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#2725 根室高校普通科が裁量問題を導入する理由 July 5, 2014 [63. チャレンジ(教育)]

 根室高校普通科が来年から裁量問題を導入するというので、弊ブログで取り上げた。

*「#2708 根室高校普通科が裁量問題採用へ:ジョークではありませんぞ(笑)」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-21

 根室高校側が裁量問題導入を決めたのは何か理由や狙いがあってのことだろう、根室市内の最高学府なのだから地域経済にも影響がある、だから中学生や中学校の先生たちや地域社会にその狙いを明らかにすべきだと書いた。
 北海道新聞が7月3日に取材記事を掲載してくれたので紹介する。(道新根室支局に感謝)

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・・・根室高では昨年度、教職員が議論を重ね、学校裁量問題の導入を決定。同校の山根治彦校長は「根室高は地域のリーダになる人材を育成する役割を担っている。普通科に学校裁量問題を導入することで、市内の小中学生の勉強に対するモチベーションを上げたい」と説明する。また、「ここ数年、20人を下回っている国公立大の合格者を大幅に増やしたい」と強調した。・・・
 (担当記者:丸山格史)
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 そういうことなら、中学校や小学校の先生たちや地域社会を交えて話し合うべきだ。高校がいくらがんばろうとしても、中学生の学力がこんなに低下したのでは国公立大受験者が激減するのは避けようがない。根室高がいくら進学講習を増やしても焼け石に水であることは先刻承知だろう。

 いくつか障害があるので、それらを何とかしなければならない。
① 過度なブカツの横行
② 文武両道精神の欠如 (⇒C中学校だけは変わりつつある)
③ 授業速度が遅い
④ 授業で複合問題をほとんどやっていない
⑤ 低学力層への放課後補習の義務付け
⑥ 授業レベルを全国標準へ上げる
⑦ 高校で学ぶ内容を考慮していない中学校の授業改革
(B中学校の英語担当の複数の先生が高校の授業でやっているスラッシュリーディングを応用したテクスト解説と英作文指導を行っている。各校2回ずつ、6回の授業参観ではこのような取組はなかった。現場が変わりつつあることを最近知り、ちょっとうれしい。次回とりあげるつもりだ。)
*#2726 B中学校の英語のプリント論評 June 6, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-06


 いまのままでは中学校で裁量問題対応できるところはA中学校だけだろう。今年1月末までに中3の五教科すべてを終了したから、2月1ヶ月間複合問題に充てられる。数学はそれだけでは不足で、普段の授業で複合問題をこなしておくべきだ。普段の授業が変わらなければならない。

 箇条書きした六項目の問題点は、小学校・中学校・高校の先生たちが集まって議論を重ね、具体的な学力向上策を練り上げ、実行しなければ解決できないのではないだろうか?

 偏差値55以上の国公立大学を受験するためには、文協学力テストで450点がボーダラインだが、この点数を獲れるのは、市街化地域3校では数人である。400点以上がゼロの学校・学年すらある。400点以上は市街化地域の3校で4人~15人しかいなくなってしまった。8年前には40人を超えていた。だから、根室高が裁量問題を導入しようとしまいと、年度によって多少のフレは出るが中学生の学力から推計すると偏差値55以上の大学進学者は私大を含めて10人前後ということになる

 道内の国公立大で偏差値55を超える学校は北大、旭川医大、札医大、帯広畜産大、北海道教育大札幌校、小樽商大くらいだろう(大雑把な話だから、学部学科は無視する)。

 2014年度の進学実績をホームページから拾ってみると、
 小樽商大 3
 北海道教育大札幌校 1
 北海道大学 1
 帯広畜産大学 1(過年度卒業生)

*根室高校ホームページ
http://www.nemuro.hokkaido-c.ed.jp//?action=common_download_main&upload_id=61

比較のために中標津高校の進学状況をみてもらいたい。普通科定員160名で40名ほどの定員割れが続いて、学力低下が著しい。
*中標津高校ホームページ
http://www.nakashibetsu.hokkaido-c.ed.jp/?page_id=45

 偏差値55以上(上位30%)の国公立大学現役合格は合計5名である。国公立大学へは全部で15名進学しているのだが、この5名以外は偏差値54以下の国公立大学進学者である。
 2013年度は偏差値55以上の国公立大学進学者数は10名だから、半減している。中学生の学力テストデータをモニターしているebisuには予測していた通りの結果だが、急激なレベル低下に根室高校は危機感をもったのだろう
 2014年度の卒業生は、学力が一番高かったB中学校で学力が下がり始めた年度の生徒に当たる。数名の生徒が授業中に騒いで、授業が聞こえないと生徒たちが困っていた。所々聞こえないだけで脈絡が断ち切られてしまうので、授業内容が理解できなくなり学力テストの平均点がガクンと下がってしまった。年度によって事情は異なるが中学生の学力はさらに下がり続けているので、今後は偏差値の低い大学への進学者が増えるだろう。わずか10年に満たない期間の内に中学校で文協学力テスト五科目400点超の高学力層が3分の1から10分の1になっている事実を直視しなければならない

 偏差値50超の大学だと、ざっと数えて25名(5+8+12=25)となる。大学へは全部で59名進学しているから残りの34名は偏差値50以下の学校ということになる。半数は偏差値45以下(下位30%)の大学進学だ。

 商業科や事務情報科からの進学者も混じっているから、定員200名で計算すると30%が大学進学、そして平均以上のレベルの大学進学者はおおよそ12%。西高校もあわせると母数は270名(?)で、大学進学者は21.9%、偏差値55以上の学校へは9.3%のみ。
 全国平均では120万人の内、大学進学は60万人で、偏差値50以上の大学は30万人で25%となる。

 9.3%/25%=37.2%

 全国平均の1/3強しか実績がない。根室高校普通科の偏差値は42~44だから、よくやっているほうだろう。
 根室高校がいくら進学講習を繰り返しても、中学生の高学力層(文協学力テストで五科目合計点が400点以上)が市内全域で5~15名前後ではどうにもならぬ。だから、高校・中学校・小学校の先生たちと教育に関心のある地域社会のメンバーが話し合う必要がある

<学力向上への集いとコラボレーション>
 市立文化会館で教育に関するフォーラムやパネルディスカッションをやったらどうか?テーマが決まったら、テーマごとにワークショップを編成して継続検討すればいい。検討経緯や具体案、実施した結果はすべてネット上で公表したらいい。

<これぞ根室再興=根室最高!>
 全国の市町村で、小・中・高の先生たちと教育に関心のある地域社会のメンバーが集まって、子どもたちの学力向上の具体策を考え、実行しているところなんてほとんどないだろう。根室高校の校長先生、中学校の校長先生、小学校の校長先生、連絡を取り合ったらいかが?
 定年前に是非素晴らしい仕事をなさってください。

 > 仕事は正直に誠実に渾身の力でやるもの <



<参考資料-1>
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 <偏差値・100人中順位対応表>
2014.06.16作成
偏差値順位偏差値順位
800.15050.0
790.24954.0
780.34857.9
770.44761.8
760.54665.5
750.64569.2
740.84472.6
731.14375.8
721.44278.8
711.84181.6
702.34084.1
692.93986.4
683.63888.5
674.53790.3
665.53691.9
656.73593.3
648.13494.5
639.73395.5
6211.53296.4
6113.63197.1
6015.93097.7
5918.42998.2
5821.22898.6
5724.22798.9
5627.42699.2
5530.92599.4
5434.52499.5
5338.22399.7
5242.12299.7
5146.02199.8
5050.02099.9
○○  


  大学受験生の中で学力上位25%は偏差値57以上、学力下位25%は偏差値43以下である。偏差値43以下の大学は学力下位層と見なされる。

*#2709 偏差値と「100人(百校)中の順位」対応表  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-22

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*#2672 急激な学力低下はなぜ起きているのか?:ある假説 May 10, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09

 #2665-8 次の根室市長選挙の争点:学力テスト情報の公開⇒低学力からの脱皮のために  June 13, 2014  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-13

 #2649 問題消化速度1対35の衝撃(2):学習量=速度×集中力強度×時間 Apr.18, 2014  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-19

*#2606 根室の中学校の過去6年間の学力低下を検証する  Feb. 28, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-02-27-1 

 #2093 教員の質向上はどうやる?⇒ "Educating educators" Sep. 25, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-25-1

 #1213 数学者岡潔(1):『日本という水槽の水の入れ替え方―憂国の随筆集』 Sep.20, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-09-20

 #749 フィールズ賞受賞数学者小平邦彦と藤原正彦の教育論  Oct. 4, 2009 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-10-04

 #569『英語教育論:藤原正彦『国家の品格』より抜粋』
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-05-03-1


  #1754 北海道新聞幸坂記者が根室市PTA連合会で講演 Nov. 28, 2011  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-11-28

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*<幸坂記者の学力問題関係企画記事>
 #1307 教育再考 根室の未来 第2部 低学力④:荒れる中学校
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19-1

  #1306 教育再考 根室の未来 第2部 低学力③:若手多く指導に苦戦も
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19

  #1304 教育再考 根室の未来 第2部 低学力②:「学ぶ意味」尊重されず 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-17

  ◎#1253 教育再考 根室の未来(5):第1部⑤高校統廃合(北海道新聞)
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-24

  ◎#1251 教育再考 根室の未来(4):第1部④高校統廃合(北海道新聞) 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-22

 ◎#1250 「教育再考 根室の未来(3):第1部③高校統廃合(北海道新聞)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-21

 ◎#1249 「教育再考 根室の未来(2):第1部②高校統廃合(北海道新聞)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-20

 ◎#1248 「教育再考 根室の未来(1):第1部①高校統廃合(北海道新聞)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-19

<参考資料-2>
*「結果出すほどいじめられる…教師の実力の劣化現象」4月21日産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140201/edc14020111000001-n1.htm
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 教師の実力が、急速に落ちていると感じる。危機的ですらある。

 もちろん、努力し、勉強している教師は、どの学校にもいる。しかし、それは少数だ。

 第1に、教師が教育雑誌、教育書などの本を、ほとんど読まなくなった。かつては一人の教師が「教科」「障害」「心理」など、3冊ぐらいの教育雑誌をとっていた。今や「教育雑誌」を読んでいる人は学校に1人か2人だという。教育書も読んでいない。新聞をとっていない人も多い。教員室で話題になる「教育」のことは、テレビ番組だという。

 第2に、「できない子」を責任をもって教えるという考えがない。立派な先生は「漢字テストクラス30人全員100点」とか「算数テスト平均95点」という結果を出すが、そういう先生はいじめられている。

 第3に、立派な先生のじゃまをする。「学年で足並みをそろえましょう」ということで「工夫する教師」「努力する教師」の足をひっぱる。「足並みをそろえる」とは、最低ラインにあわせるということである。

 立派な先生を助けるには、保護者の力が必要だ。「先生がんばってください」と声をあげ、手紙を書くことだ。教師を育て、守るのも保護者の大切な仕事である。

 第4に、大学を出て教師になったばかりの「新卒教師」が、驚くほど何も知らないということである。原因は、新卒教師にあるのではなく、大学の教育にある。

 教師にとって最も大切な仕事は「授業をする」ということだ。

 ところが、大学4年間で「授業」について、ほとんど教えられてこない。教育実習の時に、合計で10時間ぐらいの授業をするだけだ。大学で「授業」の演習は、ほとんどない。医学部の教授は、学生に手術をして見せるが、教育学部の教授で、授業をしてみせる先生は、皆無に近い。「何もできない」状態の新卒教師でも、最初から担任になる。

 第5に、管理職、教育委員会、新卒指導教師は「教師を指導する」のだが、そこに問題がある。

 教師にとって、最も大切なのは「授業」である。

 良い授業とは何だろうか。

 第1に、全員、一人残らずできるようにさせることである。

 私は跳び箱が跳べない子を3分で跳ばせられる。NHKテレビはじめ、テレビ局で特集になった。

 第2に、授業が「楽しい、面白い、よく分かった、できるようになった」ということである。このような授業ができるために指導すべきだが、そうする人は極端に少ない。

 できない指導者は、何を指導するのか? 昔から決まっている。つまらない形式的なことをさも大切なことのように指導する。

 研究授業で参観者がいるときは、学習したことを模造紙に書いて、まわりに貼りなさいという。教室は模造紙だらけになる。黒板には授業の目当てを書きなさいと指導する。授業の最後にはふりかえりをしなさいと教える。すべて、形式的なことで「授業」とは、ほとんど関係ない。

 良い先生の見分け方? それは子供の算数ノートを見ることだ。

 ていねいに、きちんとしたノート。教科書のすべての問題がノートにやってある。現在、5冊目から6冊目になっている。そんな先生は、実にすばらしい先生だ。

                   ◇

TOSS代表・向山洋一(むこうやま・よういち)30年以上の教員経験。「TOSS」(教育技術法則化運動)は全国の教員約1万人が参加。
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後志のおじさん

「つまらない形式的なことを、さも大切なことのように指導する。」高校の英語の先生には、まだ多いみたいですね。

なんとか用法とか、構文とか、そんな「文法用語」を定期テストにだす方々は、陰山先生のこの言葉がぴったりあてはまるように思います。

スラッシュリーディングは、有効な手法なのですが、英語の本筋をわかっていない方がやると、結局は「漢文読み」の世界になり、生徒の理解力と日本語作文力に頼った授業になってしまいます。(力のない先生がやって、生徒が混乱している事例を複数聞いています。)


上に立つものの理想形は、「頭のいい怠け者」。最悪なのは、「頭の悪い働き者」と思います。力のない人が、一生懸命になると、下のものがふりまわされて苦しむからです。

根室の中学校の先生が、「頭のいい」方であるといいですね。
by 後志のおじさん (2014-07-05 22:29) 

ebisu

「後志のおじさん」、こんばんは

高校生にはスラッシュリーディングで混乱起こす生徒がたしかにいます。
ぶつ切りにしてしまって、文意をとりそこなう。

>スラッシュリーディングは、有効な手法なのですが、英語の本筋をわかっていない方がやると、結局は「漢文読み」の世界になり、生徒の理解力と日本語作文力に頼った授業になってしまいます。(力のない先生がやって、生徒が混乱している事例を複数聞いています。)

わたしが見たのは、中2と中3の生徒のプリントでした。
中2のほうは教科書本文をチャンクごとに区切って改行し、日本語の意味をつけたものです。チャンクごとに繰り返し書かせるようになっていました。
単語の引き出しのほかに、句ごとのカタマリが納めてある引き出しをたくさんもてたら、英作文が楽になります。

中3のほうは日本語をチャンクごとに英文構造どおりに並べ替えたもので、それを手がかりに英作文をさせるものでした。
プリントが1cmほどありました。自分で日本語をぶつ切りにして英語の語順どおりに並べて英作文をすればいいのでしょうが、そこができない生徒が三人に二人います。
手がかりが示されているので、英語が苦手な生徒もけっこう自力でやっていました。

こういうトレーニングを繰り返していれば、高校生になってスラッシュ・リーディングをスムーズに受け入れられるのではないでしょうか。

高校生になると、いきなり授業も全部英語、定期試験問題も全文英語で問題の意味すらわからないとしばらくの間ぼやく生徒が増えます。そしてスラッシュリーディングと落差がありすぎですが、それを緩和することになるのではないかと期待しています。

高校でやる分野に関連する事項はどんどん説明したり、トレーニングメニューに入れ込んでもらいたいと思っています。

>力のない人が、一生懸命になると、下のものがふりまわされて苦しむからです。

たしかに、そのとおりです、そしてこれは教育に限らない。あらゆる仕事に言えることで(根室市政にもいいえます)、普遍的な真理ですね。教師である限り、勉強し続けないといけませんね。中学校の先生たちには自分が教える教科は高校の教科書と副読本とワークブックはすべて眼を通してもらいたい。もちろん専門書も毎年新しいものにチャレンジすべきです。

>根室の中学校の先生が、「頭のいい」方であるといいですね。

ははは、これはもう、玉石混交です。でも、もう一度授業参観したくなりました。
by ebisu (2014-07-05 23:06) 

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