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迷走する米国(2):2度目のビッグスリー公聴会 [91.経済]

迷走する米国(2):ビッグスリーは救済できるか?

 11月18日に上院銀行委員会で国内自動車業界の救済策をめぐる公聴会が開かれ、12月4日また同委員会で2度目の公聴会がはじまった。ネットで検索できるので、興味のある人は下にアドレスを貼り付けておくのでみられたい。
 お昼のニュースによれば、GMとフォードのCEOはそれぞれ自社の車を運転して公聴会へ出席した。しかし、GM会長ワゴナーは帰りは運転手付きのキャデラックだった。揚げ足を取るようで言いたくはないが、社用ジェット機でワシントン入りした前回の公聴会で批判を浴びたから自ら車を運転してワシントン入りして見せただけで、実のないパフォーマンスだ。批判されないと改めない、そういう体質こそが問題だろう。

 第1回の公聴会から2週間ほどの間に、ビッグスリーの救済資金要請額は250億ドルから340億ドルに膨らんだ。ようするにビッグスリーの経営者は来年度の売上見通しや資金繰りの状況すら適確に掴まえていないということである。
 GMの資金要請額は年間売り上げの10%を超えている。売上は40%減少しているから、必要運転資金はおおよそ89億ドルに過ぎない。要請額はその2倍を超えている。つまり、半分以上が債務超過額(9月末599億㌦、年度末は800億㌦?)の補填資金だ。
 資金繰り一つ見てもわかる、年間売り上げが1782億㌦もの規模の巨大会社でも経営は杜撰だ。杜撰だからこそ実質的には経営破綻(599億ドルの債務超過会社)している。こんな会社に救済資金をだしても、文字通り一時救済になるだけで返済されるわけがない。そして1年後にもっと大きな金額を要請することになって米国議会に反対にあい、結局は経営破綻する。
 結論を言うと、GMへの180億㌦、クライスラーへの70億㌦は返ってこない。税金で1年間破綻先延ばしをするだけである。
 一国の指導者は冷徹な判断をしなければならない局面がある。最善の策は救済資金を供給しないことだ。フォード1社を残すのが最善策だろう。GMとクライスラーが潰れればフォードは生き残れる。銀行も業績の急回復可能なフォードに必要な資金を供給するだろう。公的資金は1㌦も必要ない。

 *公聴会で何人かの議員が、私が懸念していることについて適確な質問をしている。その様子がロイターから配信されているので、あわせ読まれたい。
 「米ビックスリー首脳が上院公聴会で証言」(ロイター)
 
 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-35268920081205

 **これまで書いてきたビッグスリー関連ブログ・・・
 12月5日#428『迷走する米国:ビッグスリーは救済できるか』

 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-12-04
 11月16日#402『GM: Why bankruptcy could be best scenario』
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-11-16-2
 11月15日#398『破綻寸前のビッグスリー』
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-11-14-1

 11月12日#393『GMは生き残れるのか?』
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-11-12


 12月3日北海道新聞夕刊1面より
米ビッグスリー
 3.2兆円の融資要請
 再建計画 車種を大幅削減
【ニューヨーク2日共同】公的資金による救済を求めている米ビッグスリー(自動車大手3社)は2日、米議会に経営再建計画を提出した。ゼネラル・モーターズ(GM)は政府に資金支援として最大計180億㌦(約1兆7千億円)の融資を要請。フォード・モーターが最大90億㌦、クライスラーが年内に必要な額として70億㌦を求めており、合計は最大で340億㌦(3兆2千億円)に達した。
 次の山場は三社のトップが出席する4日と5日の公聴会となる。GMとクライスラーはそれぞれ、年内に40億ドルと70億㌦の支援がないと資金繰りが行き詰るとしており、救済のための法案が成立しない場合は経営破綻の現実味が増す恐れがある。三社は当初、計250億ドル規模の救済が必要としていたが、厳しい経営環境を反映し、要請額が膨らんだ。米議会民主党指導部は2日、救済法案を8日にも議会に提出したい意向を表明したが、要請額拡大への対応などが議論の焦点となりそうだ。ペロシ下院議長(民主)は2日の会見でビッグスリーの破綻は「選択肢にない」と語った。
 再建計画で三社は、いずれもトップの年俸を1㌦にするなど経営陣の報酬カットや、電気自動車などの環境対応車の開発強化を表明。・・・GMは2012年までに最大3万1千人を削減し、トヨタ自動車と同水準に労務費を抑えたい意向も示した。・・・

 米新車販売36%減
 11月26年ぶりの低水準
 2008年12月5日 ebisu-blog#429
  総閲覧数:53,502/375 days(12月5日13時10分


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