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#2281 全国学力テスト:読売新聞のコラム記事 May 3, 2013 [64. 教育問題]

 昨夜も1度だった。この一週間ぐらいとくに寒い。生徒が「先生寒い、ストーブつけて!」と言いながら教室に入ってくる。昨日は、なかなか勉強が好きになれない中3の生徒がはじめて2時間びっちり数学の問題をやっていた。ずいぶん時間がかかったが、ようやく春が訪れそうだ。ここまで来ればしめたもの、点数が急激に上がる収穫の秋は案外早いだろう。高校1年生が一人、「連休ないほうがいい」とぼやいていたが、この生徒にはきっと別の「春」が訪れているのだろう。
 季節は無常に動き、それがうれしいことも悲ししいこともある。喜んだりめげたりを繰り返すのが人生。きついときにはじっと我慢して努力を続けること、いつか事態は好転するもの。

 #2276で全国学力テストにかかわる北海道新聞の社説をりあげたが、読売新聞が対照的なコラム記事を掲載したので紹介したい。
 この記事を書いた記者は、つい1ヶ月前に北海道札幌から東京へ赴任、過去に教育シリーズを3度敢行して取材を重ねているので道内の教育問題に詳しいから、教育問題に関してはプロと呼べる凄腕の記者。
 北海道新聞社説は、「序列化が懸念される」とか、「点数至上主義」だとか、「この文面では子どもの心を傷つけ、やる気も失わせかねない」と全国学力テストそのものや北海道教育委員会の文書を紋切り型の句を連ねて批判していた。
 読売のコラムはこれとは対照的に「医者」という字すら書けない子どもが三人に一人いることを切り口に、個別具体的な問題を取り上げながら教育問題を論じ、全国最低レベルにある北海道の子どもたちの低学力問題の構造を明らかにしてみせる。そうした観点から道教委の過去問をやってみるようにという指示文書に理由を挙げて肯定的な意見を述べている。学力テストは標本調査ではなく四年に一度の全数調査を毎年やるべきだと理由を挙げて解説している。

 道新社説が抽象的でステレオタイプな句が連ねられているのに対して、読売社説は個別具体的な問題をとりあげ、分析を進めて問題の構造を明らかにする。

 全国学力テストに関する二つの記事を比較して読めば、書いた記者の資質の違いがあきらかだろう。ステレオタイプな句の羅列は思考停止を招きやすいし、脆弱な取材の抽象的な議論が現実離れを起こし、空論になることを学べばいい。日頃から教育問題について自分の頭で考え、取材を重ね、しっかりその構造をとらえているかいないかの差は大きい。

 北海道新聞の論説委員は読売記事を熟読吟味して奮励努力し、来年度の全国学力テストを社説でとりあげるときは、この読売新聞記事を凌駕するものを掲げてもらいたい。

*#2276 時代錯誤の主張 北海道新聞社説「序列化の懸念拭えない」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-04-28


5月2日付読売オンラインより
http://www.yomiuri.co.jp/job/biz/columnnational/20130501-OYT8T00791.htm

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全員参加の全国学力テストの意味

調査研究本部主任研究員 中西 茂


「国の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が4年ぶりに全員参加方式で行われた。

 この3月まで勤務した北海道は、このテストで都道府県別の成績が、特に小学生では全国最低レベルのままで低迷している。教職員組合による昭和30年代からの反対闘争の長い歴史と、北海道という土地柄が影響している。

「医者」が書けない

 学力テスト全体を見れば、「昭和の学力テストに比べて都道府県の学力差は小さくなった」という専門家の分析がある。しかし、2012年の北海道の小学6年生の正答率を、トップクラスの秋田県と比べると、国語も算数も理科も、10ポイント前後の開きがある。「医者」という字が書けなかった子は3人に1人で、全国平均より16・2ポイント低いというデータを見たらどうだろう。

 過去の小6の国語で、正答率が全国と開きの大きいワースト5は、すべて漢字の書き取りである。基礎学力を定着させる努力が足りないと言わざるをえない。「全員がもう1問正答すれば順位は大きく上がる」とも言われるが、その1問が容易ではないのである。

学力低迷の原因は組合だけではない

 北海道の学力低迷の一因に組合問題があることは確かだ。組合の裁判闘争は、国の教育政策もゆがめてきた。

 北海道では、明らかに基礎学力が問われているのに、組合はいまも、「差別選別のエリート教育」などというスローガンを教条主義的に振りかざす。「競争は悪だ」と、道教育委員会の打ち出す学力向上策には何でも反対だ。「施策を実態(実体)化しない」という言い方でサボタージュを促す。

 しかし、組合の組織率はかつてほどではないし、原因はそれだけではない。北海道というのんびりとした土地に、空気のように存在する<ゆるさ>が影響しているというのが、生活をしてみての実感である。

 たとえば宿題が少ない。家庭学習は子どもや家庭の主体性に任せるというスタンスをとる教員が多い。そんな姿勢が、ゆるさの構造を形づくっている。
もちろん、熱心で優秀な教員もいるが、点が線や面となって広がっていかない。ノートの書き方指導など、かつては北海道でもごく当たり前に行われてきたことが行われなくなった。そのことが問題なのだと気づいていない教員も少なくない。

地道な取り組みを求める

 北海道は2014年度までに、全国学力テストを全国平均以上にするという目標を掲げている。そのための施策に、また点数主義というような批判が出る。しかし、道教委の施策は、家庭学習の習慣化など、地道な学習の取り組みを求めているに過ぎない。

 文部科学省は全国学力テストに関して、「過度の競争を避ける」ことを強調してきた。背景には昭和の学力テストが過熱したことの反省がある。学校単位の結果公表には、いまも文科省は慎重だ。

 しかし、「過度の競争」を心配するあまり、適度な競争環境も失ってしまった。それが端的に現れているのが北海道だ。過疎が進めば、この問題はより深刻になる。
全国学力テストを全員参加でなぜやるか。それは、どの地域でも、他の地域と比較した課題を学校単位で振り返ることができるからなのである。

2013年5月2日  読売新聞)



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 ebisuは昨年この記者から電話取材を受けている。シリーズは4回あったかもしれない。3回のシリーズ記事は各々小冊子にまとめられており、釧路の教育を考える会の副会長が十数部送ってくれたのでわたしはそれを読んだ。
 北海道新聞根室支局も教育シリーズを3回敢行している。主としてK記者が担当だった。徹底した取材記事だったから根室にとって貴重な財産だから小冊子にして市立図書館に保管したいものだ。
 根室市教委が教育問題に関心があるならあの取材記事を小冊子にまとめて市内の各小中学校へ配布して、教育問題への関心を喚起するだろう。


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Hirosuke

【読売】じゃなく【中西 茂】記者にnice!。

世界の読売新聞でも、
全国版に結構なダメ記事を載せますからねぇ。


          こんな僕の英語教育考(6)

「読売さん、カネ貰ってるんか?」と言いたくなる前回の記事。
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英語漬け授業 国語力も向上
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続きはコチラ
  ↓
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2009-01-18

by Hirosuke (2013-05-03 10:13) 

ebisu

貴ブログの過去ログをたぐりました。
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2009-01-11

群馬国際アカデミーの記事ですね。小中高の一貫校。読売の記事は次のURLをクリックしてみましたが、もうありません。
新聞記事のURLを貼り付けても1年したらなくなってしまうので困りますね。
不都合な記事もあるので・・・ということではないでしょうが。

日本語語彙の拡張期の小学生時代に英語漬けの授業をやったら母語がおかしくなるのは当然です。
文章語の語彙が小中時代に驚異的に増えるのですから、そこを見送り三振するようなものです。

算数に米国の教材を使ったら、レベルが下がるのはあたりまえです。私は米国で高校で使用している標準的な教科書を持っていますが、微分積分はありません。計算は関数電卓を使用します。

小学校で米国の教材を使って英語漬けの授業をしたら、中学校で日本語授業で数学の補習をやらないととても中学校の範囲を終えることはできないでしょうね。日本の中学校の数学の範囲の三分の一くらいは米国の高校の内容ですから。

小学校で英語漬けをやってしまったら、日本語の文章語語彙が不足して、作文が書けません。日本語の授業だって、たとえば「オンダンシツジュン」と先生が言っても「???」、漢字が思い浮かびませんから、理解できない。

日本の小学校で英語漬けの授業をやるということは、こうした弊害が出ることを承知でやっているのですから、ばかげています。ましてや、市が補助金を出して奨励するのは気が違ったのかと思ってしまいます。
GKAの生徒さんたちが気の毒です。

ebisuは海外帰国子女を数名担当したことがあるので、海外の小学校や中学校で英語漬けの授業を経験してきた彼ら・彼女たちにどういう問題が起きるのか自分の目で見て知っています。
ゆるく定義したとして、バイリンガルになるのは100人に一人ぐらい。99人は日本語がダメ、基礎学力に問題を抱えることになっています。
その一番の理由は文章語の日本語彙が極端に貧弱になっていることです。おおよそ中3で小学生4年生以下と考えていいでしょう。

すでに亡くなりましたが。同時通訳の米原真理さんはチェコに住んでいたときに、少年少女世界文学全集を何度も読み返したそうです。自分で努力して日本語語彙の拡張をやったことになります。本物のバイリンガルになれるのはそうした努力をした人だけ。千人に一人もいないでしょうよ。基礎は母語である日本語です。
小学校で英語漬け授業をしたら。基礎学力の「読み書きソロバン」の三つともが深刻なダメージを受けます。この三つが発達しないで高学力が期待できるはずもありません。

まあ、新聞社ではなく、記事を書く一人一人の記者の資質の問題でしょうね。同じ社ですら担当する記者によって格段の差があるのはあたりまえですから。

>【読売】じゃなく【中西 茂】記者にnice!

同感!

by ebisu (2013-05-03 11:15) 

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