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#1628 夏季講習:統計学 Aug. 16, 2011 [62. 授業風景]

 このところ夏ばて気味でブログの更新が億劫になりペースを落としている。

 さて、学習塾で統計学など教えるはずがないのだが、よんどころない事情があってちょっとだけ教えることになった。
 道内の医療系大学へ進学した生徒が授業を聞いていてさっぱりわからないから、帰ったときに教えてくれますかとメールで「お願い」が来ていた。
  テキストは『基礎統計学Ⅰ 統計学入門』『計測における誤差解析入門』の2冊である。前期だけの授業でこの2冊を理解させようというのだから、かなりハードな授業であることは想像に難くない。

 わたしも大学1年のときに統計学の授業をとった、あまりわかったほうではない。その後社会人となってから経営改善のために経営分析を担当した時期があり推測統計学をひととおり勉強はした。1970年代終わりの頃だっただろう、科学技術用のプログラマブル・カリュキュレータHP-97とHP-67を使ってプログラミングをして経営分析や推計計算をした。通常の経営分析指標の他に標準偏差や線形回帰を多用した。統計学は便利のいいツールだ。パソコンが強力になった90年代初頭からはこの手の仕事はEXCELの関数機能で処理できるようになった。

 生徒が「東大で使っているテキスト」というので中を見てみたら、数式が多い。数学が得意な生徒ではなかったから、これでは数式の奥にある考えや意味が理解できるはずもない。
 だが、数学が得意な生徒には歯ごたえのあるテキストだろう。もちろん読むだけでは理解できないから、紙と鉛筆で問題をひとつひとつ確認しながら読み進むべき本である(根室高校だと数学の成績が学年5番以内でもなかなか難しいかもしれない)。
 数式が理解できて、その先に意味の理解がある。数式を離れた統計学などありはしないのだが、数学畑の人の書く統計学の本は2種類に分かれる。数式を多用した教科書と、中学生程度の数式で説明したものとである。真ん中がいいのだが、案外少ない(翻訳書でバランスのいいものがひとつ書棚にあった)。

 前期試験の過去問を4年分ほど持って来ていたので、それを見て先ず基礎を理解してから問題の意味解説をしようと決めた。
 正規分布を中心に数式とのかかわりを説明し、サンプリングと母集団との関係を統計用語を使いながら説明する。これくらいのことはすぐにわかる。それから、過去問の解説をやさしい三分の一に限定して行った。

 その先は専門用語の意味をしっかり理解しなくては解けないから、やさしく解説した本を何冊か持ってくる約束をした。
 家に帰ってみたら、最近の本が1冊と古いものが4冊あったので、それを貸してあげることに決めた。
 そして2日目である。過去問を3題解説しながら、該当部分を5冊の本で調べるように言って自力で調べさせた。あとはところどころ質問に応えるだけでいい。実際に、仮説検定の辺りはきっちり基礎的な理解を固めないとなにをやっているか意味がつかめないし、自力で坂を登らなければ試験問題を解けるようにはならない。わたしはときどき生徒の質問に答えるのみだ。

 ようするに勉強の仕方を伝えたかった。テキストが難しければ、数式の羅列ではない専門書を探すことだ。自分に理解できるテキストを探すというのも大事なことだ。
 わたしは何か専門をやるときには、学説の対立している二人の学者の本を読むことにしている。高校時代に会計学で沼田嘉穂と黒澤清という学説の対立する大先生の本を並べて読んだ。中央経済社の公認会計士2次試験講座シシーズの「経済学」を読みながら、高校の図書室にあった『資本論』を読んだ。『資本論』は当時のわたしの学力では難解で、読み進むうちに「迷子」にはなったが、ケインズに代表される近代経済学と古典派の頂点であるマルクス『資本論』を同時に読むことで得たものは小さくない。私は高校生のこの時期に説の異なるものを読み、相対的な視座を確保して自分の頭で考えることの大切さを学んだと言えるだろう。
 どのような理論にも難点はある。理論にはそれが適用できる固有の場があり限界がある、それゆえ学問には相対的な視点が必要だ。

 話しを元へ戻そう。あとは自分で調べてわからないところを質問すればいい。そういう生徒の質問には大半の先生が丁寧に答えてくれるし、苦手な科目だってやり方次第で得意科目に変わるから、70~80点はとれるようになる。

 塾先生はいつまでも教えてやることができない。ひとりで調べてきちんと勉強していけるような基礎学力をつけることと、勉強の仕方を教えることができるのみだ。

 高校時代とはいきなりレベルの違うテキストに驚いたようだが、高校時代のように丁寧な授業はむしろ少ない。それが大学の勉強だ、がんばってほしい。

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