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#5071 チャップリンと金子みすゞ Sep. 26, 2023 [5. こころの洗濯]

 喜劇王チャップリンを知らない人はいないだろう。
 1889年4月16日、ロンドン生まれである。ヒトラーは同じ年の4/20生まれだから4日違い。
 両親ともにミュージックホールの芸人だが、両親はチャップリンが2歳の時に別れてしまい、母親のハンナは別の芸人とすぐに一緒に暮らす。それも長続きせず、7歳のときには困窮して、救貧院へ収容される。貧乏のどん底を這いずり回る数年間がある。

 あるとき、近くの屠場から羊が逃げ出し、そこいら中を駆け回って逃げ、大騒ぎが起きる。羊はつかまえられて、屠場へ戻される。その日の夕方チャップリンは母親のハンナに羊がかわいそうだと泣きながら訴える。この経験が後に映画を作るときの骨格になっている。
人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ

 「ライムライト」「独裁者」「モダンタイムス」...彼の作品は喜劇と悲劇あるいは一抹の哀愁が立体的に織りなして出来上がっている。こんな俳優・監督・作曲家は2度と現れないのだろうか?

 チャップリンが作曲家だということをわたしは数日前まで知らなかった。映画『ライムライト』の「エターナリー」や『モダンタイムス』の「スマイル」という主題歌はチャップリンの作曲だ。チャップリンが監督した最後の映画『伯爵夫人』のテーマ曲「愛のセレナーデ」も彼の作曲。どれもメロディーの美しさの中に陰りがある。作曲家としても才能に恵まれていた。ミュージックホールの売れない歌手だった母親の手ほどきの影響が大きい。5歳のころから舞台で母親の代役をすることがあった。小さな子が、上手に歌い演技する姿が愛らしかったのだろうな。

 金子みすゞの「大漁」という詩が大好きだ。なかなか怖いものがあるが、チャップリンの名言で彼女のこの詩を思い出した。視点がよく似ている。

   大漁
 朝焼け小焼けだ(あさやけこやけだ)
 大漁だ(たいりょうだ)
 大羽鰮の(おおばいわしの)
 大漁だ
 浜は祭りのようだけど
 海の中では何万の
 鰮のとむらい
 するだろう

金子みすゞの詩歌って踊って

<余談:ヒットラーとチャップリン>
 4日違いで生まれたチャップリンとヒットラー。映画『独裁者』は1940年に作品で、その構想は第2次世界大戦勃発前になされていた。ナチズムが吹き荒れている最中に、チャップリンは映画『独裁者』を製作して封切った。たいへんな反骨精神である。
 わたしはあの映画は戦後の作品だと勘違いしていた。あまりに危険すぎるからだ。ナチスは、チャップリンがユダヤ人だというキャンペーンを試みたが、教会の記録を遡ってもユダヤ人が出てこなかったようだ。
 俳優、映画監督、作曲家、どれをとっても超一流の人。
 チャップリンほどではないが、ときにそういういくつもの才能に恵まれた人がいる。歓びが大きい分だけ苦労の谷も深くなる、かわいそうだ。

エターナリー
スマイル
愛のセレナーデ


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