延長線上にある経済成長路線には地場産業の衰退と雇用減という現象が伴う。

【グローバリズムと癌細胞の相似性】

 グローバリズムは利益の極大化が至上命題であり、視点を変えてみるとコントロールを失って増殖し続ける癌細胞のようだ。経済現象と生物の病理現象だから相同性があるわけがないのだが、なぜか相同性を感じてしまう。グローバリズムもある種の病理現象なのである。

【日本文化や価値観の深層】

 日本の歴史では縄文時代が1万年、弥生時代が400年ある。大和朝廷成立以来古代国家から考えても1700年だから、縄文の文化の影響が日本人の深層に色濃く残っている。

 縄文文化の支流の一つがアイヌの文化であるが、アイヌの狩猟や漁労は本来商品生産ではない。自分たちが食べる命を神からいただくのであり、殺し・食べることで神のもとへ送り返すのである。だから余分な生産はしない。私はそこに小欲知足の世界をみる。

 山の斜面に美しい棚田がひろがるのも、神社の鎮守の森が全国各地に今も残るのも日本人が12千年にわたって小欲知足の生活を守り自然と共生してきたからではないのか。

【鎖国のススメ】

 仮に江戸時代の鎖国に似た貿易統制を行うとしよう。
 トヨタに不都合があるだろうか?日本国内向けは日本の工場で、海外向けは世界各地の工場で変わらぬ生産を続けることができる。ユニクロは海外からの仕入れ分に関税が掛けられ国内での製品価格を上げざるを得なくなるだろう。販売量は減少し、その分、国内生産が増える。海外で精算し海外で販売する分に関しては影響がない。
 しかし、国内で生産して海外へ輸出する製品群をもつ企業が苦しくなるのは事実だろう。報復関税適用がありうる。海外へも生産拠点をもたざるを得なくなるかも知れぬが、それはそれでいいではないか。日本へもそうした企業が来れば国内生産は増え、雇用も増える。
 いずれ日本の企業は海外へ生産拠点を求めるか国内市場向けだけで縮小再生産するかの選択を迫られるだろう。品質に優れ付加価値の高いものを作る企業はしっかり生き残る。
 自国で生産できないもの、自国での生産費が極端に高くなるもののみを相応の関税をかけて輸入すればいい。

【世界中で一番自給自足に適した国の中の北海道】

 食糧の貿易を制限し国内での自給率を上げることになれば北海道の農水産業は飛躍のチャンスである。原料供給だけではたかが知れている。加工技術を開発すべきで、北海道人はどうもその辺の努力が足りない。根室の町だって優れた加工技術があれば雇用を2倍に増やすことだってできる。基礎学力が高くないと優れた加工技術の開発ができぬことは当たり前。全国47都道府県で最低の学力の北海道で、14支庁管内最低レベルの学力ではお話にならぬ。豊かな水産資源を活かすためには、全国でもトップレベルの優秀な人材(技術と教養)が必要だ。まずは地元の子どもたちの基礎学力を高めると同時に、数少ない優秀な子どもたちを徹底的に鍛え抜こう。そのための具体的なプログラムをもつことだ。

【資源豊かな国土と排他的経済水域を汚染するな】
 排他的経済水域を入れれば日本の主権の及ぶ範囲は世界で
6番目だという。海に目を向けると日本は資源大国である。
 日本列島には四季があり東西南北に長い弓形をしており、自給できるものは他の国に比べても種類が圧倒的に多い。気がつくべきだ、日本が世界中で一番自給自足に適した国だということに。だから、国土や海を放射能や重金属で汚染してはならぬ。

【縄文の価値観への回帰】

 グローバリズムに背を向けて、自然と共生しながら欲望を抑えて暮らすという生活スタイルは12千年の日本の歴史からみても流れにかなっているようにみえる。

 グローバリズムの元になっているのは宗教(プロティスタンティズム)とヨーロッパで生まれた経済学である。それは工場労働をベースにしているが本をただせば古代ローマの奴隷労働に行き着くのだろう。

 日本人がそんなものに同調する必要はない。日本人の労働観はまったく異なる。刀鍛冶の仕事始めの禊に見るように、仕事は神への捧げ物をつくるためにこそあった。だから、日本人は仕事の手を抜かぬ、神が見ているからだ。あらゆる分野・業種にさまざまな職人がいて、名工・名人と称えられる人も多く、世間の尊敬を集めている。私たちが住んでいるのは時間で測定される工場労働の社会ではなく仕事の出来で認められる職人仕事の経済社会であるのだろう。

【経済の縮小・安定を受け入れよう】

 日本は人類史上最高速の高齢化社会に突入してしまった。すでに国内消費はターニングポイントを通り過ぎ、縮小段階にある。

 人口は1.3億人から8千万人に向かって減り続け、国内経済規模の縮小はさけられぬが、それでいいではないか。すべてを肯定的に受け入れたらいい。

医療費と教育費はタダ、仕事は分かち合う。生活スタイルを変えられれば、人口が半分になれば食糧自給率(平成22年度生産額ベースで69%)は100%を超えるだろう。
 鎖国しても小欲知足を旨として生活するなら国民全部が仕事を分かち合い安全・安寧に暮らすことが可能だ。

【広い視野は豊かな教養から生まれる】

 価値観の転換を伴う大きな経済社会の転換は、広い視野に立って、総合的な判断をしながら数十年に渡り努力しなければなしえないものなのだろう。

 釧路と根室の将来を広い視点で考えるためにはたしかな基礎的学力が必要である。それは昔から言われているように「読み・書き・ソロバン(計算)」能力に他ならぬ。

 全国学力テストの結果によれば北海道は47都道府県中44番目、根室は残念ながら道内14支庁管内で最低レベルにある。

 地域の子どもたちの学力を上げることが、根釧地域の将来を明るいものに変える。老パトリオットはふるさとのこの地がもっと住みよいものになってほしいと願っている。

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*「#1735 TPP?ちょっと立ち止まって考えよう:異質な経済学の展望
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-11-17-1

#1734 ブータン国王夫妻来日:「国民の95%が幸せ...屈託のない笑顔」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-11-17


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