SSブログ

#4362 デジタル通貨の未来:今日は全道停電を引き起こした胆振東部地震の日 Sep. 6, 2020 [A5. 通貨の未来]

 NHKラジオ朝7時台の番組を聞いていたら、デジタル通貨に関する本の著者・澤大学教授中島真志さんが出てきて面白い解説をしてくれた。
 ビットコインのようなデジタル通貨が紙のお金にとってかわるかに見えたが、いまは「暗合資産」に分類されて、投機の対象となっており、通貨としての未来はないことがはっきりしてしまった。投機商品は通貨にはなり得ない。いま有力なのはFB社が計画している通貨「リブラ」である。これは各国の中央銀行の抵抗にあって、実現がいまのところ暗礁に乗り上げている。後で論ずるが通貨主権の問題がある。その虚を突いてデジタル人民元の準備が整ったようだ。中国の高官が相次いでアナウンスしているという。2022年北京冬季オリンピックで大々的に宣伝・実施になるようだ。中国は2014年ころからデジタル人民元の検討に入っている。中国の意図は明らかである、デジタル通貨の覇権を握ることで、人民元を世界貨幣に押し上げようとしている。
 通貨は、綺麗な貝殻などの商品通貨として現れ、金属技術が確立すると金属貨幣の時代へ変わる。鋳造技術がよくなるとコインや小判のような鋳造貨幣へ進化し、近代国家が現れると紙幣通貨の時代へと移る。時代時代で、最先端の技術を駆使して貨幣はその姿を変えてきた。それゆえ中島氏は、デジタル通貨への移行もまた必然だと主張する。ここまでが中島氏の解説である。

 デジタル通貨への移行が必然として、中身がどうであるかが問われる。いくつかの問題が予想される。
 三つ気になることがある。
●一つは通貨主権の問題である。
●二つ目は紙幣との関係がどうなるか。
●三つめはデジタル貨幣のリスクである。便利なものはリスクも大きい。

 通貨主権の問題:貨幣がすべてFB社の発行する世界貨幣「リブラ」に切り替わったと仮定すれば、問題点が明瞭になる。たとえば、日本政府は国債発行が困難になる。国債の金額表示は単位がリブラになるので、金利は金融市場の相場にゆだねることになる。1000兆円もの国債を超低金利で発行などできるはずもない。すぐに日本政府財政は破産することになる。国債発行に抑制が働くからそれはそれでいいのかもしれない。デジタル世界貨幣の出現は、各国中央銀行が金利政策のフリーハンドを失うことを意味する。これは国家主権にかかわる問題である。赤字国債の発行は相応の金利を支払わなければならない。金利操作による景気浮揚策も株価操作も失うということ。
 紙幣との関係:2018年9月6日(偶然にもちょうど二年目)の胆振東部地震による北海道全域の停電が教えてくれている。たった3日間の全道一斉停電だったが、お金は下せないし、コンビニでモノを買うときにも紙幣でなければ、支払いができない。日本のような自然災害の多い国では、経済の安全を確保するために全部をデジタル通貨にはできない。紙幣やコインが残るだろう。
 リスク:デジタル世界貨幣には三つの欠陥がある。
 現物がない。日本では上場株式がすでにデジタルデータに切り替わっている。もし、大気圏へ核ミサイルの攻撃があれば、世界中の電子機器が破壊されてしまう。そのとき、デジタルデータでしか存在しない通貨も消滅してしまう。
 デジタル貨幣の弱点は銀行口座番号とパスワードを盗まれたらあっというまに預金がゼロになること。この種の犯罪をとめる手立てはない。預金はそれが消えてもすぐには見えない。預金がゼロになる、あるいは盗まれてなくなる心配をずっとし続けなくてはならないし、安全対策は自己責任となる。安全対策を完璧に実施できる人がいるだろうか?デジタル通貨は極めてリスキーなのだ。
 デジタル通貨はカード支払いと同じ弱点をもっている。お金の管理のできない人が半数くらいいそうだ。カード破産はデジタル通貨になればもっと範囲が広がるだろう。紙幣やコインなら持っているお金が減れば、だれでも抑制ができる。だがデジタル通貨は目に見える通貨はないから管理が難しい。

 どうやら国家主権の問題を置き去りにしながら、便利さと(送金)コスト等の安さゆえに、多少の安全性を犠牲にしつつ、否応なしにデジタル世界貨幣が生まれる時代にわたしたちは生きているということ。
 ヨーロッパでは戦乱に明け暮れて、国家が消滅するなんてことが起きてきた。そういう時に備えて、宝飾品や金をもつのがあたりまえ。紙の通貨をもって逃げても、発行している国家が消滅すれば一文無しになる。だからEUができて、€という通貨が生まれた。ユーロなら国が消滅してもEUという発行元には瑕がつかない。

 貨幣の虚構性は紙幣からカードへそしてデジタル貨幣へとさらに拡大しつつあるその虚構性の膨張に反比例するように、現実の世界貨幣として金が機能するいまでも世界貨幣は金、究極の貨幣は金なのだ。安全資産として金こそが最強の通貨である

 日本政府は今年度100兆円もの新規国債を発行する。残高は1000兆円を越える。日銀は金利が上がっても、保有している上場株が値下がりしても、債務超過になる。そのときに通過円がどうなるか知れたものではない。リスクヘッジは自己責任である。預金を3割減らして金地金でもち、政府財政破綻や日銀債務超過に備えるしか選択肢は思い浮かばない。上場企業がリスクヘッジのために、その預金を外貨に切り換えたり、金地金を購入して貸金庫に預ければ、金相場は高騰するだろうし、為替相場では円がとめどなく安くなる。輸入品の価格が高騰することになる。あらゆる原材料が一斉に値上がりし始める。
 財務省がある朝、預金封鎖を宣言して、それまでにためていたお金を召し上げなんてことが起きる。実際に1946年2月16日に起きている。新円切り換えがなされ、それまでの通貨は使用不能になった。
 庶民の対抗手段は銀行預金の1/3を金に切り換えるぐらいなものだ。不動産価格は人口減少で長期低落は避けられないから、リスクヘッジにならない。金地金は自宅に保管すると盗難のリスクがあるから、その管理もなかなかたいへんである。
 金市場は世の中の動きに敏感である。大きな戦争や感染症パンディミックが起きれば金相場が跳ね上がる。年初には1オンス1500ドル付近だったのが9月には1900ドル台へ急上昇している。もちろん、新型コロナの影響とみてよいのだろう。
 新型コロナ・パンディミックで金相場が急上昇すると読んで金買いに走った投資家は短期間で大儲けしている。ドルがデジタル人民元に負けても、日本政府が財政破綻して預金封鎖をしても、真の世界貨幣である金で保有する者は資産安全性は盤石だ。

 日本政府が心配すべきは、領土領海だけではない、通貨に関しても中国への警戒を怠ってはならぬし、対抗手段を具体的に準備すべきだ。国債を膨らませている場合ではない

<余談:出でよ通貨戦略立案のできる人材>
 首相官邸に官僚が集まっているが、忖度のお上手な者や私利私欲のちっちゃな輩ばかりで、具体的な国家戦略を練ることのできるスケールの大きな人材がいない。こういう時に菅総理大臣と安倍政権から引き継いだ官邸官僚で時間をロスすることになるのか。大きな人災だ。
 ここまで書いてもピンとこない人がいるだろう。森友学園問題、加計学園獣医学部問題、桜を見る会問題で文書改竄や廃棄が組織的になされ、そうした犯罪にかかわった官僚たち谷査恵子、佐川理財局長などが異例の出世を遂げている。違法行為に手を染めてまで忖度する官僚が出世するような官邸運営をやれば、国家百年の計を考える官僚は官邸には近づかないだろうし、育たない。

 自民党員のみなさん、国家30年の計をよく考えて、有能な人材を総理・総裁に選んでもらいたい。…健全な保守主義者の願い
 ああ、党員でも今回の総裁選には投票権がなかったんだ。

(文書作成時間40分)

<余談-2:自然災害と通貨>
今日は2年前に胆振東部地震が起きて3日間全道停電になった日である。コンビニもスーパーもレジが停止した。
●四百年に一度の千島海溝を震源とする地震は明日起きても不思議ではない。
●1923年の関東大震災以来首都直下型地震が起きていない。間もなく百年である。明日、首都直下型地震が起きてもだれも驚かぬだろう。
●富士山が噴火すれば首都圏は降灰が数十センチ降り積もり、飛行機は全面ストップ、電車も麻痺、道路交通や水道や電気へも甚大な影響がでるが、それも明日起きても不思議ではない。1707年の宝永大噴火から300年以上が過ぎている。
●東南海連動型地震が懸念されている。巨大津波が太平洋岸を襲う。原発は無事ですむのか?宝永の大噴火は東南海を震源とする巨大地震、宝永の大地震の49日後に起きた。
 デジタル通貨になった未来にこうした大災害が起きたらどういうことになるのか、想像してもらいたい。
 備えあれば患いなし

 地元の信金の大地みらいさん、資金運用先がないなら、資産の何割かを金地金の運用へ切り換えることを検討したらいかが?信用金庫にかかわる法律との兼ね合いがあるだろうから、無理かな?



<クリックすると検索用ページへ飛んでいきます>
 記事番号管理表



にほんブログ村


アフター・ビットコイン―仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者―

アフター・ビットコイン―仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者―

  • 作者: 中島真志
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/11/10
  • メディア: Kindle版

nice!(1)  コメント(0)