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#1618 武士と町人と日本文化  Aug. 8, 2011 [A4. 経済学ノート]

 ニムオロ塾は5日から金比羅さんのお祭りが終わる11日まで1週間のお休みである。
 暇に飽かして好きな時代小説を読んだ。
 山本周五郎著『ひとごろし』『楽天旅日記』
 6月に『酔いどれ次郎八』『松風の門』を読んでから山本周五郎のファンになった。

 山本周五郎の作品には武士の生き様や町人の生き様がよく描かれている。江戸情緒の書ける最後の作家だったのではあるまいか?
 『酔いどれ次郎八』には「江戸の土圭師」という時計職人の話しが載っている。江戸時代の庶民が仕事をどのように考えていたのかよくわかる。古典落語の長屋の世界に住む職人が主人公だ。幸田露伴の『五重塔』も職人(大工)の話だった。
 これらの職人たちはスミスやリカードやマルクスの考えていた労働者とは別の世界に生きている。ヨーロッパの経済学者たちの労働概念は奴隷労働がベースになっている。否定されるべきものとして扱われる。
 "工場労働"と職人の仕事はまるで別物である。職人は日々技を磨き、仕事の手を一切抜かない。そのときやりうる最高の仕事をする。職人仕事は自己実現そのものである。腕のよい職人はみな自分の道具を持ち手入れを怠らない。「弘法は筆を選ばず」と言われているが事実は逆で、自分の使う筆を工夫を凝らしてたくさんつくった。道具や材料を工夫しなければいい字は書けぬ。
 日本人は工場労働者になってもほうっておけば自然にその工場で「職人」となってしまう。自分のやっている仕事の"改善"に夢中になるのだ。自分が使う道具や機械の手入れも徹底しておこなう。
 オヤジは落下傘部隊の隊員だったので、戦後もっていた落下傘部隊関係の写真の大半を焼却処分した。秘密部隊だったからJHQから何か追求があることを畏れたものらしい。だが、十数枚だけ残っている。その中の一枚は機関銃を構えている写真である。軍服はずいぶん立派なものを着ており、機関銃は写真の中でもそれとわかるほど手入れが行き届き黒光りしている。
 大工が鉋の刃を研ぐのも、軍人が武器の手入れを怠らないのも同じ精神から出ているように思える。誰かに言われてするのではなくその道具の最高の性能を発揮するには普段の手入れが肝心なのだ。手入れの悪い道具ではいい仕事ができるはずがない。
 日本文化は外国から入ってくるものをいつも溶かし込んで日本独特のものに変えてしまう。縄文以来1万年の歴史をもつ文化と伝統は海のようなものだ。いろんな川から水が流れ込んできても変わらずある。

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