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#4856 Lesson 11 : The Robots Are Coming --- Aren't They? Oct. 23, 2022 [49.2 PROMINENCE Ⅲ]

<最新更新情報>10/23夜8時20分 No.8へ追記 アナロジー

 今回はわたしのお気に入りのジャンルです。根室市立光洋中学校の生徒の時にSFものにはまってました。高校生になるとSFは読まなくなりました。簿記や会計学原価計算、経済学など他にたくさん読むものができたのと家業のビリヤード店を毎日2-3時間手伝っていたので、忙しくて暇がなくなったのです。東京へ行ってからすぐに、映画にはまりました。最初の年は週2くらいで新宿の割安な映画館で観てました。「洋画の三本立て」でした。翌日には、三本の映画が頭の中でところどころまじりあってしまいます。(笑)
 それからしばらくご無沙汰、30歳を過ぎたあたりからまた映画をポチポチと見始めました。SF映画では「ブレードランナー」が好きでしたね、ヒューマンなところと情緒がいい。「命とは何か?」と原作者が問いかけています。レプリカントの方が人間らしい、命をいとおしんでいるのです。美しいなと思いました。三部作の中では、最初のものが秀逸でした。
 だから、今回は書き手がどんな考察をして、どのような結論に至るのか、愉しみでもあります。わたしと一緒にドキドキワクワクしながら、お付き合いください。
 英文を読むことを通して、思索の小さな旅にも高校生のみなさんを誘うつもりです。


1.   We have envisioned building humanoid machines/in our likeness /with the ability to walk, talk, and think like us/ --- or better than us --- /since long before the creation of microchip.  But ① humanoid robots are never going to happen.  ②To understand why/, you have to understand the shape of the technical problems/ and compare them to market forces.

①"are never going to happen"は、進行形ですから、事態が進行していることを現すので、いまその事態が進行しているという意味と、近未来にそうなるという意味の両方の意味を含んでいます。さて、どちら?
「人型ロボットはいまは決して出現していない」と「人型ロボットは近未来には出現することはありえない」の2択ですが、誰が読んでも後者のほうが正解でしょう。事態がそういう方向に進んでいるので現在進行形が使われています。

②アンダーライン部が厄介そうですね。「market forces」の訳は「市場の力」ではおかしいでしょ。動詞のcompareと一緒に考えないといけません。
 compare them to market forces  「compare A to B:AとBを比較する」でしたね。マクミラン英英辞典でforceを引いてみます。
force:②the influence or powerful effect that someone has 「影響あるいは誰かがもっている強力な効果」
 2a someone or something that has a powerful influence on what happens 「何かが起きることに関して大きな影響力を持つ人またはものごと」
 
 themは「technical problems」を指していますから、「技術的な問題と市場への影響力を比較しなければならない」。どういうことかというと、コンピュターのハードウェアもソフトウェアも、技術はどんどん進化していき価格は劇的に低下して行ってます。
(具体例をあげたらわかりやすいでしょう。1984年に産業用エレクトロニクスの輸入商社から最大手の臨床検査会社SRLへ転職しました。東証2部上場要因として経営統合システム開発を担当してます。そのときにSRLで使っていたのは富士通の当時最大の汎用大型機でした。メインメモリーが足りなくて3メガバイト増設しましたが、5000万円支払っています。いま、64GBで5000円くらいでは?価格は10^-4で容量は21000倍ですから、メモリー当たりの価格は、2x10^-8ということになります。38年間で2億分の一に下がったということです。すさまじいですね。)
だから、汎用目的の人型ロボットが格安で市場へ投入されたら、人間以上に働けます。休み時間は要らない。24時間稼働させることもできます。そうすると、労働市場への深刻な影響が避けられないということ。
 どこかで、その効果と労働市場への深刻な影響を秤にかけなければならないという懸念を筆者はここで伏線として指摘しているのです。第6段落でその具体的な内容が明らかにされています。どんどん先を読めばわかるようになっています。冒頭の段落は全体を俯瞰しているケースが多いのですから、そのつもりで読みましょう。

「わたしたちは人型マシンをつくることを思い描いていました/わたしに似た/わたしたちのように歩き、話、考える/マイクロチップを創るはるか以前から。 しかしながら、人型ロボットは近未来には出現することは決してありません。 (人型ロボットが近未来に出現しないのが)なぜかということを理解するためには/技術的な問題の輪郭を理解し、その問題の(労働)市場への強力な影響を比較考量しなければなりません。」

 これは筆者が「market forces」と書いたから読み手が混乱するのです。「labor market forces」とちゃんと書いてくれたら、曖昧さがさっと消えてしまいます。

2. First, the mecanics of the human body are spectacularly complex.  The human design either required the hand of God or it was the output of a one in a gazillion experiment.  Either way, we are working with ①a mechnical form/ that is not easy to replicate.  Sure, we have built machines with arms and legs, but we are a long way from having a robot that can walk the Earth like a human.
 
「第一に、人体機構はとてつもなく複雑です。 人間の設計は神の手を必要とするか、膨大は実験のうちのたった一つの結果であるかのいずれかです。 そのどちらであるにせよ、わたしたちは機械と一緒に働いています/(説明ルール:関係節修飾)複製が容易ではない。 たしかに、腕や足をもったロボットを造ってはいますが、/ロボットをもつことからはずいぶん距離があります/(説明ルール:関係節修飾)人間のように地上を歩ける。」

「第一に、人体機構はとてつもなく複雑です。人間の設計は神の御業か、膨大な実験のたった一つの結果です。そのどちらであるにせよ、わたしたちは複製が容易ではない機械と一緒に働いています。確かに腕や足をもった機械を造ってはいますが、それは人間のように地上を歩けるロボットからは程遠い物です。」

 ①の句の意味を少し考えてみたい。人体機構を複製するのは容易ではないどころか、ほとんど不可能に見えています。では、わたしたちが一緒の働いている「複製が容易ではない機械」というのは何を表しているのでしょう?
 自動車産業や時計産業の生産ラインに並んでいるさまざまな、アームロボットや特定の作業目的のために設計されたロボットはたしかに複製が容易ではありません。実に多くの電子部品が使われており、それらはコンピュータで制御され、そのコンピュターはンネットワークにつながれて、さまざまな情報を入出力し、生産管理システムにつながっています。だから、簡単には複製できないのです。

3. Second, we need major improvements in software.  Anyone who has had problems with Siri can understand how far we are from having a dependabe conversation with a machine.  It is frustrating to ask Siri to "Send Jenn a text" and here her reply "What song would you like me to play?"  Yu can imagine what might happen when your robot misunderstand you when you say "Take the trash out."  Speech recognition withe better than ninety -nine percent reliability is not part of our near future.

Siriは人の名前ではないようなので、何かの略号でしょう。ネット検索してみます。
 SIRI: Speech Interpretation and Recognition Interfaceの略です。「発話解析・認識インターフェイス」
 iPhoneに話しかけるだけで操作をしてくれる機能がついていますが、人間の発話とスマホをつないでいるのがSiriです。スマホ使っていないのでわたしはいまSiri(知り)ました。(笑)
dependable:信頼できる

「第2に、ソフトウェアに重要な改善を施す必要があります。 Siriを使って問題を抱えている人は誰でも、マシンとの信頼性の高い会話を実現することからわたしたちは程遠いことを理解できます。」
 Siriは問題の多い言語のマンマシンインターフェイスのようですね。わたしはガラケイでスマホを使っていないから、どんなトラブルが起きているのか知りません。車のナビは1999年に初めて使いましたが、音声入力機能がほとんど使い物になりませんでした。自然言語処理はとってもむずかしい。


4. Third, artificial intelligence is the biggest software challenge in the universe.  The human brain's ability to process information and learn and make decisions is something we cannot fully understand, let alone reproduce.  Replicating human thought in a bounded problem --- like the game of shogi --- is barly within our reach. ① Software that enables machines to act like us, which requires them to think like us, is not something we will be able to develop for generatins, if ever.

barely:かろうじて、なんとか
 厄介な文がありますね。①にはこんなにたくさんの文が詰まってます。

a1:Software enables machins to act like us.
(ソフトウェアは機械に私たちのように行動を可能ならしめる) 
a2:Software required them (=machines) to think like us.
(ソフトウェアは機械に私たちのように考えることを可能ならしめる)
a3:Software is not something 
(ソフトウェアは何かである)
a4 : We will be able to develop something for generations.
(わたしたちは世代を継いで何かを進展することができる)
a5 : If ever (   ). 
(  )内の省略された部分は何だろう?ここがわからなければ意味がつかめません。こういうところでは少し考えてください。

 if we ever does(=develop)である。「もし私たちが開発したとしても」という条件節なのですよ。

 こういうふうな文の分解は変形生成英文法の変形テクニックを利用しています。ノーム・チョムスキーの普遍文法理論です。自然言語処理の基礎理論になっています。高校ではやりませんが、大学英文科に進学した人はおおむねやると思います。基底文への分解は、必要な範囲でとどめて説明しています。変形文法を覚えてもらうことが狙いではなくて、高校生に意味がわかるように説明するための手段として利用しているだけですから。
 意味は基底文にあるのです、だから、文法工程指数の高い文は意味をつかむのに基底文へ分解する必要があることがあります。元の文は表層構造(surface structure)と言います。基底文(simple entence)を深層構造(deep structure)ということもあります。せっかくですから用語を覚えておいてください。
 デカルト『方法序説』にある「科学の方法 四つの規則」の第2番目に従って、英語も数学も経済学も思考しています。末尾の余談のところへ書いておくので呼んでください。とっても重要です。

『英語総覧』p.552に次の文例が載っていました。
  My father seldom, if (he) ever (does), goes to the movie.
(父は映画には滅多に行きません。)

「第三に、人工知能はソフトウェア分野では最大のチャレンジです。 情報を処理し、学び、決定するという人間が持つ能力はわたしたちが十全には理解しえないそして単独では再生産できないものなのです。将棋のソフトのように、人間の手が届かないと思われていた人間の能力の複製は、かろうじて手の届く範囲に入ってきています。わたしたち人間のように行動し考えることを可能にするソフトウェアは、たとえそうしようと思っても、わたしたちが時代を継いで開発しうるものではないのです。」


5. So wll we have to do to build a humanoid robot is (1) build a machine to replicate the human form,  (2)solve the input/output problem so we always understand each other, (3) replicate the throught process of the human brain.  Any one of those is nearly impossible.  The combination of all three  represents one of the greatest technical challenges known to man.

「だから、わたしたちが人型ロボットを造るためになすべきことの全体は、次の三項目にまとめられる。
(1)人の形を複製するマシンを作る、
(2)わたしたちが相互に理解するためにインプットとアウトプットの問題を解決する、
(3)人間の頭脳の執行過程を複製する。
これら三項目喉の一つをとっても不可能に近い。三項目すべての組み合わせは人に知られている最大の技術的な問題の一つを代表している。」

「インプットとアウトプットの問題」とは、マン・マシンインターフェイスのことですよ。Siriが言語処理のマンマシンインターフェイスの一つです。SAOのマンマシンインターファイスには「ナーヴギア」「アミスフィア」というのがありましたね。塾生のF君が貸してくれたので、20冊以上読みました。面白かった。アリスという人工知能が出てくるアニメのノベライズものでした。

6. However, in addition to the technical challenge, there is the issue of economics.  A humanoid robot would be a multipurpose platform that could do almost anything.  It could do thing like get a drink from the kichen or a newspaper from your mailbox.  But those are problems for which you would not pay twenty dollars for someone to solve them.That same humanoid robot drive your car.  Those things are worth more than twenty dollars, and we already use robots to solve problems --- they just are not humanoid.

「しかしながら、技術的な問題に加えて、経済的な問題があります。 人型ロボットというのは、ほとんど何でもできる多目的のプラットホームになりそうです。 人型ロボットはキッチンから飲み物をもってきたり、メールボックスから新聞を採ってくるという風なことができます。 しかし、そういう仕事を人型ロボットがしてしまうと、そうした仕事をしてもらう人間にに20ドル支払わなくなるという問題があります。 その同じ人型ロボットがあなたの車を運転します。 いま述べたような仕事を合わせると、20ドル以上の価値があります。 そして、わたしたちは問題解決にすでにロボットを使用しているのです。---使われているロボットはまさに人型ないのです。」

 自動車や腕時計の生産ラインには、たくさんのアームロボットが使われています。ルンバなんて10万円前後のお掃除ロボットがあるお家が生徒の中にもありました。ウクライナではドローンが多数使われています。これらはどれも人型ロボットではありませんね。特定目的のさまざまな形状のロボットがすでに社会の隅々に浸透しだしています。

7. You can pay 400 dollars to have a robot vacuum your house.  For around 250 dollars you can buy an infant seat to soothe our baby.  When buying a new car you can select high-tech optins.  It is easy to see that fully autonomous cars are on the horizon; it is just a question of how far off.  The drones used by the military are another example of non-humanoid robotics.  The point is, we do not need to build a humanoid robot to do these things.  We can build the robots into the things themselves.

「(みなさんは)自分の家用のお掃除ロボットに400ドル支払えます。 赤ん坊をなだめるための幼児用イスには約250ドル支払えます。 新しい車を購入するときには、ハイテック・オプションを選択できます。 完全自動運転車が地平線にあるのを見るのも遠い話ではありません。 どれくらい先のことなのかというのは理にかなった質問です。 軍事用ドローンは非人型ロボットの別の具体例です。 問題の要点は、わたしたちは人型ロボットをこれらのことをするために作る必要はないということ。 わたしたちはロボットにこれらのことをそれぞれ組み込むことができます。」 

 "the things themselves"は定冠詞がついているので、「お掃除機能」「ドローンでの偵察や爆撃機能」「完全自動運転機能」などをthingsが指しています。それぞれの装置自身の中に機能が組み込まれているので、themselvesとthingsの後に置いています。「説明ルール:説明は後」です。

8. The computer industry offers an interesting analogy.  For decades, computers were multipurpose platforms that got faster and cheaper but in other ways did not change much.  However, in the early 2000s, for the first itme in history, computers became really powerful.  That gave us the ability /to start integrating intelligence into devices at a rapid rate/, and it reduced the need for very powerful, multipurpose platforms like PCs.   

「コンピュータ産業は興味あるアナロジーを提供してくれています。 数十年にわたって、コンピュータは多用途でした/それはより高速になり、安くなりました/しかし他のものはあまり変化していません。 しかしながら、2000年代初頭に、歴史上はじめて、コンピュータはほんとうにパワフルになったのです。 急速に、コンピュータは知性を装置の中へ統合し始める能力をわたしたちに与え/そしてパソコンのようなパワフルで多用途のプラットフォームへの需要を減らしたのです。」

 PCsがどんどんスマホやタブレットに置き換わっていますから、PCsは多用途ではなくなってきており、数も減っているようです。持ち運びには不便ですから、「ユビキタス=いつでもどこでも」、スマホが便利です。モバイル性が高いので、さまざまな料金決済にも使われています。

 問題が一つ解決していませんね。どんなアナロジーを提供しているのでしょう?
 特定の用途のコンピュータが次々に開発されていて、汎用・多用途のコンピュータや装置は開発されなくなっているということなのです。エキスパートシステムと言います。それを人工知能や人型ロボットに重ねているのですよ。汎用化を目指していながら、結局は特定目的のものが次々に開発されることになるという。汎用化しなかったパソコンを人工知能開発に重ねているのです。

9. Today, tablets and smartphones do much of the work that our PCs used to do, and we have lots of new devices that are essentially special-purpose computer.  Because computer techinology got so powerful and inexpensive/, the answer was not to keep extending the reach of the multipurpose PC.  We added the intelligence of the PC into the devices around us --- a march the is going to continue forever.

「いまでは、タブレットとスマホがPCsがかつてしていたたくさん仕事をしています/そして私たちはたくさんの新たな装置をもっています/(説明ルール:新しい装置の説明:関係代名詞節修飾)基本的に特定目的のコンピュータです。 コンピュータ・テクノロジーはとてもパワフルで、低価格になっているので/多用途のPCの到達点を拡張し続けるべきではないということが正解だったのです。」

 PCの多用途の機能拡張をすることを考えてみよう。電話機能をPCに載せても、スマホの電話機能の方を使うユーザが圧倒的多数だろう。検索機能もユビキタス(いつでもどこでも)を考えると、PCよりもスマホやタブレットに軍配が上がる。写真を撮る機能も圧倒的にスマホだ。
 PCの利点と言えば、ローマ字入力ぐらいなものかな、指10本を使ってタイピングできるのはとても便利だ。だから、これ以上PCの機能拡張をして、いろんなものをつけるべきではないというのが正解になったのだろう。


10. The idea that we will have robots in the future to help us in daily tasks is not wrong.  The idea that we need a multipurpose humanoid platform is.  As costs continue to decline and technology continue to improve, we will be able to make lots of special-purpose robots to solve real consumer problems.  There is just no need to make them humanoid.

 
「日常の仕事を軽減するために将来ロボットを所有するというアイデアは悪くはない。 多用途の人型ロボットが必要だという考えは、考えとしてはある。 コストが下がり続け、技術が改良され続けるので、わたしたちはたくさんの特定目的ロボットを、現実の消費者が困っている問題解決するために、造ることができる。 ロボットを人型にする必要はまさしくないのである。」

 make them humanoid ⇐ make robots humanoid SVOC

  面白かった。
 人型ロボットの必要がないというのが、11章を書いた人の結論です。ですが、わたしは鉄腕アトムを読みふけった世代ですので、人型ロボットが出現してほしいと思います。ターミネータのようなロボットは御免です。でも、そっちの方向の方が現実的ですね。鉄餡アトムはファンタジーです。
 あなたは、人型ロボットに関してどんな意見をもっていますか?

<かつて何度か見た映画の紹介>
 『ブレードランナーⅠ』:「ヒューマニズムとは何か?」を問いかける映画でした。
 『ブレードランナー2』
 『A.I.』...悲しい映画だったな

<デカルト方法序説・科学の方法 四つの規則>
*#3509より引用

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<デカルト 科学の四つの規則>まだ若かった頃(ラ・フェーレシュ学院時代)、哲学の諸部門のうちでは論理学を、数学のうちでは幾何学者の解析と代数を、少し熱心に学んだ。この三つの技術ないし学問は、わたしの計画にきっと何か力を与えてくれると思われたのだ。しかし、それらを検討して次のことに気がついた。ます論理学は、その三段論法も他の大部分の教則も、道のことを学ぶのに役立つのではなく、むしろ、既知のことを他人に説明したり、そればかりか、ルルスの術のように、知らないことを何の判断も加えず語るのに役立つだけだ。実際、論理学は、いかにも真実で有益なたくさんの規則を含んではいるが、なかには有害だったり、余計だったりするものが多くまじっていて、それらを選り分けるのは、まだ、下削りもしていない大理石の塊からダイアナやミネルヴァの像を彫り出すのと同じくらい難しい。次に古代人の解析と現代人の代数は、両者とも、ひどく抽象的で何の役にも立たないことだけに用いられている。そのうえ解析はつねに図形の考に縛りつけられているので、知性を働かせると、想像力をひどく疲れさせてしまう。そして代数では、ある種の規則とある種の記号にやたらとらわれてきたので、精神を培う学問どころか、かえって、精神を混乱に陥れる、錯雑で不明瞭な術になってしまった。以上の理由でわたしは、この三つの学問(代数学・幾何学・論理学)の長所を含みながら、その欠点を免れている何か他の方法を探究しなければと考えた。法律の数がやたらに多いと、しばしば悪徳に口実を与えるので、国家は、ごくわずかの法律が遵守されるときのほうがずっとよく統治される。同じように、論理学を構成しているおびただしい規則の代わりに、一度たりともそれから外れまいという、堅い不変の決心をするなら、次の四つの規則で十分だと信じた 第一は、わたしが明証的に真であると認めるのでなければ、どんなことも真として受け入れないことだった。言い換えれば、注意ぶかく速断と偏見を避けること、そして疑いをさしはさむ余地のまったくないほど明晰かつ判明に精神に現れるもの以外は、なにもわたしの判断の中に含めないこと。 第二は、わたしが検討する難問の一つ一つを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分割すること。 第三に、わたしの思考を順序に従って導くこと。そこでは、もっとも単純でもっとも認識しやすいものから始めて、少しずつ、階段を昇るようにして、もっとも複雑なものの認識まで昇っていき、自然のままでは互いに前後の順序がつかないものの間にさえも順序を想定して進むこと。
 そして最後は、すべての場合に、完全な枚挙と全体にわたる見直しをして、なにも見落とさなかったと確信すること。
 きわめて単純で容易な、推論の長い連鎖は、幾何学者たちがつねづね用いてどんなに難しい証明も完成する。それはわたしたちに次のことを思い描く機会をあたえてくれた。人間が認識しうるすべてのことがらは、同じやり方でつながり合っている、真でないいかなるものも真として受け入れることなく、一つのことから他のことを演繹するのに必要な順序をつねに守りさえすれば、どんなに遠く離れたものにも結局は到達できるし、どんなにはなれたものでも発見できる、と。それに、どれから始めるべきかを探すのに、わたしはたいして苦労しなかった。もっとも単純で、もっとも認識しやすいものから始めるべきだとすでに知っていたからだ。そしてそれまで学問で真理を探究してきたすべての人々のうちで、何らかの証明(つまり、いくつかの確実で明証的な論拠)を見出したのは数学者だけであったことを考えて、わたしはこれらの数学者が検討したのと同じ問題から始めるべきだと少しも疑わなかった
  デカルト『方法序説』 p.27(ワイド版岩波文庫180 *重要な語と文章は、要点を見やすくするため四角い枠で囲むかアンダーラインを引いた。
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(4)単純なものから複雑なものへ=順序の想定
 より単純なものから複雑なものへという順序を想定することは知識の整理にとって大切なことです。科学の方法四つの規則の第三がそうした方法(=上向法)を示唆しています。学問においてはもっとも大事なことなのですが、これはまた別の機会に書きます。
 「資本論と21世紀の経済学」というカテゴリーが弊ブログにありますが、経済学に関してはそこに書き溜めてあります。

 生徒から質問のある都度、こうした4つの観点から具体的に繰り返し説明しています。数学を通じて、普遍的な学問のやり方を教えているつもりです。
 数学は他のさまざまな学問に深く関わっています。成績上位生は数学の勉強を通じて学問全般に視野を広げる努力をしてください。



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