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#4587 旭川医大現役合格生の話:後日談 July 17, 2021 [65.a-1 旭川医大現役合格者の軌跡]

 7/12に件の生徒が帰郷して、塾へ顔を出してくれました。医大へ行ってからわかったことをいくつか報告してくれたので紹介します。

 新入生同士で会うと「出身高校はどこ?」という話になります。関西の進学校や東京の進学校、道内の名だたる進学校からがほとんどですから、「根室高校」というと、「そんな(進学)高校あったっけ?」という反応が返ってきます。首都圏の進学校からの合格者が「偏差値45の道立高校からの現役合格」だと知ると、「それはありえない」となります。

 実際に、高校がたくさんある都会では偏差値45レベルの高校から現役で国立医大への合格実績はありません。たとえば、「偏差値45の都内の高校一覧」から拾うと、都立八王子北高校がありますが、「進路実績」を見ると、2020年の国公立大学への進学実績はゼロ、GMARCH(明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学・学習院大学)への進学実績は1人のみ。
 現役で国公立医大へ合格するためには八王子地区なら八王子東高校(偏差値73)へ進学するのがスタンダードなコースです。八王子地区で国公立大学を目指すなら、八王子東がベストです。都立日野台(偏差値64)からはちょっときついかな、数年に一度でしょうね。「都立日野台進路実績
八王子東高校の過去3年間の進学実績」をご覧ください。東大は2020年度は5人、2019年度は7人、GMARCHは2020年度326人です。

 

 首都圏から合格した生徒たちが、「偏差値45の高校からの合格はありえない」というのはデータだけの判断ではないのです。進学校は中高一貫校が多いので、1年半くらい前倒しで授業しています。八王子東高校は中高一貫校ではありませんが国公立大への進学者数が毎年100名前後いますから、国公立大学や私大難関校への進学には圧倒的に有利なのです。ふだんの授業のレベルが高いので、そういうシステムの中で学内順位が何番なら、どの大学に合格できるというラインが見えています。件の生徒は、共通テストの得点を知った道内の進学校から合格した生徒に、「その点数なら合格してる」と言われたそうです。根室高校にはそういうデータの蓄積がありません。無理ないです、コンスタントにそういう大学へ現役合格者が出てませんから。
 道内の高校からの合格者も同じです。ほとんどが偏差値60以上の進学校から合格しています。札幌南高校(72)、札幌市立旭丘高校(67)、旭川東高校(67)、帯広柏陽(66)、釧路湖陵理数科(68)などです。
*道内の高校偏差値ランキング

 偏差値45の高校の授業を受けて勉強していたら合格は不可能だというのが、進学校からの合格者が異口同音に言うことです。そしてそれは事実でもあります。授業のレベルが低すぎるからで、低いというのは、①進捗が遅いということと②授業の難易度が低いということ。それゆえ、偏差値45の学校は、授業の進捗速度と取り扱う問題の難易度が極端に低いので、とても現役合格はおぼつかないということ。

 実際のことを具体的に考えると無理なことがわかります。国公立大医学部へ現役合格できるような内容の授業をしたら、普通科110名中で授業について来れる生徒は1-3人までです。そんな授業をしたら生徒とその保護者から一斉にクレームが出ます。だから、生徒の学力に合わせた難易度の低い授業にならざるをえません。入学してくる生徒の学力が下がれば、根室高校の授業のレベルも下がってしまうのはモノの道理です。

 根室西高校との統合後、高校はこの地域に一つだけですから、実質全入状態、学力低下が著しいので、数Ⅱはすでに選択科目です。10年以上前に根室高校普通科を卒業した皆さんは驚かれるのではないでしょうか?数Bが必修のときも数年間ありました。110名の内、18年前の根室高校普通科のレベルの生徒はいまでは30人ほどです。とっくに合格最低点なんてありませんよ。17年前だったかな一度だけ定員オーバーとなって、3人落ちたことがありましたが、その時の不合格者の得点は150点(300点満点)でした。この得点なら現在は普通科特設コースへ合格できます。

 ではどうやったら偏差値45の高校に在学しながら難関大学へ合格ラインまで学力をアップさせうるか?
 学校の授業を無視して、難易度の高い問題集を学校の授業中にひたすら解くしかありません。魔法なんてないのです。都会の進学校で授業を受けている生徒たちと同じレベルの難易度の問題を、1年半先取りして自分で予習して直ちに問題演習するしかないのです。塾では余計な解説をしてはいけません。例題を見て、すぐに独力で問題演習します。そして5分考えても糸口が見つからない問題を質問したらいいのです。集団授業の冗長な解説は不要です。本来は進学校のハイペースで難易度の高い授業についていける能力の生徒ですから。
 進学校の生徒たちは根室高校の生徒たちが、簡単な基本問題に時間を多く投入している間に、どんどん進みます。そして入試レベルの難易度の問題を日常の授業で取り扱います。それに追いつき追い越すことが目標なので、同級生は競争相手ではありません、難関大学は「全国区」なのです。

 件(くだん)の生徒は小学5年生の1月4日からニムオロ塾へ通い出しました。そして学校では塾用の問題集を解いていました。小6なのに中1の難易度の高い問題集をガンガンやっています。とうぜん、担任の先生との間に軋轢が生じます。「そんな難易度の問題集をやってもわかるわけがない、(わたしの)テストで百点獲れない」、先生だって人間ですから、成績のトップの生徒に無視されたら面白くありません。だが、医学部現役合格を心に決めた生徒は妥協できないのです。「百点獲れます」と言い切り、その通りの実績を叩きだし続けました。中学校でも同じトラブルに巻き込まれます。生徒の側から見たら「迫害」の連続です。気持ちは、「僕には構わないでほしい、授業の邪魔をするつもりはありませんのでお願いだから放っておいてください」。塾側から言いたいことは、「高学力の生徒に対応できる授業ができないなら、放っておいてもらいたい」ということ。高校の先生は、2年生になってからは放っておいてくれました。1年生の終わりに、一度トラブルがあり、学年主任と1年生担当の5人の先生を向こうに回して、学力差を無視した一律の宿題についてこの生徒は議論をしています。もちろん、大人が何人相手でも物おじしませんよ、論理的な議論に長けていますから。#3941#3942をご覧ください。

 偏差値が70を超える生徒は学校の先生たちは放っておいた方がいいのです。自学自習の習慣が身についている生徒には宿題を出す必要もありません。現に根室高校は生徒に自律的な学習を求めているのですから、一律の宿題なんて学校のそういう教育方針とは矛盾しているのです。生徒を指導すべき先生たちの方が学校の基本方針とはまったく違うことをしているということです。まっすぐな生徒は許せませんよ、生徒の方からは「二枚舌」に見えていますから。そして難易度の低い宿題は高学力の生徒にとっては迷惑なだけです。
 中学生なら学力テストで五科目平均点が8割を超している生徒は、宿題免除というルールを設定すればいいのです。高校生なら、進研模試で科目別に7割以上の得点の生徒は宿題免除。こういう生徒たちに難易度の低い宿題は必要ありません。不合理である理由を滔々と述べて反抗するだけです。中高生のうちから、理不尽なことに物を言わぬ人間になったら、人格の陶冶ができません。社会人となったときには、ときに黙らざるを得ないことがありますが、そういうときは他日を期して牙を研げばいいのです。

 物理と化学は塾では教えられないので、件の生徒はそれぞれの担当の先生に3年生の夏過ぎてから週1-2回、2か月間放課後補習をお願いしています国立大難関校を受ける友人を誘って補習をお願いしてみたら、快くお二人の先生が引き受けてくれました。先生も授業が楽しかったと思います。思いっきり難易度の高い授業にがっちり喰いついてきますから。残念ながら、参加できたのは2人だけ、もう一人学力的には参加できたはずですが怖気づきました。ニムオロ塾の生徒ではありませんが、生徒から聞いている限りで中学生のときから数学のセンスのよい生徒だったので、もったいなかった。
 学校と塾とが連携すれば、毎年3人は難関大学へ合格できます。今年は2人惜しかった。もっと長期的な教育戦略を立てて、勉強していれば北大総合理系現役合格者が2人出たでしょう。もったいないと思います。
 学校や塾が生徒の期待に応えられなければ、中学校や高校からは札幌の進学校へ行く生徒が増えます。高学力の生徒が難関大学へ進学するためには根室にいられなくなってしまうとか、学力を伸ばしきれずに目標の大学へ入学できないなんていう悲しい事態を招いてはまずいでしょう。地域の大人たちが誠実に仕事をして、自分の職責をまっとうすることです。そしてそういう大人たちが協力すれば、根室の子どもたちの学力を飛躍的に上げることができます。もちろん小学生1年生から家庭学習習慣を育むという家庭の側のやるべきことがあります。それは、そのやり方をぐたいてきにお母さんやお父さんたちに教えてやらなければいけません。しっかり躾けできているのは生徒を見る限り5%ぐらいなものです。ほとんどの保護者は家庭学習習慣の具体的なしつけ方を知らない。
 (12月に札幌市立旭丘高校へ進学したいという生徒が来ました。学力増進会のテストで合格確率は50%以下、最初は質問だらけでしたが、2月初旬には質問がなくなっていました、それで合格できると確信しました。女子ですが根性のある生徒でしたね、念願かなってたのしい高校生活を送っているようです。)

 もうひとつ、二次試験で小論文テストがありましたが、300点満点で295点とっています。リモート医療が話題になった面接では失敗してますが、小論文テストの点がよかったので、道北道東地域推薦枠の合格者10名では2番目の総合得点での合格となりました。
 この得点は進学校から合格した生徒たちには驚きだったようです。実質満点ですからね。件(くだん)の生徒には国語が勝負の分かれ目になると判断して最初から手を打ちました。日本語音読トレーニングを6年間やったのです。読む本の難易度を段階的に上げていきました。音読しながら、著者の意見を読み取ることと著者が見落としている点から内容を批判的に吟味するというトレーニングをしていました。
 わたしの専門は理論経済学ですが、大学のゼミでは市倉宏祐教授(哲学)に学び、大学院では増田四郎教授(西洋経済史)の授業をたった3人で1年間受ける機会に恵まれました。それぞれの分野でトップレベルの教授のゼミでやるような議論をこの生徒としてきました。自然に大人と論理的な議論することに慣れてしまっていました。それがどういうレベルなのかこの生徒は知る由もありません。小論文でそれまで培った力のほどが出たと考えていいのです。高校生のレベルを圧倒的に超えてしまうような勉強をずっとしてきたのですから。
 根室高校からどうやったら難関大学へ現役合格できるのか、その教育戦略、そしてふだん何をどのようにトレーニングしたらいいのかを、彼に続く者たちのために記録として残しておきます。それも弊ブログの目標の一つでした。間に合った。(笑)
 実際に旭川医大へ現役合格した生徒のデータは「実証記録」でもあります。たまたま一人が難関大学へ合格出来たって、根室という地域にはあまり意味がありません。継続してこの地域から難関大学への合格者を毎年だすことが目標ですよ。どうやれば毎年数人難関国立大学への合格者を輩出できるのか、実証データを公開することで明らかにします。

 次回は、この生徒が根室高校から依頼されて書いた「合格体験記」をアップします。これは学校側が後輩たちのために公表を前提に、作成依頼したものです。思ったことをまっすぐに書いたので、物議をかもしたのかもしれません。7月半ばを過ぎても公表されないところを見ると、没になったのでしょう。小論文として眺めても水準の高いものですから、弊ブログで公表します。
 根室高校から難関大学現役合格を目指して勉強する生徒たちの参考になれば幸いです。

*音読トレーニングに使用した本のリストは弊ブログ・カテゴリー「65-1 旭川医大現役合格者の軌跡(5)」に「あります。

<余談:一律の宿題廃止要求> #4023より転載

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 生徒全員一律という理不尽な宿題の出し方についてクレームを申し立て、学年担任と学年主任の先生たち五人に呼び出されて議論せざるをえなくなりました。ちゃんと敬語を使い言葉を選んで、自分の主張を通しています。この生徒はわたしと話す(雑談ですら)ときでも言葉を崩しません、大人に対する言葉を使い分けています。わたしにはいつものことですが、議論をした先生たちの驚く様子が目に浮かびます。高校生の弁ではありません。その様子は弊ブログのどこかで書きました。今年四月のことだったと思います。
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