SSブログ

大きすぎる寒暖の差:大雪山系トムラウシ山で遭難 [22. 人物シリーズ]

大きすぎる寒暖の差:大雪山系トムラウシ山で遭難

 今夜はマツカワ(高級カレイ)の刺身で日本酒をいただいた。オヒョウに比べると身がぷりぷりして脂が乗っている。
 鰈科の高級魚といっても、そこは根室のこと、たったの298円だそうだ。石鯛にも似た食感で、東京なら4000円くらいの値段がつきそうだ。
 根室はいいところだ、新鮮な魚が安くて美味い。マツカワは稚魚を養殖して放流するが、沿岸で生育して定着するようだ。北海道では各地でマツカワの養殖放流が盛んになった。とてもありがたい。根室でも風連湖付近でやっているのではないだろうか。養殖に携わっている関係者とこの魚を獲ってくれた漁師さんに感謝、あ、魚市場と小売店(コープサッポロ)にも。お陰で今夜も旨い魚で、美味しい酒が呑めた。「北の勝」の「夏用冷用酒」が一月ほど前に発売されている。

 さて、根室の昨日の最高気温は12度、今日はお昼に26度だった。街で見かけたほとんどの人が半袖姿である。たった一日で最高気温に14度の差があった。今日なら浴衣姿でも寒くなかっただろう。夜でも気温は15度近いが、今夜もシャンコ♪シャンコシャンコ♪ッシャシャンコシャン♪は聞こえてこない。
 赤い提灯に彩られた緑町商店街の上空を明かりを消した銀河鉄道の車両が警笛を鳴らしながら蛇行し駆け上がるのがみえた。大きな角をつけた鹿が数頭、列車の前を横切ったようだっだ。今夜の乗客は誰だったのだろう。このところ死亡通知の折込が2枚重なって入る日が多い。

 前置きはこれくらいにして本題に入ろう。トムラウシ山(2141m)の山頂付近で60歳前後の登山客が20人遭難しているが、まだ救助がすんでいない。ガイドが4人ついていたのになぜこのような事態を引き起こしたのだろう?自然の変化が予測を超えていたということだろうか。山頂は岩山であるが積雪はない。それにも関わらず20人もが遭難した。2人がすでに意識不明で4人が絶望的とみられている。
 (17日10時のニュースでは九人死亡が伝えられた。登山者は薄手の雨具を着ていたが、あれで2~4度くらいの気温で雨と強風にさらされたら遭難は当然だ。テレビの救助映像を見てさもありなんと思った)
 平地の根室ですら昨晩は8度ほどしかなかったのだから、2141mの山頂付近は4度くらいではなかっただろうか。記事では気温8度となっているが、たぶん最低気温ではなくて昼の気温だろう。山頂付近は20~25mの強風が吹いていて下山できなかったという。夜になって横殴りの雨に見舞われた。強風下でのテント設営はベテランでも大仕事だろう。経験の少ないものには不可能だ。ましてや山頂付近では広げたとたんに飛ばされてしまう。岩山である山頂付近で冷たい雨と強風に遭い、まごまごするうちに冷え切った体は思うように動かなくなる。冷たい雨も風も一向にやまない、体温が低下し体力が急激に失われていく。気の毒というほかない。
 高齢の登山客だったからなおさらのこと体温を奪われるスピードが速かったのだろう。体温を奪われると体力が急に落ちる。これは経験しないとわからない種類の現象である。水の中ではいっそう極端にあらわれる。海や湖で泳いでいて水温が数度低い流れに出遭うと、とたんに身体が動かなくなる。急激に体温が奪われてしびれてしまう。
 夏でも北海道で2000m前後の山に登るときは防寒対策は十分にしておきたい。東京付近のそのクラスの山とは状況がまるで違うので、1000mプラスして3000m級の山を想定すべきだろう。
 山は神からの素晴らしい贈り物、そしてときに魔物の棲家へと変わる。体力のない者や準備のない者には容赦がない。

<富士山頂、赤い大鳥居前での三番勝負の思い出>
 友人に誘われて8月に富士山に登ったことがあったが、2000mの5合目付近は30度近かったのでタンクトップに半ズボンの登山者もいた。ところが8合目を過ぎる辺りから、気温は4度、風は強い、冬の防寒着が必要だった。幸いもっていたので凌げたが、高い山で冷たい強風に吹かれたら、体温は見る間に奪われ、体力は著しく消耗した。風の冷たさは予想をはるかに超えていた。
 下山は須走コースで、軽石混じりの斜面を半ば駆け下りるように2時間ほどでついてしまった。登山靴は軽石にこすられて傷だらけだった。須走コースを降りるなら新しい登山靴は履いていかないほうがいい。8合目を過ぎる辺りから顕著に気温が上がっていった。頂上は冬、5合目はやはり真夏だった。着いて水を飲みながら、周りの半袖姿の人をみてほっとした。「あ~あ、夏だ」

 それにしても、山頂のトイレ十数基から300mほども線を引くように垂れ流された汚物にはげんなりした。いまはバイオトイレがあるので、あのような光景はなくなったのだろう。霊峰富士はありがたみを増したに違いない。

 登山は夏山といえども万が一の用意を怠ってはならない。高い山や北海道の2000mクラスの山へ登るときには防寒は十分すぎるくらいの装備をすべきだ。山をなめてはいけないし、60前後になったら、自分の体力を過信してはいけない。身体は正直だ。
 私にはもう登山は無理だ。頂上の赤い鳥居の辺りでお鉢(噴火口)周りをする人を遠目に眺めながら指した将棋、気持ちよかったな。日本一の富士山頂に誘ってヘボ将棋に付き合ってくれた群馬県川場村出身の心根の優しい友に感謝。サザンオールスターの桑田ケイスケに似ていたな。

*毎日ニュース
  http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090717k0000m040103000c.html

遭難:北海道・大雪山系で2団体 2人意識不明か

 
トムラウシ山と美瑛岳の位置

 16日午後3時55分ごろ、北海道新得町の大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で登山中の男性から「山頂付近でツアー客やガイド十数人が強風のため動けなくなっているので救助してほしい」と110番があった。登山者は計19人で、8人が山頂に取り残されているとみられる。さらに同日午後5時50分ごろ、同山系の美瑛岳(2052メートル)でも、茨城県つくば市の登山ツアー会社から道警に「登山中の6人のうち、女性ツアー客1人が低体温症で動けなくなったようだ」と連絡があった。道警などが救助に向かっている。

 道警によると、トムラウシ山の登山者は、宮城1人▽静岡2人▽愛知5人▽岐阜1人▽広島4人▽山口1人▽岡山1人--の50~60代の15人(男性5人、女性10人)と、付き添いの男性ガイド4人。ツアーは東京都千代田区の登山ツアー会社「アミューズ・トラベル」が企画した。14日に旭岳から入山。白雲岳、忠別岳などの大雪山系の尾根を縦断し、16日にトムラウシ山から下山する予定だった。

 道警によると、山頂付近で数人が強風や寒さのため動けなくなり、まず3人が5合目まで下山して110番した。その後、山頂に残っているガイドの男性からツアー会社に「さらに8人が下山した。8人がまだ山頂に残っているが、このうち4人ぐらいが駄目かもしれない」という内容のメールが届いたという。また、山頂に残っているメンバーが携帯電話で道警に対し、「山頂にいる2人が意識不明になっている」と説明したという。

 道警はヘリコプターを飛ばしたが、悪天候のため、救助はできず、道警救助隊員がトムラウシ山の登山口に向かった。

 美瑛岳の登山者は、兵庫県姫路市の56歳と64歳の女性2人と埼玉県草加市の女性1人に男性ガイド3人を加えた6人。15~19日にかけて、十勝連峰を縦断する予定で、占冠村トマムから入山し、テントを張りながら、十勝岳を経由し、美瑛岳に向かっていたという。

 美瑛岳にいる男性ガイドから登山ツアー会社「オフィスコンパス」に対し、携帯電話で女性の異変を知らせる連絡があったという。

 釧路地方気象台帯広測候所によると、16日のトムラウシ山山頂付近の天候は、低い雲がかかっていたものの、晴れ。風速20~25メートルの西よりの風が吹いており、気温は平年並みの8度ほどだったとみられるという。

**産経ニュース
 
http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/090717/dst0907170043000-n1.htm

***<18日朝8時のNHKラジオニュース>
 ツアー客は次々に体力を失いばらばらになって取り残されて死んでいった。その事実から、天候や天候の変化に対する判断でツアーガイドにミスがあったのではないかとして、警察は業務上過失致死容疑で捜査をするという。
 さて、管轄はどちらだろう。遭難事故の起きた北海道警かツアー会社アミューズトラベル本社のある東京を管轄する警視庁のどちらだろう?

 お昼のニュースによれば、ガイド二人は今度のトムラウシ・コースは初めてだったという。ツアー客へ防寒対策をするように説明したというが、救助された人を見る限り雨具は着ていたが、防寒具ではないように見えた。
 プロのガイドなら客の装備のチェックも仕事のうちに入っているだろう。どんな仕事も基本のところは手抜きしてはならないことに気づかされる。
 何かある度に他人事と思わずに、わが仕事は大丈夫かと顧みる。
   「他人の振り見てわが振り直せ」


 2009年7月17日 ebisu-blog#655
  総閲覧数:129,896/600 days(7月17日0時00分)
 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0