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#5000 タイパ重視の功罪①:早送り機能での視聴の適・不適について Jun. 21, 2023 [47.6 タイム・パフォーマンス]

 昨日(6/20)のNHKテレビ番組「クローズアップ現代」で「タイパ」について取り上げていた。
 「タイパ」という言葉は初めて聞いた、「タイム・パフォーマンス」のことだ。「時間当たりの効率」とでも訳したらよいのだろう。少ない時間でたくさんの情報を入力できたらタイパがよいということだ。

 時間効率重視は仕事でも必要だが、ものごとには当然に作用と副作用、メリットとデメリットがある。この場合にはどういうことが現れてくるのか考えてみたい。

 ビデオデッキには「早送り機能」があり、「1」は1.3倍速で、音も早口になる。「2」は1.6倍速で、音声が消える。だから情報入力としては「1」の1.3倍速しか選択肢にない。
 わたしはニュース番組は「1」でみるが、映画は早送り機能を使わない。台詞は間合いに意味が込められているのだが、「1」にするとそれが飛んでしまう。役者の名演技は伝わってこないのだ。そんなつまらない観方で映画を見る必要はない。
 
 ウォークマンプレイヤーの早送り機能を利用して、英語音読CDを1.5倍速で聴くことはある。高速でのリスニングに慣れると、通常速度がとってもゆっくりして聞こえるようになり、リスニングが楽になる。そういう効果がある。2倍速になると、まるで聞き取れない。同じCDならどこを読んでいるかがわかる程度だ。

 高校の通常の授業なら、ビデオデッキの「1」、つまり1.3倍速で視聴してもOKだし、その方が効率が良い。高校の授業の90%は入力した情報を記憶するだけでいいからだ。そして授業は冗長なのが普通だ。学力上位10%にとっては、標準速度での授業は退屈であくびがでる。
 では、大学の授業はどうか?これも8割は1.3倍速で十分だ。2割は、そうはいかない授業がある。講義するのはその分野で10年以上研究を続けてきた先生がほとんどだから、授業で扱っているトピックの背景に膨大な研究が存在している。あらかじめその先生の本を読んでいくと、授業で取り上げているのがその先生の研究の地図のどのあたりか判断くらいはつく。その先生の学説とは違う学説の先生の意見も頭の中に入れてあると、授業で語られる一言一言を自分が入力してあるデータと突合しながら理解することになるので、通常速度でないと処理しきれない。
 授業が終わった後も、脳内に創り上げてあるその分野の情報のネットワークとの整合性をつけるために、脳は活発に働いている。

 日本語の音読を1.3倍、1.6倍、2倍とピッチを上げてやることがある。口を高速で動かしながらやるが、2倍速以上の「微音読」になると口はほとんど動かない。音読速度に口の運動が追い付かなくなるからだ。知っている分野の知識の入力にはこの微音読や高速黙読の技が使える。頭をほとんど使わず、既知の情報を入力しているだけか、意見の違うところだけがハイライトされて入力できる。

 まとめてみたい。
 早送り機能を使った視聴は、単なる知識の脳への入力に適した方法である。ビデオデッキなら「1」、1.3倍速、MP3プレイヤーなら、1.3~2倍速での高速リスニングが「タイパ」がいい。
 しかし、感情移入(共感)や思考を併用する視聴にはタイパ重視の高速視聴は向いていない。肝心な情報が早送り機能で消失してしまうからだ。

 ニュースやあらすじだけを知っておきたい映画、高校の授業の大半、大学のZOOM授業は早送り機能をフルに使って利用するのがタイパを上げる技だ。
 深い思考を伴なう情報はタイパを重視すると不可能になる。映画や文学小説のような情緒に関わる情報入力もタイパ重視ではつまらなくなる。
 以上が、「タイパ」をアップすることに関するわたしの意見である。


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