SSブログ

#5137 DNAや遺伝子だけではわからない学力 Dec.31, 2023 [5.1 脳の使い方]

#5136の続きを書きます。学力の高さは遺伝かという問題を俎板(まないた)に載せてみました。

 人のDNAは60億塩基対で、チンパンジーとの差異は1.2%しかありませんから、人同士のDNAの違いなんてほとんどどうでもいいようなごくわずかでしょうね。

 人のDNAは30億個の塩基対から構成されていますが、2組が絡まっているので合計60億塩基対です。そのうち、遺伝子として働いているのは1~2%ですから、ほとんどが意味がないのか眠っています。でも、無限大の1~2%というのはやはり無限大です。(笑)
 ところが、無限大にある組み合わせのうちで、ホモサピエンスを成り立たせている30億塩基対のほとんどが共通しています。個体差はわずかです。

 ではどれくらいなのか?情報量を計算してみます。
 塩基は4種類ですから、

  4^3,000,000,000

 ですね。これが4ビットの回路が30億並んだ時の表しうる組み合わせの最大値ですが、表す数の単位がありません。
 わずか100個の塩基対でも膨大な量の組み合わせがあります。
  4^100=1.6×10^60
 の情報量をもっています。
 人間のDNAが持ちうる情報量の大きさは途方もないものです。でも、その内で遺伝子として働いているのは1~2%のみです。実際には30億塩基対の1%だとすると、3千万塩基対が遺伝子だということです。


 生まれてから、さまざまな五感の刺激や意識への刺激で、その機能が発現する遺伝子もあるのでしょう。免疫がウィルスが侵入してきたときに、それぞれのウィルスに対応して抗体を産生して免疫反応するように、五感や意識の強い刺激で何らかのスイッチがオンになり、特殊な機能を担う機構が動き出すということがあるのかもしれません。
 棋士が指した将棋の手順を記憶し、初手から詰み迄ミスなく再現できるのも、そうした眠っている遺伝子の発現現象に似たメカニズムが動き出したのかもしれませんね。

 遺伝子の発現をコントロールしている部分への研究分野をエピジェネティクスというようです。DNAの98%は不要なのかあるいは眠ったままです。
 遺伝子の制御系が存在していることは確かなようですが、そのスイッチがどのようなメカニズムでonとなるのかはわかっていないことが多いのでしょう。

 遊びに異常に熱中すると、映像記憶やその意識的な操作のスィッチがonに切り変わるのだと考えると、プロの棋士やビリヤードのチャンピオンクラスの人たちのトレーニングがもたらすものが理解できます。珠算も同じですね。名人クラスの職人も同じことが言えるのだと思います。しかし、これら遺伝子やその発現とどこかで関わりがあるのかどうかは不明です
 一流の学者にも同じことが起きています。学部のゼミの指導教授だった市倉宏祐先生(哲学)は、あるとき歩きながら思索が始まってしまって、うっかり工事中のマンホールに落ちて肋骨を数本骨折しました。マンホールにまったく気がつかなかった、気がついたら落っこちていた、何が起きたのかしばしわけわからん状態と笑って話されていました。少年特攻兵(予科練)の指導教官であった元ゼロ戦のパイロットが、蓋の開いていたマンホールに落下、1か月間の入院でした。思索に意識を集中したために起きた事故でした。数学者の岡潔先生も、道端で木の枝を拾って土の上に何か書き出したら、暗くなるまでそのままずっとやっていたようです。意識の集中が切れません。

 こういう人は、眠っていた遺伝子の無数にあるスイッチのどれかが、あるいは外的刺激で映像記憶やそれを脳内で操作するスイッチがonになっている可能性がありそうです。岡潔先生の例でいうと、脳内に浮かんでいる数式を地面に写し取って、確認しているのでしょう。モーツアルトは、曲が思い浮かび、それを譜面に写し取るだけ、本とかどうかはわかりませんが、そういうことが起きていた可能性が大きい。隣に住んでいた天才少年は小学生低学年の頃、釘で地面に相撲の絵を描いてました。それを見たオヤジが驚いて言ってました。「線の引き方に迷いがない、一度も線を修正しなかった、あんな絵の描き方をする人間は初めて見た」と。脳内の映像をそのまま地面に描けたようです。脳内に相撲の映像が浮かんでも、それを描く技術は別です。しかし、それをやすやすとやってしまう。
 いいことばかりではありませんね、並外れた集中力が無意識に働いたときには、周辺に意識が行き届きませんから、歩いていてマンホールに落ちるなんてことで生命にリスクのある場合もあるのです。社会的な適応性が失われるなどの「副作用」があります。集中モードを自分の意志では解除できないところまで行ってしまう。ビリヤードの映像が浮かんで、無限にビリヤードができて、体が疲れきるまで眠れないというのは、自分の意志ではどうにもならないゾーンに入ってしまった結果です。そんなことを日常続けていたら、傍から見たらすこしヘンな人間に見えるでしょう。集中モードの時は、話しかけられてもまともな返事ができません。音としては認識できますが、意識があることを考えることに全部使われてしまい、話しかけられた意味内容を理解できないのです。わたしの場合は、高校時代はせいぜい2週間が限界でした。それ以上やったら、気がおかしくなるという恐怖がありました。20歳の頃はさらにその限界が1か月くらいまで伸びていますから、だんだん慣れるもののようです。でも、慣れるのに時間をかけないと危うい。
 ブロの棋士や学者の岡潔先生や市倉宏祐先生だけでなく、過度な集中が長い時間続けば、誰にでも起きる現象なのだと思います

 さて、集中力が異常の高まるスイッチの話はともかくとして、分かっている事柄があります。
 癌抑制遺伝子の発現をコントロールしている遺伝子が2年前に見つかっています。制御部分は120個のアミノ酸から構成されていることがわかっています。ごく短い部分ですね。短い部分の遺伝子の役割解明はこれからです。

 人類(ホモサピエンス)が地球上に現れてから47万年です。25年で1世代とすると18800世代ですから、わたしたちはその末端に位置しています。個体間の遺伝子の差はごく小さいものでしょうが、癌抑制遺伝子が一つ壊れたり、発現しないように制御されただけでも、免疫系に異常が起きて癌を発症して死に至るということがあるくらいですから、無視できませんね。

 さてここまで縷々関係がありそうな、そしてなさそうな曖昧模糊とした話を並べてきました。わからないものはわからないでいいのです。わかったふりをしないことが大事です。(笑)
 プロの棋士やビリヤードのプロ、一流の学者の観察的な事実から、意識の集中度を著しく上げ、映像を記憶したり、映像を操作するスイッチがありそうで、それを利用できると学力が大幅にアップできそうなのですが、そのスイッチが遺伝子と関係があるかどうかは、残念ながらわかりません。ネットをググってもそういう情報は出てきません。

 強い好奇心や、遊びへの熱中、学問への著しい耽溺などが、そのスイッチをオンにするらしいことだけは確かなようです。そうなったときには、周囲の音や光、匂い、味覚、感触などの感覚器官が働かなくなり、集中している事柄以外は認識されなくなるようです。音も光も耳や目に届いているのだけれど、意味のあるものとしてのが理解できないと言えば、事態をより正確に表しています。
 よくはわかりません。

 さて、あと3時間で、新年です。
 今年も一年、弊ブログにお付き合いいただいて、ありがとうございました。
 皆様よいお年をお迎えください。

#1784 小さな塾だからできること:4段階の指導 Dec. 28, 2011 [57. 塾長の教育論] 


nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。