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#5006 日本郵政損失850億円計上:経営能力ナシ Jun. 30, 2023  [8. 時事評論]

 日本郵政は2019年に楽天の株を1500億円買い入れた。楽天の三木谷社長が、日本郵政の増田寛也社長に資本提携と業務提携を持ち掛けたもの。
 当時、増田寛也社長は「最高の組み合わせ」だと絶賛していた。「相乗効果が期待できる」とも、意味不明のことをおっしゃっていました。

 日本郵政は2006年に元住友銀行頭取の西川善文氏が初代社長に就任、現在の増田寛也氏が6代目です。日本郵政は2021年に資本提携と業務提携を目的として、1500億円出資しています。1100円/株での取得だったようです。6/30の終値は499円でした。
 日本郵政は楽天株の下落で評価損を850億円計上すると今日(6/30)発表しました。

 楽天はモバイルフォーン事業がうまくいかず、資金不足を解消するために日本郵政に資本提携と業務提携を持ち掛けました。具体的な相乗効果が出せる話などなかったのです。大きな会社が業務提携すれば、赤字事業が黒字になると勝手に思い込みました。経営者としては幼児に等しい思考です。

 1996年11月に帝人とSRLの治験検査合弁会社の立ち上げプロジェクトが暗礁に乗り上げ、急遽、子会社へ出向していたのですが、親会社の社長のKさんに呼ばれて、
①新聞公表通りの期日(1月)に立ち上げ
②赤字部門同士の合弁なので、3年以内に黒字化
③3年で合弁を解消して、SRLの完全子会社にする
④帝人の臨床検査子会社の吸収合併
 これら4項目を3年でやるように直接指示を受けました。経営の全権を委任してもらわなければやれるはずがないので、それを条件に飲んでもらいました。常勤の常務と非常勤役員に親会社の役員が2名の体制でした。取締役ではないただの管理部門の部長が経営の全権を委任された変則的な体制でした。1年半後に職位を上げて平取締役ということになりました。帝人側からは親会社のI常務が非常勤取締役として毎月の取締役会に出席していました。経営戦略の立案と取締役会への説明、そして実行管理はわたしの仕事でした。帝人側から合弁会社の社長を出してもらっていましたが、I常務はとっても協力的で、好きにやらせてくれました。赤字が続いていた臨床検査子会社の経営が帝人本社内で大きな問題になりつつありました。I常務とM専務が臨床検査事業をどうするか、Y社長から方針決定を迫られていたからです。お二人は、合弁会社だけでなく、帝人の臨床検査子会社の経営もやってほしかった。実際にI常務から、帝人の臨床検査子会社を合弁会社の子会社にするから、兼務で両方の社長をやって、経営をしてもらいたいと申し入れを受けています。しかし、SRLの人事慣例で不可能でした。その結果、人員整理、事業縮小ということになってしまいました。かわいそうでした。社員を救う具体案はありましたが、別会社で権限が及ばないので実行できません。対BML戦略で、首都圏の一般検査子会社の売上を2倍に拡張する案だったので、自分でやらないと調整がつけられません。SRL東京ラボが首都圏をエリアとするラボでした。システムを更新して、新ラボを建設し、生産性を2倍に上げれば、首都圏でBMLの売上を食うことになるので、BMLの売上が縮小し株価は暴落したでしょう。千葉ラボで1992年に一部実験済みだったので、検査機器に双方向のインターフェイスを標準装備して、使い勝手の良い基幹業務システムとラボ検査システムをつくれば達成できる目標でした。SRL本社の社長が権限を使えるような立場においてくれたら、具体案を話して実行するつもりでした。
 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」で行きたかった。

 合弁会社が動き出してから調べると、粗利益が20%前後しかありません。治験検査はSRLと帝人羽村ラボへ外注ですから、合弁会社の取り分はとても小さかった。こんな状態の収益構造で経営したら、2年で自己資本はゼロ、増資しなければ債務超過になることはあたりまえでした。赤字部門同士を出して合弁会社をつくったらそういうことになります。おまけに、SRL八王子ラボ側に5名ほど、検体の保管と抜き出し作業に従事している社員がいることが、数か月後に判明。SRLの業務システム本部長のN取締役に、費用負担を新会社でしてもらいたいと当然の要求があったのです。Nさんから話を聞いて、こちらの事情を説明して、収益構造を変えるめどがつくまで半年待ってもらいました。彼とは馬が合っていました。八王子ラボで4年間ほど仕事していたので、お互いに仕事のやり方や人柄を承知していたからです。八王子ラボ勤務のときに、業務本部の忘年会に招待されたことがありました。
 システム担当グループとデータ管理グループを集めて、情報を整理して、某製薬メーカー向けに開発した治験検査データ管理システムを、汎用パッケージに作り替えることで合弁会社の収益構造を変えて、黒字化することに決めました。NTサーバーに変えることに強い反対が出ましたが、譲れないので押し通しています。ベテランのシステム屋が、ユニシスの提案で三菱のオフコンをずっと使っていました。1979年に使ったことがあったので、時代が違うと、そしてパッケージシステムを創ったものをオフコンに載せるわけにはいかないと説明しました。売れるわけがありません。パソコンベースでパッケージシステムを開発すると開発費が1/10以下になります。カスタマイズ部分は別料金をいただくので、利益率が大きかった。
 若いシステム屋のK谷君と応用生物統計担当のM野君の二人がC言語のプログラミングに慣れていたので、オフコンでやるわけにはいきませんでした。三菱のオフコンは数値計算に弱いのです。無理数の計算や指数計算の演算子がありませんから、統計計算は不可能でした。1997年当時は業務用のパソコンでは間に合わず、他の業務も載せるので、強力なNTサーバーでの開発でした。この分野(治験検査データ管理事業分野)の利益率が高くて、黒字転換できました。事業の軸足を、治験検査事業から治験検査データ管理事業へとシフトしたのです。ほとんどの製薬メーカーが取引先でしたから、この分野で5~10年間は大きな利益が期待できます。その次の事業展開は大学病院向けの治験検査データ管理システムパッケージの開発でした。こちらの方が市場が大きい。合弁会社の社員に、SRL以上の年収を保障してやりたかったからです。売上高経常利益率を20%にもっていくつもりでした。
 親会社の社長のKさんからわたしが請け負った四項目は約束通り、3年で終わっていました。経営の全権も仕事が終わったのですから、親会社社長へお返しすることになります。SRL以上の給料を保障してやりたくても、自分の好きなようには経営できません。帝人の子会社から転籍してもらう社員の年収は2倍になる予定でした。人生とはなかなか思う通りには行かないものです。黒字化のカギは経営の軸足をデータ管理事業へ置き換えることでした。治験データ管理事業へ踏み出しました。
 仕事が終わってしまったので、かねてお誘いがあった300ベッド弱の特例許可老人病院の常務理事の仕事を引き受けることにしました。療養型病院へ転換することで、老健施設やナースステーション、グループホームなどを配置して、シームレスな老人介護を実現したかったのです。

 増田寛也さん、ありもしない「相乗効果」を期待していましたね、経営者としてはとても甘い。
 彼の経歴をみると理由がわかります。東大法学部に2浪して合格、建設官僚として仕事していたようです。菅政権の時に総務大臣に抜擢されています。どうしてこんな人に、民間企業の日本郵政の経営をゆだねたのでしょう?

 官僚の仕事は前例踏襲ですが、民間企業となった日本郵政のマネジメントは、まったく未知の分野へ踏み入ることになります。増田氏には最も向かない仕事でした。
 増田氏は受験勉強をやりすぎています。受験勉強の悪いところは、正解のある問題を、既知の解法でできるだけ速く解くことです。東大法学部に合格したくて人よりも2年間多くそんなことに没頭せざるを得なかった。思考の鋳型ができあがってしまっていて、社会人になってからは壊せないのです。こういう人は官僚になるしかありません。
 経営は正解のない問題を考え、その解決法を組み立て、戦略を練り、実行することです。受験エリートの東大法学部出身者には一番不向きな仕事です。実行してうまくいかなければ、すぐに代替案を考え、戦略修正をしながら、最終的に目標を達成します。頭脳が柔軟でないとマネジメントはできません
 ろくに受験勉強しないで東大法学部に合格できた人なら、その中100人に一人ぐらいはマネジメントに優れた腕を発揮するかもしれません。そういう人材はいないのでしょうか?

 民間企業へ転換した日本郵政の経営という未知の分野にチャレンジするには一番まずい人選でした。まるで経験がないし、そういう智慧がないのですから。だから「相乗効果」なんて妄想を抱いてしまったのです。
 楽天というネット事業者と資本と業務提携すればなんとなく良いことが起きそうだと、そう思い込みました。思考パターンがまるで子供です。結果は3年間で850億円の損失を計上することになりました。仕事のできない人が張り切って仕事すると、こうした「災害」が起きます。デジタル担当大臣の河野氏がその典型でしょうね。マイナンバーがひどいことになっています。大きな責任を伴なう仕事なのですから、デジタル大臣引き受ける前に、ちゃんとデジタル技術のイロハぐらいは勉強してからにしてほしいものです。台湾のオードリー・タン氏に比べたら、雲泥の差です。
 こういう経営の失敗が起きたら、責任をとるのが代表取締役社長の役目ですが、辞任は聞こえてきませんね。ここでも、常識外れです。

 人材がいませんね。政治家で日本郵政の経営を担える人が思いつきません。与野党を問いません。政治家の中で、こういう仕事に一番不向きなのは、松下政経塾出身者かもしれませんね。空理空論が多い、松下幸之助はそういう人ではなかったと思います、何という皮肉でしょう。


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