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#229 進研ゼミ模試 July 20, 2008 [57. 塾長の教育論]

       《進研ゼミ模試、7月19日、根室高校》

 今日は高校1年生が進研ゼミの模試だ。昨日の授業には試験準備のために二人来ていた。二人とも二日間続けてきていた。なにしろ初めての模試であり、未体験ゾーンへ突入するのだから、それぞれに思いや気負いがある。
 一人は昨年度の英語の問題に取り組んでいたが、長文問題がまったくわからないとあせっていた。長文は高校入試とはレベルが違う。高校入試は本文の内容をまったく理解できなくても半分程度は正解できるが、大学受験の模試は断片的にでも本文を理解しないほとんど正解できないから、英文特有の論理展開に慣れる必要がある。
 時事英語授業がそのためのトレーニングに最適だ。学校の復習に追われてこの授業にでてなかったから、長文問題に手が出ないのは当然だろう。夏期講習でしっかりやればいい。
 英字新聞の記事が辞書を引いて読めるようになるまで通常は1年以上かかるが、これを半年で読めるようにトレーニング方法を改善するのは塾長の仕事だ。

 英文は書き方にルールがあるので、それを理解すればずっと読みやすくなる。パラグラフ単位での論理展開ルールを学べばいい。
 この読解トレーニングが面白いのは、副産物として日本語の文章を論理的に読むことや書く事ができるようになる点である。
 社会人となってからこの技術は大いに役に立つ。厚い書類や本を手にしても、制限時間に応じて読む速度を変えながら、時間内に要点を精確に読み取ることが可能になる


 もう一人は過去問題や英語には目もくれず悠然と数学の問題を解いていた。大学受験にピントを合わせて中学3年間しっかり勉強してきたから、高校入学前に数Ⅰ&Aを終わり数Ⅱをほぼ終えている。今年の春から、数Ⅰの受験レベルの問題集をやっている。夏休みの終わり頃からは、数Aの受験レベルの問題集と数Bをやることになる。日商簿記1級にチャレンジしなければ、来年春休みから数Ⅲをやり、2年生の秋には理系大学レベルの数学問題集と格闘しているだろう。この生徒にどのような可能性が開けるかわたしにはわからない。'quantum leap'(量子的飛躍)を期待している。
 英語は300ページを超える全文英語で書かれた大学レベルの問題集を中3の12月に終えている。これからの課題はパラグラフ単位のロジックを読み取るトレーニングを通じて長文読解力を底上げすることにある。

 成績上位の生徒にとっては簡単な試験問題は能力の成長を阻む。サイズの合わない靴では歩き続けられないように、能力にマッチしないテクストや問題は生徒の学力の成長を阻む。
 ニムオロ塾は生徒の能力に応じたテクストと問題集を選び、生徒の能力に応じた指導を行っている(成績の振るわない生徒には、理解できていないところを見つけ、そこにパッチを充てる補習をする。学ぶ意欲さえあれば、成績は上げられる)。

 3年間高速学習で養ってきた実力で、全国模試でどれくらいの成績がとれるだろうか。今週は二次関数の問題を集中的にやっていたが、この生徒にはポイントだけを教えるようにしている。弱点が分かればそこは詳細に解説するが、とりあえずは自力でやらせる。いずれは自分の力のみで学習しなければならなくなる。それに備えるためだ。
 大学へ進学してから公認会計士や大学院にチャレンジするかもしれない。自分で勉強する力を高校生のうちに養っておく必要がある。

 優秀な生徒に丁寧な指導をすると、時に自主性や自立性を奪ってしまうことがある。生徒の能力に応じて指導の仕方は変えなければならない

 まだ進研ゼミ模試レベルの問題で90点取れるほど力がついているとは思わないが、平均点30点以下のこのテストで80点付近なら立派なものだ。夕方確認したら自己採点では70点前後しかとれなかったと意気消沈していた。90点は取れると思っていたのだろうな。70点でも3番以内だろう。しかし、根室高校内での順位はどうでもいい。全国レベルで成績上位グループに入れるかどうかが問題である。進研ゼミの出題レベルは、難関大学で出題される問題に比べるとやさしいから、70%以上得点できて当然だ。
 手強い問題でよかった。慢心が一番危険だ。このところ勉強に手抜きが見えていた。全力でやらないと全国区で成績上位グループには入れない事を知っただろう。多少手抜きしても大丈夫と勘違いしていたのではないだろうか。根室高校で学年トップを取れても、全国区ではたいした成績ではないと口を酸っぱくして言っていたつもりだが、体験しないと理解できないこともある。慢心を戒める警告が天から下されたと素直に受け止めてほしい。現在の実力でどれくらいの偏差値なのだろうか。自分の位置をしっかり確認しよう。負けることで強くなれ。

 「全国区」で上位の成績をとるのは容易ではない。「小さな井戸」に過ぎない根室高校で学年トップをとるのとはわけが違う。進研ゼミ偏差値70で上位2.3%付近だ。根室高校普通科で120人中トップ数人が偏差値70程度だろう。
 進研ゼミ模試には進学校がほとんど参加していないようだから、偏差値が高くでるので要注意だ。高い偏差値に勘違いしないように。一般に進学資料に掲載されている情報は進研ゼミの偏差値ではない。駿台・代ゼミ・河合塾などの偏差値が掲載されている。進研ゼミ偏差値50は大学進学者の平均値とはいえない。成績上位を占める進学校の生徒たちは駿台・代ゼミ・河合塾などの模試を受けているからだ。母集団に偏りがある。進研ゼミの受験者には大学受験で成績上位グループを占める進学校の生徒たちがほとんど参加していない。したがって、その偏差値は成績下位グループの中での順位を現しているにすぎない。
 進研ゼミの偏差値70は代ゼミ偏差値では56程度だろうか。割り引いてみないといけない。上位28%の成績である。それほど良い成績とはいえない。根室高校のトップクラスが、駿台・代ゼミ・河合塾などでは56程度だ。上位25%グループに入らない。根室高校のトップが代ゼミ模試では100人中28番目くらいの成績に過ぎない。これでは北大合格者がでないのも当然だろう。数学と英語は代ゼミ偏差値で65超を目指そう。進研ゼミの偏差値では「針が振り切れて」事実上計測不可能な領域だ。

 点数次第で指導の仕方をいくぶん軌道修正する必要があるかもしれない。テスト結果を見て判断する。
 90%以上の得点を目指すなら英語は長文対策だけでは不十分である。受験英語特有の領域があるので、そこを攻める必要がある。こういう問題である。
 I have the (       ) to know the truth.
  Turn (      )~.
 生徒から質問のあった昨年度の模試問題である。両方の文に同じ単語が入るが、この種の問題は問題慣れしていないと正解できない。英語の実力にほとんど関係がないが点数を上げるためには一定程度のトレーニングが必要である。
 ついでにいうと、この英文は少し問題がある。この文が発話される場面は、話し手の親族が何か凶悪事件で殺された、そこで話し手が「(他の人はともかく)私には(その事件の)真相を知る権利がある」というような場面を想定しないと理解できない。コンテキストが示されない問題なら、
 We have the (right) to know the truth.
とすべきだと思う。これなら素直に「わたしたちには真実を知る権利がある」と読めるので正解がすぐに思い浮かぶだろう。一般的な真理を表現する文で、特別なコンテキストの想定を必要としないからである。
 2番目の文で、「右か左」に絞り込めるから、文章にはお構いなしに反射神経で答えを出せと言うことだろうか。ならば短時間で正解するためにはそれ相応のトレーニングがいる。英語を教える立場からは抵抗のある問題群である。そのようなトレーニングをする暇があったら、英文を論理的に読解するトレーニングをした方がよほど有益である。大学生になって要求されるのは専門書を読む英語力であるから、こういう問題がいくら正解できてもほとんど意味がない。社会人となってからも同じことだ。

 ニムオロ塾にはタイプの違う面白い生徒が何人かいる。数年の内にそれぞれがユニークな記録を残すだろう。楽しみな生徒たちである。

  2,008年7月20日   ebisu-blog#229 
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