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#3783 アリとキリギリス③:大災害時の下水処理の問題 July 17, 2018 [12. 自然災害への備え]

 日本列島は大災害が目白押し。関東での直下型大地震、富士山噴火、東南海連動型大地震、極東のわが町では四百年に一度の道東沖巨大地震が30年以内に78%の確率で起きると最近公表された。高さ20mクラスの津波が根室半島の太平洋沿岸や北海道全域の太平洋沿岸地域を襲うことになる。5500年間に15回という頻度は地質学調査ではっきりした事実だから、根室市や北海道そして政府などの公的部門が備えを固めるのは当然のことだろう。

 被災した後の水とトイレの問題を前回取り上げたら、FB上で下水処理の問題をSさんが指摘してくれた。もっともなご意見である。好奇心の強いかれは最近上下水道関係の本を数冊読み漁っており、こういう問題には具体的な指摘をしてくれるありがたい存在、まず彼の意見を紹介したい。
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水洗トイレが使えるためには、下水管が健全であることも必要です。これはかなり厳しいでしょう。下水管は力学的に弱い材料で作られているからです。塩ビ管やコンクリート管など。そして下水管は重力で流下していきますが、その最深部にはポンプがあり、またポンプアップして浅い配管へ持ち上げて、また重力で下水処理場へ向かいます。このポンプも健全であることが必要です。最終的な下水処理場も、川べりや海の近くにありますから、地震や津波で健全ではありえないでしょう。そう考えると、地震や津波で被害にあったときまで、水洗トイレを使おうと思うのはかなり難しいことだと予想できます。なので、屋外に穴を掘って使うのが最善かと思います。いっぱいになってきたら埋めて、他の場所に穴を掘る。
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  穴が掘れたとして、避難所である小中学校の100m×150mのグラウンドをトイレにしても、数日しか持たぬというのもSさんの判断。汲み取り式の仮設トイレが代替案。実際に汲み取り式仮設トイレを設計して、使い勝手と処理の流れをシミュレーションして必要な道具がなにかを議論すべきだろう。
 代替案を検討するとして、問題は生まれたときから水洗トイレに慣れている子どもたち、そして若年層が仮説のぽっちゃんトイレで用を足せるかということ。しゃがんでするだけでもトレーニングが必要になる、できない子もいるだろう。

 ところでSさんは下水管は塩ビ管やコンクリート管だから地震に弱いと書いている、大事なことはそのあとにある。下水が重力で流れていくというところだ。根室の水道管は老朽化して、最近ニ層の構造的に丈夫なポリエチレン管に切り換えられていることは#3777で写真で紹介した。水道管は水圧がかかっているから、地震で亀裂が入れば地表に噴き出すが、下水管は口径が大きく、重力で流れるのだから地表に噴き出す心配がない。亀裂が入ったり、一部分損壊してもおおかたは地中を流れていく。
 問題はポンプで汲み上げて流す中間地点と終端の下水処理施設にあるのだろう。そこに電力供給できれば問題は解決できそうだ。
 根室には大型の風力発電所がすでに10基ほど設置されているから、北電の電力供給が止まっても、近い風力発電所から電力が確保できればよい。電力も地産地消が大事だということに災害を想定して気がつく。原野を数km横断すればいいだけだから別配線をしておいて、非常時に優先供給されるような切り換えスイッチがあればしのげるのではないか。万が一断線しても距離が短いからすぐに復旧可能だ。Sさんは関西の大きな研究所の施設管理を単相している電気技術者だから、このあたりもたしかな意見と判断力があるはず。
 終端家水処理施設には太陽光発電パネルを設置して風力発電と併用すればいい。幸いに根室は下水処理施設周辺に太陽光発電パネル設置適地がいくらでもある。根室は雪が少ないから冬季間も効率よく発電できそうだ。

 これらは災害が起きてからでは間に合わぬ、来年度予算でやればいい。根室は四百年に一度の巨大地震が来ても、水やトイレや電力供給に関しては事前準備がかなり整いそうだ。
 住民の意思次第というところか。市議が市民の声に耳を傾けて動けばいい。道議や国会議員もそれぞれに役割がある。もちろん市役所総合政策部が自ら企画実行するのがもっとよい。それぞれが己の仕事をしっかりやることで適切な準備が整う。
 仕事をしっかりやっておけば災害が起きたときに市民から感謝されるだろう。世のため人のために仕事しよう。


*#3777 四百年に一度の巨大地震(78%)が来ても水道は大丈夫? July 4, 2018
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-07-04

*#3780 アリとキリギリス:西日本豪雨災害⇒死者203人、不明50人近く July 14, 2018
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-07-14

*
#3782 アリとキリギリス②:水とトイレの災害対策 July 16, 2018
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-07-16





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よっちゃん

数冊ではなく、すでに十数冊読んでます。5万円分かな。
それはさておき、風力発電も太陽光発電もそれだけでは発電電力が不安定なため、自立運転(電力会社の電気と切り離して運転すること)はできません。自立運転するためには、蓄電池設備が必要になります。蓄電池からの電力で、風力や太陽光の変動する発電電力の穴埋めするのです。蓄電池はものすごいコストがかかりますので、大抵は必要最小限しか設置できません。1000kW発電できるメガソーラでも、自立運転では晴天時で300kW、夜間は100kWとかその程度です。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1502/26/news033.html
by よっちゃん (2018-07-17 14:47) 

よっちゃん

洋便器タイプの仮設トイレもあります。
by よっちゃん (2018-07-17 14:50) 

よっちゃん

たぶん、下水道を管理している自治体の部署から、下水を流さないよう通知されると思います。やたら流されると、復旧作業に支障となります。また、汚水が地下浸透すると地下水を汚染するので、災害井戸の水が飲用できなくなる恐れもあります。
by よっちゃん (2018-07-17 14:54) 

さっちゃん

クソは野に放つに限る。土に埋めれば数日で微生物たちが跡形もなく分解処理してくれるよ。一箇所に集中させようとするから処理に困るけど、皆が思い思いに分散して好きな所で糞すれば環境に優しく、自然と調和するよ。
by さっちゃん (2018-07-17 21:22) 

ebisu

専門家の登場です、投稿ありがとうございます。

数冊ではなくて十数冊でしたか、徹底してますね。
蓄電装置の件ですが、SRL八王子ラボでも停電対応用の蓄電池は施設管理課の管轄下にありましたが、1時間程度しか持ちません。その間に検査機器やコンピュータシステムの終了処理をして電源回復を待つようになっていました。
太陽電池の発電量と風力発電の発電量とそれらを安定的に運用するにはどの程度の蓄電装置が必要なのか、専門家の計算が必要ですね。そしてそれはあまり現実的ではないというご意見のようです。

この地域では上下水道事業は根室市の管理下にありますが、ここが震災時に下水使用を禁止したらお手上げですね。
地下水が汚物で汚染されたら数十年あるいは百年間も地下水の利用に問題を生じます。避難場所に井戸を掘っておくとしたら、そこの地下水を汚染することは大きなダメージです。飲料水が汚染されます。

そういう前提なら、仮設トイレの設置と汲み取り方式しかありません。それも汲み取り後の汚物処理が問題になるでしょう。具体的な作業の流れを想定して問題点をつぶしておく必要があります。

いずれにしても、あなたとわたしがいましているように、平時にそうしたことを具体的に議論し、段取りを決定しておくのが望ましいのでしょう。
トイレ問題は一筋縄ではいかないことはよくわかりました。大阪と根室、1400㎞の距離を超えての議論に感謝。

by ebisu (2018-07-17 21:44) 

ebisu

さっちゃん

分散させたら、土の微生物が数日で分解処理してくれますか、それが一番いいようですね。
庭のあるうちは庭にしたらいいということ。
なるほどそういう手があるか。ありがとうございます。
集合住宅の地域は、ちょっと面倒そうですが、根室なら何とかなりそうです。
by ebisu (2018-07-17 21:50) 

よっちゃん

今は国際法で屎尿の海洋投棄は禁止されているんですね。昔はバキュームカーで集めた屎尿を、おわい船で海洋投棄していたようですが。災害時は仮設トイレを使い、バキュームカーで集めて、近隣の健全な下水処理場へ運んで処理するしかないようです。大地震のような広域災害の場合は健全な下水処理場も殆ど無いでしょうから、どうするんでしょ?まだまだ調べなくちゃね。
by よっちゃん (2018-07-18 12:17) 

ebisu

よっちゃん

継続してネットで検索して調査してくれているんですね、ありがとうございます。
根室の場合は仮設トイレを利用してバキュームカーで下水処理場までは運べそうです。
災害時に下水処理場をどうやったら稼働させることができるか、具体的な方法が見つかれば、トイレの問題もなんとかなります。

下水処理の専門家の具体的なご意見をいただきたいところです。

屎尿処理施設はまるで化学工場です、こりゃ厄介だ。

*屎尿処理の仕組み
http://www.ikouiki.or.jp/seisou/shinyo-shikumi.htm

ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/し尿処理施設

厄介だからと言って放っておいたら、広域の大災害時にはもっと厄介な問題を引き起こします。

by ebisu (2018-07-18 15:39) 

ebisu

太陽光発電と小型の風力発電を避難所に備えて、電圧安定のためにコストの高い蓄電装置の代わりに携帯型発電機をつなぐというのはどうですか?

<携帯型発電機>
https://www.monotaro.com/s/q-%83%7C%81%5B%83%5E%83u%83%8B%20%94%AD%93d%20%8B%40%20%83K%83%5C%83%8A%83%93/?utm_medium=cpc&utm_source=Overture&utm_campaign=B&utm_term=29516636&utm_content=sq&ef_id=WiuzIQAAAEs0RjWw:20180719031325:s
by ebisu (2018-07-19 12:15) 

よっちゃん

携帯型発電機は単独で使うためのもので、他の発電機と並列してもすぐ止まってしまいます(同期運転ができない)。それにご紹介のURLにある携帯型発電機はせいぜい1kW程度のものです。同期運転できたとしてもメガソーラーや大型風力の出力調整には小容量すぎて使えません。
by よっちゃん (2018-07-19 12:32) 

よっちゃん

大型の同期発電機より、蓄電池のほうがそれでもコストは安いので、皆蓄電池を使うわけですよ。
by よっちゃん (2018-07-19 12:33) 

ebisu

よっちゃん

なるほど、携帯発電機は他の発電機との同期運転ができないのですか、それではソーラ発電や風力発電の安定運転には使えませんね。

避難所の井戸のポンプを動かすだけなら携帯用電源単独でで十分ということですね。
日中なら、屋上や屋根に設置した太陽光発電でも井戸のポンプの運転はできる。

下水の最終処理場を動かす安定電源確保を風力発電を主電源にして蓄電池でサポートしてやることにしてもかなりの出費になるということのようですね。
専門家が下水処理施設を調査して必要な容量を割り出すしか方法がなさそうですね。北海道で冬季間に大規模災害が起きたときはほんとうにやっかいそうです。

水道管の破裂と違って水が噴き出すわけではないし、地面に聴診器のようなものを当てて、音を増幅してヘッドフォンで水漏れ箇所を探し出すなんてことも下水ではできない。
どうやって調べることができるのだろう?

by ebisu (2018-07-19 12:53) 

よっちゃん

下水管の損傷は、定期的に大口径部分は人が入って目視で、人の入れない部分はファイバースコープで検査しています。それから地下水も検査していて、大腸菌などが地下水から検知された場合は、近隣の下水道管の破損を疑います。
by よっちゃん (2018-07-20 10:44) 

よっちゃん

太陽光発電も「自立運転機能付き」のコンディショナがついてないと、単独では使えません。家庭用のコンディショナだと1500W上限のようです。井戸ポンプ、動くかな?https://www.green-energynavi.com/library/articles/indipendence-operation.html

by よっちゃん (2018-07-20 10:50) 

ebisu

よっちゃん

大口径の下水管は目視で、細い下水管の点検はファイバースコープでやられているのですか。下水漏れのチェックに地下水の細菌検査までしている。さすがよっちゃん、ちゃんと調べてくれる。
災害で破損があっても時間と手間をかければ復旧ができそうです。それまでどうしのぐかということ。

太陽光発電は自立運転のための「パワーコンディショナー」を自立運転モードに切り替える必要があるのですね。そういう機器を設置しておかなければならない。
昼間動くだけでもありがたい。携帯用発電機で電力供給できる範囲のポンプを設置するしかないですね。燃料用のガソリンはあまり手に入らないことが考えられるので、なるべく太陽光発電でしのぎ、それが使えない時間には携帯発電機でカバーするというようなことを考えておかないといけないということですね。

技術者のよっちゃんは実機で試験して確認しておいた方がいいと言うのでしょう。
by ebisu (2018-07-20 11:19) 

よっちゃん

普段、電力会社の電気で動いているものを、携帯発電機で動かそうと思ったら、もともとの電線を切り離して、発電機と接続しなければなりません。かなり面倒です。電気工事士免許のない人にはできない作業。災害用なら、こういう接続替えも素人さんでもできるように作っておかなくちゃね。
by よっちゃん (2018-07-20 15:22) 

ebisu

事前にちゃんと切り換え装置を用意しておかないと、いざというときに役に立たないのですね。事前準備をちゃんとやることは仕事の基本です。

ところで、地下水くみ上げ井戸はふだん使わないつもりです。水脈が十分大きければ問題なしですが、そうでない可能性もありますから、地下水位を下げたくありません。
だから、毎月一度電源を接続して訓練を兼ねて点検するようにしたい。
通常の電力回線の電気が回復したら、そちらへ切り替えられるように、ご提案のように切換え装置はつけておきたいですね。

by ebisu (2018-07-20 15:52) 

よっちゃん

「呼び水」とか知らない人も多くなってます。ぜひ定期的な訓練を。
また、簡易浄水器を自作してみたりするのも楽しいですよ。
by よっちゃん (2018-07-20 16:24) 

ebisu

よっちゃん

手動ポンプを使ったことがあればわかりますが、使ったことのある人は高齢者だけでしょうね。
電動ポンプも同じことですか、始動には呼び水が必要。
小学生の皆さんは簡易浄水器を夏休みの工作で作ってみたらいい。
作った経験があると災害があったときにもつくれます。

作り方を検索してみましたが、帯に短したすきに長しです。3つリストアップしておきます。全部見たらよくわかります。

http://ysgv.jp/waterlab/2182
https://science.isoganai.com/index.php?%E7%B0%A1%E6%98%93%E6%B5%84%E6%B0%B4%E5%99%A8%E3%81%AE%E4%BD%9C%E3%82%8A%E6%96%B9
https://jisin.jp/life/living/1623961/


by ebisu (2018-07-20 21:45) 

よっちゃん

ぜひ、年1回地域で「防災教育」をしてください。特に中高生は、災害時に幼少の子や高齢者を補助する役目があります。場合によっては、高齢者をおんぶして避難することも高校生の役割です。おんぶの練習も大切です。
by よっちゃん (2018-07-21 07:48) 

よっちゃん

防災倉庫には、簡易浄水機用の活性炭を20kgくらい置いておくといいと思います。それから殺菌用のさらし粉も。
by よっちゃん (2018-07-21 07:49) 

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