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日本人の職業観:正直・誠実な仕事 #817 Nov. 30, 2009 [A4. 経済学ノート]

日本人の職業観:正直・誠実な仕事 #817 Nov. 30, 2009

 日本人の作ったものは国際的な評価が高い。たとえば、食品だ。中国で日本の粉ミルクが売れている。金持ちの中国人は中国製粉ミルクを買わずに、日本製粉ミルクで自分の子供を育てる。工業用科学物質メラニン汚染*が広がり、自国の製品が信用できないからである。

 日本にもかつては森永砒素ミルク事件(1955年)があった。乳質安定剤として添加していた第二燐酸ソーダーに製造工程で使われていた触媒の砒素が混入したために起きた事件である。原材料の品質管理がなされていなかったために起きた事件だが、この事件以降、日本企業は原材料の品質検査を厳格にするようになった。それでも品質管理の手抜かりからカネミ油症事件(1968年)が起きている。食用油の製造工程で触媒として使われていたPCB、PCDF(ダイオキシンの一種)が製品に混入してした事件である。その後台湾でも同様の油症事件が起きた。

 こうした「手抜かり?」による食品公害事件はあるが、日本人は人を騙してまで、自分だけが儲けようとはしない。
 「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしの商道徳が伝統としてある。商売は信用を第一として「損して得とれ」を旨とする。ライブドアや村上ファンドなどでだいぶん怪しくなっては来たが、「浮利は追わない」(住友家の家訓)のが、古くから続いている多くの企業の基本姿勢である。
 こういう商売の伝統をもって国では、詐欺的商法である「サブプライムローン」のような商品はごく一部にとどまって、巷に氾濫することはなかった。だから、金融危機の影響は日本は相対的に軽微であった。

 日本は正直な商売に徹し、品質がよいこと、適正な利潤で満足し、浮利を追わないことで国際的な信用を勝ち取ればいい。
 食品に関しては、安全・安心・高品質なものを作り、売ればいい。新しい産業政策として安心・安全・高品質を旗印にした「日本ブランド」を立ち上げてもらいたい。それには厳格な品質チェックをする品質保証機構が必要である。

 商売に関する国際基準は、自由競争、自己責任が原則で、騙す方よりも騙されるほうが悪い、弱肉強食のジャングルの論理である。それは欧米も中国も変わらない。違うところといえば、儒教社会の中国は同族を騙してはいけないということだ。イスラム教徒は同じ教徒を騙してはいけないし、お金を貸して利息を取ることすら戒律で禁じられている。イスラム銀行は通常の銀行とは経営形態が異なるようだ。しかし、それは同教徒に限定されたもので普遍性がない。世界中で日本人と日本社会のみが、相手が誰であろうと、信用を第一とした誠実な商取引をする国らしい。日本人の倫理水準が高く普遍的な証拠だろう。

 つまりだ、国際社会の中で日本が重要な地位を占めるためには、仕事は正直・誠実を旨とすればよく、それだけに徹することだ。
 それは国内でも同様である。製造業もサービス業も、民間企業も政府も地方自治体も、民も官も、すべからく正直・誠実に仕事をすることだ。職人仕事が正直・誠実な、そして高い技術に裏付けされた仕事である。名人の域に達した職人の仕事をする姿には無駄がない。必要最小限のエネルギーで仕事をきれいに成し遂げる技に裏打ちされている。

 ごまかしの仕事は長続きしない。一度ごまかせばそれをつくろうために次々と嘘をつき続けねばならなくなる。一時騙しおおせても、2度3度同じてでだまされるものは少ないし、そういうことをしたら社会的信用を失い、取引相手がいなくなるのが日本社会である。人をペテンにかける努力や五那珂市の仕事をすることは、まったく無駄なエネルギーだ。企業人としてさまざまな人、社内や社外の取引相手を見てきたが、不正直・不誠実な仕事ほど無駄なものはない。他人は気がつかないところで仕事を見ている。口がいくら巧くても騙しおおせるのは1年である。信用ができるか否か、その評判は本人が知らないうちに世間を回る。何も気にせず、正直・誠実に仕事をすることだ。仕事の勉強も同じであるから、中高生にそのことを伝えたい。

 病院建て替え問題、市議定数削減問題、市の財政に係る問題、根室市の来年度予算の問題、900兆円の国債残高と来年度50兆円を超えそうな新規国債増発、まもなく破綻する年金制度などなど、問題山積みである。残念ながら不正直・不誠実な大人が増えたから、問題は手がつけられないほどに巨大化してしまった。。
 日本人は伝統的な価値観を取り戻すべきだ。政治家も官僚も一流の職人がそうするように、正直に誠実に仕事をすべきだ。大変な痛みが伴うが、まだ間に合う。いまそうしなければ日本は今後十数年内の破滅的な財政破綻が引き金となるカタストロフィーが避けられない。日本経済は壊滅的なダメージを受け、30年の長期にわたって患うことになるだろう。
 さて、日本人は、そしてわが故郷根室に住む人々はどちらの道を選ぶのだろう?

*中国産食品の安全性・・・ウィキペディアより
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E7%94%A3%E9%A3%9F%E5%93%81%E3%81%AE%E5%AE%89%E5%85%A8%E6%80%A7

*森永砒素ミルク事件
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%AE%E6%B0%B8%E3%83%92%E7%B4%A0%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%82%AF%E4%B8%AD%E6%AF%92%E4%BA%8B%E4%BB%B6

*カネミ油症事件
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%8D%E3%83%9F%E6%B2%B9%E7%97%87%E4%BA%8B%E4%BB%B6
 
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