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#2012 Feed-in tariff system について :ちょっと面白い解説 July 13, 2012 [74.高校・大学生のためのJT記事]

 #2005「(太陽光:原子力)電力固定買取制時代到来:Feed-in tariff era gets under way」を時事英語授業で使ったが、ヘッダー部分ともう一箇所について生徒から質問があったので説明をしておきたい。

http://www.japantimes.co.jp/text/nn20120702a2.html
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Monday, July 2, 2012

Feed-in tariff era gets under way

   KyodoThe feed-in tariff system for renewable energies entered into force Sunday to help promote their use and cut Japan's dependency on nuclear power.

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 私は"feed-in tariff”をみて、再生可能エネルギーの固定価格買取制度だと気がつくが、この単語を見てすぐに固定買取制度という訳を思いつく高校生はいないだろう。疑問をそのままにして本文を読み進めば手がかりが本文の中に見つかるのだが、目の前の単語の意味がわからないとダメだと早合点して、たいていの者があきらめてしまう。
 案の定、生徒たちは全体を見ずに"feed"と"tariff"を英和辞書で調べた。前者は「餌を与える」とか「供給する」という和訳が載っている。後者は「関税」や「料金」とある。ここで頭をひねって珍妙な和訳をあみだす。長文に慣れてくれば、まず全体をざっと読み、内容に見通しをつけ、文脈から単語の意味を探ることができるようになってくる。そこが授業の狙いの一つでもあるからそうなればしめたものだ。

 記事が載ったときには最大のネット辞書「英辞郎」にも和訳がなかったが、さきほど検索したらきちんと「固定価格買取制度」と載っていた。この数日間に項目がつけ加えられたようだ。

 辞書にないときの処理をどうするかを考えてみたい。CALD(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)を引いてみた。

feed:(6) to supply something to a person or thing ,or put somthing into a machine or system, especially in a regular or contenuous way.

  話題は太陽光発電、そしてfeedの意味が「何かを人やモノに対して供給する、あるいは機械やシステムに何かを入れる、とくに規則的あるいは継続的な方法で」となっているから、送電網に電気を供給すること=給電だと理解できれば、「太陽光発電所から送電網へ給電するときの料金」であることがわかる。

 ここで日本語のすばらしさにも気がついてほしい。"feed-in tariff system"を「フィードインタリフ制度」と訳してしまったら、専門家以外は意味が理解できなくなるが、「固定価格買取制度」という訳語なら、誰にでも理解できる。
 「固定×価格×買取×制度」に分解できるから、頭の中にベン図を思い浮かべながら概念を正しく理解できる。基本漢字の組合せでできているから小学生でもわかるような訳語になっている。
 しかし、米国人の子供たちはこの単語から意味を理解することはできない。用語の解説をみなければ理解できないだろう。だから、ジャパンタイムズのような「高級紙」を子供が読むということはほとんどない。経済記事なら経済学の専門用語を知らなくては意味のつかめない文がたくさん出てくるし、医学もそうだし、エレクトロニクスやコンピュータ分野もそうだ。あらゆる学術分野に専門用語があるから、まずそれを知る努力が専決事項である。ところが日本語は基本漢字の意味を知っていればあらゆる分野の専門用語の大半が理解できるようになっている。だから、大学を卒業していれば、会社に入ってから仕事のできるものは出身学部とは関係なく、さまざまな部門に異動して複数の専門知識の要求される仕事を担当できる。これは日本語の利点だ。あらゆる分野が開かれており、意欲があれば、基本漢字の意味を熟知していれば、どんな分野の本も読めるのである。数学がわかって日本語語彙が豊かであれば、社会人になってから、ダントツに有利に戦える。この二つがあれば鬼に金棒である。
 少し例を挙げれば英語にはない日本語の利点が理解していただけるだろう。たとえば、白血病leukemiaである。これは「白血」となっているから、赤血球に関する病気ではなく、白血球に関する病気だくらいのことは日本人なら誰にでも理解できる。ところが、英語だと白血球=white blood cellはleukemiaという単語のどこにもあらわされていないから、白血球やリンパ球に関連のある病気とはわからない。leuがラテン語の接頭語で白を表しているのだが、ラテン語の知識は普通の米国人に求めるのは無理だから、辞書を引いて確かめるしかない。
 対照的なのはコンピュータ専門用語である。たとえば、システム全体の管理者のことをadministratorというが、「アドミニストレータ」と聞いてただちに理解できるのはコンピュータについて学んだことのある人だ。「リテラシ-」と聞いて意味がすぐに思い浮かんだ人はコンピュータソフトウェアーについて学んだ経験のある人だろう。コンピュータ用語はそのままカタカナ表記のものが多いのは、基本漢字に翻訳する間がないほど短期間に大量に入ってきたからであるが、訳語がないのは漢字への変換能力、つまり日本人の漢字能力の衰えを表しているともとれる。漢文の素読をした明治期のインテリたちと比較すると私たちは造語能力が著しく落ちている。
 このようなわけで、できるだけいろいろな分野の専門用語は基本漢字を使った日本語に翻訳・定着させておくほうがいいのだが、それが充分できていないところに現代人の私たちの漢字能力の衰えを認めざるをえないのである。かくしてコンピュータソフトウェアーの世界ではカタカナ語が氾濫することになった。大分県と熊本県の1時間100mmの集中豪雨と似たようなことがコンピュータ分野で起きている。日本語の利点を失ってもうそれはほとんど記号のお化けに近い。

 話しが少しそれたが、和訳は辞書を引きその中の日本語を選び当てはめることではない、話題全体や文脈から単語の意味の原義にもどってイメージをつくり上げ、推論することも時に必要なのだということがご理解いただけただろうか?

 feed-inが理解できたら、たぶん次の文章もなんとかなる。傍線部について書き手が脳内にイメージしたことを読み手が性格に再現できればいいだけの話だ。案外手こずるかもしれないからできるかな?

Two large solar installations went online in Kyoto, Gunma, Niigata and Fukuoka prefectures the same day.

 生徒が迷ったのは傍線部の和訳である。「ネット上でつながった」ではなんともおかしい。「送電網につながり給電を開始した」という意味だ。the same dayは7月1日である。go onlineで辞書を引いても載っていないから、これも適切な訳を文脈から考えなければならない。
 さらにもうひとつ問題が持ち上がる。主語が「二つの大型太陽光発電所」であるが、場所が4箇所示されているのでなんだろうという疑問がわく。twoでなくfourの間違いではないかと考えた人もいるだろう。しかし、このままで正しい。「7月1日、京都府、群馬県、新潟県、福岡県の4地域のうち、2箇所の大型太陽光発電所が(それぞれの地域の送電網に)給電を開始した。」と読めばいい。

 稼動を始めた京都の太陽光発電所の写真をはさんで、この記事の右側に、ソフトバンクと京セラが共同で太陽光発電所を計画していることが別の記事になって載っている。その中に給電を開始したのは二箇所で次は9月に給電開始の予定だと載っている。ヘッダーを参考までに書いておく。URLも貼り付けておくので、関連記事だから読んでみたらいい。

"SoftBank-Kyocera solar plant to soggy start amid downpour to Kyoto"
http://www.japantimes.co.jp/text/nn20120702a3.html

 洒落が利いている。太陽が必要なのに土砂降りの中で太陽光発電所がスタートすると書いている。土砂降りの中で弱弱しく給電を開始したありさまが目に浮かぶ。

 ニムオロ塾の時事英語授業はおもしろい、どこが面白いかというと知的だからで、そのうえ高校生にもわかる大学レベルの授業というおまけ付だ。
 根室には大学がない、家庭の事情で大学にいけない場合は最後の勉学期間である高校生の時期に大学レベルの授業を楽しめる、そういうユニークな塾をふるさと根室につくりたくて10年前に東京から戻ってきた。夢は9年前から実現し続けている。


*#2005 (太陽光:原子力)電力固定買取制時代到来:Feed-in tariff era gets under way July 9, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-07-09

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