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「お付き合いさせていただいています」勘太郎 [82.言葉のアンテナ]

「お付き合いさせていただいています」勘太郎

 中村勘太郎が前田愛との交際を記者に問われて答えた言葉である。こういう言い回しは最近多い。

「させていただいて」は助動詞「させ」と「~してもらうの」謙譲語の「いただく」からなっている。「させ」はもともと使役の助動詞であったが、権力者が「~させる」意味から権力者に対する尊敬の意味が出てきたと受験参考書にはある。使役の対象が「させ」の前になければ尊敬であると書いてあった。

 いまはご結婚されている都庁の職員が結婚前に「紀宮様とお付き合いさせていただいています」というならよくわかる。皇族紀宮に対する尊敬語や謙譲語は自然な言い方となる。

 しかし、中村勘太郎の交際相手、前田愛は皇族ではない。前田愛に対する尊敬語であり、謙譲語ととれば文法上は誤用となるだろう。
 しかし、記者の背後にいる視聴者に対する、尊敬や謙譲だとすると辻褄は合う。むしろ、こういう用法のほうが多くなってきたのではないだろうか。
 助動詞「させ」が元々は使役の意味で使われてきたものが尊敬の意味をもつようになったように、話している当事者への尊敬や謙譲ではなくて、記者の背後にいる視聴者への尊敬や謙譲の意味をもつように変わりつつあるのだろう。

 言葉はこころを表現する道具の一つである。中村勘太郎には視聴者(=お客様)は「神様」という意識があると假定してみる。客商売には当たり前の前提条件である。歌舞伎役者として潜在的なお客様を大切にするという至極健全なこころの在り方だが、そうしたこころが言葉づかいに表れたと素直に受け止めたい。 

 2009年1月7日 ebisu-blog#478
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