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#4969 日銀経営破綻とは何か? May 15, 2023 [8. 時事評論]

 日本銀行は中央銀行であるから通貨発行権をもっている。発行権をもっていたら、日銀総裁の判断で通貨増発をできるかというと、そう簡単ではない。紙幣の印刷は独立行政法人国立印刷局が行い、そこの理事長の任命権者は財務大臣であるし、主務官庁も財務省である。
 だから財務大臣の合意なしには、勝手に通貨の増発ができるわけではない。
 同じことは財務省の国債発行についても言える。日銀が金利ゼロで発行された国債を無制限に買い入れたら、財政は破綻するから、国債の日銀買い入れは財政法第五条により原則禁止です。国会の議決の範囲内で国債の引き受けが可能です。つまり、国会が議決・承認しているということ。
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財政法第五条:すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借り入れについては、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲では、この限りではない。
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 財政法第五条は「但し書き」によって、骨抜きされてしまっています。
 政府と日銀と国会がグルになれば、実質上国債の無制限の増発と日銀による無制限の引き受けができます。そうなっていますよ。政府と日銀と国会が一つの閉鎖的な村社会を構成していますどんなに法律で縛っても、独立な意思決定機関であるべき財務省と日銀と国会がグルになれば、戦時体制のような国債の無制限発行と日銀引き受けが可能になりますそうした場合には、日銀が債務超過になっても、債務不履行による日銀の経営破綻は起こりません。通貨発行権を駆使して足りない分は、財務大臣の了解をもらって、独立行政法人国立印刷局に紙幣を印刷してもらい、日銀が発行して補えばいいだけですから。経営破綻は別の形で現れます
 閉鎖的な村社会の「恣意的なやりたい放題」を外部の眼はどのように判断するのでしょう?

 海外から見たら、どのように見えるでしょう?
 税収の20倍もの国債を発行している国があり、新規発行国債や借換債の引き受けを中央銀行が無制限にやっています。主要通貨ですが、信用できない通貨ということになります。
 国内上場企業の財務担当取締役の眼で見たらどうでしょう?
 預金保険機構で保障されるのは1銀行につき1000万円までです。500億円の預金があるとしたら、どういう手があるでしょう。国債利回りが3%にアップしたら、取引銀行の保有している国債が30%以上の評価損をこうむります。日本の会計規則上は満期保有目的の債券は評価損計上の必要がありません。しかし実際に金利上昇で30%評価額が下がれば、1兆円の国債は7000億円でしか売れません。国際的な会計基準では債券についても時価での評価があたりまえですから、評価損の計上が原則です。海外投資家は国際会計基準に従って評価損を計算して日本の銀行を評価します。
 上場企業の財務担当役員が、取引銀行の破綻懸念を抱くと、その銀行の預金を全額引き出して、別の銀行に預けます。パソコンで瞬時に送金手続きできますから、数時間で10兆円を超えるような預金払い戻しが起きて、支払い不能に陥る可能性があります。邦銀の経営破綻がそういうシナリオで起きます。
 国内の銀行全般に信用不安が起きれば、外銀へ預金が移されます。大量のドル買いが起きますから、急激な円安が進行します。
 こうして主要通貨である円が、主要通貨の座から滑り落ちます。急激な円安進行をストップするために長期金利を上げれば、日銀が巨額の債務超過状態になっていることが明らかになります。為替リスクを回避するために輸入はドル契約があたりまえになり、国内企業が円安リスクをかぶることになります。輸入がドル建て契約になるということは円が国際的に信用されていないということです

 もうひとつのシナリオは、首都直下型地震や東南海連動型地震です。二つとも数百兆円の被害が出るでしょう。富士山の大噴火は1707年の宝永大噴火ですが、あのクラスの噴火があれば首都機能は数か月間麻痺するでしょう。大噴火は数百年に一度、規則性はなく確率は小さいですが、起きれば被害は大きい。
 大きな災害があれば税収は激減します。資金需要が増し、企業は銀行から預金を引き出して、自社の経営立て直しにあてます。政府は復興資金獲得のために新規国債を数百兆円単位でしなければなりませんが、日銀引き受けでは円の通貨としての信用を失います。市中銀行のシンジケート団に消化してもらうには、5%以上の金利をつけないといけないでしょう。このときにも日銀に百兆円を超える債務超過が明らかになります。ヘッジファンドは円を売り浴びせますから、急激な円安が進行します。200円/ドル超えくらいのことはあるでしょうね。
 国民や企業がもっている金融資産は1800兆円ですが、ドルベースで見たら半分になってしまう、そんなことが起きます

 日銀が債務超過になったら、増資によって資本充実をしなければいけません。その資金も政府にはないので、新規国債の増発によってあがなうことになるのでしょう。これも、長期金利上昇の要因となります。はたして現在のようなゼロ金利政策を続けられるでしょうか?国内の銀行から円の流出が起き、ドル預金が増えると思います。上場企業の財務担当取締役がそういう判断をします。銀行の経営破綻懸念で、預金機構が1000万円しか保証しないのですから、そうしなければならない状況に追い込まれるということです。
 そうなれば日銀が増資しようと、破綻処理して新しい中央銀行をつくろうと、破綻は破綻です。

 日銀の経営破綻とは、回復不能の巨額債務超過状態に陥ることです。政府が増資によって日銀の損失を補填しようがしまいが関係なしです。円の国際的な信認が崩れ、階段を一段降りたような円安が続きます、それが日銀の経営失敗による破綻です被害は国民の金融資産の大幅な減価として現れます。ドルベースで半額以下になる可能性があると思います一般の銀行のように支払い不能になれば、預金者だけが損をすることでことは収まりますが、日銀の破綻は支払資金の不足としては現れません。その代わり、国民の金融資産がドルベースで半分になる形で現れます
 アベノミクス三本の矢が声高に叫ばれ、日銀総裁が白川氏から黒田氏へ替わったところから、日銀経営破綻は始まっています。ドルベースで、国民の金融資産も一人当たり国民所得も3割減となってしまっています。何らかの理由で長期金利が上がれば、それらは半減ということになります。次のような結果になるでしょう。

<アベノミクスは何をもたらしたのか>
 2012年の12月26日に第2次安倍政権とアベノミクス三本の矢が登場しました。そのときの12月末の為替レートは80円/ドルでした。いま135円/ドルですから、ドル換算では国民の金融資産はすでに40%下落しています。これが200円/ドルになったら、国民の金融資産はドルベースで60%も下落します。半分以下です。

 ドルベースでの国民一人当たり所得水準はアベノミクス以降どれくらい落ちたのでしょう?
 データは「世界のネタ帳」のサイトの「対ドル為替レートの推移」「一人当たり国民所得」からピックアップしました。

 2012年 392.3万円 79.8円/ドル  49,160ドル
 2023年 443.8万円 132.5円/ドル 33,494ドル
  対2012年比68.1%
 対ドルベースでの一人当たり国民所得は第2次安倍内閣がスタートする直前に比べて31.9%減少しています先進国でこんな国は日本だけです。日本はもう先進国ではないのかもしれませんね
 200円/ドルで計算すると22,190ドルですから、45.1%、半分以下になります。

 2017年のGNI(一人当たり国民所得)統計によれば、日本は22位で45,470$ですが、2023年の推計値を当てはめると36位ですから、所得水準からはとっくに先進国ではありません。それどころか、ドル相場が200円/ドルになると$22,190ですから56位です。ロシア(51位)よりも下です。
 2023年の一人当たり国民所得ランキングサイト見つけました。33,821ドルで、世界30位です。米国76,348ドルの半分以下。
 観光産業がインバウンドなんて喜んでいますが、日本の所得水準がドルベースで3割も低下し、円安ですから、とっても割安なだけです。海外からの観光客は放っておいてもますます増えるでしょう。

<自然災害が引き金になる>
 円の国際的な信認が落ちるのは、大災害が引き金になります。新規国債を200兆円も発行しないといけない事態が起きれば、国債の利回りを5%以上にアップしなければいけなくなります。その瞬間に日銀は百兆円を超える債務超過、政府財政は金利負担に耐えられない。平時に国債を発行しすぎたツケが一気に回ってきます。家計にたとえると、年収400万円の収入で8000万円の借金をしているようなものです。返済計画の立てようがありません。

 自民党や公明党も、国会議員も、財務官僚も一人も責任を取りませんよ。野党だって日銀の独立性や債務超過の可能性、大幅な円安到来のリスクなと国民生活に深くかかわることなのに、国会で真剣に議論してません。
 愚かな国民も賢い国民もひとしく大きな損害を被ります

 対ドルベースで国民の金融資産や一人当たり国民所得が半分になる危機がひたひたと迫っています。外銀だってSVBのようにいつ潰れるかわかりませんから、Goldを買い込み貸金庫に預けるのが、リスク回避にはベストな方法です。
 もちろん、そんな心配せずに、何もしないで暢気(のんき)に構えるというのもありです...みんなで仲良く
  「1億玉砕」
 あれから80年近くたつのに、日本政府のやることはあまり変わっていませんね。(笑)
 歴史は繰り返すのでしょうか?
 繰り返さぬためには、国民が現実を直視して、歴史から学ぶしかありません。
 マスコミは真実を語らぬし、ネット情報は玉石混交で何が真実なのかなかなか見分けがつきません。
 それでも、何がほんとなのか、自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分の頭で考えて、判断するしかありません。
 

<余談:国際主要通貨のシェアー>
 2023年3月の調査
 ドル83.7%、円1.76%、人民元4.50%
 情報ソース:5/18放送テレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル」 



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