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#1392 医療四方山裏話(6) Feb. 23, 2011 [40. 医療四方山話]

 医者から世間を見ると世間がどのように見えるのか、本音でおおらかに語ってくれている。患者や一般市民は医者がどのように世の中を見ているのかを知る機会は少ない。そういう意味では貴重なコメントである。私は、医者が世間をどのように見ているかをその一例を知った。私はこのドクターのコメントを楽しんでいる、お返しに私のほうも少し情報を提供しておきたい。

 (東証一部上場企業のラインの部長職の年収を書いておきたい。十数年前のことになるが現在でもあまり変わらないだろう。おおよそ1200~1500万円の範囲内に80%以上が収まると思う。日産自動車を除いて、会社法上の取締役は2000~3000万円がほとんどだろう。株主代表訴訟があれば数十億円単位の、ときに数百億円単位の訴訟になるからリスクは大きいし、日頃からリスク管理は自己責任である。そういう意味では部長職辺りが危険が少なくて職務上の権限がそこそこあり、ウマミがある。
 会社法上の責任が重いのでコンプライアンスが声高に問題にされる。ここをきちんとしておかないと取締役は責任を問われることがある。金額の大きさにおいて医療訴訟とは比べものにならない責任を上場企業の取締役は負っている。どなたか詳しい方がコメント欄へ書きこんでいただけるとありがたい。
 お互いの事情を知った上でその基盤の上に新しい何かが生まれるのだろうと私は確信している。)


「医者は金持ちでは無い!」と言う思い出話を一つ。

 今から20数年前、オホーツクに面したとある病院に勤務していた時の事です。キャンピングカーが好きな小生は、当時横浜の自動車会社が作っていたトラックキャンパー(イスズ・ロデオのトラックの後ろに大きなキャビンをくっつけた)を無理して買いました。確か500万前後だったと思います。勿論車はそれ1台しか有りませんので、通勤や趣味の釣りに張り切って使っておりました。
 そのキャンピングカーは本などで徹底的に研究手した後、電話でやり取りして横浜の会社に発注。或る日向こうのセールスが自身で北海道のオホーツクまで陸送して来ました。中々感じの良い40台位の方でしたが、半分冗談で「お宅のお客さんの中では僕なんか一番貧乏なんでしょうね」と振ってみたところ、しばらく何か考えていたそのセールスの方は徐に口を開くと「はっきり申し上げれば、その通りですね。うちからキャンピングカーを買われるお客さんでローンを組まれたのは先生が最初です!」。何と皆さんは現金なんだそうです。思い起こせば当時の日本はまだまだバブルの炎が燃え盛っていた頃です。小生のように何とか頑張って頭金を貯めてキャンピングカーを買う人間など居ない・・・と言うわけです。「皆さん、大体が適当に買われています。金が余っているから一度キャンピングカーに乗ってみるか・・・のノリですね。我々が食っていけるのはお客さんの御蔭ですから大きな声では言えませんが、殆どが土地を転がされる関係の方やキャバレーやパチンコ業界のオーナーですね。先生の様なサラリーマンの方は珍しいです。会社に電話が掛かってきて「「買ってやるから〇〇を持って来てくれ」。車を持ってお宅に伺うと、何やら押入れから新聞紙で包んだ四角い物を持って来ます。包みを開けると中から1万円札の束がぎっしり。「幾らや?」「諸経費込みで950です」「なら車の変わりにその包み持ってけ。丁度1000有るから残りは駄賃や!」

 それから数年後札幌に戻りそろそろ違うキャンピングカーに目移りがし出した頃、オホーツクの病院時代のパラメディカルから電話が来ました。「札幌に兄貴が住んでいて、兄貴から貰うアメ車の4WDをこれから引き取りに行くので先生も御一緒しませんか。兄貴の所は外車だらけでキャンピングカーも持っているから、もしかしたら先生が気に入ったら兄貴が安く売ってくれるかも知れませんよ」。直ぐにその話に飛び付きました。
 8月の30度を越えた真夏日、2人で高級住宅街の「宮の森」の中でも更に一等地にある奴さんの兄貴の家に向かいました。路地の坂を歩いて行くと「あそこが兄貴の家です」。見ると何やら真っ黒な塊が路上に蹲っています。近付いて見ると、それは何と黒光りする宇宙船の様なスポーツカーでした。「何だこの車?」「フェラーリのテッサロッサです」「あんたの兄貴、こんなの乗ってるの!?」「まだ良い方ですよ(笑)」。そこへ来客の気配を感じた奴さんの兄貴が玄関から出てきました。ジーパンに作業着の中肉中背の40台後半位の男です。3人で玄関先で立ち話している所へ、遠くから2人連れの若者が歩いて来て、車の前に立ち止まり何やら2人で興奮しています。オーナーが「何だ、お前ら?」。「あのー、ちょっと聞いても良いですか?」「何だ?」「これっ、テッサロッサですよね!」「ああ、そうだ」「何に使うんですか?」。オーナーは苦笑して「馬鹿だな、お前も。車なんだから走らせるに決まってるだろう」「やっぱり・・・そうですよね。もう少し見ていて良いですか?」「構わんが、触るなよ!」。
 小生たちは主の案内で豪邸の中に入りました。余り詳しく書くと場合に依っては個人が特定される恐れがあるので書きませんが、兎に角小生が今まで中に入った事がある家の中で一番の平屋の豪邸でした。玄関の横に大きなガレージが有り、外車が4台入っています。先程のフェラーリは入れる場所が無いので路上に置いてあるのだそうで・・・いやはや何とも。オーナーが所有しているフォードのバンを特注で4WDに改造したキャンピングカーが札樽国道沿いの外車ディーラーに預けてあるから行こうと言う事になり、3人でオーナーの凄いベンツで出掛けました。途中車に関する話がオーナーの口から出ます。「これから行く所においてあるFORD、あれは900万位するんだが、ディーラーの社長が欲しがってるんだよな。手持ちのリンカーンと交換して欲しいと言われてんだが、リンカーンなんて2台も要らん」。弟の話ではロールスロイス、リンカーン・コンチネンタル、キャデラック、ランボルギーニ、フェラーリ、アストンマーチン、ブロンコ、ベンツ、アルファロメオ、他は度忘れしました。全部で15台、それもスーパーカーと呼ばれる車が大半で、個人の車だけで世界のスーパーカー・ショーが開けそうです。
 目的の外車ディーラーに着くと確かにFORDの大きなフルサイズバンが置いてありました。中に入って見ると小さなバスユニットまで付いています。弟の話では、兄貴の会社(名前は伏せます)の仕事の関係でちょくちょく使っているようで、モデルの撮影などの際に着替えルーム代わりだとか。名前も挙げれば皆さん知っている有名な俳優もちょくちょく使っているそうです。オーナーは小生に向き直ると「どうだ、気に入ったか?」「ええ、まあ・・・」「お前も変な奴だな。フェラーリには全く興味が無いくせに、こんな車が良いんだ(笑)」「スポーツカーなんて熨斗を付けられても要りません!」。しばらく考えていたオーナー氏。「分かった。お前に譲ってやる!弟が色々世話に成っているようだから、600で手を打つ」「あのー、600万ですか?「そうだ、600ぽっきりで良い!」。小生は急に600万の話が飛び出して来て頭の中が真っ白。「どうしたんだ。600万までまけてやるんだぞ」「いや、お気持ちは有り難いんですが。
 今の車を頭金にして残りはローンで何とか・・・」「おいおい、俺の前で下取りだとかローンだとかそんなくだらん話は止めてくれ。兎に角600持って来れば譲ってやる! それとも何か。お前600のはした金もどうにも成らんのか?」。実際その通りなので小生は言葉が出て来ません。「聞けばお前、医者だって?」「ええ、まあそうです・・・」「もしかしたら夜中に呼ばれて仕事してんだよな」「ええ・・・」「お前、給料はどの位なんだ?」「大体1×××位です」「何だ、お前。大の男が夜中まで仕事してたったそれぽっちなのか。お前、金玉付いてんのか?」
 そりゃあ何ヘクタールの土地を転売して一度に何億円も利ザヤが転がり込む人達から見れば、小生なんかゴミでしょうが・・・しかし生涯であれ程馬鹿にされた事は未だかって有りません。結局小生がはっきりとした意思表示をしなかった(出来なかった)ため、FORDに不満があると勘違いしたオーナーが違うキャンピングカーの話を始めました。「東京の社長の事務所にベンツのキャンピングカーがあるんだが、それで良ければ300位で良いぞ!」「えっ、あのベンツの!?」。当時ダークブラウンのシックなベンツのキャンピングカーがありました。先ず東京でもあまりお目に掛かれない高級車です。それが300万で・・・FORDを諦めた小生もベンツのキャンパーの話にすっかり喜んでオホーツクまで帰って来ました。
しかしその後オーナーの弟からベンツの話がなしの礫。或る日思い切って尋ねてみると「あの話ね。何でも兄貴の話じゃ、先生にと思っていたところ、向こうの事務所の若い奴で1年間遅刻しなかった真面目な社員がいたんで、その褒美に社長があの車やっちゃったんだそうですよ」・・・・。
何とまあ、1年間無遅刻無欠勤と言う(当たり前)だけでで数百万もするキャンピングカーを与えてしまう・・・つまり他の社員は皆もっといい加減・・・だったんですね。何だかその会社の中身が透けて見えるような話です。そして当時は、キャンピングカーは今とは違いバブルの金余りの飾りにしか過ぎなかったわけです。

 奇しくも大好きなキャンピングカーに映し出されたのは「金持ちで無い」自分の姿でした。しかしだからと言って、医師である事に後悔はしていません。真面目にやっていれば何とか食べて行けます。そして時々ですが患者さんから感謝されます。これは金には代えられない幸せかも知れません。また医師の良いところは、定年が関係有りません。探せば仕事はあちらこちらに有ります。まあ、本来なら普段真面目に貯金して或る程度の歳(世間での定年と同じ位)には引退して残りの人生をのんびり好きに過ごすのが理想でしたが・・・今もって貧乏暇無しの生活です(笑)。
    by 医療四方山裏話 (2011-02-22 16:48)

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