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#4648 思い込みを外すテクニック:中3数学の問題 Nov. 10, 2021 [5.1 脳の使い方]

 脳の使い方を具体例で説明したい。とくに数学の学習上とっても大切なことです。

 昨日(11/9)、授業の終わりごろに生徒から質問があった。条件がシンプルな問題だった。9時になったので時間切れ、解けなかったので次回に説明すると伝えた。条件が一つ足りない感じがした。あるいは条件の見落としがあるはず、それが見つからない。
 問題は∠ABEを求めよというものだ。

DSCN5642s.jpg

 問題の条件はとってもシンプル、次の三つつだけ
①四角形ABCDはひし形である
②AD=AE
③∠DAE=4544度

 生徒たちは今日学力テスト総合Cを受けている。生徒がやっていたのは過去問だと思っていたので、範囲に入っていない円と円周角の定理は使わない、ひし形と二等辺三角形と4544度の三つの条件で考えることにした。
ひし形は「対角線が直交する」「四辺の長さがみな同じ」、この二つだけがひし形の定義である。対角線を引いてみたが、しばらく考えたが、どうしても条件が足りぬ。時間切れとなった。

 食事をしながら、図を思い出して描いてみた。見落としているはずの条件が何か?頭の中の思い込みを消すことにした。食事しながら図を虚心に眺めてみたら、15分くらいして四角形ABCEが円に内接しているように見えた。点ABCEが同一円周上にあれば問題が解ける!

 △ADEは二等辺三角形だから∠D=∠AED=(180-44)/2=68度
 ひし形の内対角は等しいから∠ABC=68度
 よって、∠AED=∠B=68度
 四角形ABCEの外角がそれと隣り合う角の対角に等しくなっているので、四角形ABCEは円に内接しており、点ABCEは同一円周上にある。
 また、
 ∠CAE=112/2-44=12度
 弦CEの円周角だから
 ∠CAE=∠CBE=12度
 よって、∠ABE=68-12=56度

 これは、学力テストの過去問ではない。どこか私立高校の入試問題か、入試予想問題だろう。個別指導だから同じ中3の生徒でもそれぞれが学力に合わせて自分が選んだ問題集も使っているから、どんな質問が来るかわからない。だから面白い。
 「内接四角形の外角がそれと隣り合う内角の対角に等しい」「内接四角形の内対角の和は180度」という定理を知らなきゃできない問題である。これは高校数学Aの範囲で、最後のあたりに出てくる、根室高校1年生もまだやっていない章である。45年前には、中学数学の範囲に入っていたと思う。中3のシリウスにはこの定理も解説されているし、問題が載っている。
 弊塾に来てから3回続けて中3学年トップの生徒はまだ『シリウス中3数学』の160頁のあたりだから、内接四角形の問題は12月中旬になる。有名私立高校入試なら、標準問題である。2-3分で解かなければならない。
 つまり、私立難関校受験は数ⅠAまでやっておく必要があるということ。合格したら、授業速度が速いのと採り上げる問題の難易度が高いので、予習して独力で問題解いておかないとついていけません。

<リゲルさんのシンプルな解法>11/11朝追記
 ハンドルネーム・リゲルさんからとっても簡潔な解法のポスティングがありました、こちらの方がずっとスマートです。わたしは△ABEが二等辺三角形になっているのを見落としました。なお、角度はわたしが45度とミスタイプしてしまったので、44度に直して転載しています。
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∠DAE=44°
△ADEは二等辺三角形なので∠AED=1/2(180−44)=68
錯角を利用して∠AED=∠EAB
△ABEも二等辺三角形なので
x=1/2(180-68)=56
答え56°
--------------------------------------------
 図形の問題は条件を見落とすと、シンプルな解法には行きつけないリスクの高い分野です。この問題の場合には△ABEが二等辺三角形になるということに気がつかなければ、シンプルにはいきません。そういう場合でも代替手段で解くことが可能です。わたしがやった内接四角形の外角の定理を使う方法です。見た通りシンプルではありませんね。ふだんから複数の解法を比較してください。安易に答えを見てそれをなぞっていたら、いつまでたっても力はつきません。
 じつは、同じくらいシンプルな解き方がもう一つあります。面白いので「試行錯誤」してみてください。ヒントはひし形の隣り合う内角の和は180度ということ。
 「試行錯誤」がだいじです。試行錯誤しているときには脳が活発に動いています。答えを見てそれをなぞっているときは脳はほとんどお休み状態です。車ならアイドリングしているだけ。数学の問題は複数の正解手順があるのがあたりまえですから、できるだけシンプルで美しい解き方を追求しましょう。

<意識の集中と分散トレーニング>
 数学の問題が解けないときは、条件の見落としか、思い込みがあって、そこから焦点を外して、問題そのものを見るとか、ボンヤリ全体を眺める必要がある。意識の焦点を絞ること(=意識の集中)は簡単だが、それを外すことが意識的にできる中高生は1000人に1人いるかな。こういうことが自在にできれば、数学の全国偏差値は80を超える。

 座禅を組んで瞑想するときに、蝋燭の火を見つめるとそこに意識を集中できる。そこから今度は呼吸に意識を集中して、蝋燭の火に集中していた意識を消してしまう。呼吸はゆったりとした長息がいい。
 思い込みを消せなかったら、問題を暗記して、後で紙に書いて再現してみたらいい。何度か繰り返すうちに、しばりつけられていた意識がそこから離れられ、まったく別の視点から問題が見えてくる。テストの制限時間内にそれを意識的にやるには、トレーニングが必要だということですよ。いい頭は自分で創り上げることができます。
 やり方を教えてあげられる人がいたら、5%くらいの生徒は意識の分散をマスターできます。

<臨時休校>
 小中学校は臨時休校になりました。学力テスト総合Cは順延でしょうね。
 今朝の最大風速は28.1m/s、時速101kmである。雨量は7時に8.5mm/h、8時に11.0mm/hあった。強風で傘は使えない。今12時50分ですが、雨はとっくにやみました。光洋中学校のテニスコートは水たまりができてます。


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コメント 3

リゲル

ebisuさんこんばんは
根室における教育現場での奮闘、いつも拝読しております。
中学生の学力格差の解消はなかなか難しいですね。
札幌でも地域によって大きな差がありますが、解消するばかりか拡がる一方です。

この問題ですが、
∠DAE=45°
△ADEは二等辺三角形なので∠AED=1/2(180−45)=67.5
錯角を利用して∠AED=∠EAB
△ABEも二等辺三角形なので
x=1/2(180-67.5)=56.25
答え56.25°

ではないでしょうか。

by リゲル (2021-11-11 00:55) 

リゲル

ebisuさんは44°で計算しているので答えの値が違いますが、45°で進めれば同じ値になります。
by リゲル (2021-11-11 01:03) 

ebisu

リゲルさん
おはようございます。
45度はわたしの転記ミスでした。
メモには44度とあります。
なるほど、△ABEは二等辺三角形ですね。
AD=AE=AB(ひし形の辺の長さは等しいので)
それで、答えは56度
リゲルさんの解答がスマートです。
やはりより簡潔な解法があった。
わたしは辺の長さが同じになるところを見落としてましたね。だから迂回してしまった。
角度は訂正しておきます。
どうもありがとう。
by ebisu (2021-11-11 09:01) 

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