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国会議員による「事業仕分け」を見て(感想) #800 Nov. 12, 2009 [B7. 政治に求めるもの]

国会議員による「事業仕分け」を見て(感想) #800 Nov. 12, 2009
 民主党国会議員と民間人の「事業仕分け」をテレビで見た。蓮舫議員が興奮して質問し続けているのが印象的だった。
 質問の要は当該団体に「天下り」がいるかいないかであり、天下りがいれば事業の評価は「必要なし=ゼロ査定」となる。ほとんどがゼロか三分の一に削られていた。
 質問は同席している財務省の官僚が誘導しているように見える。ラフに大鉈を振るわせて最終的な査定・調整は財務省がやる、最初から最後まで財務官僚がしっかり主導権を握っているではないか。これが政治主導か?
 仕事の出来ないものが権限をもつとこういうことになる。仕事ができなくても、野党なら批判だけしていればいいからお気楽なものだった。実際の「事業仕分け作業」は、仕事のできない者たちが中身の議論や確認をほとんどせぬまま、形式基準でカットしているようにみえた。これを官僚主導といわずして何と言う?

 このやり方では実際に必要な事業があっても、当該団体役員に「天下り」がいただけで予算が大幅にカットされてしまう。あるいは仕分けられる側の出席者が説明が下手な場合にもカットされてしまうだろう。財務省がさじ加減をするのだろうが、あれだけインターネットによる実況中継やテレビで採り上げ煽ってしまって、あとで困った事態にならねばよいがと心配になる。

 重要な質問事項は事前に通知して調べて応えられるように改善すべきだろう。省庁担当者や当該団体理事長が全部を承知しているわけはない。コの字型に取り囲み、隙を突くかのような細かい質問を連発していた。インターネットで実況中継していたから、大衆受けを狙っていたのかもしれない。悪しきポピュリズム、「人民裁判」のような印象を受けた。
 「事業仕分け」は本来予算カットを目的とするものではない。不要な事業をやらないことであるはずだ。事業に優先順位をつけて、順位の低いものからカットしていく。だから、削減目標が明示できるし、野放図な削減にはならない「事業仕分け作業」であったはずだが、理想と現実の隔たりが大きい。内容をろくに吟味もしないで、短時間での結論は危うい。

 管理部門の30%のジョブカットというプロジェクトやったことがあった。各人が担当している仕事のリストを詳細に積み上げて評価を行う。各人の担当している仕事を日別・週別・月別・四半期別・半期別・年別に自己申告させ、そのうえで優先順位をつけて、優先順位の低いものから目標額に達するまで、ジョブ・カットを行った。
 それはそれぞれの仕事を担当している者とプロジェクト・チーム担当者との理解と納得づくで行われた。仕事がカットされたことと、仕事のやり方を変えることで、人員の30%削減が可能になった。とくにコンピュータシステム化してしまうと、仕事の精度が上がり、人員は数分の一になってしまう。ジョブカットと併用することで、人員削減効果が大きくなった。

 民主党国会議員の「事業仕分け」を見て、乱暴なやり方だと思った。あれなら1年生議員でもできるし、スキルはいらない。天下りがいるかどうかを中心に形式的に判断すればいいだけで、後の質問はインターネットで実況中継を見ている視聴者向けのショーである。
 蓮舫議員が国会で質問をするときの姿は舌鋒鋭くなんとも美しい。それは権力を持っていなかったからだ。しかし、昨日のあの姿は醜かった。権力を握ったものがあのように振りかざしたのでは「気違いに刃物」と言われかねない、民主党は「事業仕分け」のやり方に気をつけたほうがいい。

  職人は仕事の手間を厭わないし、ひとかどの職人は手を抜かない、そういう「ひとかどの職人」が民主党には何人いるのだろう。
 仕事をすることでしか仕事の腕を磨くことはできない。そういう意味でも、1年生議員にオブザーバーとして先輩議員の仕事をする姿を自分の目で確かめてもらいたかった。テレビ受けする姿とは別の、職人としての本来の姿を見ることができただろう。そして、そういう経験は、2期目、3期目に無様な先輩たちと同様にならぬように、たゆまぬ努力のきっかけとなりえたかもしれない。まことに惜しい人材育成機会を逃したと言えよう。


*新聞は「事業仕分け作業」をどう見たか
 事業仕分けスタート 初日から「廃止」連発(毎日新聞)
 
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091112ddm003010112000c.html

10年度予算の事業仕分けが11日、始まった。仕分け人は初日から「廃止」判定を連発。財務省は、過去最大に膨らんだ概算要求の削り込みに仕分け結果を活用する考えだ。「密室」での予算編成に慣れていた各省庁からは不満が噴出、巻き返しを図る動きも出ている。鳩山政権の「政治主導の予算編成」が試されることになる。

 ◇「民意」背に財務省主導

 「産科など必要とされている診療科に診療報酬の比重をかけるのは当たり前なのに、なぜできないのか」「開業医と勤務医の報酬が公平になるよう見直すべきだ」。医師、病院の収入源となる「診療報酬」の仕分けでは、厚生労働省への厳しい意見が相次いだ。

 社会保障関連費が増え続ける中、予算規模を抑えるには「診療報酬の見直しが必要」と財務省は主張。しかし、日本医師会の政治団体は自民党の強力な支持母体で、厚労省と日医は「医療向上には報酬全体の底上げが必要」との方針で足並みをそろえている。自民政権時代、なかなか切り込めずにいた財務省は、仕分けを使って、医療費を抑える流れを作ることを目指した。

 一方、医療危機への対応も待ったなしの課題。そこで財務省は、全体の診療報酬を抑えながら「眼科などの報酬を見直し、医師不足の産婦人科や小児科に反映する」考えを提示。これに沿って、診療科間のほか、開業医と勤務医の報酬格差がこの日の議論の中心になった。

 評価結果は「見直し」。財務省にとって「非常に有意義」(幹部)な結果になった。これに対し厚労省幹部は「こんなところでできる話ではない」と批判。日医の中川俊男常任理事も11日の会見で「診療報酬の内容をよく分からずに議論しているのでは」と切り捨てた。

 対立の背景には、行政刷新会議を予算削減の場に使いたい財務省と、中央社会保険医療協議会という診療報酬の議論の場を奪われたくない厚労省、制度見直しにまで守備範囲を広げたい刷新会議という3者の思惑がある。

 とはいえ診療報酬についての仕分けで、他の事業のように「どうするか」が示されたわけではない。今後、地方交付税や在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)なども仕分けされるが、政治的に難しいテーマでは具体的な見直し策を提示できない可能性が高い。そうなれば、仕分けを導入しても予算の決め方はこれまでと変わらないことになる。【平地修、佐藤丈一】

 ◇明確な判断基準なし 不満の省庁、巻き返し図る

 「予算のあり方を議論するという本来の目的から考えて、今日は良い議論ができた」。事業仕分けの統括役である民主党の枝野幸男元政調会長は11日の議論終了後、記者団に満足そうに語った。

 これまで予算編成過程を「不透明」と批判してきた民主党は、一般傍聴者も参加した公開の場での議論が透明性向上につながるとして仕分け作業を導入。与党、財務省、要求官庁の水面下の攻防の世界だった予算編成が、一部とはいえ一般公開されることになった。

 予算編成の仕組みの大幅な見直しを迫られた財務省だが、この日の仕分けでは議論をリードする場面が目立った。冒頭、財務省の担当主計官が査定方針を説明すると、その後の作業が事実上、この方針通りに進むこともしばしば。地方自治体への事業移管が決まった国土交通省の下水道事業では、終盤での主計官の「(低コストの)合併浄化槽でも下水道と同程度の機能を果たせる」との発言がほぼそのまま判定結果に盛り込まれた。

 鳩山政権の身内であるはずの山井和則厚労政務官でさえ、「若者自立塾」(3億円)の「廃止」に対し、「ニートから脱出した人たちにとって(塾は)命綱。いとも簡単に廃止と結論が出たことに違和感とショックを感じた」と、財務省ペースでの仕分けに怒りをぶちまけた。

 財務省は仕分け結果を「一字一句漏らさず」(大串博志政務官)予算削減に活用する方針。一方、攻め込まれる側の各省庁は、存廃を判断する明確な基準が示されないまま、次々と廃止宣告されることへの不満を隠さない。12月の予算編成に向け、各省の政務三役を巻き込み「仕分けはあくまで参考。本番はこれから」(事業官庁幹部)と反撃の構えを見せる。【谷川貴史】

毎日新聞 2009年11月12日 東京朝刊


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