#1696 ブカツは高校メイン(1):理想の運動部 Oct. 24 , 2011 [73.ブカツ]
ブカツを指導しておられる先生たちの多くはこれでいいのだろうかと悩んでおられるのではないか?そういう先生たちの参考になれば幸いである。
基礎作りは「入力」重視でアウトプットは後回し。これは国語や英語の指導にも通じる。基礎を造りセンスを磨くためには大量のインプットが不可欠なのである。深く突き詰めるとブカツの指導は学科の指導に通じる。浅いところを泳ぎ回っていたらいつまでたっても気がつかぬ領域だろうとはebisuの感想。
ブログ"大学受験と高校受験と教育ブログ"より
「ブカツは高校メイン(1):理想の運動部」全文掲載
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えー、前稿(http://maruta.be/gakusyu/130)にて、だいぶきわどいことをご提言してしまいました。
実例が私の例だけでは納得もされないでしょうから、という理由ばかりでなく、ぜひとも理解していただきたい実例がもうひとつあるので、追伸ということでお話いたします。
市内のある中学校に、すばらしい指導者(柔道部顧問)がいます。
彼は(友人です。格闘技仲間で、寝技では私は一度も勝てませんでした)、人間としても立派で、子どもたちの信頼も篤く、しかも嫁さんも美人という(笑)、ちょっとしゃくなくらいのギフト(たまもの)をもっています。
大学生時代は、猛烈な稽古をして、格闘技術を積み上げました。たぶん私程度の比ではありません。
その彼の指導方法です。
某中学校柔道部の稽古メニュー
1 準備運動(前転などのマット運動的運動、受け身、倒立歩行、準備体操、ストレッチ)
2 技術説明
3 30秒打ち込み 40本(技の確認。40秒に10本以上打ち込み:普通のペース)
4 10秒打ち込み 20本(反射能力とスピードを重視して。10秒に10本以上打ち込めるように)
5 乱取り(寝技3分3本、立ち技3分7本)
6 スーパーサーキット(大学レスリング部の基礎体力づくりメニュー……私がやったらすぐ死にます)
7 試合
(2時間くらいで全部終了。午後6時前に生徒は下校できます)
メニュー自体は、全国の柔道部の練習と大差ありません。一度東京に行ったとき、講道館の練習を午後4時30分の春日少年団から、一線級がやる9時くらいまで見ましたが、春日少年団の稽古メニューも同じようなものでした。
では上のメニューの質の、何が違うか。
まず、乱取り回数が異常に少ない。たいていの柔道部、柔道少年団ではこの倍から3倍やっています。
逆に、打ち込み回数が異常に多い。なにせできる者は30秒打ち込みと10秒打ち込みで、600回以上の技の反復をやることになります。
普通の柔道部、柔道少年団が乱取り(スパーリング)回数が多いのは、試合に近い形(アウトプット)を数多くやればそれに比例して力が伸びるという誤解を指導者の多くがもっているからです。特に小中学生のときは、技がまだまだ未熟な時期ですが、このときに試合に近いこと、アウトプット中心にやってしまうと、「技が崩れる」現象が起きます。スポーツの技術は「技を作る」「技を使う」という大きく二つの段階があり、スパーリングや試合をやると「技が崩れる」ので、それを修正するため「技を作る」ことを頻繁に行わねばならない。そうしながら試合でも使える完成度の技ができたときに「技を使う」ことが完成します。
このメカニズムを理解している指導者は、ほぼ皆無。
彼は理解しているのです。
しかも乱取りを軽視しているわけでなく、密度を濃くしている。具体的には、乱取りを勝手にやらせっぱなしにしないで、まずい動きがあればその組に対してすぐに的確な指導を行う。つまり乱取りは根性養成の場ではなく、技術獲得の場になっている。
普通の道場が乱取りを多くする理由としては、スタミナ作りを兼ねる場合があります。(私はあまり感心しませんが)
その点で、乱取りが少ないとスタミナづくりができないのでは、と思われるかも知れませんが、そこを補う(というよりは本来この形なのですが)のが、スーパーサーキットです。極めて短時間に、ものすごい密度の体力作り運動をします。私はやる気にもなりません。やったらすぐ倒れるだろうと思っています。このため、「厳しい練習」を短時間行い、「脈拍を上げ」「俊敏性を向上させ」「使える筋肉を作り」それらの結果「スタミナとパワーを同時に獲得」が可能となっています。
整理体操がないのが気になりますが、ここではふれません。
さて、こういう理詰めなメニューを組んで指導している彼なので、さぞや現場での具体的な練習方法も論理的か、というととんでもない。
選手に向き合うときは、もう、往年のスポコンマンガも裸足で逃げ出すほどのアナログ指導です。
「いいか、大腰(技の名前)は、腰から入ってな」
と、生徒の目の前で技を実演します。
「はい」
生徒は次にどんな技術指導があるか緊張して見守ります。
「魂で投げるんだ!」
ぜんぜん技術指導じゃねえ~
別の所ではきっちりと理詰め。集中的に柔道を研究した私でも文句のつけようのない技術指導をします。しかし、生徒に気持ちを与えなければならない(つまりメンタル強化の)場合は、「魂の指導」を行う。
私がこれまで数々見てきたスポーツ、武道、格闘技の指導者たちの中で、彼はダントツで、一番です。
柔道が本職だから、こういう指導をできたわけではありません。彼は別の格闘技出身です。そして私は見ています。彼が釧路への赴任が決まり、柔道部の顧問を引き受けることになった後、柔道のうまい人にお願いして柔道を習っていたことを。恥も外聞もなく、別の格闘技ならトップのくせに、柔道着を着てなんども負けながらも必死に技術をあるいは技術指導の方法を吸収していました。
ちなみにこの中学校は、柔道部の全員が、柔道未経験者でした。体も大きい者はほとんどいません。それでも主力が3年生のときに、市内団体優勝をした上に、全道ベスト8に入りました。
過度な練習も、優秀な経験者も必要ない。指導者の本当の意味での熱意と合理的な練習により、成果は上げられるのです。
参照
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