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#3630 学力テスト総合B:学力向上をどうやるか Oct.23, 2017 [71.データに基づく教育論議]

<更新情報>
10/23 午後6時40分追記  11.<余談:小学4年生以前の既習事項の大穴と個別補修>
10/25 朝8時半追記 英語学習の最終獲得目標と日本語音読の副次効果について
10/28 午前0時追記 12.<学力テスト総合B五科目合計平均点根室管内4中学校比較>


  10月11日に3年生対象に実施された学力テスト総合Bの結果データをアップします。丸括弧内の数字は学力テスト総合A、カギ括弧内の数字は4月の学力テストです。すべて60点満点。

        B中学校                       :  C中学校
         総合B   総合A    四月        総合B  総合A     四月
  国語  32.9  (33.2)  <32.5> :   34.1  (32.0)  <31.5>
  社会  21.0  (20.8)  <18.1> :   17.4  (22.9)  <20.0>
  数学  18.7  (17.2)  <18.3> :   13.3  (14.9)  <16.0>
  理科  17.1  (15.0)  <17.8> :   16.7  (18.1)  <21.5>
  英語  24.2  (23.5)  <22.1> :   21.4  (22.2)  <21.7>
  合計113.9 (109.7)<108.8> : 103.6(111.7)<112.6>


1.<データでみる学力上位層の枯渇化現象>
  市街化地域の3校の学年トップの話から始めましょう。得点分布表を見ると学年トップはB中学校は201-250点の階層に一人います、おそらく240点前後。C中学校は264点、A中学校は243点です。市街化地域の3校の生徒で200点を超えた者は各学校ごとに1-2名しかいません。

  C中の学年トップは1年生から全テストで五科目合計点トップを走り続けています。学力テストも定期テストも、難関大学医学部受験には関係ないのでトップにこだわらずともよしと言い続けているのですが、わたしが何と言おうがこだわりがあるようで、なかなか頑固。こだわりが過ぎると学習速度にブレーキがかかるので、バランスに苦慮しています。
  300点満点の学力テストではコンスタントに260点台、500点満点の定期テストで一番良いときは493点でも、1年前倒しでセンターレベルの難易度の数1・Aの問題集をやっていないと、高校1年生になった時の全国模試の偏差値はなかなか60に届きません。難関大学にターゲットを絞っている生徒は同学年には競争相手がいないのです。全国レベルを視野に入れて学習する必要があるのですが、目の前のニンジン(学年トップ)がどうしても気になる、それもダントツでトップでいたい。総合Bを入れてもあと4回で中学卒業ですから、学力テストと定期テストすべて学年トップの記録を残したいという気持ちはよくわかります。(笑)
  この生徒は英語も1年先をやっています。9月から高校教科書を使用していますが、3か月で高校1年のそれを、3.5か月かけて2年の教科書を、4か月かけて3年の教科書を消化します。大学院入試レベルを視野に入れて教えているので、教科書を終わったらジャパンタイムズ記事を読み漁ることになります。B4版1枚くらいの英文を読んでその抄訳が60分で書きあげられるようになればOKです、そこが大学受験までの到達目標ですから、大学受験英語の範囲を完全に無視して教えています。小学生5年の1月に入塾してきましたが、中1になるまで英語は教えていません、小学生の内は英語を教える必要がないからです。その代わりに良質の作品をいくつも選んで日本語音読トレーニングを徹底しました、今も継続中です。さて問題は英単語の発音トレーニングと英文音読トレーニングですが、これはCDやDVDを利用して自分でやるのが効率が良いようですから、わたしのほうは教材を4つばかり指定するだけ、その中から自分で選べばいい。とくに発音トレーニングは口の開け方、動かし方、舌の位置、音の出し方、基礎をみっちりやる必要があります。そうしないとリスニン力が伸びなくなってしまいます。大学卒業後に欲が出てハーバード大学へ留学したくなるかもしれません、そのときに困らぬように布石を打っておきたい。
  日本語音読トレーニングは13冊目に入りました、『福翁自伝』(岩波文庫)を読んでいます。明治期に書かれたものは語彙の範囲が広いので、ずいぶん骨折りの様子、いままでとは反応がまるっきり違っています。あたふたあたふた。(笑) 
  入塾当初は国語が苦手のようでしたが、日本語音読トレーニングで読解力が上がり、中高レベルの日本語テクストは読むだけで正確に理解できますから、苦手だった社会科も国語と一緒に点数が上がっていきましたので、五科目全部学年トップのことが多くなりました。日本語音読トレーニングの副次効果でしょうね。もちろん、得意の理科も教科書や興味に沸いた本を読むことで、学力が強化されているのだろうと想像します。英文の文脈読みや段落読み(論理展開読み取り)にも効果が出ているはず。日本語読解力が学力の基礎ですから、そこを小学生のうちに強化しておくことは長期学習戦略上大きな意味があります。英語が苦手だったお父さんやお母さんたちは、小学生の子どもに英語を習わせる方が多いように思いますが、良質の日本語テクストを読まずに大事な母語の基礎作りの時期を過ごしてしまうことがどれほど長期的な学力強化に弊害があるかご存じない
  いまでは、中学生の四人に一人が教科書を読めないか、読んでも理解できないというすごいことになっています。国立情報研究所の最近の調査データでは、教科書を読み理解することができない生徒の割合は五人に一人となっています。市街化地域の3中学校の生徒たちの国語力については、何度も弊ブログ具体的なデータを挙げて取り上げていますが、2-3割の中学生が小四程度の国語力しかありません。全国レベルでもそういうことが起きていたのですね、国立情報研究所の調査データで知りました。社会人になった時に上司からの仕事の指示は半分も理解できないでしょう。正規雇用の社員の職はほとんどアウト、資格の必要な知的職業に就くことも困難です。非正規雇用で年収100-150万円の職に就かざるをえません。働く意欲のある若い人たちみんなが正規雇用の職に就き、結婚して幸せに暮らすことのできる社会になってほしい。
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 国立情報研究所の中学生に対する最新のリーディング・スキル(日本語読解力)調査結果を紹介しています。
*#3460 根室高校入試倍率はどうなる? Nov. 19,2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-11-19-1

---抜粋------------------------------------
< 日本語読解力の急激な衰え:自己肯定感の喪失 >
 この(五科目合計点百点以下の)うちの半数(44人)は高校の教科書を読んで理解する読解力がないと推定されます。
国立情報研究所が最近やったリーディングスキルに関する予備調査でも340人中20%の中学生が教科書を読んで理解できないと判定されました
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*#3620 読んで理解する能力:学力テストデータから Sep. 26, 2017

http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-09-26
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  自分が高校生だったら通いたくなる塾、それがニムオロ塾の理想です、だんだん近づいてきました。到達しそうになったら、人生の残り時間もなくなっているのかもしれません。好きなことたくさんやらせてもらったから、まあ、よしとしましょう。

  ところで、わたしが考える学力上位層は220点以上ですが、B中では200点を超えているのは学年トップの一人のみC中は2人のみ2校でたった3人です。10年前には市街化地域の3校では各校200点超が7-12人くらいいました。ちなみに2007年度はB・C両校で20人も200点超がいました学力上位層の枯渇減少がデータに明瞭に現れています

2.<学力低下が進めば地域の未来に暗雲を立ち込める>
  地元企業経営者のみなさん、成績上位層が激減し、こんなに根室っ子たちの学力が劣化を続けていますがあなたの企業の未来は大丈夫ですか?地元企業が人材難で経営破綻していけば根室の人口減少が加速します。若い人たちは職を求めて根室を出ざるをえません。
  市教委さんは学力テストデータの推移を見なくていいのですか?データ見ないで学力向上へ向けた効果的な教育政策が立てられるわけもない。ずいぶん前にS山教育長が配布した基礎計算問題集『カルク』は効果がありましたか?やっている生徒はほとんどいません、配るだけでは効果なし、生徒の数学力は低下し続けていますよ。教育政策は自分たちが立案した政策を学力テストデータで検証すべきです。

3.<五科目合計平均点が低下しているのは15校でC中のみ>
 B中学校は4月、総合A、総合Bと順次五科目合計平均点が上昇しています。生徒たちが試験慣れすることと、3年生は部活から卒業して勉強し始める者が多いからそうなるのが当たり前です。ところが、C中学校は回を重ねるごとに点数が低下しています。
 釧路市内の13校の学力テスト総合AとBのデータが次のURLに載っていますが、総合Aから五科目平均点が下がったところは一つもありません。高校統廃合の影響だとわたしは考えています。2016年度のデータとなっていますが、右端のAとBのデータが今年の学力テストデータです。

*2016年11月実施 総合C学力テスト釧路市・釧路町 中学校平均点 
http://www.kitamon.com/cpek/datas/1611c.html

4.<科目別分析>
  C中学校の五科目平均点が低下は異常です、なぜこのようなことが起きているのでしょう?科目別にブレイクダウンしていきます。
  ◎国語は生徒たちが苦手な記述式問題を集中的にトレーニングしたから、その効果が出たと見てよいでしょう。4月に比べて上がり続けています。弱いところを集中的にフォローすれば学力を上げることができることを実証してくれました。国語担当の先生、ご苦労様。
  ◎社会科は4月と総合AはB中学校に勝っていたのに、今回は3.6点負けています。次回がんばってもらいたい。
  数学が極端に悪いのです。昨年11月の釧路の13校の学力テストデータでは大楽毛中学の17.2点が最低ですが、それよりも3.9点も低い、釧路と根室の市街化地域の3校で最低でしょうね。中標津のK中の数学は26.3点、五科目合計平均点は134.6点でですから、中標津の中学生の半分しか根室のC中学校の生徒は数学の点数が取れていないのです
  ◎数学の点数の分布をみると、10点以下の層ががちょうど半数の28名います。「大問の1」が計算問題と作図問題でで18点の配点ですから、そこが半分以下しかできていない生徒が半数いると考えなければいけません。
 分数や少数の加減乗除の計算が怪しい生徒が半数いるようです。学校は何らかの手を打っているはずですが、16.0⇒14.9⇒13.3と低下し続けているところをみると効果なしです。

  授業参観したことがありますが、どの学校の先生も授業のやり方がそっくりですから、授業技倆に差はありません。でも生徒の半数は基本計算があやしい、そして文章題がまるでできないのは、小学校の算数授業に大きな問題があったと考えるしかない。それを中学校でフォローできなかったのは数学の先生と学校管理職のマネジメントに問題があったことを示唆してはいないでしょうか。
  どういうことか具体的に説明しておきます。31点以上の点数の生徒は56人中たったの4人です。11-20点の層が18人、0-10点が28人。B中は55人中11人ですから、C中にはB中の2.5倍も10点以下が存在しています
  学習指導要領通りの標準授業をこのような学力分布の生徒たちにしたらどういうことになるでしょう。授業のピントは30点台の2人に合わせられることになります、広目にとっても20点台後半の9人が対象の授業にならざるをえません。56人中11人を対象にした授業になってしまっているから、点数がこんなに低くなってしまったと思います。授業は生徒たちの学力分布を考慮して工夫しなければならない。生徒の半数28人が10点以下の学年で、標準授業をやり続けたら結果は悪くなるだけ。
  市街化地域の他の学校の数学の先生が変わって担当したとしても、やるのは学習指導要領に忠実な「標準授業」ですから、結果は同じことになったでしょう。それだけC中学校の3年生は問題の根が深く、通常の対応では改善が著しく困難な状況にあります。このままでは根室高校へ問題が持ち越されます。後で具体策を書きます。
  <余談>で小学校4年生以前の既習事項に問題があることを解説しています。そこを何とかすれば、数学の学力の底上げは可能です。

4.2<<教育労働者と教育の職人の違い>>
  学校の先生は「教育労働者」ではありません、「教育の職人」「授業の職人」です。「教育労働者」自分を労働力商品として売っているのですから、既定の時間だけ授業をすればいいと考えます。仕事に対する責任は自分にはない。「授業の職人」は自分の仕事に誇りと責任を持ちます。結果が出せなければ、どうすればいいか考え続けます、そして日々工夫をして改善に努めます

  ◎理科は両校で勝ったり負けたり。基礎計算力に不足で理科の計算問題ができない生徒が多いことに気がついたC中の理科の先生は生徒たちの基礎計算力アップもやっているようですが、なかなか点数アップにつながってこなくて辛いですね。数学の学力テストで10点以下が半数いますから、無理ありませんよ、気長にやりましょう。
 もうずいぶん前になりますがB中の理科のS先生が、小テストを頻繁に繰り返して、既習事項の記憶定着に留意した授業をしていました。いつも他の学校よりも学力テストの平均点が20点(百点満点)ほど高かった。

 ◎英語はB中学校が毎回平均点がアップしていますね、ご立派。C中は横ばいですが、差は少しですから学力テスト総合Cで逆転してください。両校で切磋琢磨。中標津のK中学の英語の平均点は28.3点ですから、大きく水が開いています。B・C両校とも、学力全般が低いので、長文問題のトレーニングがなされていないのでしょう。どちらの学校も長文問題の解き方に関する指導がなされていないようです。総合Cの前にやっておきましょうよ。国語だって記述式問題の解き方を具体的にトレーニングすれば平均点が上がったのですから、頑張ってください、きっと効果があります。問題文の中から答えを探すだけの簡単な問題もあります。

5.<学習に対するあきらめ感が蔓延していないか?>
  どうもC中学校の生徒の中には、勉強をあきらめた人が多いように感じます。勉強しなくても根室高校に入学できるから、嫌いな勉強はやらない、そういう人が増えているのではないでしょうか。小6程度の計算や文章が理解できない、文章が書けなければ、高校を卒業した後で困るのですよ。根室高校へ入学してそれで人生が保障されるわけではないのです。非正規雇用が4割を超えています。給与格差は3倍あります。正社員で働く人のおおよそ1/3しかもらえませんから、自立も困難です。高校卒業してから厳しい現実が待っています。働く意欲があるのに正社員の仕事のない若い人たちが半数います、ほんとうにかわいそうです。
  結婚して生活を営むには非正規同士ではなかなか経済的に自立してやっていくことができません。二人で働いて年収300万円がいいとこ。2人で働くと車は2台必要になります。保険とガソリン代と車の減価償却でおよそ年額100万円、家賃を7-8万円とすると、年額でおよそ100万円、残りは100万円。これで衣服費やスマホ代、食費、とても無理、暮らしていけないのです。経済的に破綻します。

6.<資格が必要な職に就くにはどれくらいの学力が必要か?>
 根室高校普通科1年生160人中、数学アルファクラスは「アルファ1」が25人、「アルファ2」が20人いますが、看護師とか理学療法士とか学校の先生とか経理など多少とも知的な職業に就くのは著しく困難です。資格の必要な職業に就くには、受験参考書をかなりの部分は独力で勉強しなければならないのです。たとえば看護師は300点満点の学力テストで150点以上とっていないと看護専門学校への進学はほとんど無理です。180点超なら独力で道内の看護専門学校へ合格できます。入学してから30冊も専門書を読んで理解しなければなりません。そうしなければ看護師の国家試験に合格できません。経理の仕事なら、日商簿記2級あるいは全商簿記1級に合格していなければ職が見つからないでしょう。大地みらい信金だって、そういう人材しか高卒は採っていません。大地みらい信金の採用はほとんどが大卒です。昔は根室高校で中の上以上の成績なら採ってくれました。あのころは根室信金、「信金さん」と呼んでいました。懐かしい響きです、親しみがこもっていましたよ。

7.<地域医療を支える人材を育てよう>
  どの中学校にも共通していましたが、過去8回の授業参観数学の授業で高校で学ぶことを視野に入れた「発展的内容」に踏み込んでいるところはありませんでした。英語の授業も「発展的内容」に踏み込まないところはまったく同様でした。たとえば、3年生で関係代名詞が出てくる前に、分詞形容詞が出てきますが、あれは「主格の関係代名詞+be動詞」の省略によって生成された文です。3分しかかからないから、ちょっと触れて予告するだけでいいのだがやらない。現在完了の継続用法は基本が現在完了進行形であるから、そこも3分間だけ踏み込めばいい。日本語にはない冠詞の説明をしている授業もありませんでした。そういうトピックスを毎回一つ入れるだけで成績上位層の生徒が授業に興味を持ち続けます。そういう発展的内容を含まない授業を日々繰り返すことで、成績上位層を育てそこなっているように思います。
  市街化地域の3校をだけでも、学年トップクラスを小4から上手に育てたら、道内の国公立大学医学部に毎年1-2名の合格者を出すことができるでしょうそうすれば市立根室病院で常勤医が足りないなんて事態は起こさないですみます。30年で45人も医者になる者が出せたら、根室の地域医療は自前で半数程度は賄える時代が来ます。可能な話ですよ、要はやるかやらないかです。

8.<独自な指導法は正攻法を教えてから>
  C中の3年生は昨年度までは数学は二人の先生が教えていましたが、お一人は変わった方法で教えることがあり、生徒たちが2年続けて混乱していました。生徒は新しい単元で最初に教えられやり方をそのまま素直に吸収してしまうから、ちゃんとしたやり方で教えないと文字式の基礎計算能力に瑕ができます。塾側で教えなおすのに大変手間がかかりました。2乗の多項式の展開で「2乗2倍2乗」という教え方をしたものだから、(a+3)^2の展開の時にa^2+2a+9 とやる生徒が続出しました。教え方のまずい箇所はテストで生徒たちに不正解が続出するのでわかるはずですが、観察していないようでした。塾では「真ん中の項は中身をかけて2倍」と教えています。(2a+3b)^2でも生徒が混乱を起こすことはありません。「サクランボ方式」にも困りました。正攻法の素因数分解のやりかたを教えないから、発展的内容につながりません。その場だけはなんとかなりますが、塾へ通えない生徒たちは高校数学で後遺症が出ます。素因数分解の正攻法を知らないのですから、小学校で習ったGCMやLCMの計算とも連絡がつけられなくなります。中学校の先生は高校数学を視野に入れて、必要なところを押さえた授業をしてもらいたい。わたしからのお願いです。

9.<小学校から引きずっている問題が中学校でさらに拡大>
  小学校で学級崩壊とか、算数授業が苦手な先生た担任だった場合に、四則計算がマスターできていない生徒を大量に生産して、中学校へ送り込むことがあります。一年置きくらいにそういうことが起きているようにみえます。たいへんですよね、小学校の先生は国語・算数・理科・社会、そして英語まで教えないといけません。全部が得意なんて先生はほとんどいません。生徒たちを通して観察していると、とくに算数が苦手の小学校の先生が多いように感じます。毎日、計算問題や短文章問題を宿題にして、丁寧に添削をしていたS鳥先生を知っていますが、それとは真逆の例も知っています、こちらは具体例を出しません。書いても詮のないことですから。
 指導技倆の巧拙に差があるのは当たり前、生徒自身の計算練習不足が輪をかけます。苦手になってしまうと、たいがいの生徒がわけがからずに計算トレーニングすら億劫になります。計算練習が圧倒的に少ないから、計算を速く正確にできる生徒は10人に一人いればよいほう。
 問題を言い換えると、半数の生徒が基礎計算応力すら怪しい状態のときに中学校の数学担当の先生は何をすべきかということ。C中の場合は標準授業では学力的に対象になる生徒は2割、あとの8割はスポイルされてしまいます。わからないから授業は聴かない、おしゃべりが始まる。ときどき先生の説明の声が聞こえないだけで、聞こえなかったところが何なのか見当がつかず、話の全体が理解できなくなります。そういう生徒たちを前にして先生たちもたいへんでしょうね。いまのままでは、問題が小学校から中学校へ、そしてそのまま根室高校へ持ち越されます。根室高校の授業が荒れるということ。生徒が先生を殴るなんてことが最近テレビで問題になっていましたが、根室の中学校でも何度も起きています。強い先生がいてもダメ、そういう生徒は弱い先生を狙ってやります。やっかいですね。体罰禁止で、小学生のころから何をやっても先生に殴られることがないから、舐め切っています。高校生になったら抑えが利きませんから、何かあったらさっさと退学にするしかありません。自業自得というやつでしょうが、スポイルされ続けた生徒が退学になるのは気の毒としか言いようがありません。半数は掬えるのではないですか?
 高校新入生は7月に全国模試を受けていますが、今年は根室高校普通科の平均点が21点(百点満点)だったと聞いています。来年は20点を切るかもしれませんね。それでも根室市教委は学力テストの結果データも見ずに、効果のない教育政策を立案し続けるのでしょうか?
  入試で五科目合計点数が100点に満たぬ生徒は不合格というのが現実的な選択肢としてあります、普通科の標準授業を消化できる学力は150点の辺りですから、100点未満は問答無用で切り捨てていいと思います。12年前のことですが、Fランク150点で3人が不合格となって事務情報科に入学しています。

10.<改善の具体策:教育の職人たれ!>
  学力テストで数学が10点以下の生徒は、強制参加で放課後補習をするのが効果が大きい。C中は月曜日が部活休養日になっていますから、月曜日の放課後を補習授業に当てたらいい。1・2年生の学力テストは百点満点ですから20点以下の生徒は1年次から強制補習体制をとれば、小学校で「落ちこぼし」ても、中学校で半数は掬(すく)えます。たいへんですよ、一人ひとりわからないところを観察してピックアップして、そこを補うのですから。普段の授業は準備して、それをやるだけでいいのですが、成績下位層の生徒は個別にどこに穴が開いているのか観察して突き止めなければいけません。1か月くらいやってみたら、チェック用の問題を10枚くらい作成できます。そのあとそれを改善していけばいい。とにかくやってみることです、そうすれば高校の先生たちの苦労は半分になります。「教育労働者」というスタンスはやめにして、「授業の職人」「教科指導の職人」になりましょう。教頭先生や校長の協力が必要です。成績下位層の生徒は呼びかけるだけでは補習授業に参加しませんから、PTAを巻き込む必要もあります。このように現状を変えるのは大仕事です。
  私塾は学校ではやれないことをやります、補完機能を果たすということです。上下にはみ出した生徒たちを掬いとります。全部を学校でというわけにはいかないでしょうから、足りない部分を無理せずできる範囲内でやるのみ。
 
11.<余談:小学4年生以前の既習事項の大穴と個別補修>
  ニムオロ塾では、入塾してきたときに国数英の点数を聞き、数回様子を見ます。既習事項に穴があると判断すると、1-2か月間の補習体制を組みます。

  数学が苦手の中学生を観察していると、九九が苦手の段があったり、逆九九がスムースに言えなかったり、割り算の商をたてるのに時間がかかったり、桁のなかにゼロが入っているときの引き算ができなかったりと、小4以前の既習事項にほとんど例外なしに問題点が見つかります。もちろん、4年生以降の学習事項である少数や分数の四則混合算にも穴が開いています
  C中学校3年生にはそういう生徒が学年56名中半数の28名いるのですから、問題の根が深い。数学担当の先生が対応できないでいるのも理由があります。

「鉄は熱いうちに叩け」とばかり、入塾最初の3か月間で学力向上を実感させます。たまに補習に来ない生徒がいますが、これはどうしようもありません。昨年から、「3か月間はお試し期間だから、無断欠席ややる気がみられない場合は効果がないのでやめてもらいます」、体験入塾者希望者には「すぐに入塾を決めなくていいから、数日よく考えてからにして」と伝えています。
  塾に通わせたって、やる気がなければ親はお金の無駄、わたしは時間の無駄、「やる気になってから来てね」ということ。プロですから、生徒の学力に応じた効果的な個別指導をしますが、中学生は半大人ですからやる気は本人の問題です。小学生は別でして、やる気を起こさせるのも教師の側の役割が半分。
  小学生で一番大事なことは親の躾です挨拶、箸の持ち方、鉛筆の持ち方、姿勢など低学年のうちにしっかり家庭学習習慣をつけるのは親の役割ですよ。そこをやり損なったらあとで補うのがたいへんです。少年団活動三昧で、家庭学習習慣の躾をし損なう親の多いのが釧路や根室の地域的特性です

12.<学力テスト総合B五科目合計平均点根室管内4中学校比較>
  根室市立C中(103.6点) < 根室市立B中(113.9点) < 中標津町立のある中学校(130点台) < 別海町のある中学校(140点台)

  根室の市街化地域の2校が別海よりも中標津よりもはるかに低いという残念な結果になっています


*#3618 学力テスト総合Aの結果データ: ほめる教育 Sep. 23, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-09-23



 #3620 読んで理解する能力:学力テストデータから Sep. 26, 2017

http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-09-23



*#3618 学力テスト総合Aの結果データ: ほめる教育 Sep. 23, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-09-23

 
#3421 数学:低学力のメカニズム Sep. 24, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-09-24-1

*#3460 根室高校入試倍率はどうなる? Nov. 19,2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-11-19-1

 #3482 問題消化スピードの差の現実 Dec. 17, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-12-17

 #3483 学力テスト教科別分析 Dec. 18, 2016

http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-12-17-1

 #3484 学校別学力テストデータ比較分析 Dec. 19, 20
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-12-18

#1307 教育再考 根室の未来 第2部 低学力④:荒れる中学校 Dec.19, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19-1


<参考>
 #3344 高2の英語教科書をチェックする  June 25, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24-1


*「教育困難大学」で大暴れする不良学生の実態 学ぶスキルも意欲もないのに入学できる現実
http://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%ef%bd%a2%e6%95%99%e8%82%b2%e5%9b%b0%e9%9b%a3%e5%a4%a7%e5%ad%a6%ef%bd%a3%e3%81%a7%e5%a4%a7%e6%9a%b4%e3%82%8c%e3%81%99%e3%82%8b%e4%b8%8d%e8%89%af%e5%ad%a6%e7%94%9f%e3%81%ae%e5%ae%9f%e6%85%8b-%e5%ad%a6%e3%81%b6%e3%82%b9%e3%82%ad%e3%83%ab%e3%82%82%e6%84%8f%e6%ac%b2%e3%82%82%e3%81%aa%e3%81%84%e3%81%ae%e3%81%ab%e5%85%a5%e5%ad%a6%e3%81%a7%e3%81%8d%e3%82%8b%e7%8f%be%e5%ae%9f/ar-BBEH4LM?ocid=DELLDHP#page=2

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麒麟

中学の学年の半数が十点以下、多くが20点以下というのは単純な計算もままならない生徒が大半というわけで、極端な話数学の授業時間に高校入試の重要単元である関数や図形を教えるよりも半年間公文式でもやらせた方がマシなのでは?と思います。

by 麒麟 (2017-10-23 21:25) 

ebisu

麒麟さん

その通りですが、学習指導要領という縛りがあるので、学校の通常の授業でそれをやることはできません。わかっちゃいるけどやることができない、学校は不自由なのです。
通常の時間帯を使うことができなければ、放課後補習や朝学習しかありません。
部活指導には力を入れても、放課後補習に力を入れる先生は少ないし、学校管理職の協力もなかなか得られにくいし、部活大好きの保護者とも軋轢を起こしかねません。
かくして、いったん小学校で落ちこぼされてしまえばおわり、中学校での改善つまりリカバリーはできないという構造になっている次第、とほほです。
教育の職人として己の仕事をまっとうしてもらいたい。
by ebisu (2017-10-23 22:22) 

tom

学力テスト総合A、Bの難易度の問題で学校平均点が4割を切る現実を根室市が深刻に考え、「学力低下非常事態宣言」を出すべきレベルだと思います。

根室市で生まれ、根室市内の公立小学校→公立中学校の9年間通学して、TBSの安住紳一郎アナ(帯広柏葉高校→明治大文学部文学科)、歌手の瀬川あやかさん(旭川西高校→首都大東京健康福祉学部看護学科)に匹敵する学力を付けるのは非常に困難という現実を根室市が向き合わないと、根室市が誰も住まない街になるということに気付いて欲しいですね。情けない
by tom (2017-11-05 20:50) 

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