#596 前々回ブログ、前置詞問題の答え [74.高校・大学生のためのJT記事]
前々回ブログ、前置詞問題の答え
いままで20回ほどもジャパンタイムズの記事を題材にブログを書いてきたが、今後はカテゴリーを"Japan Timesから"に変更する。
さて、前々回のブログで採り上げた文を確認のためにもう一度見てみよう。見出しとヘッドラインからだった。
Welfare ministry official arrested ( ) postage discount.(⇒見出しから)
Osaka prosecutors arrested a 39-year-oldwelfare ministry official Tuesday ( ) suspicion of falsifying public documents and using then to abuse the postal system's discount for disabled people.
最初の括弧には"over"が入る。これは難しかったのではないだろうか。すくなくとも、私には難しかった。
「厚生労働省の役人が郵便割引制度に関わる容疑で逮捕された」
Welfare ministry official [was] arrested over postage discount.
overの感覚は全面がびっしり覆われている、あるいは弧を描いて上方にというものであるという説明が最近買った前置詞の本に載っていた。正直なところ、わかったようなわからないような・・・容疑が濃いものであることを表現しているととっておこう。空一面に容疑の雲が広がっているような錯覚がする。(明快な説明があったらどなたかコメントして欲しい)
これに対して、後のほうは"on"が入ることにそれほど異論はないだろう。「公文書偽造および障害者用の割引制度不正使用容疑で39歳の厚生労働官僚を大阪地方検察庁が逮捕した」となっている。onはその一点に集中して圧力がかかっているさまをイメージさせるので、容疑がぎゅっと固まっていると読める。forでも構わないはずだがonを選んだところにこの書き手の受け止め方が表現されている。forでは単に理由を述べるに過ぎず、ぎゅっという感じ、容疑にかかる強い圧力がでてこない。
わたしには前置詞の感覚がよくわからない。いまだに判ったような気がしない。通常80%、せいぜいよくても90%当たればいいほうだろう。私自身も勉強になるので、Hirosukeさん方式で時事英語授業で採り上げた記事3つの前置詞を塗り潰してみたら意外と面白い。
4/30 "Flu fears spread as cases stack up" /84
4/30 "New flu fears" (editorial) /72
5/28 "Northdefies UNSC, restarts Yongbyon" /88
スラッシュの後の数字はそれぞれの記事で塗りつぶした前置詞の数である。記事を読んだ後と、読む前に2度生徒にやらせてみようと思う。面白いはずだ。何しろ私は面白かった。いいと思ったらやってみる、あるいはやらせてみることだ。
前置詞は前置詞に焦点を当ててたくさん英文を読んで感覚を磨くしかないようである。こういう方法なら数ヶ月で98%水準まではいけそうな気がする。英字新聞を前置詞に焦点を当てて読むことで、数千の前置詞問題を特訓するようなものだから、感覚が身につく量としては充分だろう。たぶん、書き手と事象の捉え方、頭の中のイメージの差異に起因する不一致が2%は残る。それはそれとして愉快だ。
個性や思想、人生観の違いが書き方や読み方にでるということだ。発信者と受信者はそれぞれ自らの経験と価値観と人生観を背負って対峙することになる。ジャパンタイムズを使った時事英語は楽しいぞ。
2009年5月31日 ebisu-blog#596
総閲覧数:110,256 /553 days(5月31日0時20分)
コメント遅くなり、すみません。
【over のイメージ】
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over:大きく全体に広がっているイメージ
<例> over the rainbow
over ~=~(の全体・全般)に関して
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【on のイメージ】は、ebisu さん解釈の通りだと思います。
今回の記事では、次のような意図で使い分けているのではないでしょうか。
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見出し→おおまかなイメージの over
本文→ピンポイントで詳細なイメージの on
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見出しではover でおおまかな嫌疑を示しておき、本文では on で「特にこの容疑で」と詳細に述べる。
僕は、以上のように感じました。
いかがでしょうか。
by Hirosuke (2009-06-03 16:38)
なるほど、overとonを対比してみれば一目瞭然ということですか。onの方が容疑の中身が個別的・具体的になっています。
ところで、大西泰斗氏の『ネイティブスピーカーの前置詞』をみると、overは6つのグループに分けています。
「乗り越える」イメージにつながる群、「出来事の結果」につながる群、「くるくる回る」イメージにつながる群、「上から見る」イメージにつながる”監督する”などです。
大西氏は次のようにも書いています。
「overの基本イメージは「ある物体の上を通過する」ということです。」
「overに限らずほとんどの前置詞で、共通したイメージなど描けないのです。皆さんのお手元の参考書にも「絵」で説明があるかもしれません。それも無駄ではないのです。しかし、overを「感覚的に使うためには、overの「気持ち」を理解するためには、もう一歩大きく進まなければならないのです。」
前置詞にはある程度空間的なイメージが伴っているが、それだけではわからない。一般⇒特殊⇒個別と書くと、一つの前置詞をいくつかの特殊なグループにまで分けて理解しなければいけないようですね。大西理論は前置詞を3段階に分けて無理なく捉えようとしているように見えます。グループ分けしたそれぞれに個別具体的な事例がぶら下がる。
大西氏はその点を「家族全員に共通した顔の特徴がないのと同じこと」であると説明しています。
以前、大西氏の本を薦めていましたね。田中茂範先生の『絵で英単語 前置詞編』もみましたが、私には大西先生の本の方がわかりやすいように感じました。
でも、前置詞に意識を置いて場数を多く踏むことが一番のようです。Hirosukeさんのコメントでそう思いました。
ありがとうございます。 m(_ _)m
by ebisu (2009-06-04 00:27)
僕も準1級合格当時は、over に「~に関して」の意味があることを知ってはいたものの、辞書を見るたびに疑問に感じていました。
『ネイティブスピーカーの前置詞』に出てくる「家族の顔」の例えを読んで、「ナルホド」と納得できたのです。
大西泰斗先生は、今、大学受験生向けの文法書を執筆しているそうです。
この本でも前置詞がかなりの幅を占めるそうです。
出版が楽しみです。
by Hirosuke (2009-06-04 10:20)