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#5032 「政府の借金は国民の債権」だから問題ない? : Aug. 14, 2023 [95.増え続ける国債残高]

 NHKラジオ第一放送朝6時40分から10分間ほどの番組を聞いた。第一生命経済研究所の永濱利廣氏の「財源をどうする少子化対策」というテーマであった。

 少子化対策の財源は国債だという。論拠は次の3つでした。
①9割近くの国債は国内の居住者である国民が保有している
②政府の債務(国債残高)は国民の債権であるだから、国債が増えても政府の借金が増えるだけでなく国民の債権も増えているから問題なし
③膨らんだ国債残高は景気がよくなったら税収が増加するから、そのときに縮小すればよい

 すごい主張だね。日銀保有の国債は国債の発行残高の50%を超えている(540兆円)から、国民が90%を保有しているなんて長濱氏の主張は事実とまったく違っています。こんなことは高校生だってネットで調べたら簡単にわかるから、長濱氏が知らないわけはないでしょう。なぜこんな主張をするのでしょうか?

 ②が本当なら、Aさんが銀行から10億円借りても、それはAさんの債務であると同時に銀行の債権だから問題なしと言っているのと同じことです。Aさんが自己破産したら、銀行には損失が出ます。
 マクロだから問題ないと言っていますが、借金にミクロもマクロもありませんよ。
 政府の借金と日銀の債権(日銀保有国債)は相殺処理はできません。政府と日銀は別法人ですから、連結決算のように子会社と親会社の債権債務を相殺するわけにはいかないのです。これは簿記に関する基本的な知識のない人の言うことです。長濱氏は複式簿記の基本的な知識がないのかもしれません。世界の民間企業はすべて複式簿記で動いています。

 景気がよくなったら、国債残高を縮小すればいいと言っていますが、1990年に200兆円未満だった国債発行残高は年々増えて、1000兆円を超えています。国債発行残高の推移を見ても、それが減少したことは過去33年間一度もありません。日本は少子高齢化社会に突入しているので人口も減少しています。生産年齢人口はさらに加速的に減少するので、③の「景気がよくなったら国債残高を減らして」財政規律を取り戻す、なんてことはこれから30年後でも来ないでしょう。

 1946年2月に、大蔵省が預金封鎖を発表しています。膨大に積み上がった国債残高で政府財政が破綻、預金の引き出しがストップ、財政破綻を解消するために預金に課税されました。
 株式取引はとっくに電子決済です。銀行預金もマイナンバーで紐づけされつつあります。国税庁が持っている国民の所得データもマイナンバーと紐づけされます。不動産登記はいま、電子化が進んでいます。つまり、国民は丸裸になりつつあるのです。
 政府財政が破綻すれば、預金・株・不動産への課税が速やかになされるでしょう。そのためのマイナンバー導入です。

<余談:永濱利廣氏の経歴
 学部は早稲田大学理工学部工業経営学科卒ですから、原価計算は学んだはずです。商学部なら原価計算論を学ぶ前に、簿記や会計学も学ぶのが普通のコースですが、工業経営学科ではそうではないのかもしれませんね。簿記は数学と一緒で、演習問題をせっせと解かないと身につかない学問です。
 大学院は東大大学院経済学研究科の修士課程を修了しています。経済学研究科で簿記の晩狂をするはずもありませんから、彼の簿記の知識は学部時代に少しかじっただけ、そちらの科目では熱心な学生ではなかったのでしょう。修士課程を修了して、第一生命経済研究所へ勤務、現在に至るようです。
 安倍元総理の経済ブレーンに東大名誉教授の浜田宏一氏がいますが、日本では彼がマクロ経済学の大御所です。長濱さんは浜田宏一氏に学んだのかもしれませんね。「日銀総裁が、白川氏から黒田氏に変われば3か月で物価上昇2%を実現できる」とのたまわった方です。10年たっても実現できませんでした。マクロ経済学なんて古すぎます。現実をよく観察したらいい。


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