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#2132 歯舞 コンブ浜 晩秋  Nov. 18, 2012 [87.根室の話題]

 北海道新聞根室地域版に表記タイトルの署名記事が載っていた。初回の「春<上>」ではコンブを引っ掛ける「カギ棹」つくりについて、原木の選定・仕入れから、一本一本手で削って仕上げる名人芸を取材していた。
 「春<下>」ではニムオロ塾生だった二人が高校を卒業して家業を継ぎ、競い合う姿が大きな写真入で紹介されていた。なかなかいい面魂だ。

 「晩秋<上>」ではやはり道具がひとつ紹介されている。拾いコンブの「投げまっかい」である。引っ掛け針を大きくしたような形状で、爪の長さは38センチあり、それが4本ついて根本で束ねられている。金具部分は170グラムあり、それに細めのロープがついている。
 胴長を着て、海に浸かりながら金具を10メートルほど投げてコンブを引っ掛けて拾うのである。歯舞地区だけでこの「拾いコンブ漁」は3000万円あるという。

 コンブ漁の水揚げは一軒当たり平均700~800万円。冬場はコンブ漁はできないから、今年出稼ぎに出たのは「235戸345人、地区全体で337戸あるコンブ漁家の7割を占める」。

 「根室市内ではウニやタラの水産加工場、建設会社が多く261人に上る」
 「おやじも息子も働きに出る家がある」
 「4人は根室の地酒「北の勝」を醸造する碓氷勝三郎商店で酒造りに従事する」
 「釧路の工事現場やオホーツク管内斜里町のある製糖工場などで37人が働く」
 「埼玉県の首都圏中央連絡自動車道の建設現場で働く」

 寝ないで仕事をするコンブ漁に比べれば、内地の仕事は楽で割りがいいという。出稼ぎをしていると4月の子どもたちの入学式には帰省できない。

 コンブ浜には、コンブ漁独特の道具である「カギ棹」をつくる名人がいる。そしてその浜には「投げまっかい」を上手に操る名人がいる。
 日本にはあらゆる職業が職人に担われており、道具をつくり名人アリ、その道具を使う名人アリと、いたるところにさまざまな名人がいる。同じことを毎年繰り返しやることで、その技を磨いていく。
 歯舞の浜で暮らす人々の生活を丹念に取材して紹介してくれたのは、北海道新聞根室支局の記者栗田直樹さんである。
  
【余談:コンブ浜の同級生】
 歯舞の双沖(ふたおき)に沖根布(おきねっぷ)というところがある。高校1年生のときにそこのコンブ漁師の息子と同級生になった。背は小柄だが色黒の細身でがっしりした体つきだった。一度腕相撲をしたことがあるが、腕を組んだ瞬間に強いと感じた。ダンベルで鍛えた腕力には自信があったから、コンブ浜で小さいときから家業を手伝う奴の力がどれほどか試したかった。濡れた昆布を船から浜へ運ぶのは重労働で、腕力が強くなる。どちらが勝ったのかは覚えていない。
 わたしも家業のビリヤードを小学校からずっと手伝い続けてきたから、ハンデはなしだ、勉強でもガチンコ勝負、いいライバルに恵まれた。やつは税理士試験に合格してから東京有楽町で税理士事務所を構えている。高校を卒業して高田馬場のF短期大学へ進学し、卒業した年に税理士試験に合格したから優秀さは折り紙つきだろう。後輩にも先輩にもそういう奴はひとりもいなかった。
 2年生のときに、生徒会にいた私を会長に推す先輩が二人いて、普通科のHさんから応援演説をやるから立候補しろというのである。二人とも生徒会副会長だった。ところが生徒会顧問の先生の一人が私の会長立候補に強く反対した。理由は生徒会会計をやっているということだったが理由にならぬ、校長の差し金であることはハッキリしていた。
 当時の根室高校は男子は「丸刈り坊主」が校則に明記されていて、全員坊主頭に詰襟の学ランで総番制度(番長制度)のあるバンカラな高校だった。東京への修学旅行に坊主頭は嫌だったので父兄にアンケートをとり全校集会を開いて「坊主頭にすべし」という校則を変えた。先輩達は勝手にやらせてくれた。根室にあった私立高校生徒会との交流も始めたから、学校側に危険人物と警戒されたのだろうとはわたしの勝手な推測である。間に挟まっている先生が気の毒だったので、さっさと降りてあいつに応援演説をつけてやるから副会長に立候補しろと事情を伝えたら二つ返事でOKしてくれた。副会長の先輩には事情を伝え応援演説をお願いした。その先輩の一人は室蘭税務署長を最後に公務員生活を定年で卒業して、税理士をやっているのだから縁とは不思議なものだ。
 学力は高校時代に大きく鍛えられるが、そのときに気の抜けないライバルがいるというのはたいへんありがたいことだ。三年間の過ごし方しだいで、その後の人生が変わる。あいつは高校時代の借りを高校卒業後3年で税理士試験に合格することでまとめて返した。わたしはHKのそういう心意気が大好きだ、マジメで性格のいい奴だ。
 わたしは専修大学商学部会計学科に進学したが、あいつが税理士試験に合格する頃には哲学と経済学にのめりこんでいた。大学でもいい先生と先輩達に恵まれ、公認会計士2次試験受験よりも価値のあるものを見つけて方向転換していた。いや、高校2年生のときに近代経済学の解説書と『資本論』を読んだときにすでに方向は決まっていたのだ、それを再認識したのが大学2年生の一般教養ゼミ。先生は哲学者の市倉宏祐教授、テクストは『資本論』と『経済学批判要綱』。当時の学部のゼミとしては最先端のレベル、学問の階段を一気に駆け上がった。

*#1954 味わいのある記事:「歯舞 コンブの浜 春」 May 30
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-05-30

 #1955 タクヤとカズキのデビュー :「歯舞 コンブの浜 春(下)」  May 31, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-05-31

 #1984  歯舞コンブの浜 初夏 (1) June 23, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-06-23

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