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#2013 母校(中学校)の校長・教頭先生との対話(1):小中高のコミュニケーション July 14, 2012 [72.フリー参観]

【フリー参観授業】
 ebisuの家はある中学校(母校)前にある。文科省は地域社会へ学校を開くことを要求しており、わたしは7月13日金曜日のフリー参観のために母校を訪れた。
 授業のことは稿を改めて書くつもりだ。私は団塊世代で、旧根室中学校が光洋中学校と柏陵中学校に分かれたときに一年生で入学した「光洋中学一期生」。1学年10クラス550人、全校生徒約1500人のマンモス校だった。現在は1年生2クラス62人、2年と3年が各3クラスの合計8クラス約250人。昔の歯舞中学校より少し大きい規模だろうか。

【全国最低レベルの学力問題:学校間垂直コミュニケーションがはじまっている】
 たまたま校長先生と教頭先生に30分ほど話しをすることができた。もちろん話題の中心は根室の中学生の学力について。
 北海道は全国学力テストで最下位レベル。その北海道の14支庁管内で根室管内は最低レベルの学力。つまり根室市内の子供たちの学力はまぎれもなく全国最低レベルということ。
 学力テストの結果をみると基礎計算分野でつまづいている生徒が40%ほどいるので、学校として週に2日ぐらいブカツ休止日をもうけて、成績の悪い生徒を強制参加させる放課後補習をしてほしいとストレートを投げてみた。
 小学校で分数や小数の四則演算が満足にできないまま中学生になった生徒が30%ほどいて、その内の3分の2ほどが根室西高校へ入学し、高校の先生たちが小数や分数の基礎計算から教えている、そうした現状をどう思っているか率直に聞いてみたかったのである。
 校長先生曰く、一部で放課後補習をはじめたという。そういえば、3年生の数学授業で有理化のできなかった生徒に授業中に先生が「居残りだな?」と問いかけていた。
 驚きだったのは光洋中学校の先生たちに根室西高校の先生たちの授業を見学させたということ。どういう現状か、とにかく高校の数学の先生たちが新入生に小数や分数を教えている姿を中学校の先生たちが自分の目でみることは大事なことだ。生徒の人生は高校へ入学した途端にリセットされるものではなく、中学校でやり残したツケを高校で支払わなければならないようにできている。きつい現状を自分の目で見て、その上で、中・高の先生たちがコミュニケーションし、連携しないと解決できない問題がある。高校で生徒の人生が終わるわけでも、卒業と同時にそれまで基礎学力をつけられなかったことをリセットできるわけでもない。生徒は小学校で学び損ねた分数や小数の計算を中学校でも学べず、高校に入ってからようやく学ぶのである。そうしてその分高校の学習は遅れ、根室高校普通科の半分程度しか学科の内容が消化できず、高校卒業時点で学力の差はさらに大きくなっている。そしてそれを抱えて社会人となる。大きなハンディがつき、それを挽回するのに他人の何倍かの努力をすることになる。それができない者は、小学校、中学校、高校とますます大きくなっていった基礎学力のハンディを一生背負い続ける。
 小学校も中学校も高校も、生徒がその先の人生をどう歩むか、そのためにはそれぞれの段階で最低限どういう基礎学力を身につける必要があるのか、そうした観点から日々の授業のあり方、補習の仕方を見直し考え抜かなければならない。それは仕事に対する責任である。
 だから、小数や分数の計算を教え切れていない小学校の先生たちに対して中学校の教科担当の先生たちから現状を率直に話す機会をもつべきだと話した。蛇口を開けっ放しにしていたのでは中学校で今後放課後補習を実施しても限(キリ)のないことになる。そういうわけで根室のこどもたちの学力を上げるためには小・中・高の連携が必要なのだ

【新入中1生の基礎学力チェックと小学校へのデータのフィードバック】
 校長先生曰く、新入生に基礎計算テストをやらせ、問題ごとの誤答率表を作成して成央小学校へデータを渡しているとのこと、なかなか立派なことだ。現物を見せてもらい、問題が簡単すぎると思ったので、小数同士の割り算と三桁の掛け算問題も入れてほしいとお願いした。根室高校3年生でも3桁同士の掛け算のできない生徒は三分の一はいるのではないだろうか?やったことのないのは三桁同士の掛け算といえどもできないもののようだ。
 実際に行われたチェック用の問題と誤答率について実例を挙げてご覧に入れよう。
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 問題          誤答率
(48) 2×8×2×4×5 ⇒ 23%
(58) 9+8×2     ⇒ 26%
(65) 0.5×0.5     ⇒ 52%
(68)  331.5+0.6×20⇒ 50%
(69) 3÷5        ⇒ 31% (答えは小数でなくて分数で)
(70) 1÷3        ⇒ 23% (答えは小数でなくて分数で)
(71) 5/3-1/4     ⇒ 27%
(81) 3/4÷6      ⇒ 27%
(83)  8÷14/5×7     ⇒ 29%
(86)  180:( )=5:3   ⇒  26%
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 誤答率20% 以上のものだけピックアップした。基礎計算問題は11/86=12.8%の問題が誤答率20%を超え、短文の文章題は7/14=50%が誤答率20%を超えている。計算問題86題のうち、47番までは小学2年卒業時で100%正答できるレベルの簡単な加減算と乗算の問題である。
 簡単な短文章題の半分ができないということは、基礎計算能力だけでなく、日本語の読解力が著しく低いと読むべきなのだろう。
 大半の生徒が、本は読んでいても読解力向上につながらない、漫画の本、児童書、語彙レベルの低い少年少女小説の域をでていないのだ。大人の本への橋渡しがなされていない現実を直視すべきだ。生徒たちはいつまでも「乳歯レベル」の読書を抜け出ることができない。大人のかたい本=「永久歯レベル」の読書への橋渡しをやらなければならない。このまま放置すると自力で永久歯レベルの本を読む生徒は3%以下になる。後で述べるが、読解力(読書力)の低い生徒は中学校で成績が頭打ちになり、高校生になっても成績が伸びない傾向がある。朝読書はじつにおろかな手抜きの対処法であるのだが、それについてはあとでもっと具体的に書く。
 さて、成央小学校の先生たちはこのデータを見てどう思ったのだろうか?来年はさらに改善してくれることを期待したい。この問題は成央小学校だけではない、創立136周年を迎えた(わが母校)花咲小学校も北斗小学校も同じ問題を抱えている。

【家庭学習習慣育成に係わる問題】
 家庭学習習慣に話しがいった。五段階評価ではなくアンケートは、1日平均1時間以上勉強している生徒がどれだけ、30分以下はどれだけ、2時間から3時間はどれだけ、3時間以上の割合は?というように時間数で区切って集計してもらうとわかりやすいので、その旨申し上げた。私の感触では中1年生で約半数が家庭学習習慣ゼロに近い。
 小学校6年間家庭学習をやらずブカツに明け暮れた生徒は、中学生になっても家庭学習習慣を育むことが著しく困難である。やらないことが6年間続いて「生活習慣」となっているから、中学校の1年間ではほとんどが治らない。生活習慣病との闘いである。
 だから、中学校で宿題を出してもやらない生徒が半分いる。できるはずがないから答えを丸写しして提出。先生たちは提出物とテスト結果の両方を見ているから、現実を承知しているはずだ。だが、放課後補習はしない。一部の、ごく一部の先生が個人的努力で放課後補修をしていたのは承知している。ありがたい。光洋中学校にも最近までそういう先生がいた。私はOBとして、その先生に深く感謝している。最近お会いしてその旨伝えることができた。「ありがとうございます」と顔を見て言えるのはうれしいものである。
 家庭学習習慣を育むポイントはどこにあるかという質問が校長先生からでた。鍵はどこにあるのかというと、就学期(小学1・2年生)にある。この時期に家に帰ってきたら、お母さんが足し算問題や引き算問題を10題ほど書いてやらせる習慣をつける。あっていたら大きなマルをつけてほめてやる。国語は習った言葉で短い文章を二つ書かせてみる。新しく習った漢字を書かせてみる。こういうことは母親なら誰でもできる。たったそれだけのことを2年間繰り返せばいい。どんなに成績の悪かったお父さんやお母さんでも小学校1,2年生は教えることができる。少しレベルの高い本を2冊買って、テレビを消して、毎日15分、30分一緒に読んでやればいい。子育ては努力が要る、手間を惜しまなければそれだけの効果は、いやそれ以上の効果が必ずある。
 新入学時の保護者懇談会でやり方を具体的に説明すればいい。中学校から小学校へ具体的な要請事項として家庭学習習慣の育成のためになすべきことを伝えればいい。だから、中学校と小学校の組織的・継続的なコミュニケーションが大事なのである
 根室にだって上手に子育てをして実績を上げた親たちがいる。私の友人のAもそういう中の一人である。実に単純で上手なやり方で、子供三人を光洋中学校から釧路湖陵高校に進学させ、三人とも国立大学へ入れた。先ほど書いた算数と国語の家庭学習は彼から聞いた話しの受け売りである。プロの私が納得する立派な躾け方だ、そして根室の親たち全部が自分の努力でできることである。残念ながら気がついていないから、親たちに気づかせるために1年生の入学時の保護者懇談会を利用すればいい、そして継続的に「学力向上保護者懇談会」を開けばいい。
 小学校低学年での家庭学習習慣のシツケはそれほど難しくない。だが、そこで躾けそこなうと、中学生になってから家庭学習習慣を育むことは至難の業になってしまう。鉄は熱いうちに打てというではないか、その通りなのだ。
 これは同じ学区の中学校の先生と小学校の先生たちが話し合えば何とかできる、ebisuも友人に話してボランティアで家庭学習習慣育成の具体的なやり方について話してもらえるように、段取りはお手伝いできる大学院卒のわたしなんかよりも、高卒の同級生の彼の方がずっと上手だ。ちっぱな奴で、自慢のできる同級生の一人だ。A君、仲間内ではAと苗字を呼び捨てにしている、君もサンもつけない。お互いにそうだ。呼びやすい名前だと、苗字ではなく名前や愛称で呼ぶ。還暦を過ぎた爺どもが、よっこ、おとや、あお、きよし、えんちゃん、にゃんこ、こうじ、みね、つねみ、ひろし、おさむ、としなどといまでも呼び合っている。(笑)

【朝読書は効果なし:学力向上のための音読トレーニングの必要性】
 朝読書の問題についても話し合ってみた。読書力のある生徒は高校生になってからでも成績が伸びる余地が大きいのに対して、読書力の低い生徒は成績が早く頭打ちになる傾向がある。どの教科書も日本語で説明されているから、日本語能力の高さが学力に結びついていることは容易に想像がつく。数学の簡単な短文小問題ですら半分の問題が誤答率20%を超えているのは読解力と読書力不足だ。
 誤答率40%超が14題のうち4題だ。本は読んでいたとしても、漫画の本や簡単な少年少女小説レベル、ここに大きな問題がある。短文章ですら意味が理解できていない
 絵本から、児童書まではお母さんたちが何とか面倒を見ている。しかし、児童書や娯楽小説からもっとレベルの高い「永久歯」の必要なかたい本を読む生徒となると激減である本が好きな生徒、3パーセントがそういう領域に踏み込むことができるだけ
 一昨年、小樽商大と北海道教育大札幌校へ入学した塾生は二人とも読書力が高かった。日本語語彙のしっかりしている一人には中学生のときにデカルト『方法序説』や数学者岡潔の本を読ませた。彼は弁論でも全国大会へ出場した。小樽商大のほうの足の長い女生徒は小さいときから本の虫だったようだ。勝手に(つまり好奇心の赴くまま自力で)自分でたくさん本を読み読解力をつけてしまった。根室高校普通科で模試の国語の点数がしばしば1番だった。もちろん、教育大札幌校の生徒もなんどか模試の国語で学年1番をとったことがあった。

 予告した朝読書の欠点について書いておきたい。要点はたった三つである。朝読書では
①黙読では正しく読めているかどうかのチェックができない
②(音読)トレーニングにならない
③「永久歯レベル」のかたい大人の本へレベルを上げることができない

 自分が読みたい本をもってくるから、小説レベルで終わり、レベルが上がらない。ルビを振った本が少ないから、本を読んで語彙を増やすことができない。3割程度の中学生が小4レベルの語彙しか使えない。本を読まない生徒は文章語の語彙が読めないし使えないから、本を読んでも眺めているだけで内容が捉えきれない。音読させればすぐにわかるが、読書力のない生徒は音読が実にヘタなのである。
 わたしは小学生と中学生に8年間、音読トレーニングをしている、その経験を踏まえた上での発言だ。中学2年生になっても小学4年生以下の日本語語彙しかない生徒が2割りに近いのが実態である。こういう生徒が家庭学習ができるはずがない。教科書に書いてある日本語が満足に読めない(読めない語彙が頻出する、"てにをは"をしょっちゅう読み間違える)のだから、意味をただしくとらえているはずがない。意味を正しく捉えるためには、出てくる語彙について知っていることと、ある程度の速度で正しく読めること、このふたつの条件をクリアしなければならぬ。読書力のない生徒は本を読まないから国語辞書を引かない。ましてや漢和辞書など引いたことがない。英語授業で英和辞典を引かせている中学校は根室には存在しない。だから、日本語も英語も辞書を引く習慣が育たない。これでは日本語語彙が増えるわけがない。ウゼエー、カッタルイ、シネ、は貧困な日本語語彙しかもたぬ生徒たちの会話はそうなってしまう。自分の感情を表現する言葉や論理的に説明する言葉を知らないのだから、当然のこと。
 今日の授業参観でも3年生の国語に時間に生徒数人に輪読させていたがたどたどしい読みで、意味内容がわかっているようには感じられなかった。色が白くて背の高い国語の先生は生徒を指名して数人に読ませたから、生徒の読書力レベルは承知しているはずだから、国語の先生として朝読書が生徒の読書力を上げるのに何の効果もないことをはっきり発言すべきだ。
 音読トレーニングは手間がかかる、しかし効率なんて度外視してもやるべきときには惜しみなく手間をかけることこそが教育の王道だろう。読書力を上げるには音読トレーニングが必要である。ニムオロ塾ではボランティアで音読トレーニングを実施している。

【学力向上は小中高の各学校がそれぞれの役割をまっとうし、そしてコミュニケーションすることからはじまる】
 長くなったから、一回目はこれくらいにしておく。まだいくつか書いていないことがある。
 校長先生と教頭先生にOBとして話し合う時間がもてたことはたいへんうれしい。根室西高校や根室高校とのコミュニケーション、同じ学区の小学校への働きかけについて、光洋中学校がいくつか新しい試みをしている。全道最低レベルの根室のこどもたちの学力をなんとか向上させるために大きなタイムラグをおきながら、成果を生み出していくのだろうと希望がわいた。
 啓雲中学校と花咲小学校もなにか具体的なコミュニケーションを始めているのではないかという気がする。根室は複数の中学校から学力向上への新しい風が吹きつつあるようだ。校長先生、教頭先生、教科担任の先生たちができる範囲で努力し地域社会を巻き込めば、案外な力を発揮するのかもしれない。こうした根室の動きと「釧路の教育を考える会」が連携してできることが将来あるかもしれぬ。

 釧路高専の校長先生が最近訪れたようだ。明日、釧路の教育を考える会のメンバー(副会長のZAPPERさんと合格先生)が根室に来るので、話のネタが増えた。 


*#1997 体育祭準備の授業つぶし:杜撰な仕事管理の実態&"すっ飛ばし"の原因 July 4, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-07-04

 #1988 学校の責任 June 28, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-06-27

 #1987 フリー授業参観感想記(2)  June 26, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-06-26

*#1940 職人技という視点から授業力を考える:C中学校フリー授業参観感想記  May 19, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19

 #1935 フリー授業参観に行こう:啓雲中学校  May 14, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-05-14 



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