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#1695 競争のない根室 :健全な競争と学力の関係 Oct, 23, 2011 [64. 教育問題]

  根室には私立中学がないから、中学入試という競争の場がない。
 根室の小学生たちは喜んで今日もブカツに明け暮れている。"ブカツさえしていればいい"、"子供は元気で遊んでいるのが一番"、"勉強なんかしなくていい"、そういう親さえいるようだ。身体のできていない小学校では基礎作り、文武両道を心がけて指導してもらいたい。東京ではおおよそ三人に一人の割合で中学受験をするから、このような雰囲気はないし、勉強しなくていいなどという親はまずいないだろう。とにかくこうして根室の小学校では学力競争がない。
(団塊世代の私が小学生の頃は、小学校にブカツはなく、先生たちは放課後補習に熱心だったから、小数の乗除算や分数計算のできない生徒はほとんどいなかった。先生たちは生徒に基礎学力を身につけさせるという本来職務に忠実だった。)

 根室には私立高校もない。道立高校2校があり、全入状態が30年ほども続いている。どちらでもよければ、受験勉強などする必要はない。それどころか勉強をする必要すらないのが実態だし、実際にそういう生徒が増えている。
 こまったことに、"どっちへ行っても高卒だから同じだ"そう言い切る親が小数だがいる。地元へ就職希望の高校生のほとんどに就職先のあった親の時代とは就職状況がまったく違うのに、そういうことすら理解していないのである。
 新聞記事にだって高卒の就職状況の深刻さが時々載っているから、そうした記事にすら関心がないのかもしれない。無知であることは罪が重い。
 困るのは親が言い切るから子どもがまともに受け止め、勉強する気をなくしてしまうことである。毎日ブカツに明け暮れているから、よほど意志の強い生徒でなければ文武両道を貫けないのが実態である。好きなブカツはやるが、辛い勉強(わかれば楽しい勉強)を我慢してできない子どもに育ててしまう。
"先生、勉強しなくたって西高には入れるんでしょう?"
"入れるが、そういうつもりなら塾には来なくていい"
 塾は勉強するところだから。塾が必要な生徒は進学先が根室高校だろうが根室西高校だろうが、勉学の意志のある生徒である。中学生で勉学の意志のない者はニムオロ塾に集う資格がない。勉強しなければならない切羽詰った状況になったときや、勉強したいと切実に思ったときに塾に来ればいい。周りの生徒には迷惑だ、親の身になればお金がもったいないだろう、私のほうは時間が惜しい。誰も得をしない、三方悪しだ。

 子どもを甘やかすと、甘やかしたように子どもは育つ。学力の低い子どもは勉強するのがきついから、逃げ場を探している。そこへ親が助け舟を出す。"根高でも西高でも同じ高校卒だ"、形式論理的には正しいが、それは現実を無視している。その先がまったく違ってしまうからだ。

 甘やかされた子どもはどうなるのか?授業中おしゃべりをする、何度注意しても3分もたてばまたはじめている、きりがないのである。セルフコントロール機能が壊れていると表現すればお分かりいただけるだろう。"我慢力"がない。嫌いなことでもやらなければならないことをやりぬく"辛抱力"が育っていない。当たり前だ、小学校6年間も好き勝手なことだけさせたらそうなる
 そういう生徒をほうっておいたら、レベルの高い本を読むということはないし、使える語彙も小学3年程度のままで、こみいった日本語は理解できず、授業での会話すら成り立たぬ場合が出てくる。
 精神面のどこかの部分の成長が止まってしまうようで、身体の成長と違ってそれは外見では判断がつかないが、少し話してみたら気がつく人は気がついている。そのままにしておいたら就職しても上司の仕事の指示が理解できるとは思えぬ。
 自分の発言すら理解できない状況に遭遇すると悪夢をみる思いがする。周りの生徒があきれて注意するが、本人は意味が理解できない。"自分の言っている日本語わかってるの?"と周りがたしなめる。始末に終えないのは当の本人は分かっているつもりなのである。つまり、自分の発言を客観的に観察できないのだが、これでは国語もろくな点数がとれるはずがない。学力の基盤である日本語力が弱いから、社会も理科も英語も点数がとれない。数学も文章題はほとんどパスだ。こうして学力全般のレベルが下がる(こういう生徒は本を音読させて見ればすぐにわかる)。
 よく考えれば当然のことなのだ。授業中おしゃべりをしてほとんど聞いていないし、おしゃべりの合間にちょっと問題を解くだけだから集中力もほとんど育たない。小学校で毎日繰り返したことは習慣となり、6年間を経てほとんど性格にまでなってしまっている。1年間で直せるのはせいぜい3割程度だろう。1年たっても直らなければ相当重症だと思わなければならぬ。そのまま続けていてはダメだから、塾の指導は"しつけ"を含めて厳しくなる。
 こういう生徒は忘れ物も多い。たとえば問題集をもってこない、音読テキストがカバンの中に入っていない、筆記用具を忘れてくる、ノートをもってこない等々、そして毎回同じ言い訳を繰り返す、要するに生活習慣全般がゆるみきっているのである。
 最近注意をしたときに、大きなため息を二度したあと舌打ちをした生徒がいたので、ebisuは激怒、大声で怒鳴った。
”いまチェッって舌打ちしたな、やる気がないなら帰れ!”
 躾けは大事だ、生徒がやっていいことと悪いことがある。
 怒るときには本気だが、本気で殴れば平手でも大怪我をさせることになるから絶対にやらぬ。無抵抗の弱い者を殴る趣味もない。やるときは軽く拳骨で頭をゴツンとやるのみ、ブレーキを外したら右手は凶器だ。

【問答無用、躾けのしなおし】
 辛抱力のなさは中学生になったからといって自動的に直るものではない。生活習慣を変え、躾け直しをして、辛抱力を育て・鍛えなければ学力は上がらぬ。塾では通常の授業クラスから隔離して徹底的に躾けるしかない。こうして辛抱力のない生徒たちにはebisu先生はしばらくの間"鬼"となる。

【低学力層の実態と教師の責任】
 簡単な会話以外の日本語が理解できないというタイプの生徒たちが各学校に2割程度いる。そういう子供たちは小学校卒業時点で九九が怪しい、加減算の繰り上げ繰り下げが怪しい、ゼロのついた乗除算の位取りが怪しい、小数や分数の四則演算ができないという共通項を抱えている。日本語も基礎計算能力も著しく劣っている。悲しいが、市内の中学校では低学力層がこの数年顕著に増えている。
 
こういう生徒は中学生になってもなかなか成績が向上しない。中学校では逆九九や小数の四則得算を教えることはないからである。小学校も中学校もこうした生徒の存在を知りながら、放課後補習すらしない、これでは仕事の放棄だろう。ある程度の基礎計算能力や日本語能力をつけて卒業させるのが小学校の教師の責任であるが、ほとんどの小学校教師たちがその責任を果たしていない。
 小学校でブカツに異常に熱心になっている親たち、学校で放課後補習をしない教師たち、生活習慣や躾けの問題、そして競争がないことが根室の子どもたちの学力を下げている。

 (基礎学力に欠陥のある生徒たちへは、高校へ入学してからアルファベットから教えたり、小数や分数計算から教えているのが実情である。
 釧路の教育を考える会で誰かが次のような発言した。夜間中学についてだったが、一度中学を卒業した者たちが学びなおすのは教育費の2重支出に当たるからダメだというのがお役所の見解だというのである。教え切れなかった中学校の教師の責任は等閑に付され、生徒だけに自己責任が追及されている
 だが、同じことはアルファベットから教える高校にも言えるのではないだろうか。本来、中学校で学ぶべき事柄を学ばずに、高校で学びなおすというのは二重支出そのもの、違うだろうか?

【高校に入学して初めて知る全国レベルの競争の壁】
 こうして根室では高校入学までは全入だから実質的な競争がない、大学だって選ばなければ全入状態だから勉強せずともレベルにあった偏差値40以下の大学は見つかる。
 しかし、そこそこの偏差値の大学進学を志す者たちは競争にさらされる。高校に入学してから社会の現実=「競争」の世界に放り込まれ、全国区の競争の壁にぶつかる。
 高校へ入学すると根高普通科の生徒は進研ゼミの全国模試を受けるが、平均点は毎年20点台(百点満点)である。中学校では全国一簡単な学力テストで慣らされ、全国レベルを知らないまま全員が高校へ入学してくる。
 根室高校の道内偏差値は41、全道の高校が100校と仮定すれば80番目付近である。客観的にみれば相当低いレベルといわざるを得ない。だから、代ゼミ偏差値だと40~50程度の大学への進学が多くなる。偏差値40前後の大学は卒業しても就職は厳しい。上位17%に当たる偏差値60超の大学への進学は、毎年数名いればいいほうである。
 つまり、高校へ入学した時点ですでに勝負がついてしまっている。全国模試の平均点が根高普通科で20点台というのはそういうことだろう

【それでも戦え!あきらめてはいけない】
 それでもめげずに雄々しく戦ってほしい。君たちの頭脳はパターン解法中心の受験勉強に毒されていないから、受験のエキスパートよりも柔軟な頭脳を保持しており、そこにチャンスがある。辺鄙な田舎だからこそ有利なところがあり、やりようによっては高校3年間の勉強の仕方と大学での勉強次第で逆転できる、だからあきらめてはいけない。

【大学進学率比較】
 ブログ"情熱空間"に道内の都市の進学率が載っていたので紹介しよう。
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/4702269.html
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【新規高卒生の戦力を高めるという発想】
・・・
さて話は変わりまして、道内主要都市の大学進学率(08年)は以下の通りです。
札幌市 53.0%
帯広市 44.9%
北見市 42.3%
旭川市 39.8%
函館市 38.9%
釧路市 32.2%

やはり我が釧路は下位にあるわけですが、このご時勢、この経済状況ですから、今後も釧路の大学進学率はなかなか上がらないものでしょう。実は私、それで一向に構わないと考えています。上記のようなFランク(ボーダーフリー)大学に進学したところで、就職先を見つけることは至難の業。(学年トップクラスの中3生に、学力面で絶対に勝てない!と断言できます)我が家の子どもはまだ小さいのですが、将来、彼らがもしそういった大学への進学を望んだならば、私は即座に却下します。費用対効果、つまり投資として考えた場合に、それが投資に見合った実を結ぶ確率は、限りなくゼロに近いものだからです。なので、「進学などせずに働け!」そう言うことでしょう。

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 根室の高校生たちの大学進学率がどうなっているか気になるだろう。今年の春の実績は次のようになっている。(コメント欄へebisuが書き込んだものを転載する)
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4年生大学進学は根室高校55人、根室西高校1人、合計56人。
卒業生はおおよそ280名(定員320名)で計算すると20%ですね。

おおよそ、毎年18~25%の範囲ではないかとおもわれます。
釧路よりもずいぶん低い。

根室高校普通科の偏差値が41で、旭川農業高校・斜里高(総合)・小樽商業高レベルですから、進学率は偏差値と相関関係が強そうに見えます。
高校の入学偏差値で大学入試の偏差値がほぼ決定してしまっているように見えます。進学先の大学のレベルもやはり同様かと推察します。

あらためて数字を並べて、釧路・根室の学力水準の異常な低さに驚きます。
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  根室の大学進学率はこのリストに示された都市のうち最低の釧路の32.2%をさらに12%も下回っているのである。

【採用する企業側の論理】
 では、大学進学しない80%の生徒たちはどうだろうか?短大や専門学校へ進学する者と就職するものに分かれる。
 ところが、市内への就職希望者数のおおよそ半分程度しか就職先はない。小中高と勉強してこなかった者たちを地元企業が採用するだろうか?そんなことをしていたら、その企業は早晩つぶれることになるだろう。したがって、学力の低い者や勤労意欲の低い者たち、そして特別なコネのない者たちに就職の機会はほとんどないことになる。ここにいたって、まじめに勉強しておけばよかったと後悔するのだろうが、時すでに遅しで、厳しい現実に遭遇することになる

【教育水準を維持するために小中学校で健全な競争を取り戻せ】
 現実社会は競争社会であるやる気のない者たちを全員高校にいれる必要はないし、教える内容の程度を下げてまで卒業させる必要もない。やるべき内容を教え、ついて来れなければ落第・退学でいいではないか。半分が卒業できなくても構わぬ、それぐらい厳しくていいし、そうしなければ高校は生徒のレベルを維持できず、際限のないレベル低下が待っているだけである。

【教育の軽視と人材流出=町の長期的衰退】
 勉学に熱心な生徒たちは高校を卒業して大学へ進学し、そのほとんどが戻ってこない。根室の町が長期衰退し続けているのは教育の軽視と人材流出に原因があるとは言えないだろうか?

【小中高の先生たちのコミュニケーションが必要】
 
小中高の先生たちは根室の低学力の原因と対策について一堂に会して話し合い、議論をネット上に公開してほしい。しかし、市民の教育への関心が高まらないと無理だろう。いまのところ根室市民は教育問題、学力問題にさほどの関心もなさそうにみえる。


【補遺:基礎学力を高めるために小中高で競争が必要】
 ブログ"てんしな?日々"さんの「いすとりゲームと高校・大学全入時代」というタイトルのブログ記事を紹介したい。
 大学卒業あるいは高校卒業まで実質的な競争がない中で育ち、就職という場面で現実の激烈な競争にさらされる。全入で高校生も大学生も平均的な学力が下がってしまったから、採用する企業側は応募してきた学生の基礎学力を確認せざるを得ない。大学生ですら「6+5×3」ができない生徒が多いというのはある食品メーカーの人事担当者の言である。答えはもちろん21だが、足し算を先にやり33と答える学生が多いという。
 学校教育は定員削減を含めて健全な競争を取り戻すべきだという主張のようだ。

http://francesco-clara.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-e56a.html

【このチャンスに徹底的な社会改革をやろう】
 いくら勉強しても救えない部分が大きく残る。個人の努力ではなんともならないことが世の中にはある。私には20世紀末に社会構造が持続不可能なものに変質してしまったように思える。だから持続可能なように社会経済構造を変えなければならない。地球環境と人類が共存するためには経済規模の縮小がどうしても必要だし、何が何でもやらなければならぬ課題だろう
 
いまや就職するものの4割近くが非正規社員であり、これでは結婚も出来ない。大企業とその子会社、関連会社の非正規雇用を法律で20%以下に制限すべきだ。大企業の経営者は非正規雇用を減らし正規雇用を増やす努力をすべきで、それが出来ないような無能な経営者は退け。
 60歳を過ぎたらさっさと退職して若い人たちに道を譲り、ボランティア的な仕事をするというスタイルが標準になってほしい。年金支給を遅らせて60歳を過ぎても現役にしがみつかせたら、その分若い人たちの職場がなくなる。民と官との退職金格差や年金格差も解消すべきだ。他から強制されてするのではなく、自発的に特権を手放すべきだ。経済社会は変えられる。
 東北大震災復興にお金が必要なら他の歳出を削っていくらでも捻出しよう。そうして身を削って財政規模を縮小して累積国債残高を減らそう。無駄や特権はいたるところに見つかるだろう。消費税を増額するなら、増額分はすべて国債残高を減らすために使い、後世の負担を減らせ。
 現役の人たちは意欲のある若い人たちと仕事と所得を分かち合え。生活レベルを30%ほど切り下げて助け合うことが必要だ。若い人たちが不安なく勤労の喜びに浸ることのできる社会作りが求められている。
 勤労意欲があるのに働く場所が見つからない若い人たちがかわいそうだ。小欲自足の世界へ一歩踏み出そう。


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ZAPPER

私見ですが。

将来、(およそ学力を必要とする)就きたい職業に、あとは自分の「覚悟と努力次第」で就ける可能性が格段に高まるのは、中学卒業時点で240点(300点満点の8割)ラインから。
多少は限定されるであろうけれど、進学や就職にさほど困ることが無いのは6~7割(180点~210点)ライン。
ところが、4割(120点)を切ったならば、今のこの厳しい時代、就職できる方が不思議です。
3割(90点)を下回ったなら、正規労働は絶望的。

こういったことは誰も言いませんが、「中学卒業時の学力」がその先の学力・学歴・職業を大きく左右するといっても過言ではない状態があるのが現実です。親の世代とは比較にならないほど厳しい時代。なのにこの低学力モード…。
by ZAPPER (2011-10-23 21:22) 

ebisu

ZAPPERさんへ

仰るとおり、中学卒業時点、つまり高校入試で80%超の得点層が尽きたい職業につける可能性が格段に高いし、転職して所得を上げることも可能でしょう。自由に産業界を横断して泳ぎまわれる可能性が高い。そのためにはどうしても80%超の学力が必要です。
6~7割の得点層が進学や就職にそれほど困らないというのも同意できますね。わたしは26年間業種の異なる民間企業で仕事をしてきましたから、生徒たちをみていて実感できます。
4割を切ったら、高校時代に相当の努力をしない限り正規労働者として仕事をできるかどうかは怪しい、だからこの層の高校生への指導は厳しくなります。鍛え方次第でなんとかなる。
3割を切ったら絶望的というのも昨今の就職状況の厳しさを考えると肯ける線です。言われたことに素直に従い、一生懸命に努力できれば拾ってくれる企業がある。

総じて、「中学卒業時点での基礎学力がその先の学力・学歴・職業を大きく左右」している、その通りだと思います。

わたしは応募してくる1万人の学生を選抜して書類選考で200人に絞り、テストと面接で20人の社員採用という現実を見てきました。
大学卒業時点ではすでに手遅れなのです。成績優秀者が有能であるとは限らない。逆に受験エリートがどうしようもないほど無能である現実もみました。
だから、人生を決定する時期(中高生)の生徒たちを教育してみようという気になりました。ふるさとに戻り私塾を開いた動機の一つです。
by ebisu (2011-10-23 21:54) 

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