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#2073 鎖国具体論:和のビジネス再生(畳) Sep. 2, 2012 [A4. 経済学ノート]

 7月8月と根室は天候不順で晴天の日が数日しかなく、金比羅さんのお祭りも10日はひどい雨に見舞われコースを短縮したぐらいだったから、蟹祭り関係者は当日の天気を心配していたに違いない。ところがいい天気に加え、適当な風がそよいで絶好の祭り日和となったから、よほど関係者の心がけがよかったのだろう。(笑い)
 1時頃、(花咲)蟹祭りをみてきた。花咲某(なにがし)という歌手が舞台の上で喋っていた。ご本人がデビューしてから30年だと説明したら、会場の人たちがどっと笑っていた。よくがんばってるな、ずっとがんばれという気持ちのこもった笑いだった。
 晴れた蒼い空、気温23度、舞台の前に用意された椅子はほぼ埋まっていた。さすがに高級品の花咲蟹を食べている人はそう多くはないようだが、鉄砲汁など有力なメニューはいくつかあって、盛況だった。久しぶりの青空に感謝。

 8月27日のNHKビジネス展望で、立教大の山口義行教授が「和のビジネス再生への試み」というタイトルで、話しをしていた。ここには伝統文化とビジネスのありようについてひとつのヒントがあるように思える。

 畳表は中国からの輸入が80%超だという。6000軒あった国内のイグサ農家は600軒に減少してしまった。中国産に価格の点でかなわないのである。
 畳屋さんが集まり「畳道場」という会を作り、熊本県のイグサ農家へ研修に行くことになった。朝の3時から気温30度湿度90%の蒸し暑い中での作業はきつい、イグサの刈り取りは「生きるか死ぬか」といわれるほどの作業だった。イグサは農産物だったのである。この作業を通じて畳職人たちはいろんなことを知ることになった。中国産のイグサは値段が半値だが、品質が日本産のイグサにはるかに劣ることがわかった。実際に刈り取り作業や乾燥作業をしてみて、畳表の材料としてのイグサの善し悪しに目が利くようになったのである。これほどの質の違いがあるのだから値段が高くて当然だと思い始める。

 畳表は呼吸しているから、畳の部屋の湿度を自動調節する。そして有害物質をイグサの芯の部分に吸着するので部屋の空気も浄化する。その香りはアロマセラピー効果ももっていることにあらためて気がつく。刈り取ったばかりだと、質の違いに気がつかないが、使ってみると日本産のイグサは湿度調整や空気の浄化やアロマセラピー効果の点において、段違いに高品質であることがわかった。
 イグサ農家で研修することで、材料の目利きができるようになった畳職人たちの中には、品質のよい日本産のイグサしか扱わないところが出だした。I-PADをもって画像を見せながら、お客さんに日本産イグサのよさを説明するようになったのである。いま、日本家屋には畳の部屋のないものが増えている、あっても一部屋だけというケースが多いから、畳表の値段が高くても、きちんと説明すれば品質のよいものを買うお客さんが案外多いのである。
 日本産しか扱わないと宣言した畳屋さんは、I-PADを使った営業も功を奏して売上は以前よりも増えたという。買ったお客さんの評判もよく、口コミで日本産イグサを使った畳の素晴らしさが広がり始めている。

 畳を例に考えると、分業が進んでイグサ農家の苦労を畳屋がわからない。問屋から買うだけでイグサ農家にいったこともないので、いつのまにか畳屋が材料の目利きができなくなっていた。そして消費者も見た目は変わらないから、安いほうの中国産を購入してしまい、畳の部屋に魅力を感じなくなって、日本家屋から畳の間が消えていきつつある。

 生産が分業化され、畳職人すら材料の目利きができなければ、消費者は材料の善し悪しなどわかるわけもないし、中国産のイグサの畳を使ってみて、こんなものかと思ってしまう。
 消費者が品質のいいものを理解し、大事に使うには、生産に携わる職人が、一気通貫で全部の作業や材料の目利きができて、消費者にただしく説明ができなければならない。そういう職人が増えれば、日本産の畳表の需要も増え、イグサ農家が増え、畳職人の数も増える。国内に仕事が増えて、雇用が増えるのである。

 材料の値打ちがわかれば、半端になる材料の短いイグサを棄てるのはもったいないと思うようになった。半端なたけの短いイグサを集めて40センチぐらいの長さの「イグサロール」を手作りして、これをつなぎ合わせてマットを試作してみた。そしてそれにあう布団をつくり、香りのよい寝具を開発して売りに出し始めた。こうして仕事の幅も職人技の奥行きも広がる。
 材料のよさがわかれば規格に外れたものも、棄てずに、なにか別の製品をつくることができないかと工夫を生むことになる。農家が朝の3時からきつい作業をしていい材料を供給してくれている、その苦労が分かっていればこそ、いい材料を棄てるのはもったいない。

 畳は日本の伝統文化である。そこに使われてきたイグサをよく知ることで、良質の日本産イグサの需要を増やし、生産農家を元気にすることができる。畳職人の数も増えるし、なにより消費者が製品の良さを理解して使うようになり、いいもののほんとうのよさが理解できるようになる。

 日本は鎖国していいのではないだろうか?品質の高いものを国内で生産して使う、自給自足の度合いをいまよりずっと増やしていくという決意をもつという選択肢があるのではないだろうか。鎖国とは管理貿易である、江戸幕府が長崎出島を通じて貿易はしていたように、完全に国を閉じることではない。貿易はお互いに自国で生産できないないものだけでいい。それぞれの国が自国の伝統文化を大切にして、古の昔から伝えてきた材料生産からはじまるさまざまな職人仕事をセットで次の世代に守り伝えていくには、自国の伝統文化の素晴らしさを真に理解することからしかありえない。

 日本のお米の生産量は900万トン、農村は過疎化と高齢化が進み、耕作放棄地が急速に増えている。トウモロコシなど飼料用穀物はほとんど米国から全量輸入。味噌、醤油、豆腐、納豆に使われる大豆も大半が輸入。
 いま米国で旱魃が進み、飼料用トウモロコシの値段が上がり始めている。鶏も豚も牛も、その育成のためにC4植物である米国産飼料用トウモロコシが使われている。牛肉1kgを生産するのに20倍の飼料用穀物が必要だという。暮れ頃にはいろんな食品の値上がりラッシュがはじまるのだろう。
 な~に、心配ない、のんびりしている日本人は、実際に目の前に不都合が現れないと対処の仕方を考えないが、不都合が続けばやり方を変える。赤塚不二夫ふうに言えば「それでいいのだ」。

 人口減少が始まっているから、1億3000万人の人口も50年もすれば8000万人を割っているのだろう。財政及び経済規模は縮小し、耕作放棄地が増え続けるから、農業用地の規制を緩めて自給率を高める工夫をすればいい。品質がよくて安心して食べられる農業生産物を自国内でつくり、国内で食品を自給できる日本を目指すのも選択肢に考えていい。値段は高くても自国産品を受け入れよう。
 それにつけても原発だけはごめんだ、国土を放射能汚染してしまったら、日本でとれるものが食べられなくなる。何十世代、何百世代も日本人の遺伝子を放射能で傷害し続けたら、日本民族は遺伝子劣化により滅びる。
 現在の日本人種はイエローブックに載っている、福島第一原発事故以後は「絶滅懸念種」である。もう一つどこかで原発事故があれば「絶滅危惧種」としてレッドブックに記載される。

 人口減少時代の幕が開けたいま、伝統文化を見直すことで従来とはまったく違った質の高い安心・安全な選択肢がありうるのではないだろうか?グローバリズムから自国の伝統文化や生活様式を守ることで、国内に仕事と雇用を作り出すということが可能なのではないだろうか。
 それゆえ、TPPには不参加、日本は安心安全で質の高い生活のために国産品を使うことによるコスト高を受け入れ、グローバリズムとは対極の慎み深く質の高い経済社会を実現しよう。

 畳の例がいろんなヒントを提供してくれている。



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