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「事案」と「事件」:言葉にみえる官民格差 [82.言葉のアンテナ]

「事案」と「事件」:言葉にみえる官民格差

 女性から財布をひったくったとして、岡山県警岡山中央署は4日、愛媛県警松山南署巡査部長、XX容疑者(29)を窃盗の疑いで現行犯逮捕したと発表した。岡山中央署は、XX容疑者が「間違いありません」と容疑を認めている、と説明している。

 岡山中央署によると、4日午後7時50分ごろ、岡山市中区森下町の路上で、買い物に行こうと歩いていた同市内の女性(75)の背後から徒歩で近づき、女性が胸に両手で抱えていた財布をひったくった疑いが持たれている。財布には現金約1万円とクレジットカードが入っていたという。

 近くを自転車で通りかかった私立高校の男子生徒2人が、女性の「どろぼう」という叫び声を聞き、走って逃げるXX容疑者を自転車で約250メートル追跡。男子生徒らが前後を自転車で挟み込むと、XX容疑者は「もう逃げん、逃げん」と言い、2人に奪った財布を差し出したという。生徒の1人が携帯電話で110番通報し、岡山中央署員が駆けつけるまでの間、XX容疑者は観念した様子でおとなしかったという。

 愛媛県警によると、XX容疑者は松山南署の刑事1課に所属。数日前から無断欠勤していたという。YY警務部長は「本県の警察官が窃盗事件を起こしたことは極めて遺憾で、被害者や関係者に深くおわびする。岡山県警の捜査状況を踏まえ厳正に対処する」とコメントした。  (朝日新聞社)
 http://www.asahi.com/national/update/0605/OSK200906040117.html?ref=rss

 気になったのはテレビで見た愛媛県警のコメントである。引用記事にはないが、「まことに遺憾な事案」と発言した。引ったくりは犯罪である。一般に、公務員の犯罪は身内が言うときには「事案」という言葉を使う。一般人の常識からするとヘンな用法である。

 広辞苑を引くと「事案」は「(処理の対象とするしないに関わらず)問題になっている事柄そのもの」と定義されている。案件と同義とある。犯罪の匂いのない言葉である。中高生売春を援助交際というのと似ている。

 警察の裏金問題でもやはり「事案」という言葉が使われた。社会保険庁の年金保険料横領でも「事案」だった。
 犯罪にも関わらず「処理の対象とするのかしないのか」すら判然としない言葉を選択するのは、身内の犯罪は処分すらしたくないという意識があるからだろうか。だとしたら事実を精確に表現しているのかもしれないが・・・
 なかなか頭のよい人がいるようだ。

 民間人が犯罪を犯せばそれは「事件」という言葉を使う。けっして「事案」などとは言わない。警察も厚生労働省も、言葉の使い方を改めるべきだろう。刑事犯罪は「事案」ではない、「事件」である。

*ちなみに、広辞苑によれば、「事件」は「できごと。ことがら。もめごと。」とあった。
 2009年6月5日 ebisu-blog#602
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