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#1592 根室の町の高校統廃合問題 July 22, 2011 [64. 教育問題]

 最近道新で2度高校統廃合問題が採り上げられている。一つは7月13日の記事だ。

 根室市内の高校統合
学力差への対応課題
 
 検討委、協議継続を確認
【根室】市内の苦項のあり方について考える本年度最初の「根室市内高校問題検討委員会」(長谷川敬二委員長)が12日、市役所で開かれた。道教委が再編の検討を進める根室高、根室西高の2校について、学力差など統合に向けた課題について継続して協議することを確認した。(笠原悠里)


 記事本文は省略して、概要のところのみ転載した。
 この検討委員会の委員長は「病院建て替え市民整備委員会」委員長でもなかっただろうか。たしか、町会連合会の会長でもあった。高校の先輩で、一度病院問題で直接話しを聞いてもらったことがある。「~市民整備委員会」は結局市側に利用されただけだった。委員の中には現実的な損益計画すら市側から一切提出されなかったことに怒りを述べる人もいた。明日道庁へ書類を出さないといけないので承認してほしいなどというデタラメな運営がなされ、実質審議のないまま市側の原案を承認し、チェック機関としてほとんど機能しなかったのである。

 この委員会の他に「高校問題を考える根室保護者の会」(清水口顕誠会長)や20日に開かれた「第2回公立高校配置計画地域別検討協議会」というのがあるらしい。

 さて、2番目に紹介するのは7月21日の北海道新聞記事である。

 「学力差対策が急務」
 根室の高校統合 協議会で意見相次ぐ
 本年度2回目の根室管内の公立高校配置計画地域別検討協議会が20日、根室振興局で開かれ、道教委が提案している2015年度以降の根室高と根室西高の再編・統合案について、出席者から「(2校の)学力差を埋めることが急務」との意見が相次いだ。・・・

 統廃合については反対がないようだ。あきらめというか代替案が出てこない。わたしは何度か根室西高校存続のために市側から年間1億円資金を拠出して、当分の間2校存続をすべきだと書いた。道教委と交渉の余地はあるだろう。そうして時間稼ぎをしている間に、学力格差の問題でも何でも真剣に取り組んでみたらいい。やるだけやることが大事だ。
 病院赤字を減らせばそれくらいのお金は簡単にでてくるが、60億円で建て替えを進めてしまった今では無理がありそうだ。それでも赤字を2億円程度減らす方法はある。市長と市役所は根室の首を絞めた。好い加減に目を覚まそうや。根室の町を衰退に導いているのは根室で生まれ根室で育った一部の生粋の根室人たち。

 この50年間見ても学力差は変わらない。格差は広がる傾向をみせ、学力全体が低下している。学力テストの平均点の推移や根室高校合格者の平均点推移にはっきり現れているだろう。
 学力テストの5科目平均点(300点満点)はこの5年間で20点ほど下がっている。5年前には根室高校普通科はFランク150点で3人落ちている。根室高校全体では昨年も今年も70点以下で20人以上合格しているのではないだろうか。
 この会議に出席した人たちはこうした実態をご存知ないようだ。根室高校はすでに大きな学力格差を抱える学校へ変化してしまっている。統合後に発生する問題ではなくてすでにこの数年間で現実となっている問題なのである

 学力という点からは、平均点が3割以下の得点では高校の教科を消化するのは無理がある。300点満点で100点で足切りをすれば高校に合格できるのは生徒の3分の2だろう。
 合格点を100点以上とすれば、高校を統合しても学力差はいまより小さくなり、いま根室高校内に存在する大きな学力差が解消できる。定員は160~180人で十分ということになるだろう。

 中学校が荒れている。毎日のように授業をサボり、体育館周辺でグループでタバコを吸ったり、授業を妨害したりして勉強をするつもりのない生徒を高校が受け入れる必要はないだろう。
 ブカツに明け暮れて勉強をせずに、5科目平均点が3割以下の生徒たちも学力という点では高校授業を受けて理解する力はない。高校では分数や小数の計算、あるいはアルファベットを書くことからはじめている。そんなことに一人年間60万円から80万円もお金がかかっている*。教育といえども費用対効果も少しは考えるべきではないのか。

(*このように中学形式卒業者に対する再教育が現実に高校で行われている。ところが「公教育への税金の二重支出」に当たるところからこれを行わないという位置づけになっている(行政管理庁 夜間中学早期廃止勧告1966年)。夜間中学ではだめと言いながら、昼間の高校では正々堂々と同じことが行われている。「釧路の教育を考える会」には有能な行政マンが数名参加しているので、最近そういうことを知った。)

 ここからは假定の話だ。
 百点未満を不合格にしたとしよう。一部は中標津や釧路へ流れるだろうが半分は職のないまま親に寄生することになる。
 こうした中卒者たちを受け入れてくれる地元企業はいくらもない。質の悪い労働力を抱えれば、自分の企業が存続できなくなるからだ。職もないまま子供ができて結婚し、生活保護の将来がみえる。釧路がそうなっている。地域経済の衰退の数十年前にまず子供たちの基礎学力がガタガタになっているということだ。逆に言うと、子供たちの基礎学力が高ければ町の経済の先行きは明るくなる。

 二つの記事を並べてみて、私の率直な感想は「根室の教育を考える会」が必要だということ。
 具体的に問題を論じるには普段からテーマに関する具体的な情報を広汎に集めて、さまざまな立場の人が集まって繰り返しオープンに議論することが必要なのだ。異なる分野の仕事のプロが集まらなければならぬ。
 行政に利用されるだけのクローズドな会、あるいは行政と持ちつ持たれつの会では根室の将来を語る資格なしと私は判断する。残念だが根室にはそういう類の会が多い。

*◎は高校統廃合について論じた記事、無印は関連記事である。

 ◎#1253 教育再考 根室の未来(5):第1部⑤高校統廃合(北海道新聞)
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-24

  ◎#1251 教育再考 根室の未来(4):第1部④高校統廃合(北海道新聞) 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-22

 ◎#1250 「教育再考 根室の未来(3):第1部③高校統廃合(北海道新聞)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-21

 ◎#1249 「教育再考 根室の未来(2):第1部②高校統廃合(北海道新聞)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-20

 ◎#1248 「教育再考 根室の未来(1):第1部①高校統廃合(北海道新聞)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-19

 #1152 「教育における投資対効果を考える」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-08

 #1127 「限度を超えた部活動の実例(釧路)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-07-23

 #1125 「公教育の充実へ予算を増強して」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-07-21

 ◎#1124 「高校2校体制を5年延長する現実的な提案」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-07-20

 ◎#1122 「高校統廃合問題:商業科と事務情報科は歴史的使命を終えたのでは?」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-07-19

 #1119 「地域経済と地域医療を支えるために:学力向上への提案(釧路商工会議所青年部で行われた講演会から)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-07-18

 ◎#1113 「道教委による公立高配置計画説明会(7/13)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-07-15

 ◎#1111 「根室の高校統廃合問題について「異見」あり(1)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-07-14 



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ZAPPER

> こうした中卒者たちを受け入れてくれる地元企業はいくらもない。質の悪い労働力を抱えれば、自分の企業が存続できなくなるからだ。職もないまま子供ができて結婚し、生活保護の将来がみえる。釧路がそうなっている。地域経済の衰退の数十年前にまず子供たちの基礎学力がガタガタになっているということだ。

補足させてください。私は約30年前に釧路の中学校を卒業しましたが、その頃に中学を出て働いた友人らは90点・100点(300点満点)程度を取っていました。ところが現在は、それを遥かに下回る50点・60点レベルの子がゴロゴロしています。

知的レベルは30年前の中卒の遥か下なのに、「とりあえず高校には行っておかないと…」などと言って高校へ行く。労働力の質は低下し、おまけに雇用情勢は当時とは比較のしようが無いほどに悪化をしています。必然的に負の連鎖が拡大再生産されることになります。

「それを知った地元を愛する大人達は、何をすべきか?」「しかもそれは、本気になったならば短期間での改善が可能である…」という問いです。
by ZAPPER (2011-07-25 22:03) 

ebisu

ZAPPERさんへ

団塊世代も同じことが言えます。家庭の事情で高校進学できずに中卒で働いた生徒が就職組みの半分はいました。勉強したいけどいけなかった子供たちの学力はそこそこでした。家庭の事情が許せば高校進学して喜んで勉強しただろうと思います。

経済的な状況がよくなって、公立高校の定員枠が拡大して、根室の場合全員が道立高校に入学できます。まったく学習意欲のない生徒が根室の中学生1学年250~300人の中に15%はいます。

雇用情勢の悪化が低学力層の子供たちを直撃しています。どういうことになるのか、大人は口を酸っぱくして伝えなければなりません。
そして、そういう生徒のやる気を喚起し、とことん付き合ってやる覚悟がいります。
やる気になれば何とかなるもの。
by ebisu (2011-07-25 22:37) 

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