SSブログ

#2726 B中学校の英語のプリント論評 June 6, 2014 [63. チャレンジ(教育)]

 九州長崎や佐賀では大雨が降った。長崎市では3時間に205mmの雨量。
 極東の町根室の夜9時半の気温は一昨日は9.8度、昨日は11.8度、根室はまだ寒い。連日梅雨空のような曇り空が続いている。
 高校は先月初旬に前期中間テストが終わってから、ずっと学校祭の準備作業が続いており、中学校は来週日曜日に体育祭だからこれまた練習中。大学受験の高校三年生は勉強の方は大丈夫か?他の地域の受験生はとっくに猛勉強しているぞ!
 今朝6時半に花火があがったが、さてどこかでお祭りがあるのだろうか?(⇒そよ風が吹きお天気がいい、北斗小学校が運動会だ)
 根室は7月がお盆、8月が金刀比羅神社のお祭りだ。生徒たちの気分は浮き立ち、しばらくは勉強に熱が入らぬ。涼しくて勉強するには全国一の気候環境なのだが・・・せめて10人は天の恵みの好環境を活かしてもらいたい。

 数日前にB中学の2年生と3年生がやっていたプリントを見た。#2725で根室高校入試裁量問題導入を取り上げたなかで、そのプリントのことを紹介したら、ハンドルネーム「後志のおじさん」からコメントがあった。そのコメントへの返信に少し手を加えて思うところを述べたい。

------------------------------------------
 わたしが見たのは、中2と中3の生徒のプリントでした。
 中2のほうは教科書本文をチャンクごとに区切って改行し、日本語の意味をつけたものです。チャンクごとに繰り返し書かせるようになっていました。
 単語の引き出しのほかに、句ごとのカタマリが納めてある引き出しをたくさんもてたら、英作文が楽になります。

 中3のほうは日本語をチャンクごとに英文構造どおりに並べ替えたもので、それを手がかりに英作文をさせるものでした。
 ファイルされたプリントの厚さが1cmほどありました。自分で日本語をぶつ切りにして英語の語順どおりに並べて英作文をすればいいのでしょうが、そこができない生徒が三人に二人います。
手がかりが示されているので、英語が苦手な生徒もけっこう自力でやっていました。

 こういうトレーニングを繰り返していれば、高校生になってスラッシュ・リーディングをスムーズに受け入れられるのではないでしょうか。

 高校生になると、いきなり授業も全部英語、定期試験問題も全文英語で問題の意味すらわからないとしばらくの間ぼやく生徒が増えます。そしてスラッシュリーディングと落差がありすぎですが、それを緩和することになるのではないかと期待しています。

 高校でやる分野に関連する事項はどんどん説明したり、トレーニングメニューに入れ込んでもらいたいと思っています。
------------------------------------------

 主としてチャンク(意味のカタマリ)ごとにやるスラッシュ・リーディングは文をバラバラに分解してしまうから、わかりやすいというメリットとともに、チャンクの集合体から文全体の意味を統合するときに困難を伴うというデメリットも生じる。
 日本語のテクストをたくさん読み、文脈を把握するトレーニングができていないと、文全体の意味をイメージとして再構成することができない。このことから、スラッシュ・リーディングはある程度の文脈把握力や意味統合能力を要求するものだといえる。
 根室の中学校には日本語読解力が著しく劣る(小4程度の語彙力の)生徒が四人に一人の割合でいる。そういう生徒たちは良質の日本語テクストをある程度の量を読みこなして、本を読みながら頭の中に文の意味のイメージをつくり上げるという訓練をするしかないだろう。ふだん本を読まない生徒はこういうときに困る。良質の本を読んでいる生徒とほとんど本を読まない生徒では日本語能力なかでも文脈は握力や文からイメージを脳内に創りあげる能力が比較にならぬほど差がついている。一生懸命に良質の本を読むのに数年かかるからやっかいだ。なにしろある程度の量をこなさないとこうした能力が身につかぬ。
 根室管内の小学校の平均偏差値が37、中学校のそれが44では、生徒達の四人に一人が日本語能力に大きな問題を抱えているということ、その現実を無視しては授業が空回りしてしまう。

 ついでだから書いておく。能動文を受動態の文に書き換えるとか、ある構文を機械的に他の文に書き換えるというようなことはなるべくやめてもらいたい。英文を読み書きするという観点からは副作用が強すぎる。書き手が能動文を選ぶか受動態の文を選ぶかは頭の中のイメージと関係がある。能動文と受動態の文では伝えられるイメージが異なるのである。むしろそこの所をしっかり教えてもらいたい。willとbe going to、mustとhave toなどもニュアンスや使われるシーンの違いをしっかり教えてもらいたい。それが本筋である。、
 中学校の英文法も高校の英文法も肝心なことはけっこうすっ飛ばして、枝葉末節あるいは例外的な文や肝心なニュアンスの違いを無視した書き換え問題をとりあげすぎている。だから、必要になって生の英文を読まなければならなくなったときに読めないということが起きる。英字新聞を読んでも学校英文法では説明がない構文が頻繁に出てくる。高校英語授業の重点が例外的な構文に眼が行ってしまい肝心の本筋の説明をしないからだ。

 HN(ハンドル・ネーム)「後志のおじさん」がコメント欄に書きこんでくれたことは理由のあることなのだ。
========================
「つまらない形式的なことを、さも大切なことのように指導する。」高校の英語の先生には、まだ多いみたいですね。

なんとか用法とか、構文とか、そんな「文法用語」を定期テストにだす方々は、陰山先生のこの言葉がぴったりあてはまるように思います。

スラッシュリーディングは、有効な手法なのですが、英語の本筋をわかっていない方がやると、結局は「漢文読み」の世界になり、生徒の理解力と日本語作文力に頼った授業になってしまいます。(力のない先生がやって、生徒が混乱している事例を複数聞いています。)


上に立つものの理想形は、「頭のいい怠け者」。最悪なのは、「頭の悪い働き者」と思います。力のない人が、一生懸命になると、下のものがふりまわされて苦しむからです。

根室の中学校の先生が、「頭のいい」方であるといいですね。
by 後志のおじさん (2014-07-05 22:29) 
========================
「後志のおじさん」、こんばんは

高校生にはスラッシュリーディングで混乱起こす生徒がたしかにいます。
ぶつ切りにしてしまって、文意をとりそこなう。

>スラッシュリーディングは、有効な手法なのですが、英語の本筋をわかっていない方がやると、結局は「漢文読み」の世界になり、生徒の理解力と日本語作文力に頼った授業になってしまいます。(力のない先生がやって、生徒が混乱している事例を複数聞いています。)

・・・(引用済みなので省略)・・・

>力のない人が、一生懸命になると、下のものがふりまわされて苦しむからです。

たしかに、そのとおりです、そしてこれは教育に限らない。あらゆる仕事に言えることで(根室市政にもいいえます)、普遍的な真理ですね。教師である限り、勉強し続けないといけませんね。中学校の先生たちには自分が教える教科は高校の教科書と副読本とワークブックはすべて眼を通してもらいたい。もちろん専門書も毎年新しいものにチャレンジすべきです。

>根室の中学校の先生が、「頭のいい」方であるといいですね。

ははは、これはもう、玉石混交です。でも、もう一度授業参観したくなりました。
by ebisu (2014-07-05 23:06) 
========================

 いわゆる受験英語の弊害は本筋から外れた例外的なことを針小棒大に扱いすぎることにもあります。文法・語法問題がそうしたジャンルに属します。基本の忠実な範囲なら薬になりますが、受験英語はあるところから毒になる。
 17年前になりますが、治験関係の仕事で必要があって社内で暗号関係の本を6名ほどの社員と一緒に読みました。わたしの興味は暗号技術の他に受験のプロのM君がどれくらいの英文読解力をもっているのかということでした。立派なものでしたね、きちんと読めていました。受験英語もこの領域なら実務上問題なしと考え直しました。通常は副作用が大きいですよ、読めない人がほとんどというのが実態ではないでしょうか。
 受験のプロと書きましたが、M君は東大理3、そして応用生物統計の専門家でした。同じ学校の大学院も卒業しています。こういうレベルなら、受験英語で勉強してきても自分の専門分野から外れた専門書でも読めます。百人に満たない社員数の合弁会社で6人も勉強会に参加してくれたことも驚きでした。せっかくだから読んだ本の名前を挙げておきます。全部は読んでいません、仕事で必要な章のみとりあげました(当時は暗号技術に関する本格的な専門書は翻訳がまだでていませんでした)。
 'Security in computing 2nd edition' Charles P. Pfleeger, Prentice-Hall International, Inc. 1997  


 わたしは受験英語ではない別のルートで登って来ました。学部のときに専門書を読み出したときに力不足を痛感しました。読めない文にしばしばでくわしましたのです。しばらくしてから人に薦められてホンビー原著岩崎民平訳『英語の型と正用法』を一週間で読みましたが、それでも気持ちが悪い、読めなかった文が相変わらず読めないのです。英文理解に穴のあることが気になり、大学院受験のときに大野照男『変形文法と英文解釈』を2週間ほどで読みました。これで目の前に立ちふさがっていた山が一気に崩れ去りました。
(それからチョムスキーの著作と解説書を何冊か読みました。理系と文系の両方にまたがる分野ですからチョムスキーの著作は1冊を除いて翻訳されていません。チョムスキーの著作を読み漁ったのはプログラミン後言語を三つほど習得した時期に人工知能への興味から芋づる式に自動翻訳や構造言語学へ興味がわいたからです。)
 こういう土台をつくって、専門書を数冊読めば、大学院入試では90%の得点が可能です。英語の試験に関しては全国のどの大学院でも大丈夫です。
 ついでですから、昔の大学院経済学研究科入試の英語問題がどんなものかを書いておきます。B4の用紙にびっしり専門書からの引用文が並んでいます。これを翻訳しろという指示が書かれています。経済学といっても広いですから、どういう分野から出題されるかはわかりません、出たとこ勝負です。でも、ある程度の基礎的学力があり、正当な読解トレーニングを積んであれば、90%の得点が可能です。何人受験していても関係ありません。受験者数が50人で合格枠が二人でも要するにトップを獲れば合格です、競争相手の数は問題ではありません。本筋に沿った学習をどのようにやってきたかが問われます。


*#2725 根室高校普通科が裁量問題を導入する理由 July 5, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-04


にほんブログ村 地域生活(街) 北海道ブログ 根室情報へ
にほんブログ村


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0